小説「海と陸の彼方へ」

 

第六章ルイス中華の皇帝を目指す

 

第19話怒江流域の開発「聴命湖へ行く」

 

前書き

時は遥かな過去、深い霧に包まれた山々が、静かにその歴史を語る時代。ここでは、勇敢なる心と、運命に翻弄される魂が交差する。本エピソードでは、冒険者ルイスとその仲間、李麗(リー・リー)が、過酷な自然と人間の欲望が生み出す危険と対峙する。彼らの道中には、予期せぬ出会いが待ち受け、それは彼らの旅路に新たな意味をもたらす。高黎貢山の荒々しい自然の中で、彼らは自らの運命と向き合い、未知の世界へと足を踏み入れていく。

 

本文

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登場人物「1935年1月1日時点」  
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ルイス18歳:イタリア系のアメリカ移民。長征途中の中国共産党紅軍の首領毛沢東を捕縛した功績を認められ、中国国民党総統の蒋介石より、巴蜀・雲南の軍政長官を委嘱される。旅の途中で四川省南充の石油王から巴蜀・雲南王に推戴される。と言っても、元清朝の王女:王華(ワン・ファ)が認めただけである。この物語の主人公。中国制覇の大望を抱く。
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ルイスの資金
小遣い177,459両。小切手150億ドル。金塊50トン。銀錠50億両「内訳は一般会計20億両、特別会計30億両である」。今までに一般会計は20億両の予算のうち506万5千両支出した。特別会計は30億両の予算を組み、今までに12億両支出した。前話の支出額は、以下の通りである。

240万両を支出したので、現時点での支出合計は12億240万両である。ルイスの小遣いは残額だけ上に書いておく。
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ルイスの妻:エリザベス・ハーレイ。ジョン・ハーレイ(40歳)「ブリタニア号の船長」の元妻。
年齢: 38歳
背景: イギリスの中流家庭出身。元夫の仕事を支えるために、度々海を渡る。
性格: 温和で思慮深く、家族を深く愛する。元夫と同様に最初はルイスに不信感を抱いていたが、彼の真摯な態度に心を動かされ、夫と別れてルイスと結婚する。
義理の息子:ウィリアム・ハーレイ。軽戦車隊「8台」隊長。「趙麗(チャオ・リー)」26歳の夫。
年齢: 16歳
背景: 船長の息子として海上生活に慣れ親しんでいる。航海術に興味を持ち、父から学んでいる。
性格: 好奇心旺盛で活発。ルイスの冒険的な精神に魅了され、彼を尊敬するようになる。
義理の娘:エマ・ハーレイ
年齢: 14歳
背景: 船長の娘として幼少期から多くの国を訪れている。異文化に対する興味が強い。
性格: 社交的で好奇心が強く、新しい環境にすぐに適応する。ルイスの持つ異文化への敬意と好奇心に共感を覚える。
「趙麗(チャオ・リー)」26歳:ウィリアム・ハーレイの妻。建設大臣。元昆明軍閥の一員。彼女は軍閥の中で情報の収集と分析を担当し、一味が行動を起こす前に必要な情報を提供していた。

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ルイスには他にも妻「側室」がいる。王華ワン・ファ(45歳)、李芳蓉リー・ファンロン(37歳)、劉芸芸リウ・ユェンユェン(38歳)、陳明花チェン・ミンファ(38歳)、クロエ・デュモン(23歳)、劉秋リュウ・チウ(39歳)、劉穎リウ・イン(33歳)の7名である。 

