小説「海と陸の彼方へ」

 

第七章西欧列強との戦い

 

第2話怒江流域の防衛「モーラミャインの戦い②」

 

前書き

1935年9月12日、ルイスと彼の仲間たちは、イギリス艦隊との激しい戦いを経験した。サルウィン川河口での戦いでは、ルイスが独自の戦略でイギリス艦隊を足止めし、重要な勝利を収めた。彼は敵艦隊の提督ジョン・エドワード・ハリントンと、奴隷にされていたミャンマー人の若者ティン・ミン・オーを捕らえた。このエピソードでは、ルイスがこれらの新しい囚人とどのように向き合い、彼らを自らの目的に利用するかが描かれる。

 

本文

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登場人物「1935年1月1日時点」 

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ルイス18歳:イタリア系のアメリカ移民。長征途中の中国共産党紅軍の首領毛沢東を捕縛した功績を認められ、中国国民党総統の蒋介石より、巴蜀・雲南の軍政長官を委嘱される。旅の途中で四川省南充の石油王から巴蜀・雲南王に推戴される。と言っても、元清朝の王女:王華ワン・ファが認めただけである。この物語の主人公。中国制覇の大望を抱く。 

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ルイスの資金 小遣い177,259両。金塊50トン。銀錠200億両「内訳は一般会計20億両、特別会計30億両。余剰金150億両」。今までに一般会計は20億両の予算のうち506万5千両支出した。特別会計は30億両の予算を組み、今までに12億240万両支出した。 

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ルイスの妻:エリザベス・ハーレイ。ジョン・ハーレイ(40歳)「ブリタニア号の船長」の元妻。 年齢: 38歳 

背景: イギリスの中流家庭出身。元夫の仕事を支えるために、度々海を渡る。 

性格: 温和で思慮深く、家族を深く愛する。元夫と同様に最初はルイスに不信感を抱いていたが、彼の真摯な態度に心を動かされ、夫と別れてルイスと結婚する。 

義理の息子:ウィリアム・ハーレイ。軽戦車隊「8台」隊長。「趙麗チャオ・リー」26歳の夫。 

年齢: 16歳 

背景: 船長の息子として海上生活に慣れ親しんでいる。航海術に興味を持ち、父から学んでいる。 性格: 好奇心旺盛で活発。ルイスの冒険的な精神に魅了され、彼を尊敬するようになる。 

義理の娘:エマ・ハーレイ 

年齢: 14歳 

背景: 船長の娘として幼少期から多くの国を訪れている。異文化に対する興味が強い。 性格: 社交的で好奇心が強く、新しい環境にすぐに適応する。ルイスの持つ異文化への敬意と好奇心に共感を覚える。 

趙麗チャオ・リー」26歳:ウィリアム・ハーレイの妻。建設大臣。元昆明軍閥の一員。彼女は軍閥の中で情報の収集と分析を担当し、一味が行動を起こす前に必要な情報を提供していた。 

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ルイスには他にも妻「側室」がいる。王華ワン・ファ(45歳)、李芳蓉リー・ファンロン(37歳)、劉芸芸リウ・ユェンユェン(38歳)、陳明花チェン・ミンファ(38歳)、クロエ・デュモン(23歳)、劉秋リュウ・チウ(39歳)、劉穎リウ・イン(33歳)の7名である。別途にイスラム妻が3名「ナディア、サリマ、王光美」いる。 

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ルイスの部下。 

1.周恩来ジョウ・エンライ(37歳)。ルイスの参謀。江蘇省出身。 ・穏やかで知的な性格をしており、どんな状況でも冷静さを失わない。 

・話し方には礼儀があり、分析的で思慮深い。 

・組織的な思考を持ち、リーダーシップを取れる。 

・他者に対しては理解深く、共感を示すことができる。

 2.ナディア・アミール・アル・サン(42歳)。ルイスの第一夫人「政治担当」。上海出身。 

・自立心が強く、決断力がある女性。 

・社会的な問題に対して意識が高く、積極的に意見を表明する。 

・優雅で洗練された振る舞いを持ち、周囲に対しても敬意を払う。 

3.サリマ・ファイサル・アル・ハウ(25歳)。ルイスの第二夫人「会計担当」。江西省出身。 

・勇敢で情熱的な性格。自分の信念に強く固執する。 

・感情が豊かで、時に感情的になりやすい。 

・直感に頼ることが多く、行動的で果敢な面がある。 

4.王光美ワン・グアンメイ(14歳)。ルイスの第三夫人「軍隊担当」。山東省出身。 

・年の割には成熟しており、好奇心が強い。 

・柔軟な思考を持ち、新しい環境にも早く適応する。 

・人懐っこく、周りの人々との交流を楽しむが、時には頑固な一面も。 

5.テンパ・ティンリー(24歳)。航空長官「改良DC-2 :1,000機」パイロット。チャン・ユン(42歳)の長男。チャン・ユン(42歳)は摩梭モソ族:落水下村出身。 

