小説「海と陸の彼方へ」

 

第七章西欧列強との戦い

 

第13話人身売買集団の暗躍③

 

前書き

本エピソードは西欧列強との戦いを背景に、人身売買集団の暗躍に焦点を当てています。物語の主人公、ルイスは中国国民党総統蒋介石より巴蜀・雲南の軍政長官に任命され、さまざまな局面に直面します。彼の行動は、歴史的背景と複雑な人間関係の織りなすドラマを生み出します。

 

本文

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登場人物「1935年1月1日時点」  
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ルイス18歳:イタリア系のアメリカ移民。長征途中の中国共産党紅軍の首領毛沢東を捕縛した功績を認められ、中国国民党総統の蒋介石より、巴蜀・雲南の軍政長官を委嘱される。旅の途中で四川省南充の石油王から巴蜀・雲南王に推戴される。と言っても、元清朝の王女:王華ワン・ファが認めただけである。この物語の主人公。中国制覇の大望を抱く。鉱山省大臣を兼ねる。
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ルイスの資金
小遣い1億266万8,200両。朱堤銀銀錠200億両「内訳は一般会計20億両、特別会計80億両。余剰金100億両」。今までに一般会計は20億両の予算のうち506万5千両支出した。特別会計は80億両の予算を組み、今までに16億500万500両支出した。前話に於ける支出は交通費等99両であるが、ルイスの小遣いで出した。

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ルイスの妻:エリザベス・ハーレイ。ジョン・ハーレイ(40歳)「ブリタニア号の船長」の元妻。 年齢: 38歳 

背景: イギリスの中流家庭出身。元夫の仕事を支えるために、度々海を渡る。 

性格: 温和で思慮深く、家族を深く愛する。元夫と同様に最初はルイスに不信感を抱いていたが、彼の真摯な態度に心を動かされ、夫と別れてルイスと結婚する。 

義理の息子:ウィリアム・ハーレイ。軽戦車隊「8台」隊長。「趙麗チャオ・リー」26歳の夫。 

年齢: 16歳 

背景: 船長の息子として海上生活に慣れ親しんでいる。航海術に興味を持ち、父から学んでいる。 性格: 好奇心旺盛で活発。ルイスの冒険的な精神に魅了され、彼を尊敬するようになる。 

義理の娘:エマ・ハーレイ 

年齢: 14歳 

背景: 船長の娘として幼少期から多くの国を訪れている。異文化に対する興味が強い。 性格: 社交的で好奇心が強く、新しい環境にすぐに適応する。ルイスの持つ異文化への敬意と好奇心に共感を覚える。 

趙麗チャオ・リー」26歳:ウィリアム・ハーレイの妻。建設大臣。元昆明軍閥の一員。彼女は軍閥の中で情報の収集と分析を担当し、一味が行動を起こす前に必要な情報を提供していた。 

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ルイスには他にも妻「側室」がいる。王華ワン・ファ(45歳)、李芳蓉リー・ファンロン(37歳)、劉芸芸リウ・ユェンユェン(38歳)、陳明花チェン・ミンファ(38歳)、クロエ・デュモン(23歳)、劉秋リュウ・チウ(39歳)、劉穎リウ・イン(33歳)の7名である。別途にイスラム妻が3名「ナディア、サリマ、王光美」いる。 

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ルイスの部下。 

1.周恩来ジョウ・エンライ(37歳)。ルイスの参謀。江蘇省出身。 ・穏やかで知的な性格をしており、どんな状況でも冷静さを失わない。 

・話し方には礼儀があり、分析的で思慮深い。 

・組織的な思考を持ち、リーダーシップを取れる。 

・他者に対しては理解深く、共感を示すことができる。

 2.ナディア・アミール・アル・サン(42歳)。ルイスの第一夫人「政治担当」。上海出身。 

・自立心が強く、決断力がある女性。 

・社会的な問題に対して意識が高く、積極的に意見を表明する。 

・優雅で洗練された振る舞いを持ち、周囲に対しても敬意を払う。 

3.サリマ・ファイサル・アル・ハウ(25歳)。ルイスの第二夫人「会計担当」。江西省出身。 

・勇敢で情熱的な性格。自分の信念に強く固執する。 

・感情が豊かで、時に感情的になりやすい。 

・直感に頼ることが多く、行動的で果敢な面がある。 

4.王光美ワン・グアンメイ(14歳)。ルイスの第三夫人「軍隊担当」。山東省出身。 

・年の割には成熟しており、好奇心が強い。 

・柔軟な思考を持ち、新しい環境にも早く適応する。 

・人懐っこく、周りの人々との交流を楽しむが、時には頑固な一面も。 

5.テンパ・ティンリー(24歳)。航空長官「改良DC-2 :1,000機」パイロット。チャン・ユン(42歳)の長男。チャン・ユン(42歳)は摩梭モソ族:落水下村出身。 