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ルイスの部下。 

1.周恩来ジョウ・エンライ(37歳)。ルイスの参謀。江蘇省出身。 

・穏やかで知的な性格をしており、どんな状況でも冷静さを失わない。 

・話し方には礼儀があり、分析的で思慮深い。 

・組織的な思考を持ち、リーダーシップを取れる。 

・他者に対しては理解深く、共感を示すことができる。

 2.ナディア・アミール・アル・サン(42歳)。ルイスの第一夫人「政治担当」。上海出身。 

・自立心が強く、決断力がある女性。 

・社会的な問題に対して意識が高く、積極的に意見を表明する。 

・優雅で洗練された振る舞いを持ち、周囲に対しても敬意を払う。 

3.サリマ・ファイサル・アル・ハウ(25歳)。ルイスの第二夫人「会計担当」。江西省出身。 

・勇敢で情熱的な性格。自分の信念に強く固執する。 ・感情が豊かで、時に感情的になりやすい。 ・直感に頼ることが多く、行動的で果敢な面がある。

 4.王光美ワン・グアンメイ(14歳)。ルイスの第三夫人「軍隊担当」。山東省出身。 

・年の割には成熟しており、好奇心が強い。 ・柔軟な思考を持ち、新しい環境にも早く適応する。 

・人懐っこく、周りの人々との交流を楽しむが、時には頑固な一面も。 

5.テンパ・ティンリー(24歳)。航空長官「改良DC-2 :1,000機」パイロット。チャン・ユン(42歳)の長男。チャン・ユン(42歳)は摩梭モソ族:落水下村出身。 

6.陳浩然チェン・ハオラン(33歳)。諜報長官。年間経費10万両。部下100名。

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 紅軍の長征  

中国地図 出典 建築資料研究社「住まいの民族建築学」浅川滋男著 P8     出典:朝日出版社「西南シルクロード紀行」宍戸茂著。挿絵。

出典:朝日出版社「西南シルクロード紀行」宍戸茂著。挿絵。

 

☆9月9日月曜日午後8時:果科村村長宅の離れ
李麗(リー・リー)が静かに、ルイスの泊まっている居室に入ってきた。お茶とお茶請けを持ってきているが、彼女の目的はなんだろう?

李麗(リー・リー):殿様。私は貴方様が巴蜀と雲南の国王だと言うことを知っています。村の者たちが噂しているのを聞いたのです。

李麗(リー・リー):私に怒江流域を案内させて下さい。周芳(ジョウ・ファン)がいなければ怒族の言葉もお分かりになりますまい。

ルイス:それは願ってもない有り難いお申し出だが、貴女は村長の奥様ですぞ。そのようなことは許されますまい。聞けば、怒族の方々も一夫一婦制を守っておられると聞いております。村長が黙っておりますまい。

李麗(リー・リー):前夫の趙勇には銀錠30両を渡して話をつけました。もう私は自由の身でございます。

ルイス:ふむ。女性の権利も随分と守られているようでございますな。

李麗(リー・リー):女性の権利はほとんどありませんが、趙勇を動かしたのはお金でございます。

ルイス:すると趙勇はたった銀錠30両で貴女のような美人を手放したと言うのか?

李麗(リー・リー):左様でございます。この村の女なら銀錠2両も出せば貴方様のものになりますよ。

ルイス:そうなのか。都会ではとても考えられぬことだ。それだけ貧しいということだな。

ルイス:そういう原状を私はとても見過ごすわけには行かない。せめて、農産物の強化と畜産品の強化を図ってから他の地域へ行くことにしよう。

ルイス:李麗(リー・リー)よ。たった今から、そなたを側女(そばめ)兼通訳とする。年俸と賞与を併せて200両支給する。

李麗(リー・リー):畏まりました。

李麗(リー・リー)はルイスの前に恭しく平伏し、衣服を脱ぎ始めた。

ルイスは彼女を慌てて止め、"そなたに頼みがある。農産物の強化と畜産品の強化の見積もりを取ってはくれぬか"と頼んだ。

李麗(リー・リー)は算盤を取り出し、ぶつぶつと喋りながら何やら計算を始めた。

"農産品目は、とうもろこし、核桃(くるみ)、漆樹(うるし)と楮(こうぞ)にしよう"

"農地を開拓せねばならない。開拓整備費用として5,000両計上しよう"

"開拓整備費用の内訳は、とうもろこし、核桃(くるみ)、漆樹(うるし)には各1,000両、楮(こうぞ)は新しい分野だから2,000両としよう"

"品種改良研究費としては各500両、合計2,000両で良いだろう"

"新規種籾購入費としては各300両、合計1,200両で良いだろう"

"肥料と農薬の購入費としては各500両、合計2,000両で良いだろう"

