小説「海と陸の彼方へ」

 

第六章ルイス中華の皇帝を目指す

 

第20話怒江流域の開発「片馬鎮の過去」

 

前書き

このエピソードでは、ルイスと怒族の族長「怒文龍(ヌー・ウェンロン)」の協力による勇敢な作戦が描かれます。彼らの目的は、彝族の族長の屋敷に潜入し、彼を捕らえること。しかし、彼らを待ち受けているのは圧倒的な敵の数と、予測不可能な困難です。このエピソードは、戦略と勇気が試される極限の状況を背景に、ルイスと怒文龍の絆とリーダーシップを描き出します。

 

本文

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登場人物「1935年1月1日時点」 

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ルイス18歳:イタリア系のアメリカ移民。長征途中の中国共産党紅軍の首領毛沢東を捕縛した功績を認められ、中国国民党総統の蒋介石より、巴蜀・雲南の軍政長官を委嘱される。旅の途中で四川省南充の石油王から巴蜀・雲南王に推戴される。と言っても、元清朝の王女:王華ワン・ファが認めただけである。この物語の主人公。中国制覇の大望を抱く。 

****** ルイスの資金 小遣い177,259両。金塊50トン。銀錠200億両「内訳は一般会計20億両、特別会計30億両。余剰金150億両」。今までに一般会計は20億両の予算のうち506万5千両支出した。特別会計は30億両の予算を組み、今までに12億240万両支出した。 

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ルイスの妻:エリザベス・ハーレイ。ジョン・ハーレイ(40歳)「ブリタニア号の船長」の元妻。 年齢: 38歳 

背景: イギリスの中流家庭出身。元夫の仕事を支えるために、度々海を渡る。 

性格: 温和で思慮深く、家族を深く愛する。元夫と同様に最初はルイスに不信感を抱いていたが、彼の真摯な態度に心を動かされ、夫と別れてルイスと結婚する。 

義理の息子:ウィリアム・ハーレイ。軽戦車隊「8台」隊長。「趙麗チャオ・リー」26歳の夫。 

年齢: 16歳 

背景: 船長の息子として海上生活に慣れ親しんでいる。航海術に興味を持ち、父から学んでいる。 性格: 好奇心旺盛で活発。ルイスの冒険的な精神に魅了され、彼を尊敬するようになる。 

義理の娘:エマ・ハーレイ 

年齢: 14歳 

背景: 船長の娘として幼少期から多くの国を訪れている。異文化に対する興味が強い。 性格: 社交的で好奇心が強く、新しい環境にすぐに適応する。ルイスの持つ異文化への敬意と好奇心に共感を覚える。 

趙麗チャオ・リー」26歳:ウィリアム・ハーレイの妻。建設大臣。元昆明軍閥の一員。彼女は軍閥の中で情報の収集と分析を担当し、一味が行動を起こす前に必要な情報を提供していた。 

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ルイスには他にも妻「側室」がいる。王華ワン・ファ(45歳)、李芳蓉リー・ファンロン(37歳)、劉芸芸リウ・ユェンユェン(38歳)、陳明花チェン・ミンファ(38歳)、クロエ・デュモン(23歳)、劉秋リュウ・チウ(39歳)、劉穎リウ・イン(33歳)の7名である。別途にイスラム妻が3名「ナディア、サリマ、王光美」いる。 

