小説「海と陸の彼方へ」

 

第十章ヘクターとルイスの対イギリス共同作戦

 

第6話国内4つ巴の争い「九江と廬山①」

 

前書き

第6話は、ヘクターとルイスがイギリスに対して共同作戦を繰り広げる壮大な舞台を背景に、個人的な人間関係と微妙な力のバランスを探求します。熱帯の夏、九江の海岸でのバーベキュー、そしてエリザベトとアリスによるオランダ料理の夕食の準備という、日常と非日常が交錯する瞬間が描かれています。このエピソードは、登場人物たちの間の複雑な人間関係、特にヘクター、エリザベト、アリスの関係性に焦点を当て、彼らの相互作用を通じて情感の深さと人間性を掘り下げます。

 

本文

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登場人物「年齢は1936年1月1日時点」 

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主人公ルイス(19歳)、中国の運命を操る覇王。巴蜀・雲南・陜西・河南・湖北及び長江沿岸諸都市、上海、杭州を領土とし、反西欧、反日、反共を掲げ、中国民族自決のための戦いを始める。 

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側室 

ナディア・アミール・アル・サン(43歳)。アレッサンドロ・ディアンジェロ男0歳の生母。 

サリマ・ファイサル・アル・ハウ(26歳)。エミリア・ディアンジェロ女0歳の生母。 

王光美ワン・グアンメイ(15歳)。マルコ・ディアンジェロ男0歳の生母。 

側女、愛人は多数居る。いちいち書かない。 

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部下 

孫偉強スン・ウェイチャン(18歳)。ルイス商船隊隊長。李春花リー・チュンファの息子。 

ジェームズ・ハリントン (38歳)。イギリス商船提督。中国各地へ交易の旅に出ている。 

エリザベス・ハリントン(35歳)。ジェームズ・ハリントン の妻。10歳の息子チャールズ、8歳の娘アン。 

副官 エドワード・グリフィス(34歳)。イギリス商船副官。中国各地へ交易の旅に出ている。 

ソフィア・グリフィス(32歳)。エドワード・グリフィスの妻。息子トーマス5歳。 

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ルイスの資金
蓮華金融設立「資本金100億両」。小遣い111億1千万両。朱堤銀銀錠200億両「内訳は蓮華金融資本金100億両。一般会計20億両、特別会計80億両」。今までに一般会計は20億両の予算のうち506万5千両支出した。特別会計は80億両の予算を組み、今までに16億557万3,300両支出した。小遣いの中から、28,005両使用した。
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ルイスの家族 
イタリア系の不法移民で、彼らの家族名は「ディアンジェロ」です。以下はディアンジェロ家の家族構成です: 
父親ヘクター・ハミルトン(29歳)「10歳の若返り」:アンヘルから10億ドルの資金を貰い、テキサスで石油と天然ガスを発掘した。 
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ヘクターの資金57億4,060万ドル。テキサスで石油精製会社「資本金5千万ドル」設立。
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 紅軍の長征  

中国地図 出典 建築資料研究社「住まいの民族建築学」浅川滋男著 P8

 

 

中国侵略 

東京書籍「世界史B」P329

 

 

辛亥革命以降 

東京書籍「世界史B」P332

 

 

国民党の北伐と共産党の長征 

東京書籍「世界史B」P364



山川出版社「市場の世界史」佐藤次高/岸本美緒著。P179

 

☆8月11日火曜日午後4時。九江海岸
ヘクターはバーベキュー料理を商人の妻たち3人と楽しみ、軽くひと泳ぎしたあと、誘われるがままに彼女たちを一人ずつ抱いた。此処九江は亜熱帯季風気候に位置しており、8月上旬は一年で最も暑い期間の一つである。この時期は副熱帯高圧の影響を強く受け、気温はしばしば35度以上に達することがあり、高温多湿の日が続く。晴れた日が多いが、時折、局地的な雷雨や短時間の豪雨が発生することもあり、8月上旬の九江は非常に暑く、湿度が高い。

「ドイツ商人の妻ヘルガ・バウアーマン39歳、オランダ商人の妻エリザベト・ヴァン・デル・メール26歳、中国商人の妻:李明珠リー・ミンジュ32歳ひとりひとりから、「暑くてたまらない。ヘクター様。何とかして下さい」と迫られ、何処かへ避暑に行こうと考えた。

九江の地理に詳しい者はいないかと探し回り、海賊たちに捕らわれていた九江の沿岸地域のことを良く知る者たちに聞くことにした。捕らわれていた者たちは300名ほどいたのだが、沿岸地域の者たちは全員自宅に帰り、景徳鎮出身の若い男女が2名だけ残っていた。

彼らが言うには、廬山が避暑地にはうってつけだという。ヘルガやエリザベトもそう言えば「光緒21年「1895年」から、廬山には20か国以上からの別荘群が建設され、国際的な避暑地となりました。この地域は外国の教会、銀行、商店、学校、病院、市政議会などが設立され、西洋文化の中心地として中国内陸部で特別な位置を占めました」と聞いたことがあるというではないか。

中国商人の妻:李明珠リー・ミンジュ32歳:ヘクター様。私は廬山温泉に行きたいですわ。

ヘクター:温泉もあるのか?廬山温泉というくらいだから、廬山の麓にあるんだろうな?

