小説「海と陸の彼方へ」

 

第六章ルイス中華の皇帝を目指す

 

第8話雲南省奪還計画④「大理城主夫人クロエ」

 

前書き

1935年7月24日水曜日の夜、李春華邸では、李偉、李婷、李芸の兄妹が劉秋の居室を訪れ、畜産牧場や農場の経営に興味があると意欲を見せる。ルイスは兄妹が希望する事業を任せ、具体的な計画を説明し、李偉には既に作成された畜産牧場の経費見積もりを承認し、資金を渡して準備を始めさせる。 劉秋と娘たちは農場経営の具体的な計画をまだ考えていなかったが、ルイスは彼女たちに時間を与えてゆっくり考えるように言う。姉妹はルイスに好意を持ち、彼を慕いながらも彼が年上を好むという理由で彼女たちの求愛を受け入れないと告げる。その後、農機具の必要性について話し合い、ルイスは畜産と農場の両方で必要とされる様々な農機具の詳細と見積りを提供する。 夜遅く、家族がそれぞれの部屋に戻った後、ルイスと劉秋はリビングでリラックスし、その後2人は家の温泉へ行き、身を浸す。ルイスはこの豪華な生活に慣れていなかったが、劉秋は快適に対応し、2人はその後寝室で夜を共にし、ゆっくりと休んだ。

 

本文

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登場人物「1935年1月1日時点」  
アンヘル・ディアンジェロ16歳:ハーバーテックソリューションズ(HTS)の会長兼CEO。ル・クリスタル・ホテル所有「200万ドルで居抜き購入」。アンヘル航空㈱会長兼CEO「資本金10億ドル」。ヴィヴィ警備会社「資本金1千万ドル」オーナー。軍事産業への共同投資60億ドル「配当金:1,929万ドル/ 週」。現預金50億ドル「シャドウ・ネクサスから略奪」と債権「総額不明」所有。
マリア・エバ・ドゥアルテ16歳。アンヘルの妻。AMレジャー総合開発㈱「資本金1億ドル」社長兼COO。悪魔のように可愛い女。 
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アンヘルの家族 
イタリア系の不法移民で、彼らの家族名は「ディアンジェロ」です。以下はディアンジェロ家の家族構成です: 
・父親ヘクター・ハミルトン(28歳)「10歳の若返り」:アンヘルから10億ドルの資金を貰い、テキサスで石油と天然ガスを発掘した。 
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ヘクターの資金7億4,060万ドル。石油精製会社の資本金を5千万ドルとして計上した。別途にエドゥワルドから50億ドルの資金を預かる。
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・母親ローサ・ディアンジェロ(35歳):ローサ・ディアンジェロは家庭を守りながら、地域の共同体でボランティア活動を行っています。彼女は子供たちが教育を受けることを強く望んでいます。 ヘクターの浮気が発覚し、ヘクターと離婚した。
・兄ルイス・ディアンジェロ(18歳):表向きはニューヨーク市警警部兼総合建設会社NYHCの社員。 実はマフィアのアンダーボス。
・ルイスの双子の姉マリア・ディアンジェロ(18歳):マリア・ディアンジェロは地元の専門校に通っています。 ヘクターに誘われ、行動を共にすることになる。
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ルイスの資金は小切手150億ドル。金塊50トン。銀錠50億両「内訳は一般会計20億両、特別会計30億両である」。第21章第②話までに一般会計は20億両の予算のうち506万5千両支出した。特別会計は30億両の予算を組み、今までに8,395,599両支出した。第7話で大理城の敷地購入費用5万両と、城建設費用5万両を支出したので、合計8,495,599両の支出である。前話で没収した100億ドルの銀錠は小切手に替えておいた。
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ルイスの元捕虜兵。現在は忠実な部下と妻たち。
1.周恩来(ジョウ・エンライ)(37歳)。ルイスの参謀。江蘇省出身。
・穏やかで知的な性格をしており、どんな状況でも冷静さを失わない。
・話し方には礼儀があり、分析的で思慮深い。
・組織的な思考を持ち、リーダーシップを取れる。
・他者に対しては理解深く、共感を示すことができる。
2.ナディア・アミール・アル・サン(42歳)。ルイスの第一夫人「政治担当」。上海出身。
・自立心が強く、決断力がある女性。
・社会的な問題に対して意識が高く、積極的に意見を表明する。
・優雅で洗練された振る舞いを持ち、周囲に対しても敬意を払う。
3.サリマ・ファイサル・アル・ハウ(25歳)。ルイスの第二夫人「会計担当」。江西省出身。
・勇敢で情熱的な性格。自分の信念に強く固執する。
・感情が豊かで、時に感情的になりやすい。
・直感に頼ることが多く、行動的で果敢な面がある。
4王光美(ワン・グアンメイ)(14歳)。ルイスの第三夫人「軍隊担当」。山東省出身。
・年の割には成熟しており、好奇心が強い。
・柔軟な思考を持ち、新しい環境にも早く適応する。
・人懐っこく、周りの人々との交流を楽しむが、時には頑固な一面も。
5.テンパ・ティンリー(24歳)。パイロット。チャン・ユン(42歳)の長男。チャン・ユン(42歳)は摩梭(モソ)族:落水下村出身。
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ルイス18歳:巴蜀・雲南王と言っても、元清朝の王女:王華(ワン・ファ)が認めただけである。この物語の主人公。
ルイスの妻:エリザベス・ハーレイ。ジョン・ハーレイ(40歳)「ブリタニア号の船長」の元妻。
年齢: 38歳
背景: イギリスの中流家庭出身。元夫の仕事を支えるために、度々海を渡る。
性格: 温和で思慮深く、家族を深く愛する。元夫と同様に最初はルイスに不信感を抱いていたが、彼の真摯な態度に心を動かされ、夫と別れてルイスと結婚する。
義理の息子:ウィリアム・ハーレイ
年齢: 16歳
背景: 船長の息子として海上生活に慣れ親しんでいる。航海術に興味を持ち、父から学んでいる。
性格: 好奇心旺盛で活発。ルイスの冒険的な精神に魅了され、彼を尊敬するようになる。
義理の娘:エマ・ハーレイ
年齢: 14歳
背景: 船長の娘として幼少期から多くの国を訪れている。異文化に対する興味が強い。
性格: 社交的で好奇心が強く、新しい環境にすぐに適応する。ルイスの持つ異文化への敬意と好奇心に共感を覚える。
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ルイスには他にも妻「側室」がいる。王華(ワン・ファ)(45歳)、李芳蓉(リー・ファンロン)(37歳)、劉芸芸(リウ・ユェンユェン)(38歳)、劉月華(リウ・ユエファ)(48歳)、陳明花(チェン・ミンファ)(38歳)の5名である。