6.陳浩然チェン・ハオラン(33歳)。諜報長官。年間経費10万両。部下100名。

7.李麗リー・リー40歳。側女兼農林大臣。年間経費1億両。怒族族長の元妻。果科村の手工芸品作家。

8. マウン・ティン・ナイン(16歳)。ミャンマー・ラーショー出身。科学技術庁長官兼兵器作成庁長官。専門は機械工学と電子工学。武器製作は余技。非常に知的で技術的な才能があり、新しいことに挑戦するのが好き。
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マウン・ティン・ナインの家族
父親:ソー・ティン・アウン(36歳)
・職業:小さな工房を経営する職人。
・性格:静かで思慮深く、家族を支えるために一生懸命働く。
・背景:幼い頃から木工や機械いじりが得意で、地元で評判の職人になる。

母親:アウン・サン・ミャー(34歳)
・職業:家事をしながら、地元の市場で手作りの布製品を販売。
・性格:明るく温かい心の持ち主で、家族思い。
・背景:地域の伝統的な織物を学び、その技術を活かして家計を支える。

妹:ティン・ティン・アウン(14歳)
・性格:好奇心旺盛で活発、学校での成績が良い。
・趣味:絵を描くことと読書。
・背景:兄のマウン・ティン・ナインを尊敬し、彼の発明に興味を持つ。
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9.常隆慶チャン・ロンチン(31歳)。前鉱山省大臣。高名な地質学者。蔡亜男ツァイ・ヤーナン(30歳)の前夫。 国王侮辱罪で禁錮3年の刑に服している。

10.蔡亜男ツァイ・ヤーナン(30歳)。昆明軍閥の戦術家・陳冬チェン・ドンの元嫁。ルイスの側女。

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 紅軍の長征  

中国地図 出典 建築資料研究社「住まいの民族建築学」浅川滋男著 P8     出典:朝日出版社「西南シルクロード紀行」宍戸茂著。挿絵。

出典:朝日出版社「西南シルクロード紀行」宍戸茂著。挿絵。

 

 

☆11月3日日曜日午後7時。龍泉谷温泉:ルイスの部屋 

 

ルイスは「馬建国マー・ジェンゴ(45歳)」の懐に10両ねじ込むやいなや、馬建国マー・ジェンゴ(45歳)をロープでぐるぐる巻きにして部屋まで連れてきた。彼を梅花メイファに会わせると、彼女はちゃんと彼の顔を覚えていた。 

 

ルイスは梅花メイファに"此奴が影蛇イン・イェンシェ「人身売買集団」からお前を買い、李明リー・ミンに売却した男だな"と確認した。梅花メイファが"その男に間違いありません"と答えると、ルイスは「馬建国マー・ジェンゴ(45歳)」の首に手を掛け、力任せにねじ切ろうとした。 

 

その刹那、女将の「劉美麗リウ・メイリー(40歳)」がルイスを止めに入ります。 

 

劉美麗リウ・メイリー:お客様。確かにうちの亭主は悪党でございます。10年前までは、影蛇イン・イェンシェの手下として中国各地で女子供を拐い、あちこちで売り払いました。すべて白状いたしますので命だけはお助け下さい。 

 

ルイスはこの色っぽい女将に興味を持ち、条件付きで亭主の命を助けるつもりになった。 

 

ルイス:取り敢えず、お前たちの知っていることをすべて白状せよ。命を助けるかどうかはそれからだ。 

 

ルイス:影蛇イン・イェンシェ「人身売買集団」一味は今何処にいるのだ? 

 

馬建国マー・ジェンゴ:つい最近までは渓谷村ケイコクソンという集落に潜んでいました。普格と德昌の間に位置し、山間の渓谷に囲まれた静かな集落です。その隠れやすい地理的特性が、人身売買集団にとって隠れ家として理想的な場所となっていたのです。 

 

馬建国マー・ジェンゴ:先月ころの話です。影蛇イン・イェンシェの首領「無情張ムジョン・チャン(38歳)」がこの温泉を訪れてこう言ったのです。"巴蜀と雲南がどうも怪しくなったようだ。新しい軍政長官のルイスという男がやりづらい男でアヘンの禁止令を出してあちらこちらで摘発するようになった。俺はアジトを変えようと思う" 

 

ルイス:何処へ行くと言っていたか? 