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ルイスの部下。 

1.周恩来ジョウ・エンライ(37歳)。ルイスの参謀。江蘇省出身。 ・穏やかで知的な性格をしており、どんな状況でも冷静さを失わない。 

・話し方には礼儀があり、分析的で思慮深い。 

・組織的な思考を持ち、リーダーシップを取れる。 

・他者に対しては理解深く、共感を示すことができる。

 2.ナディア・アミール・アル・サン(42歳)。ルイスの第一夫人「政治担当」。上海出身。 

・自立心が強く、決断力がある女性。 

・社会的な問題に対して意識が高く、積極的に意見を表明する。 

・優雅で洗練された振る舞いを持ち、周囲に対しても敬意を払う。 

3.サリマ・ファイサル・アル・ハウ(25歳)。ルイスの第二夫人「会計担当」。江西省出身。 

・勇敢で情熱的な性格。自分の信念に強く固執する。 

・感情が豊かで、時に感情的になりやすい。 

・直感に頼ることが多く、行動的で果敢な面がある。 

4.王光美ワン・グアンメイ(14歳)。ルイスの第三夫人「軍隊担当」。山東省出身。 

・年の割には成熟しており、好奇心が強い。 

・柔軟な思考を持ち、新しい環境にも早く適応する。 

・人懐っこく、周りの人々との交流を楽しむが、時には頑固な一面も。 

5.テンパ・ティンリー(24歳)。航空長官「改良DC-2 :1,000機」パイロット。チャン・ユン(42歳)の長男。チャン・ユン(42歳)は摩梭モソ族:落水下村出身。 

6.陳浩然チェン・ハオラン(33歳)。諜報長官。年間経費10万両。部下100名。

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 紅軍の長征  

中国地図 出典 建築資料研究社「住まいの民族建築学」浅川滋男著 P8     出典:朝日出版社「西南シルクロード紀行」宍戸茂著。挿絵。

出典:朝日出版社「西南シルクロード紀行」宍戸茂著。挿絵。

 

☆9月11日水曜日午前5時:山賊のアジト
ルイスは昨夜の出来事をじっくり考えて結論を出した。ふたりを呼び、言い渡した。側女(そばめ)兼通訳、李麗(リー・リー)40歳を側女(そばめ)兼農林大臣とし、農林省の経費として銀錠1億両を与える。年俸及び賞与は据え置きとする。芳蘭(ホウラン)32歳については本人の希望があれば、側女(そばめ)兼通訳とし、年俸と賞与を併せて200両支給する。

ルイス:今朝の朝食はふたりで準備せよ。臥所については毎日交互に務めよ。今宵は李麗(リー・リー)とする。

李麗(リー・リー)、芳蘭(ホウラン):お殿様の命令に従います。

山賊のアジトでは、朝の光が薄暗い室内を柔らかく照らし始める頃、李麗(リー・リー)と芳蘭(ホウラン)は静かに朝食の準備を始めた。李麗の任命によって、彼女たちの間の緊張は一時的に和らいでいたが、それぞれの心中には複雑な思いが渦巻いていた。

李麗は、農林大臣という新たな役割を与えられたことに対し、深い責任感とともに、ルイスへの忠誠心を新たに感じていた。彼女は、朝食の準備に精を出しながら、これからの職務について思案に耽っていた。

一方、芳蘭は、自分の立場が不安定であることを感じつつも、ルイスから与えられた任務に対して一定の満足感を抱いていた。彼女は、李麗と協力して朝食を準備する中で、自分の新しい役割をどのように果たしていくかを考えていた。

朝食のメニューは、ルイスの好みに合わせた質素ながら栄養豊富なものが選ばれていた。温かい粥、新鮮な野菜、少量の肉、そして香り高い茶がテーブルに並べられた。李麗と芳蘭は、食事の準備を通じて、お互いの存在を認め合いつつ、微妙なバランスを保っていた。

ルイスが席につくと、二人はそれぞれの役割に従い、彼に朝食を真心を込めて食べさせた。ルイスは李麗の新しい地位を認め、芳蘭の存在を受け入れつつ、自分の支配下にあるこの小さなコミュニティを統率していく決意を新たにしていた。

この朝食の時間は、彼らにとって新たな関係性の始まりを象徴しており、それぞれが自分の立場を再認識しつつ、未来への不確かさと期待を胸に秘めていた。

午前6時。ルイスたちは捕らえた山賊たち5名を連れて、片馬鎮の前鎮長であり怒族の族長でもある「怒文龍(ヌー・ウェンロン)」(35歳)邸へと急いだ。

☆片馬鎮の風景
1935年の中国の山村の穏やかで素朴な風景が浮かび上がります。初早の朝日がテラス状の田畑に金色の光を投げかけ、収穫の準備ができた作物の豊かな緑が鮮やかです。茅葺きの小屋が風景に点在し、その煙突からは怠惰に煙が立ち上ります。壮大な山々が背景にそびえ、その頂は霧に隠れています。村人たちは日々の仕事を始め、ある人は畑を耕しながら、他の人は狭い土道を籠を携えて歩きます。伝統的な衣装がその時代を象徴し、男性はシンプルなチュニック、女性は巻きスカートを身にまとっています。時間を超越した自然との調和と平和が感じられます。