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ニューヨーク市の行政地図 

アメリカ合衆国東部 
昭文社「コンパクト世界地図帳」P52 


フロリダ州の地図と出典「南部にマイアミ、更に南部にホームステッドがある」 

北米「ダラスを中心として」
帝国書院「地歴高等地図」P67,68


マフィアの組織図「パブリックドメイン」


紅軍の長征

中国地図
出典 建築資料研究社「住まいの民族建築学」浅川滋男著 P8

 

1935年7月24日水曜日、午後7時半。旧李春華邸
李偉(リー・ウェイ)「長男20歳」、李婷(リー・ティン)「長女18歳」、李芸(リー・ユン)「次女16歳」の3人が連れ立って、ルイスと母親、劉秋(リュウ・チウ)「39歳」の居室に訪れた。

劉秋(リュウ・チウ)が手作りの麦茶と花生餅を3人に出すと、彼らは口々に喋り始めた。

李偉(リー・ウェイ)は、自信なさげに声を上げた。"僕は敷地内の畜産牧場の経営をやりたいと思っています。でも、具体的に何をすればいいのか、まだよく分かりません"

李婷(リー・ティン)と李芸(リー・ユン)も同じく熱心に言った。"私たちも農場の経営に興味があります。でも、どのように始めればいいのか、何を育てればいいのか、まだ学ぶ必要がありますね"

ルイスはこれを聞いて、彼らが抱える不安と期待を理解した。彼は彼らの未熟さを受け入れ、その成長を支えることを決意する。彼は慎重に言葉を選びながら、彼らに基本的な農場と牧場経営の原則を教え始めた。これが、彼らの成長の第一歩となる。

ルイスは彼らの希望を適えてやろうと思い、以前からの計画に合わせて彼らの割当を次のように決めた。

李偉(リー・ウェイ):畜産牧場経営

李婷(リー・ティン):米農場経営

李芸(リー・ユン):小麦農場経営

劉秋(リュウ・チウ):とうもろこし農場経営

彼らにはルイスの計画の詳細を説明した。前話の最後に書いて置いた通りだが、念のためもう一度記しておく。

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1. 米の栽培と品種改良
・大理地域の気候と土壌:大理は温暖で湿潤な気候を持つため、米作りに適しています。土壌も肥沃で水はけが良いため、米の生産が盛んです。
・玄米の品種改良:玄米は栄養価が高く、市場での需要も増えています。食べやすく、栽培しやすい新しい品種の開発に取り組むことで、李家の農場は特色ある米の生産者としての地位を確立できます。