"農機具購入費用はそれぞれ2,000両、合計8,000両で良いだろう"

ルイスは李麗(リー・リー)の優秀さに目を見張り、この女性を側女(そばめ)兼通訳にしておくのは勿体ない。ゆくゆくは側室にし、農業大臣に抜擢してやろうと思い始めた。

ルイスは以前から、怒江流域の河谷地域に楮(こうぞ)を植えたらどうかと思っていた。楮(こうぞ)は、湿潤な気候を好み、特に河川近くの湿地帯でよく成長する。怒江流域は湿潤な気候を持つ地域で、水はけの良い河谷地域が存在し、楮の栽培に適していると思っていた。

だから李麗(リー・リー)が果科村で楮(こうぞ)を植えるという発想を素晴らしいと感じたのだ。

ルイス:李麗(リー・リー)。今宵はそこまでにしておけ。見積もりは旅が終わってからで良いし、畜産の見積もりはお前の息子に出してもらうことにする。

李麗(リー・リー)はルイスが催してきたのを理解し、湯船にお湯を張った。ルイスの身体を丁重に洗ってやってから臥所に入り、ふたりは初めて結ばれた。

☆ふたりの睦言
李麗(リー・リー):お殿様。明日はどちらに行かれますか?

ルイス:そうだが、何処か良い場所があるのか?

李麗(リー・リー):聴命湖が有名です。瀘水県高黎貢山にあります。

ルイス:貢山と言うと怒江第一湾に近いな。

李麗(リー・リー):そうでございます。殿様の乗っておられる飛行機は水陸両用と言っておられましたね。聴命湖に飛行機を停めておき、徒歩で瀘水県片馬鎮へ行きましょう。

ルイス:片馬鎮はどのようなところだ?

李麗(リー・リー):片馬鎮は雲南省怒江傈僳族自治州瀘水市に位置し、高黎貢山の西斜面に広がっています。この地域は、豊かな自然環境と多様な文化が特徴で、森林資源が豊富です。様々な珍しい樹木や貴重な野生動物が生息し、金や銅などの鉱産資源も見られます。人口は、数千人規模で、景頗族、傈僳族、漢族、白族、彝族、怒族、納西族などの複数の民族が共存しています。

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☆聴命湖

・聴命湖は瀘水県片馬の北東部に位置し、片馬鎮から約36キロメートルの地点にあります。標高は約3,540メートルです。
・面積は0.3平方キロメートルで、公道は通じておらず、全行程は徒歩で、山林を抜けて約10時間歩く必要があります。
・聴命湖は聴命河の源流で、氷食湖として残留した余衝川の浸食によって形成されました。標高が高く、水温が低いため、形成時間が短く、湖内の生物は少なく、水質が優れています。
・聴命湖は神話のような湖で、人々が風を呼び雨を呼ぶ伝説によって常に神秘的な雰囲気に包まれています。ここに訪れる人々は、静かに話す必要があり、大声で叫ぶと、すぐに空が暗雲に覆われ、風雨が交じり合い、突然に雹が降り出すためです​​​​。

聴命湖はその神秘的な雰囲気と豊かな自然の美しさで知られる、特別な場所と伝えられています。
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翌9月10日火曜日、午前7時。ルイスと李麗(リー・リー)のふたりは果科村を出て、聴命湖へ行くため飛行機に乗り込みました。

翌9月10日火曜日の朝7時、ルイスと李麗(リー・リー)は果科村を離れ、聴命湖へ向けて飛行機に乗り込みました。彼らが初めて訪れるこの湖への旅は、青空が広がる晴れやかな朝に始まりました。飛行機はゆっくりと空に上昇し、下に広がる怒江流域の壮大な景色が彼らの目に映ります。山々が重なり合い、雲が山頂を覆う様は、まるで別世界のようでした。

飛行中、ルイスは窓からの絶景に見とれ、李麗は彼に地域の歴史や文化について語りました。彼らは、山々の間を流れる怒江の蛇行や、遠くに見える高黎貢山の雄大さに感嘆しました。やがて、飛行機は聴命湖の上空に到達し、水面に映る山々の影が神秘的な雰囲気を醸し出していました。飛行機はゆっくりと湖面に降り立ち、ふたりはこの新たな冒険の始まりに胸を躍らせました。