李明珠リー・ミンジュ:廬山温泉は、九江市星子県にあり、アルカリ性の炭酸水素ナトリウム泉で、温度は58-98℃です。この温泉は、廬山の南麓に位置しており、その地理的な位置は山と山の間、特に北側に廬山、南側に黄龍山があります。温泉は、その歴史的な名前や、地元での呼び名に関して複数があり、「星子温泉」と呼ばれることもあれば、「黄龍霊湯院」や「黄龍温泉」としても知られています。重要なのは、この温泉水が廬山の牯岭から発しており、廬山の自然と深い関連があることです。温泉は非常に熱く、その豊富な歴史と共に「湯泉」や「霊湯」など多くの称呼で呼ばれています。

ヘクター:中々良さそうだな。廬山南部の黄龍山下にあるのか。早速行ってみよう。明日の朝早くに騎馬で出かけよう。エリザベト。夕食の当番はお前とアリス・アシュトンにしよう。

エリザベトはオランダの郷土料理を作ることにし、アリスは手伝いました。最近、6名の側女そばめたちは内心の気持ちはともあれ、表面上は仲良くしていました。ヘクターの目が厳しく、ちょっとでも口喧嘩など見つかろうものなら、直ちにふたりとも閨に呼ばれなくなるのです。

ヘクターの逞しい身体に抱かれ、セックスの旨味を覚え込まされた側女そばめたちには耐えられないことでした。ヘクターも現金なもので料理が美味しいと思うとその場で料理担当者を褒め上げるだけではなく、愛情のこもったキスを与え、料理を口移しで食べさせてやったりもするのです。今夜の伽にも当然呼ばれることになります。

エリザベトとアリスは自分が伽に呼ばれるように必死にオランダ料理を作り上げました。

エリザベトとアリスが厨房で忙しく働き、夕食の準備が着々と進んでいく。エリザベトは手際よくスタンポット……注①の野菜を切り、じっくりと煮込みます。彼女の丁寧な手つきは、オランダの郷土料理への愛情を物語っている。

一方、アリスはエルテウェンソープ……注②を担当し、スープが深い味わいになるよう、細心の注意を払って調理している。キッチンには、料理から立ち上る心地よい香りが満ち、二人の協力的な様子が印象的だ。

夕食時、テーブルにはエリザベトとアリスが手掛けた料理が並び、その中心には色とりどりのスタンポットと、濃厚なエルテウェンソープが鎮座する。ビッテルバレン……注③やロールマッセン……注④は、食前や食後の会話を楽しむために、さりげなくテーブルの隅に置かれている。この夕食の風景は、オランダの家庭の暖かさと、料理を通じた人々の絆を象徴している。

ヘクターは、エリザベトとアリスの料理に感謝の言葉を述べ、特にアリスが差し出したビッテルバレンを口にした瞬間、その味と心遣いに感動した。この食事を通じて、ヘクター、エリザベト、アリスの間には新たな理解と愛情が生まれた。

ヘクターは二人の料理とその奉仕に心から感謝し、オランダの料理が持つ家庭的な温もりと愛情を存分に味わっている。エリザベトは上手に料理をこしらえたが、残念なことに伽の座はアリスに奪われた。ヘクターに対する奉仕「口移しによる」の程度がアリスの方が上回っていた。

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注①……スタンポット (Stamppot)
スタンポット (Stamppot):オランダの代表的な冬の料理で、マッシュしたジャガイモに、さまざまな種類の野菜「例えばキャベツ、ボレコール、人参」と時には果物を混ぜ合わせたものです。通常、ローストしたソーセージや塩漬けの肉、ベーコンと一緒に供されます。
注②……エルテウェンソープ
エルテウェンソープ (Erwtensoep):厚みのあるスプリットピー(青豌豆)のスープで、セロリ、人参、ジャガイモ、そしてしばしばスモークソーセージ(ロークウルスト)やベーコンが入ります。冬の寒い日によく食べられます。
注③……ビッテルバレン
ビッテルバレン (Bitterballen):これは厳密に言えば夕食料理ではありませんが、オランダのパブやバーで人気のスナックで、夕方の食事の前に楽しむことが多いです。牛肉のラグーを小さな球状にしてパン粉でコーティングし、揚げたものです。マスタードを添えて提供されます。
注④……ロールマッセン
ロールマッセン (Rollmops):酢でマリネしたヘリングを、ピクルスやタマネギと一緒に巻いたものです。通常、前菜や軽食として提供されますが、夕食時に楽しむこともあります。
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☆伽に呼ばれずがっくりしているエリザベト
懸命にオランダ料理を作り上げたのに、ヘクターから伽に呼ばれず、エリザベトはガックリと項垂れていた。こうなるだろうとはヘクターもわかってはいたのだが、最近提督の妻:アリス・アシュトンや副官の妻:ジョアンナ・モートンを呼ぶ機会がめっきり減っており、ヘクターとしては調整したつもりだった。