 

馬建国マー・ジェンゴ:私も聞いたのですが答えませんでした。 

 

ルイス:他にどういう手下がいるんだ?一家の構成人員がどういう人物なのかお前が知っていることを詳しく話せ。 

 

馬建国マー・ジェンゴ:頭領の「無情張ムジョン・チャン(38歳)」は組織の全体を掌握し、政治家や軍閥との間にも糸を張る冷徹な男でしてね、国民党の蒋介石や元共産党の劉少奇などとも親しいと聞いています。 

 

馬建国マー・ジェンゴ:他に右腕の「毒牙謝ドゥーガ・シエ(27歳)」がいます。強硬な手段もいとわない、組織の実行部隊を指揮する女でしてね。貴方のような向こう見ずな女です。あとは名前しか知りません。 

 

ルイス:良いから言ってみろ。 

 

"財務担当の「 錬金韋リェンジン・ウェイ」、莫大な金を運用し、組織の資金洗浄を担当する男。情報収集担当の「影目李イングム・リー」。街のあらゆる情報を収集し、組織の計画に活かす男" 

 

これ以上は知りません。 

 

ルイスはこれ以上痛めつけても無駄だと思い、ふたりに条件を付けた。 

 

ルイス:命を助ける代わりに、この温泉「龍泉谷温泉ロン・チュエン・グ・ウェンチュアン」の土地・建物の権利書を寄越せ。財産も全て差し出せ。女将の「劉美麗リウ・メイリー(40歳)」を俺の人質兼「側女そばめ」として差し出せ。 

 

馬建国マー・ジェンゴ:命は助けていただけるのですか? 

 

ルイス:俺が経営している攀枝花パンジーファの炭鉱「龍の息吹炭田」で5年間だけ働け。 

 

馬建国マー・ジェンゴ:5年働いたら許していただけるのですね。 

 

ルイス:そうだ。女将の「劉美麗リウ・メイリー(40歳)」も返してやる。 

 

ルイスは女将を人質に取り、馬建国マー・ジェンゴ攀枝花パンジーファに向かわせることにした。 

 

ルイスは梅花メイファ龍泉谷温泉ロン・チュエン・グ・ウェンチュアン」の土地・建物の権利書を渡し、今からこの温泉の女将になれと言い渡した。 

 

梅花メイファは"私はルイス様と一緒に居たいのです。こんな温泉は要りません"と抗議したが、ルイスは聞かなかった。 

 

ルイス:俺は今から渓谷村ケイコクソンへ行く。どうしても影蛇イン・イェンシェを見つけて処分せねばならん。 

 

梅花メイファ:お殿様が時々、此処を訪ねてくれると約束してくれたら私は此処でお殿様をお待ちします。 

 

ルイス:時々は飛行機で来よう。飛行機を使えば何処からでもあっという間に来ることが出来る。 

 

梅花メイファ:そうでございましたね。彼らが残した財産のうちからいくらか費やして滑走路を作ります。 

 

ルイスは梅花メイファに自分の小遣いの中から5,000両の小切手を渡し、"これで滑走路を作れ。残ったらお前の小遣いにせよ"と言い残してその場を立ち去った。 

 

ルイスは「馬建国マー・ジェンゴ」夫妻を引き連れて、馬車に乗り、一路「徳昌デーチャン」を目指した。徳昌デーチャンからは霊関道も通っているので、徳昌デーチャン会理フイリ攀枝花パンジーファと進むのも比較的楽である。 

 

徳昌デーチャン会理フイリでそれぞれ一泊し、11月6日水曜日の午後2時に攀枝花パンジーファの「龍の息吹炭田」に到着した。 

 

炭田の責任者に「馬建国マー・ジェンゴ」を引き渡し、"5年間、此奴を遠慮なくこき使え。5年経ったら釈放しても構わん"と告げた。 

 

炭田の責任者:お殿様、ここの炭田の一年間の見積もりを上げてもよろしいですか? 