6.陳浩然チェン・ハオラン(33歳)。諜報長官。年間経費10万両。部下100名。

7.李麗リー・リー40歳。側女兼農林大臣。年間経費1億両。怒族族長の元妻。果科村の手工芸品作家。

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 紅軍の長征  

中国地図 出典 建築資料研究社「住まいの民族建築学」浅川滋男著 P8     出典:朝日出版社「西南シルクロード紀行」宍戸茂著。挿絵。

出典:朝日出版社「西南シルクロード紀行」宍戸茂著。挿絵。

 

☆1935年9月12日木曜日の午後9時。ドルギュン島沖
ルイスは銀のパゴタの飛行場から飛び立ち、東岸のモーラミャイン「サルウィン川河口の沿岸都市」へ向かった。ルイスの勘はずばり当たった。イギリス艦隊はすでにドルギュン島を出発し、モーラミャインに向かっていたのである。ルイスは上空からイギリス艦隊を眺めた。艦隊は15艦あり、魚鱗型に配置されていた。

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魚鱗型
中心が前方に張り出し両翼が後退した陣形。「△」の形に兵を配する。底辺の中心に大将を配置して、そちらを後ろ側として敵に対する。今回のイギリス艦隊は後ろから見ると、5,4,3,2,1と凸型に配置され、最後尾の中央に旗艦がいる。
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ルイスはすぐに追いつき、高度300メートルの地点から旗艦に向けて、蜂雷爆弾「Hōrai Bomb」を投下した。高度5メートルに達したら爆発するように設定してある。不発の場合に備えて2発連続で投下した。

祈るような気持ちで投下したが、幸いにして2番目の蜂雷爆弾が旗艦の頭上で爆発してくれた。この爆弾の効果範囲は約200メートルあり、イギリス艦隊の全艦を巻き込み、航行不能に追い込んだ。いわゆる分割爆弾である。広範囲をカバーし、艦隊の複数の船舶を同時に攻撃可能ということが確認できた。

沈没寸前の旗艦から大型のボートが出てきた。おそらく艦長以下の幹部連中が乗っているであろう。他の艦からも続々と大型ボートが出てくる。ルイスは旗艦から出てきた大型ボートにのみ目を付けた。

飛行機で大型ボートの前を旋回し、催涙弾を手投げしたのである。催涙弾も当たり、大型ボートの中の兵隊は大混乱に陥った。時間も夜10時近くになっており、視界が開けないのだ。

悠々と飛行機をドルギュン島沖に停めたルイスは小型ボートに飛び乗り、旗艦から出てきた大型ボートに飛び乗った。気がついた船員たちは何人かルイスに飛びかかってきたが、白兵戦ではルイスに敵う者は誰もいない。

ルイスは艦長を拘束し、艦長の喉首に拳銃を突きつけた。ルイスの勝利である。ルイスは艦長と奴隷にされていたミャンマー人の若い男ひとりを連れてボートに乗り、飛行機に戻った。

☆翌9月13日金曜日の午前5時。ビルギュン島、イワン・アレクセーエフ邸
ルイスがふたりを連れて帰ると、イワン・アレクセーエフが待ち受けていた。

イワン:ルイスさん。何処へ行っていたのですか?その二人の男は何者ですか?

ルイスはふたりに名を名乗るよう命令した。

イギリス艦隊の艦長:私はイギリス艦隊の提督ジョン・エドワード・ハリントン(42歳)だ。

若いミャンマー人:私はティン・ミン・オー(24歳)です。彼らに拘束され奴隷にされていました。

ルイス:ミャンマーはイギリスの植民地になって久しい。何故お前だけ奴隷にされるのだ。

ティン・ミン・オー:私はミャンマーの抗英運動のリーダーでした。彼らに従わぬ私が気に入らないのでしょう。

ルイスの目がキラリと光った。

ルイス:良し。ティン・ミン・オーよ。お前を俺の部下にしてやろう。

ティン・ミン・オー:貴方は西欧の人でしょう。どうしてイギリス艦隊を敵に回すのですか?