朝7時の静けさが漂う中、ルイスを先頭に、捕らえられた山賊たち5名を伴った一団が、怒族の族長であり、片馬鎮の前鎮長「怒文龍」の邸宅へと急いでいます。夜が明けゆく空の下、村のシルエットが日の出に浮かび上がり、段々畑と茅葺きの小屋が静まり返っています。この緊急を要する一団とは対照的に、風景は夜明けの柔らかな光に包まれ、朝霧が神秘的な雰囲気を漂わせています。伝統的な中国の衣装を身にまとった彼らは、速やかに進んでいます。この情景は、歴史的な中国の山村の生活の緊張と活動を生き生きと表しています。

片馬鎮の前鎮長「怒文龍」の邸宅
朝7時30分、片馬鎮の静けさは、怒族の族長である「怒文龍(ヌー・ウェンロン)」の邸宅にも包まれていた。彼の家は、部族の伝統と現代性が見事に融合された、威厳と温かみを兼ね備えた建築物である。広々とした庭には、季節の花々が咲き誇り、小川のせせらぎが心地よい音色を奏でている。

家の中では、怒文龍一家が朝食を取っていた。部屋は家族の笑顔と会話で満ちており、温かい家庭の雰囲気が漂っている。怒文龍自身は、35歳にして部族の長としての重厚な風格と、思慮深い表情が印象的だ。彼の横には、妻の「怒秀蘭(ヌー・シュウラン)」が座っている。彼女は32歳で、教育に情熱を注ぎ、子供たちに民族の文化を伝える母親である。その傍らで、長男「怒建國(ヌー・ジェンゴォ)」と次男「怒智勇(ヌー・ジーヨン)」、そして長女「怒小美(ヌー・シャオメイ)」が、それぞれの個性を活かしながら朝食を楽しんでいる。

怒建國は、10歳にして好奇心旺盛で、父親から伝統的な狩猟技術や自然の知識を学んでいる。一方、8歳の怒智勇は、民族楽器の演奏に才能を発揮している。そして5歳の怒小美は、その明るく社交的な性格で、家族の中でも特に活発に振る舞っている。

この朝、ルイスたち一団が怒文龍の邸宅に到着した際、一家は驚きつつも、温かい歓迎の気持ちを示した。怒文龍は、部族の長としての責任感を持ちながらも、ゲストに対する敬意と親しみを忘れず、彼らを家族の中に迎え入れた。朝食のテーブルは追加の席が準備され、新たなゲストのための食事も手早く用意された。一家は、来訪者に対するおもてなしの心を持ち、部族の文化と伝統を尊重する家庭の姿を見せた。朝の光が窓から差し込む中、一家は新たな訪問者を迎える準備を整えた。

朝食が終わって一息ついたルイスたちに族長の美しい妻「怒秀蘭(ヌー・シュウラン)」から素晴らしいプレゼントがひとりひとりに贈られた。それは怒族の人々が伝統行事を行うことに着る大変珍しくも貴重な民族衣装であった。

ルイスとその仲間たちは、怒族の族長「怒文龍(ヌー・ウェンロン)」の家族から贈られた民族衣装を目の前にして、驚きと感激の表情を浮かべた。これらの衣装は、怒族の独特な文化と伝統の深さを物語るもので、彼らにとってはただの衣類以上の意味を持っていた。

ルイスは、手に取った衣装の繊細な刺繍と色鮮やかなデザインに目を奪われ、怒族の伝統的な職人技に深い敬意を表した。彼は、この衣装が怒族の歴史と文化の一部であることを理解し、それを身に纏うことの特別な意味を感じ取っていた。