 

ルイス:おう。そうか。見積もりは未だ誰も上げてなかったんだな。良し、説明しろ。 

 

炭田の責任者:新規鉄鉱山発掘に必要な工具類の諸費用の見積もり表です。以下にその内容を示します。

 

 

この見積もり表は、各工具の単価と必要個数、それに基づいた合計金額を銀錠で算出しています。合計諸費用は170,500両となっています。

 

炭田の責任者:トロッコと道路建設の見積もり表です。以下にその内容を示します。

 

 

合計の見積もり費用は14,000両となっています。各項目には具体的な説明が付されており、トロッコと道路の建設に関わる全体的なコストが網羅されています。 

 

炭田の責任者:鉱山発掘プロジェクトの人件費等に関する見積もり表です。以下にその内容を示します。

 

 

この見積もり表では、馬や馬車、労働者や専門家の年俸、宿営地の設営と維持費、食料と水の供給、通信設備と事務用品など、鉱山発掘プロジェクトに関わるさまざまな費用が計算されており、合計金額は73,300両となっています。 

 

ルイス:大変良く出来ている。総合計は257,800両だな。 ルイスは257,800両の小切手を切り、彼に渡した。 

 

ルイスは彼に興味を持ち、名前を聞いた。 

 

炭鉱の責任者:私は李偉強リー・ウェイチャンと申します。34歳の独身者です。 

 

ルイス:そうか。お前にひとつ頼みたいことがある。 

 

李偉強リー・ウェイチャン:何でも仰って下さい。 

 

ルイス:お前に10万両渡しておくから、四川省西南大地震で家屋や田畑を失った村人用の仮宿舎を建設し、崩れ落ちた田畑の修理をしてやってくれ。 

 

李偉強リー・ウェイチャン:了解しました。 

 

☆11月6日水曜日の午後3時。攀枝花パンジーファの「龍の息吹炭田」 

劉美麗リウ・メイリー:旦那さん。今からどちらに行かれるのですか? 

 

ルイス:「馬建国マー・ジェンゴ」の引き渡しで大分時間を食ったが、 影蛇イン・イェンシェ「人身売買集団」たちを探しに行かなければ話が終わらない。手掛かりが残っているかどうか分からないが取り敢えず、奴らの元の隠れ家「渓谷村ケイコクソン」に行くしかあるまい。 

 

ルイス:劉美麗リウ・メイリーよ。心配するな。此処から少し馬を走らせれば、攀枝花パンジーファの飛行場へ着く。そこからは飛行機を使うから、「渓谷村ケイコクソン」まではあっという間に着くぞ。 

 

劉美麗リウ・メイリー:いや。そうではなくてですね。私はあの女の実家を知っているんですよ。 

 

ルイス:あの女ってのは誰のことを言っているんだ? 

 

劉美麗リウ・メイリー:うちの亭主が言っていたでしょう。首領の右腕「毒牙謝ドゥーガ・シエ(27歳)」って女ですよ。 

 

ルイスの目がキラリと光った。"此奴は何でこんな重要なことを俺に教える気になったんだ。罠かも知れんな。気をつけないとな"

 

ルイス:ふーん。その女の実家っていうのは何処なんだ? 

 

劉美麗リウ・メイリー会理フイリですよ。 

 

ルイス:会理フイリでは確か一泊したな。西南大地震の震源地だから宿屋も潰れてしまっているかと思ったが一軒だけ無事な宿屋があった。 

 

ルイス:その時言えば良いものを。何で今頃言うんだ? 

 

劉美麗リウ・メイリー:私の気持ちも考えて下さいよ。何不自由ない温泉宿の女将の環境から急に現れたいかつい男に人質にされたんですよ。おいそれと喋れるわけがありません。 

 

ルイス:ふーん。2,3日一緒に過ごしたから気を許すようになったってわけか。 

 

劉美麗リウ・メイリー:私もたったそれだけで相手に気を許すほど安っぽい女じゃありません。 

 

劉美麗リウ・メイリー:ただね。会理フイリの宿で旅人の女性たちや地元の人達に聞いたんですよ。 

 

劉美麗リウ・メイリー:貴方が余震の続く中、攀枝花パンジーファから唯一人駆けつけて、被災者の救済に当たっていたってね。 

 

ルイスは彼女の気持ちを知り、気恥ずかしかったが一面この女も見捨てたものではないなと思った。 

 

ルイス:それで「毒牙謝ドゥーガ・シエ(27歳)」って女の実家は会理フイリの何処なんだ? 