☆午前10時:瀘水県高黎貢山の聴命湖
午前10時、ルイスと李麗(リー・リー)は聴命湖の岸辺近くに飛行機を停め、ボートに乗り込んで釣りを始めました。湖の静かな水面は、彼らの期待に満ちた時間を反映していました。晴れ渡る空の下、彼らは釣り竿を垂らし、魚を釣り上げることに集中しました。湖の豊かな水生生物のおかげで、彼らは次々と魚を釣り上げ、その成果に満足しました。湖畔での穏やかな時間は、二人にとって新たな冒険の一環として、心に残る思い出となりました。

ルイスと李麗(リー・リー)は聴命湖で釣りを楽しんだ後、湖畔で昼食を取りました。彼らが釣り上げたのは、聴命湖に生息する魚種である草魚、鯉、黒鯛などの淡水魚でした。彼らはまた、付近の山で採取した山菜やハーブ、薬草を昼食に加えました。これには、フキノトウ、タラの芽、山椒の葉、ゼンマイなどの山菜と、タイム、ローズマリー、セージなどのハーブ、そして薬効を持つクコの葉や甘草が含まれていました。

昼食では、釣り上げた魚を炭火でじっくりと焼き、香ばしい香りを楽しみました。山菜は軽く茹でて、ハーブや薬草で風味付けをし、シンプルながらも自然の恵みを感じる味わいになりました。彼らは湖畔での食事を囲みながら、自然と調和した穏やかな時間を過ごし、旅の素晴らしい思い出を作りました。

☆午後1時:瀘水県高黎貢山の聴命湖
ここからは徒歩で標高約3,540メートルの山道「36キロメートルの行程」を片馬鎮まで下ります。約10時間あるき続けなければなりません。

午後の一時、瀘水県の高黎貢山にある聴命湖からの険しい道をルイスと李麗(リー・リー)は歩き始めた。彼らの前には、標高約3,540メートルから36キロメートルの行程が待ち受けており、目的地は片馬鎮であった。しかし、この旅路は予想外の出来事に満ちていた。

夕暮れに山道は霧に包まれ、静寂が支配していたが、その静けさは突如として破られた。山賊一味が襲い掛かり、ルイスと李麗(リー・リー)は急な戦いに巻き込まれる。ルイスの剣技と李麗(リー・リー)の機敏な動きで、山賊たちは一掃された。

しかし、戦いの最中に別の脅威が現れた。それは伝説的な巨大黒熊だった。この熊の体は岩のように堅固で、牙と爪はどんな戦士も恐れるほど鋭かった。ルイスはこの猛獣との壮絶な戦いを繰り広げ、ついにはその巨体を地に倒した。

この混乱の中、山賊たちに捕らえられていたのは、32歳の交易商人の妻、芳蘭(ホウラン)だった。彼女は美しい容姿と知性に満ちた女性で、夫と共に遠い地から旅をしていたが、夫は山賊たちによって命を落とし、彼女は生き残って捕らわれていた。落ち着いた振る舞いと、悲しみを秘めた強さを持つ彼女の瞳には、不屈の意志が宿っていた。

ルイスと李麗(リー・リー)は芳蘭(ホウラン)を救出し、彼女は夫を失った悲しみを胸に、彼らと共に新たな旅を始めることを決意した。三人の絆はこの旅路で深まり、高黎貢山の夜は再び静寂に包まれた。彼らの冒険はまだ続くのであった。

☆山賊のアジト
午後7時、山賊のアジトにたどり着いたルイスと李麗(リー・リー)は、彼らが捕らえていた芳蘭(ホウラン)を救出した後、一日の疲れを癒やそうとしていた。昼食の残りを使って料理を始めようとする二人に対し、芳蘭は「命の恩人にそんなことはさせられません」と言い張り、料理を担当することにした。

芳蘭はアジトの中を探し回り、見つけた食材を使って香港料理を作り始めた。彼女の手際は見事で、熟練の料理人のような手つきであった。まず、彼女は発見した新鮮な野菜と豚肉を使って、香ばしいチャーシューを作り上げた。肉はじっくりと焼かれ、表面はカリカリに、中はしっとりとした仕上がりとなった。