2. トウモロコシの栽培と加工
・ニシュタマリゼーション処理:トウモロコシをアルカリ処理し、栄養価と消化吸収を向上させるニシュタマリゼーションは、特にタコスやトルティーヤなどの製品製造に利用されます。この加工技術を取り入れることで、地元の農産物を付加価値の高い製品に変えることができます。

3. 小麦の大規模栽培
・農機具の導入:アメリカからの農機具導入により、効率的かつ大規模な小麦栽培を行うことが可能です。これにより、安定した小麦供給源としての役割を担い、地域の食糧安全保障に貢献できます。

4. 畜産牧場の運営
・家畜の飼育:牧場では、牛、羊、豚などの家畜を飼育し、肉や乳製品を生産します。特に地域の伝統に根差した家畜飼育方法や品種を選択することで、質の高い食品を市場に提供できます。
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畜産農場年間経費見積もり表
1.人件費
・月給: 1両
・年間合計: 12両
・30人分総合計:360両

2.飼料費
・牧草: 150両
・穀物: 100両
・サイレージ: 50両
・年間合計: 300両

3.肥料費
・有機肥料: 60両
・無機肥料: 40両
・年間合計: 100両

農機具の見積もり表「単位:両」
1.トラクター
・費用:500両

2.草刈り機
・費用:300両

3.ベーラー(干草結束機)
・費用:250両

4.飼料ミキサーおよび配給機
・費用:200両

5.清掃機器
・費用:150両

6.移動式給水システム
・費用:200両

7.畜体処理機器
・費用:150両

・総費用:1750両
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李偉(リー・ウェイ)だけは畜産牧場の大雑把な見積もり表を出して来たので、ルイスは彼の出してきた見積もり表を大幅に手直しして承認した。ルイスは李偉(リー・ウェイ)に2,510両渡し、早速明日から取り掛かるように命令した。

劉秋(リュウ・チウ):私は今言われたばかりだから用意が出来ていないわ。旦那様、今週中に考えますから待って下さい。

李婷(リー・ティン)、李芸(リー・ユン):私達も具体的なことは何も考えていなかったわ。

ルイス:良いよ。待っていてやるから、じっくりと考えなさい。

李婷(リー・ティン)、李芸(リー・ユン):嬉しいわ。ルイスさんって優しいよね。私達姉妹もルイスさんのお嫁さんになりたいわ。お母さんと同じ扱いにして下さい。

ルイスはこう答えた。"農場の経営がちゃんと出来るようになったら考えてやっても良い"

李婷(リー・ティン)、李芸(リー・ユン):お母さんは農場の経営も出来ないし、料理も下手なのに何故ルイスさんはお母さんを相手にするの?若い私達のほうが良いと思うけどな?

ルイス:僕は年上の人が好みなんだよ。僕もその点わがままなのかな。君たちも僕と同じで我儘だろう?だからお互いに相性が悪いんだ。

李婷(リー・ティン)、李芸(リー・ユン):そうなのかも知れないね。じゃ、その話はもうしないけど、農機具について教えて頂戴。私達も同じ農機具を使うの?

ルイス:畜産農場と普通の農場ではちょっと違うかな。米と小麦でも違うかも知れないな。必要な農機具を列記しておこう。

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農機具購入費:2000両の内訳
1.トラクター
・用途:耕作、播種、収穫など
・購入費:500両「1台あたり」

2.刈り取り機「コンバインハーベスター」
・用途:穀物の刈り取りと脱穀
・購入費:400両「1台あたり」

3.耕運機「ロータリー」
・用途:土壌の耕起
・購入費:200両「1台あたり」

4.播種機
・用途:種まき用
・購入費:150両「1台あたり」

5.肥料散布器
・用途:肥料の均等な散布
・購入費:100両「1台あたり」

6.灌漑設備
・用途:水田や乾燥地の灌漑
・購入費:300両「システム全体」

7.脱穀機
・用途:稲や小麦の脱穀
・購入費:200両「1台あたり」

8.草刈り機
・用途:牧草地の草刈り
・購入費:100両「1台あたり」

9.牛用の農具一式
・用途:牛を使用した耕作や輸送
・購入費:50両「セットあたり」

合計:2000両
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李婷(リー・ティン)、李芸(リー・ユン):お母さん。これで農機具の見積もりも出来たから、あと少しだね。