ルイス:君の疑問はもっともだ。

ルイスは彼に今までの経緯(いきさつ)を説明した。

ティン・ミン・オー:ルイス雲南王。私は貴方を信用します。力を併せてイギリスを追い払いましょう。

そこにイワン・アレクセーエフが横合いから口を挟んできた。

"麗しい話はそれくらいにしよう。それよりも私にイギリス艦隊の提督ジョン・エドワード・ハリントンを譲ってくれないかね。金はルイスくんの言い値で払うよ"

ルイスはにべもなく断り、こう言った。

"イワン。お前から購入した蜂雷爆弾「Hōrai Bomb」だが2発投下したうちの1発しか爆発しなかったぞ。危うく俺は死ぬところだった。どう償いを付けるつもりだ"

イワン・アレクセーエフはルイスに2発投下したうちの1発が不発だったことを指摘され、しどろもどろの言い訳をし始めた。ルイスは馬鹿らしくなり、"もう良いから早く朝食の準備をしろ"と指示した。

ルイスたちが話をしていると、彝麗華(イー・リーホァ)と子供たち、彝美玲(イー・メイリン)、彝明進(イー・ミンジン)が起きてきた。

彝明進(イー・ミンジン):あ!人が増えている。ルイスさん。この人たちはどうしたの?

彝美玲(イー・メイリン):私はこの渋い男の人が好みよ。だって如何にもイギリス紳士って感じがするじゃない。私はお母さんのように年下好みじゃないからね。

彝麗華(イー・リーホァ)は飛行機の中でルイスとキスをしているところを娘に見られ、娘に頭が上がらなくなっていた。ルイスも"やはり、あの時見られていたんだな。ちょっと気まずいけど別に悪いことをしていたわけじゃないからこいつは無視しておこう"と腹を決めた。

ルイス:彝美玲(イー・メイリン)。お前もつまらんことを言ってないで朝食の準備を手伝え。

彝美玲(イー・メイリン)はルイスにアカンベーをして出て行った。

朝の光がビルギュン島のイワン・アレクセーエフの邸宅を優しく照らす中、ルイスと彼の仲間たちは、ミャンマー料理の朝食の準備に取り掛かっていた。彝麗華(イー・リーホァ)と彼女の娘、彝美玲(イー・メイリン)も料理の準備を手伝っていた。

彝麗華と彝美玲は、キッチンで忙しく動き回っている。彼女たちは、前日の夕食で味わったミャンマー料理の技法を学び、その知識を活かして朝食を作ろうとしていた。彝麗華は、モヒンガーというミャンマーの伝統的な魚介ベースのスープを丁寧に仕上げている。一方、彝美玲は、オノ・カウスエというココナッツミルクを使ったカレーヌードルを作っていた。

キッチンは、スパイスの香りと調理する音で満たされていた。彼女たちは、レシピを覚えることに一生懸命で、ときおりイワンの料理人に助けを求めながら、一生懸命に料理を作っていた。

食卓には、モヒンガーやオノ・カウスエの他に、フレッシュなフルーツ、バスマティ米、そして新鮮な野菜のサラダが並んでいた。ルイスと彼の仲間たちは、彝麗華と彝美玲が作った料理に舌鼓を打ちながら、新しい一日の始まりを楽しんでいた。

食事の最中、彝麗華と彝美玲は、自分たちが作った料理がどのように受け入れられるかを見守っていた。ルイスは、彼女たちの努力を称賛し、彼女たちの料理技術の向上に関心を示していた。

この朝食は、彼らにとって新たな文化への挑戦であり、ミャンマーの味を通じて新たな経験をする機会となっていた。彝麗華と彝美玲の料理への情熱と努力は、ルイスたちにとって特別な朝食を創り出す要因となっていた。

☆久しぶりの休日
ルイスにとってはまさに激動の4ヶ月「アメリカを出てから今まで」が経過した。何かに追われるがごとくに夢中で日々を送っていたルイスであったが、イギリスが怒江流域に攻め込んでくるまで何とか数ヶ月の猶予を得ることが出来た。ルイスは今日一日だけのんびり過ごそうと決心した。