口移しの回数がアリスの方が多かったからと言うのは単なる口実に過ぎない。エリザベトが泣き伏していると聞き、ヘクターはエリザベトの寝室に入って行った。

あっと驚くエリザベト。ヘクターは大柄なエリザベトを抱きかかえ、有無を言わさず、彼女のベッドにそのまま横たえた。此処まで来たら、エリザベトにもヘクターが何を求めているか良く分かる。エリザベトの大きなお尻がヘクターの望みなのだ。エリザベトはデカ尻をヘクターに突きつけ、愛撫と挿入を求めた。

ふたりの相姦はそのまま夜の9時半まで続き、エリザベトはぐったりして朝まで眠り込んだ。ヘクターは自室に帰り、ベッドで待っていたアリスを念入りに愛撫し続けた。二人の愛は深夜にまで及んだ。

翌朝、ヘクターと6名の側女たちが馬に乗り、廬山へと向かった。この旅は古き良き冒険の序章を思わせるものだった。彼らは、東は婺源と鄱陽湖に接し、南は滕王閣に隣接し、西は京九鉄道の大動脈に接し、北は長江に面する、壮大な自然の美しさに囲まれた廬山を目指す。

全体の山体は南北に29キロメートル、東西に約16キロメートルにわたり広がり、その面積は302平方キロメートルに及ぶ。標高は25メートルから1473.8メートルにまで及び、古くから名付けられた山峰が171もある。彼らの目的地は、主峰である大漢陽峰で、その標高は1474メートルにも達する。

彼らの旅は、緑豊かな山々を背景に、変わりゆく景色とともに進み、時には険しい道を馬で駆け上がりながら、廬山の壮大な自然と歴史を身近に感じることだろう。

☆山頂の避暑地到着
その日の午後5時、目的の避暑地に到着した。廬山の最高峰である漢陽峰は、標高1474メートルに達し、その周囲は理想的な避暑地となっています。この地域は、夏の平均気温が約22.6℃と比較的涼しく、朝晩はさらに涼しい15〜20℃の間で推移します。これは、鄱陽湖盆地の酷暑と大きな対照をなしており、山上では空気が清涼で湿度も適度に保たれています。豊かな自然環境、清涼な気候、そして壮大な景色は、夏の暑さから逃れるには最適な場所を提供します。廬山は、その緑豊かな密林、湿気を帯びた空気、そして年間を通じての豊富な降水量が、この地を避暑地として理想的な環境にしています。

☆山菜採り
ヘクターは避暑地の別荘に荷物を降ろし、6名の側女たちは夕食の準備に取り掛かった。ヘクターは景徳鎮の若い男女と一緒に山菜採りに出かけた。イノシシや鹿でも居れば捕らえるつもりでヘクターは猟銃を持参していた。若い男女と一緒に山菜採りに興じていると、右手の方からグオーンと言う大型獣の威嚇する声と、絶望する女性たちのうめき声が聞こえた。

大慌てで、ヘクターが駆けつけるとそこには悲惨な光景が繰り広げられていた。数名の男女が大型獣にやられて倒れており、大型獣の口には若い女性が咥えられていた。これ以上猶予を与えるとその女性は身体を食いちぎられてしまう。

ヘクターはズドンと一発大型獣に、猟銃をお見舞いした。大型獣は大暴れして若い女性を振り落とした。ヘクターは次の弾丸をお見舞いした。大型獣はゆっくりと倒れた。景徳鎮の男女が駆け寄り、倒された人たちを全員馬に担ぎ入れた。大怪我はしているが、幸い命には別状無いようである。

今回はここまでにいたしましょう。次回をお楽しみに。

 

後書き

本エピソードでは、壮大な自然の中で繰り広げられる人間ドラマを通じて、強い絆や人間性の深さを探求しています。個々のキャラクターの成長と変化は、読者に深い共感を呼び起こします。また、歴史と自然の豊かな背景が物語に深みを加え、読者を引き込む魅力的な世界を創り出しています。次エピソードでは、これらのキャラクターたちの運命がどのように交錯するのか、さらなる展開にご期待ください。