彼の仲間たちも同様に、民族衣装の美しさとその背景にある物語に心を動かされた。彼らはこの贈り物を通じて、怒族の人々との間に生まれた絆を実感し、深い感謝の気持ちを表現した。

特に怒秀蘭(ヌー・シュウラン)が選んだ衣装は、彼女の繊細な感性と彼らへの深い思いやりを反映していた。ルイスは、彼女の選んだ衣装を手に取り、彼女の心遣いに深く感動し、言葉にならないほどの感謝を感じた。

彼らは、これらの衣装を身に着けることで、怒族の一員としての誇りと、文化への尊敬の念を内に秘め、今後の旅路においてもその精神を大切にすることを誓った。この瞬間は、異文化間の理解と尊重が生まれる貴重な瞬間であり、ルイスたちはこの経験を一生の思い出として心に刻んだ。

この特別な瞬間に、ルイスは怒文龍とその家族へのお礼として、吟味を重ねた贈り物を用意していた。彼は、彼らにとっての価値を理解し、彼らの生活に豊かな彩りを添えることを願っていた。

ルイスはまず、族長の怒文龍に向けて、高品質で知られる「パーカー・デュオフォールド」の万年筆と、護身用の「コルト M1911」拳銃と弾丸500発を手渡した。怒文龍は、これらの贈り物を受け取り、彼らの洗練された選択に深い感銘を受けた。特に拳銃は、彼の責任感と部族の守護者としての役割を象徴していた。

次に、怒秀蘭には、カルティエのダイヤモンドの首飾り、オメガの腕時計、エルザ・スキャパレリのデザインした真っ赤なミニドレス、エルメスのブランドバッグ、フェラガモのハイヒールを贈った。怒秀蘭の目は、これらの贈り物に光り、彼女の顔には喜びと感謝が溢れていた。特にミニドレスは、彼女の美しさを際立たせるものであり、ルイスの洗練されたセンスを物語っていた。

長男の怒建國には、天文学への興味を支える小型望遠鏡を、次男の怒智勇には音楽的才能を育成するハーモニカを贈り、彼らの目は輝きに満ちていた。長女の怒小美には、アメリカ製の可愛らしい人形とぬいぐるみを贈り、彼女の無邪気な喜びと興奮が部屋いっぱいに広がった。

これらの贈り物を通じて、ルイスたちと怒族の家族との間に、言葉を超えた深い絆が生まれた。異文化間の尊重と理解が花開くこの瞬間は、彼らにとって忘れられない記憶となり、今後の旅においてもその精神を引き継いでいくこととなった。

☆ルイスと族長の妻「怒秀蘭(ヌー・シュウラン)」
怒秀蘭(ヌー・シュウラン)はルイスから贈られた真っ赤なミニドレスが気に入り、自室に入り着替えてみた。ルイスはインナーも丹念に選んでくれており、それは純白のマイクロビキニのトップスとショーツであった。

怒秀蘭(ヌー・シュウラン)は鏡台の前に立ち、前から後から自分の姿を確認した。そこには普段の彼女とは思えないような艶やかなエキゾチックにも思える美女が立っていた。しかし、怒秀蘭(ヌー・シュウラン)はこの格好で人前に出ることに躊躇を覚えた。あまりにも大胆ではないかと思ったのである。

彼女はルイスがアメリカから来た移民だと言っていたのを思い出し、"アメリカではこのあられもない姿が普通なのだろうか?この姿で人前に出ても変に思われないだろうか?"と確認したくなった。

侍女を呼び、"ルイスさんを此処に来てもらいなさい"と指示し、自分は鏡台の前で待っていた。しばらくして彼女の前にやってきたルイスは口を極めて「怒秀蘭(ヌー・シュウラン)」を褒めそやした。ルイスは"貴女は怒江流域一番の美人です。その真っ赤なドレスが本当に良く似合います"と「怒秀蘭(ヌー・シュウラン)」の臆する気持ちを励まし、後ろから優しく「怒秀蘭(ヌー・シュウラン)」を抱擁した。