だが、捕虜や人質たちを放置するわけにはいかない。ルイスは人質たち全員に声を掛けた。"皆で一緒にビルギュン島をオートバイクで回ろうじゃないか"

しかし、ルイスと一緒に行こうと言ったのは彝麗華(イー・リーホァ)と彼女の娘、彝美玲(イー・メイリン)だけであった。ルイスはイワン・アレクセーエフに頼み、3人乗りのオートバイクを用意してもらった。

「彝美玲(イー・メイリン)」が"こんなダサいバイクには乗りたくない。二人乗りのバイクに乗りたい"と騒ぎ出した。「彝明進(イー・ミンジン)」に"お前はオートバイクに乗れるか?"と聞くと、"ルイスさん。乗り方を今教えてよ。僕はこういうのは得意なんだ。教えてくれたらすぐに乗れるよ"という。

ルイスはイワンの家にあるだだっ広い中庭で彼に教えてやる気になった。「彝美玲(イー・メイリン)」も"私にも教えてよ"というのでふたりに手取り足取り教えた。

その結果は、"「彝明進(イー・ミンジン)」は合格。「彝美玲(イー・メイリン)」は不合格"とした。

ルイスはティン・ミン・オーにジョン・エドワード・ハリントンの監視を頼み、4人で出かけた。ルイスの後ろには「彝美玲(イー・メイリン)」、「彝明進(イー・ミンジン)」の後ろには「彝麗華(イー・リーホァ)」が乗った。

彝美玲(イー・メイリン)が"お母さん。今度はルイスとキス出来ないね"と「彝麗華(イー・リーホァ)」に向かって叫ぶ。やりづらい娘だ。

☆ビルギュン島の湖到着
何という名前の湖かは分からないが、ルイスと「彝美玲(イー・メイリン)」が先に綺麗な湖に到着した。「彝明進(イー・ミンジン)」と「彝麗華(イー・リーホァ)」を待つため、ルイスたちはこの湖で少し休憩することにした。静寂と平和の雰囲気を湛えたミャンマーのビルギュン島の景観が広がっている。前景には穏やかな湖が広がり、その鏡面のような水面には空と周囲の風景が反射している。湖の対岸には緑濃い樹木が密集しており、熱帯の植生が豊かであることが分かる。

水面に映る影の中央には、金色に輝く仏塔が位置しており、その美しい姿が水面にも鮮明に映し出されている。仏塔は伝統的なミャンマーの建築様式を呈している。その先端は天に向かって尖っており、その形状は仏教のシンボリズムを象徴しているようだ。

上部には広がる青空が見え、雲がゆったりとした形で空に浮かんでいる。この景観はミャンマーの文化的な重要性と自然の美しさを結びつけた、穏やかで調和の取れた印象を与えている。

彝美玲(イー・メイリン)が"ルイスさん。お母さんたちが来るまで少し泳いでも良い?"と聞く。"水着は持っているのか?"とルイスが聞くと、"水着なんか要らないわ"と言い、ザブンと飛び込む。青いタンクトップとデニムのショートパンツを脱ぐと、純白のマイクロビキニのブラとショーツだけである。

ルイスも来ていた白のシャツとグレイのデニムのショートパンツを脱ぎ捨て、ボクサーパンツだけの姿で湖に飛び込んだ。

"キャー。ルイスさん。助けて!!足が吊ってしまったわ!"と彝美玲(イー・メイリン)が金切り声を張り上げる。ルイスは大慌てで彼女のところへ泳ぎ着き、立ち泳ぎをしながら岸辺に彼女を救いあげた。

ルイスは「彝美玲(イー・メイリン)」の背中をどんどんと強く叩き、飲み込んだ水を吐かせる。引き続いて彼女の口にキスをしながら人工呼吸を行うこと約3分。彼女はやっと息を吹き返した。ルイスは彼女から離れようとするが、彼女は強くルイスに抱きついて離れようとしない。

ルイスはキスを繰り返しながら背中を撫でで、彼女を落ち着かせた。

彝美玲(イー・メイリン)はルイスに甘えながら"急に足が吊って溺れるかと思ったわ"と言う。ルイスは彼女の足をマッサージしながら"お前は実際溺れていたんだ。湖は海と違って水温が低いから急に飛び込むと筋肉が収縮するんだ。次からは準備運動してから飛び込むようにしろ"と指摘してやった。