次に、彼女は手に入れた海鮮を活用して、魅力的なシーフードの炒飯を作り始めた。米はふっくらと炒められ、新鮮な海鮮の風味が口いっぱいに広がった。香辛料のバランスが完璧で、それぞれの食材の味が引き立てられていた。

また、彼女は野菜を使って、色鮮やかな野菜炒めも作った。各野菜はシャキシャキとした食感を保ちつつ、旨味が溢れ出るように炒められていた。彼女の料理には、彼女自身の心を込めた愛情が感じられた。

ルイスとリー・リーは、芳蘭の手による香港料理の前に感動し、彼女の料理技術に敬意を表した。三人はアジトの中で、互いの絆を深めながら、暖かくて美味しい食事を楽しんだ。その夜、山賊のアジトは、久しぶりに笑顔と幸せな雰囲気で満たされたのであった。

☆その日の夜
その夜、李麗(リー・リー)は、芳蘭(ホウラン)の存在に心を揺さぶられていた。彼女の目の前に現れた芳蘭は、ただの交易商人の妻とは思えないほどの洗練された美しさと優雅さを兼ね備えていた。李麗はその様子を見て、自分とは違う、何か特別な魅力を持った女性だと感じた。その魅力は、一目見ただけで人を惹きつけるものだった。

彼女は、芳蘭の姿に嫉妬心を抱きつつも、同時に彼女の振る舞いに憧れを感じていた。芳蘭がルイスのそばに近づくと、李麗は自然と後退した。その動きは、自分でも意識せずに行ったものだった。彼女の心の中には、ルイスへの複雑な感情が渦巻いていた。彼への想いを自覚しながらも、芳蘭への劣等感に押し潰されそうになり、自分の立場を見失っていた。

李麗はアジトの別の部屋に移動し、一人で眠りについた。その夜、彼女の心は安らぎを見つけられず、感情の波に翻弄されていた。芳蘭の存在が彼女に新たな自己認識を促し、今後の行動に影響を及ぼすことになる。彼女は自分自身との戦いに直面し、その中で成長する機会を得ることになる。

芳蘭(ホウラン)はごく当たり前のような態度で、ルイスの寝袋に潜り込みそのままルイスと同衾したのである。ルイスは芳蘭(ホウラン)の美しさに心を奪われていたが、同時に彼女の真の意図に疑問を抱いていた。彼女の優美な振る舞いは、あまりに計算されているようにも思えた。彼の心の中では、魅力的な外見と知性に対する賞賛と、彼女の動機に対する疑念がせめぎ合っていた。

「彼女の真意は何だろうか?」ルイスは自問した。彼は芳蘭の知性と美しさに心を奪われる一方で、彼女の行動に隠された意図を見極めようとした。芳蘭が彼の寝袋に潜り込んだとき、彼は狐につままれたような気持ちで混乱し、同時に喜びを感じた。彼女の美しい容姿と知性が、彼にとって望外の喜びであると感じながらも、その背後に隠された計算や意図を探ろうとしていた。

夜が更けるにつれ、ルイスの心は複雑な感情に満ちていった。彼は芳蘭の真意を探るために、彼女の言葉や行動を注意深く観察した。彼女がただの商人の妻とは思えないほど洗練されていることに、彼はますます興味を抱いた。しかし、その興味は彼女への疑念を完全に払拭することはできず、内面の葛藤は深まる一方だった。彼女の真の目的と自分への影響について、ルイスは慎重に考えを巡らせていた。

☆李麗(リー・リー)の葛藤と苦しみ
李麗(リー・リー)は、自分の内に渦巻く感情に戸惑いながら、ルイスとの距離を意識的にとっていた。彼女の心は複雑な感情で満ち溢れていた。ルイスと芳蘭(ホウラン)の関係に対しては、嫉妬と失望の混ざり合った感情が彼女を苦しめていた。