あまりに自然なルイスの態度に彼女はルイスの抱擁を黙って受け入れた。彼女は次にルイスがどうするかということも分かっていた。ルイスは当然のように、彼女にキスし、彼女も舌をまっすぐルイスの口の中に差し入れ、ルイスが舌を吸うのを受け入れた。

「怒秀蘭(ヌー・シュウラン)」は心の何処かでルイスを受け入れ、欲していたのかも知れない。家族の手前もあり、それ以上先には進まなかったが、「怒秀蘭(ヌー・シュウラン)」はここでルイスに重大な事実を告げた。

"貴方が一緒に連れてきた芳蘭(ホウラン)さんは私の小学校の同級生よ"

ルイス:それは本当ですか?

怒秀蘭(ヌー・シュウラン):本当よ。でも今から24年前に此処はイギリスに攻め取られてしまったの。彼女たち一家はイギリス人たちに連れ去られてしまったのよ。

ルイス:それは今初めて知りました。イギリスに領土を取られていたのですね。

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☆片馬事件
1911年に起こった片馬事件は、イギリスと清の間で発生した国境紛争です。この事件の背景には、当時の中緬「現在の中国とミャンマー」北部未定界地域に関する問題がありました。

事件の経緯は以下の通りです:

1910年11月下旬、イギリスはミジナ府に駐屯するホウツィ大佐を派遣し、1千余人の兵士を率いて2千余匹の弾薬と騾馬を運び、フロ大佐の指揮の下、シドンで待機した。イギリスの騰越領事ロウスもシドンに到着し、共に侵略計画を協議した。
1910年12月26日、イギリス側の先遣部隊が100余人、50余匹の馬を連れて弾薬や鋤、ハンマーなどを運びながら、恩メカイ江に沿ってトゥオジャオに到達し、トゥオジャオに食糧倉を建設し、道路を急ピッチで修理した後、片馬に向けて出発した。3日後、イギリス軍の主力部隊が2千余人、2千余匹の馬と道路修理工、馬使い400余名と共にトゥオジャオに到着し、エンイバ、パヤン、モジャオを経て小江を渡り、ドゥモ、ロンバン、グアンジャイ、シジャを通り、再び小江を渡って東に進んだ。
1911年1月4日、高黎貢山西麓の片馬に到着し、キャンプを設営して軍事占領を実施し、ユードン、ガンファンにも部隊を配備した。同時に、イギリス侵略軍は片馬の漢学堂を焼き払い、教師の姜光耀を追い払った。
この事件は、イギリスが中緬北部未定界地域における自国の利益を拡大しようとした結果、起こった紛争です。イギリス軍は片馬地区を占領し、その地域の住民や施設に対して搾取と破壊行為を行いました。この事件は、中国内陸部の世論に大きな衝撃を与え、抗英感情を一層高める結果となりました。また、後に建立された「片馬人民抗英記念碑」や「片馬抗英記念館」は、この歴史的事件を記念し、教訓を後世に伝えるための施設となっています。
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ふたりの語らいはそこまでで中途半端に終ってしまいました。ルイスは一番知りたかった側女(そばめ)の「芳蘭(ホウラン)」の過去を詳しく知ることが出来ず、怒秀蘭(ヌー・シュウラン)もルイスとの密会を楽しむことが出来なくなりました。

というのも、怒秀蘭(ヌー・シュウラン)の夫の「怒文龍(ヌー・ウェンロン)」が部屋に入ってきたからです。

怒文龍(ヌー・ウェンロン):ルイスさん。ここにいらっしゃったのですか?ちょうど良かった。お話を此処で伺いましょう。

"おい。ルイスさんにお茶と餅菓子を持ってきて差し上げなさい"

怒秀蘭(ヌー・シュウラン)さんは夫に命令され、その場を立ち去りましたが、内心夫に腹を立てていました。何故なら、夫の「怒文龍(ヌー・ウェンロン)」は妻の出で立ち「真っ白なマイクロビキニのトップスとショーツの上に真っ赤なミニドレスを着ている」に何の興味も示さなかったからです。

ルイス:私が此処を訪れたのは、片馬鎮の鎮長には怒族の族長である貴方がふさわしいと思ったからなのです。

ルイス:今の片馬鎮の鎮長は彝族「イ族」の族長がなっているそうですね。その前は貴方がその地位にお付きになっていたと聞いています。

ルイス:どうして、変更になったのですか?