 

劉美麗リウ・メイリー:私が案内しますよ。山の中ですからね。飛行機じゃ直接は行けません。 

 

ルイス:震源地は山の中だったからな。ひょっとすると震源地の近くかも知れんな。 

 

☆ルイスと温泉旅館の女将「劉美麗リウ・メイリー」の旅 

ルイスと劉美麗リウ・メイリーは、龍の息吹炭田の広大な敷地を後にし、攀枝花の飛行場へと向かった。二人は風に乗り馬の背を駆け、周囲の風景がぼんやりと過ぎ去る中、小さな飛行場に到着した。そこで、彼らは次なる旅路のために飛行機に乗り込んだ。 

 

飛行機は青空へと上昇し、劉美麗リウ・メイリーは窓の外に広がる壮大な景色に心奪われた。彼女にとってこれは初めての飛行機の旅で、内心では大きな興奮と喜びで満たされていた。彼女の瞳は、高度を増すごとに変わる雲の形や地上の風景にくぎ付けになった。 

 

飛行機が会理の街に降り立つと、ふたりは再び馬に乗り換え、螺髻山脈の南方にある集落を目指した。山々の間を縫うように進む馬の背は、彼らを目的の集落へと確実に導いて行った。劉美麗リウ・メイリーは馬の背に揺られながらも、彼女を案内するルイスに感謝の気持ちを抱きつつ、周囲の自然美に心を奪われていた。 

 

この旅は、ただ単に場所から場所への移動以上のものだった。それは、劉美麗にとって新たな体験と冒険の連続であり、彼女の人生に新たな色を加える体験だった。空から 見る地上の景観、馬の背から感じる自然の息吹、そしてルイスとの共有する時間は、彼女にとってかけがえのない思い出となった。 

 

高く青い空の下、彼らの周りは美しい風景に満ち溢れていた。山々は遠く連なり、その深い緑は眼下に広がる地平線へと続いていった。飛行機の窓から見える景色は、まるで絵画のように美しく、劉美麗リウ・メイリーの心を躍らせた。彼女の心は、高揚感とともに自由を感じていた。 

 

そして、彼らが目的の集落に近づくにつれ、劉美麗は自然の中での生活、そこに息づく文化と歴史に思いを馳せた。彼女は、この旅がただの移動ではなく、人生の新たな章の始まりであることを感じ取っていた。 

 

ルイスとの旅は、劉美麗リウ・メイリーにとってただの冒険ではなく、人生の一部となり、彼女の記憶に永遠に刻まれるだろう。二人は、新しい経験を共有し、未知なる場所への好奇心を満たすために、一緒に前進していった。 

 

ついにルイスたちは会理にある毒牙謝ドゥーガ・シエの実家を訪れた。彼女の故郷は螺髻山脈の南方に位置し、山々に囲まれた静かな村だった。しかし、その平和は西南大地震により一変した。彼女の実家は地震の猛威に耐えられず倒壊し、家族はその残骸を整理していた。 

 

ルイスたちは、この悲しい現場に到着し、すぐに毒牙謝とその家族を手伝い始めた。彼らの助力により、倒壊した家屋の残骸は徐々に片付けられ、散乱した瓦礫は整理されていった。 

 

その後、李偉強リー・ウェイチャンの部下たちが到着し、彼らの手によって、毒牙謝の実家だけでなく、他の村人の家屋も再建された。彼らの迅速な作業により、かつての災害の痕跡は次第に消え、新しい家々が村の風景に姿を現した。 

 

村は再び生活の息吹を取り戻し始め、地震によってもたらされた悲しみと破壊の中から、希望の芽が芽生えた。ルイスたちの行動は、ただの援助を超えて、村人たちにとって心の支えとなり、絆を深める機会となったのである。 

 

☆首領の右腕「毒牙謝ドゥーガ・シエ(27歳)」 

毒牙謝ドゥーガ・シエは見知らぬ若い男「ルイス」と一緒に温泉旅館の女将「劉美麗リウ・メイリー」が現れた時、すべてを悟った。「ついに追手が現れたか。しかし、この状況で私一人家族を置いて逃げるわけにも行かない」と彼女は覚悟を決めた。 

 

彼らの協力で倒壊した家屋はすべて元通りになった。季節はすでに11月の終わりを告げていた。若い男が「毒牙謝ドゥーガ・シエ(27歳)」の母親と一緒に彼女の部屋を訪れた。 

 

彼女はこう告げた。「お母さん。この若い人とふたりだけで話したいことがあるの。ふたりだけにして頂戴」

 

今回はここまでにいたしましょう。次回をお楽しみに。

 

後書き

第13話は、ルイスと劉美麗リウ・メイリーの旅と、影蛇イン・イェンシェ「人身売買集団」首領の右腕「毒牙謝ドゥーガ・シエ(27歳)」の家族の再建を中心に展開します。西欧列強との戦いを背景に、人身売買集団の暗躍を描いたこの物語は、歴史的背景と登場人物たちの深い人間関係を融合させています。ルイスの冒険心とリーダーシップが際立ち、彼の行動が物語に緊張感とドラマをもたらしています。この物語を通じて、当時の中国の社会的、政治的状況を理解し、登場人物たちの感情に共感して頂ければ幸いです。