李麗は、ルイスへの未解決の感情を持ち続けていた。彼女は彼に対して深い感情を抱いていたが、それを表現することができずにいた。芳蘭の登場は、彼女の心の中のジレンマをさらに深めた。彼女は自分がルイスに対して抱く感情の正体を理解しつつも、それを受け入れることができずにいた。

ルイスと芳蘭の間の親密さを目の当たりにするたび、李麗の心は痛みと嫉妬で満たされた。彼女は、ルイスとの間にある未解決の感情的な問題に向き合おうとしながらも、その一歩を踏み出すことができなかった。彼女はルイスの幸せを願いつつも、自分の感情を抑えきれずにいた。

李麗は、自分の感情とルイスとの関係の未来について深く考え込んでいた。彼女は自分の心の中にある感情と向き合い、ルイスとの関係をどう進めていくべきかを模索していた。彼女の内面には、ルイスへの愛情と彼と芳蘭との関係に対する嫉妬が交錯していた。この複雑な感情が、彼女の心の中でさらなるジレンマを生み出していた。

☆芳蘭(ホウラン)の秘密
芳蘭(ホウラン)は表面上は自信に満ち溢れた女性に見えたが、その内面には複雑な感情と過去の経験が隠されていた。彼女の行動の背後には、彼女自身の深い計算と目的があった。彼女は自分の立場を利用して、自身の目的を達成しようとしていたが、それには個人的な葛藤が伴っていた。

彼女は過去に苦難を経験しており、それが彼女の行動を動機づけていた。彼女は自らの運命を自分の手で切り開くことを決意していた。そのためには、時に計算高く、また機知に富んだ行動が必要だった。彼女は自分の知性と魅力を武器にして、周囲の人々を操ることに長けていたが、内心ではそのような自分に対して矛盾した感情を抱いていた。

ルイスへの接近も、彼女の計画の一環だった。彼女はルイスが持つ影響力と地位に目を付けていたが、彼との関係が進むにつれ、彼への真実の感情が芽生え始めていた。この新たな感情は、彼女の内面の葛藤を一層深めた。彼女は自分の目的を果たすためには何でもするという信念と、ルイスへの本当の感情との間で揺れ動いていた。

芳蘭は自分の過去と現在の立場、そして未来の目的について深く考え込んでいた。彼女は自分がどこまで自分自身を変えることができるのか、また自分の真の目的が何なのかを模索していた。彼女の心の中では、自分の行動に対する正当化と、それに伴う倫理的なジレンマが交錯していた。

☆同衾後のルイスと芳蘭(ホウラン)
芳蘭(ホウラン):ルイスさん。貴方がどういう目的で片馬鎮へ行かれるのか存じません。しかし、これだけは申し上げておきます。片馬鎮は自然資源に恵まれた地域です。その自然資源を巡り、争いが絶えないのです。

ルイス:そういえば、片馬鎮は人口が数千人規模で、景頗族、傈僳族、漢族、白族、彝族、怒族、納西族などの複数の民族が共存しているそうですね。

芳蘭(ホウラン):共存していると言えば聞こえが良いようですが、互いに主導権争いをしているのです。

ルイス:片馬鎮の鎮長はどの部族がなっているのか?

芳蘭(ホウラン):今は一番人数の多い彝族「イ族」が取っておりますが、元々は怒族が鎮長を長年務めていたのです。

ルイス:貴女は彝族「イ族」と怒族どちらが良いと思うか?

芳蘭(ホウラン):他の地域ならいざしらず、怒江地域では怒族が自治を司るのが自然だと思います。

ルイス:良し。その方針で行こう。先ずは怒族の族長に連絡を取ってみるか。

今回はここまでにいたしましょう。次回をお楽しみに。

 

後書き

ルイス、李麗、そして芳蘭の三人が織り成す物語は、新たな高みへと達した。彼らの絆は試練を乗り越え、より強固なものとなり、それぞれの内面にも変化が生じている。この物語の中で、彼らはただ生き延びるだけではなく、互いの存在の意味を理解し深めていく。彼らの旅はまだ続く。次エピソードでは、さらに壮大な冒険と、心を揺さぶるドラマが展開されることだろう。物語は、常に次なるステージへと進化を遂げている。