怒文龍(ヌー・ウェンロン):武力に物を言わされたのです。多勢に無勢でどうにもなりませんでした。

ルイス:この家に彼らが攻めてきたということですね。

怒文龍(ヌー・ウェンロン):そうです。怒族は平和を尊ぶ部族です。護衛兵は50名ほどしか居りません。彼らはその10倍の兵力で攻め込んできました。

ルイス:今もその程度の兵力ですか?

怒文龍(ヌー・ウェンロン):そうです。お互いに農場や牧場及び鉱山掘りに人手を取られますのでね。

ルイス:私が手助けしますので、深夜2時に彝族の族長邸に潜入しましょう。

怒文龍(ヌー・ウェンロン):戦力差が50対500ではどうにもならないのではありませんか?

ルイスは心配そうにふたりを見ている族長の妻「怒秀蘭(ヌー・シュウラン)」に聞こえるように大声で叫びました。

"私が指揮を取ります。貴方は黙って付いてくれば良いのです"

ルイスの頼もしい言葉は族長の「怒文龍(ヌー・ウェンロン)」だけでなく、妻の「怒秀蘭(ヌー・シュウラン)」の心まで捕らえました。

怒秀蘭(ヌー・シュウラン):貴方。ルイスさんの言う通りにすれば大丈夫よ。きっと勝てるわ。

怒文龍(ヌー・ウェンロン)もやっとルイスと一緒に戦うことを決め、村人の中から屈強な男を50名呼びました。ルイスは彼らに護身用のコルトを1丁ずつ配り、弾丸も50発ずつ与えました。

☆深夜2時
ルイスと怒族の族長「怒文龍(ヌー・ウェンロン)」は、彝族の族長の屋敷への潜入作戦を決行した。彼らの部隊はわずか50名だが、対する敵の数は500名にも上った。しかし、ルイスの手には彼の得意とする催涙弾と50丁の「コルト」拳銃があった。

夜の闇を利用し、ルイスたちは屋敷に忍び寄った。まず、ルイスは催涙弾を巧みに使用し、敵の警戒を一気に崩壊させた。煙と混乱の中で、怒文龍とその部下たちは素早く敵陣深くへと進入し、敵を驚愕させた。

敵の数は多かったが、ルイスたちの戦術は計算され尽くしていた。催涙弾の効果により敵の動きが鈍くなり、ルイスたちの行動の優位が明らかになった。彼らは一発も発砲せず、敵を制圧していった。

最終的に、ルイスは敵の族長の居室へとたどり着き、彼の首元に拳銃を突きつけた。敵の族長は抵抗することなく拘束され、一切の抵抗を放棄した。この行動により、戦いは血を流さずに終わり、ルイスたちは敵の族長を捕らえることに成功した。

この作戦は、ルイスと怒文龍の優れた戦術と、彼らの部隊の勇気と結束力の証明となった。彼らは数の劣勢を巧みな戦術で克服し、大きな犠牲を出すことなく目的を達成した。夜が明けると、屋敷は平穏を取り戻し、ルイスたちの成功した作戦が新たな伝説となった。

今回はここまでにいたしましょう。次回をお楽しみに。

 

後書き

思わぬところで、ルイスの新しい側女(そばめ)芳蘭(ホウラン)の過去の一部が明らかになり、片馬鎮がイギリスに占領されたことがあることも判明しました。ルイスと怒文龍が彝族の族長の屋敷への潜入作戦で大勝利を収めました。彼らの巧みな戦術と結束力が、数の劣勢を覆す鍵となりました。このエピソードでは、予測不能な状況下での決断力と勇気、そして異なる文化背景を持つ人々の協力の重要性を示しています。