彝美玲(イー・メイリン)は"でも、ルイスさんも同じように飛び込んだじゃないの。私のことは言えないわ"と言いながらルイスにキスをせがんでくる。ルイスも彼女の全身を撫でてやりながら、彼女のキスに応じてやった。

バリバリと大きな音を立てて後続のオートバイクが近寄ってきた。そのときにはふたりは服を着て身支度を終えていた。

彝麗華(イー・リーホァ)が"さあ。皆昼食にしましょう"と言い、湖の畔にシートを拡げて全員そこに座り、昼食が始まった。

☆湖畔での昼食
湖の岸辺には、緑豊かな草地が広がり、その上でルイスと彼の仲間たちは昼食を楽しんでいた。柔らかな日差しが木々の間を通り抜け、穏やかな風が湖面をなでるように吹き抜けていった。昼食は、地元の農家から仕入れた「新鮮な野菜と、湖で獲れた魚」を使ったシンプルながらも味わい深い料理だった。

彼らは、ミャンマーの風土が生み出した素朴な味わいに心を奪われながら、静かに食事を楽しんでいた。彝麗華(イー・リーホァ)と彝美玲(イー・メイリン)は、自然に囲まれた環境での食事に心から癒されているようだった。

昼食後、ルイスたちは湖面に映る美しい仏教寺院へと足を運んだ。寺院は湖に面して建てられており、湖面にその姿を映していた。金色の屋根と白い壁が陽光に輝き、その姿はまるで湖上に浮かぶ宝石のようだった。

寺院への道は、石畳で囲まれた小道で、その両側には色とりどりの花が咲き乱れていた。彼らが寺院に近づくにつれ、その壮大な建築と精緻な装飾が目に飛び込んできた。壁面には、仏教の教えを象徴する彫刻が施されており、静寂の中でその歴史を物語っていた。

寺院の中庭には、緑豊かな庭園が広がっており、そこには仏像や小さな池が設けられていた。ルイスたちは、その庭園をゆっくりと歩きながら、その美しさと静けさに心を落ち着かせていた。彼らは、仏教の寺院が放つ平和と調和の雰囲気に包まれながら、次なる行動に向けて心を整えていた。

☆天才少年
仏教寺院の静寂と平和な雰囲気から一転、ルイスたちはオートバイクでの帰路についていた。彼らのバイクは、その特殊な構造とデザインで、明らかに一般的なものとは一線を画していた。

道を進む彼らの前に、ミャンマーの田舎道に相応しくないような少年の姿が現れた。彼はマウン・ティン・ナイン、16歳の天才少年だった。少年の目は、ルイスたちが乗るバイクに釘付けになっていた。

「それは僕が作製したバイクだ」と、マウン・ティン・ナインがルイスに声をかけた。彼の声には自信と驚きが混じっていた。

ルイスは少し驚きながらも、バイクを停めて少年に近づいた。「本当か?このバイクは特注品だ。どうやって作ったんだ?」と彼は尋ねた。

マウン・ティン・ナインは、自分がイワンの依頼で特別に設計し、組み立てたことを説明した。彼は技術的な詳細を話し始め、その知識の深さと情熱に、ルイスは感心させられた。

ルイスは少年の話に興味を持ち、「君はどこに行くんだ?」と尋ねた。マウン・ティン・ナインは、イワンの屋敷に向かう途中であること、そして蜂雷爆弾の修理に行くことを明かした。

ルイスはこの天才少年の才能に魅了され、彼を自分の陣営に誘うことを決意した。マウン・ティン・ナインはルイスがイギリスと戦う同志であることを知り、新たな道を選ぶことにした。

「君の技術は、ここではなく、もっと大きな場所で活かせる。俺と一緒に来ないか?」ルイスが提案すると、マウン・ティン・ナインは一瞬の躊躇の後、彼の提案に同意した。

今回はここまでにいたしましょう。次回をお楽しみに。

 

後書き

本エピソードでは、ルイスと彼の仲間たちの心の休息を描きながら、新たなキャラクター、マウン・ティン・ナインとの重要な出会いが描かれています。美しい自然の中での寺院訪問や湖畔での昼食は、物語に静けさと調和の雰囲気をもたらしました。一方で、マウン・ティン・ナインとの出会いは、ルイスの陣営に新たな才能と可能性をもたらすことでしょう。物語は次のエピソードに向けて、新たな高みへと進む準備が整いました