ルイス:まだ、他にも考えないといけないことが残っているぞ。土地を肥沃にするための工夫だ。これが一番難しいんだ。

李婷(リー・ティン)、李芸(リー・ユン):また明日の夕方から頑張るよ。ルイスさん。お母さん、お休みなさい。

☆午後11時
息子や娘たちがそれぞれの部屋に行き、ルイスと劉秋(リュウ・チウ)のふたりがリビングのソファーに座っています。今日の劉秋(リュウ・チウ)はトップスにはシンプルなホワイトのブラウスを付けており、明るいテラコッタ色のラップスカートを穿いています。成熟した女性が家で着る快適さと上品さを兼ね備えた衣装と言えるでしょう。

ルイスが彼女に目で合図すると、彼女は甲斐甲斐しく、ルイスの衣装を脱がせ、自分もバスタオル一枚の姿で隣室の扉を開けます。そこは天然温泉になっており、常に摂氏42度に保たれています。彼女はルイスの背中を流し、一緒に温泉に浸かります。

ルイスはこのような贅沢を初めて経験するのですが、彼女は大家の奥様らしく慣れたものです。

やがてふたりは寝室に消え、お楽しみのあとはぐっすり眠りにつきます。

7月25日の早朝、劉秋(リュウ・チウ)はゆっくりと目を覚ました。部屋は夜明けの柔らかな光で静かに照らされ、窓の外からは大理地方の涼しい風がそっと吹き込んでいた。彼女は横になっているルイスに目を向け、彼が寝返りを打つたびに、汗で濡れた額が見えた。夜の涼しさとは裏腹に、彼の顔は不安と疲労で曇り、熱を帯びているように見えた。

部屋の中は静まり返っており、唯一聞こえるのはルイスの規則的な呼吸と、窓からそっと舞い込む風の音だけだった。劉秋(リュウ・チウ)は、彼の側にそっと近づき、手を伸ばして彼の額から流れる汗を拭った。彼女の手の動きは慎重で、まるで彼を起こさないようにという気配りがあった。彼女はルイスの健康を気遣い、同時に彼が抱える重圧を感じ取っていた。

彼女は、夜明けの光の中で、ルイスが安らかな眠りを得られるよう、静かに彼の顔を冷やした。そして、静かな朝の空気の中で、劉秋(リュウ・チウ)は自分の内面の平穏を取り戻し、新しい一日への準備を始めた。彼女の心は、ルイスのために何かをしてあげたいという願いでいっぱいだった。

やがてルイスは安らかな眠りについた。連日の激務が彼の体に重くのしかかっていた。劉秋(リュウ・チウ)は、ほっと息をつきながら、朝食の準備に取り掛かった。"ルイスに頼らずに、料理を作りたい" そう心に決めて、彼女はタコス料理に挑戦した。

キッチンでの彼女の動きはまだぎこちない。しかし、ルイスに教わったレシピを思い出しながら、一つ一つの手順を丁寧に行う。タコスシェルを焼き、挽肉を炒め、新鮮な野菜を切る。彼女の頬には、集中の汗が滲んでいた。

ルイスは朝方、目を覚まし、静かに彼女の働きぶりを見守っていた。劉秋(リュウ・チウ)が汗を拭いてくれたこと、そして彼女が懸命に頑張る姿に、彼は深く感動した。彼女の努力、愛情、そして成長に心からの敬意を表すように、彼は静かに微笑んだ。彼女が作ったタコスを食べる時、その味には彼女の愛情が込められていた。

☆午前8時
ルイスはオートバイクに乗り、怒江橋の建設現場に向かいます。クロエに会うためです。ジャン=ピエール・デュモン(28歳)を懲役20年の刑に処したということを彼女はもう聞いて知っているだろう。

☆午後1時。怒江橋の建設現場
怒江と博南道が交わる地点に位置する「怒龍橋」の建設現場。ここでは、1100名の労働者たちが、鉄筋コンクリートを用いて壮大な橋を建設中。工事は2週間前に始まり、活気に満ちた作業が進行している。

朝霧が薄れゆく中、怒龍橋の建設現場は早くも活気づいていた。1100名の人夫たちが、太陽が昇るにつれてその数を増す。彼らは、怒江の力強い流れに向かい合いながら、鉄筋コンクリートの巨大な構造物を築き上げていた。

橋の基礎部分は既に形を成しており、重機が地響きを立てながら、川底から掘り出された土砂を運び出している。鉄筋は格子状に組まれ、その隙間には熟練の職人がコンクリートを流し込んでいく。作業の随所には、指揮を執る監督たちの声が響き渡り、汗と期待に満ちた空気が流れていた。

川の上では、橋の両端から中央に向かって少しずつ伸びるアーチが、その姿を現し始めている。労働者たちは各自の任務に集中し、橋の完成に向けて着々と作業を進めていた。

「怒龍橋」と名付けられたこの橋は、その名の通り、怒江の勇壮な流れを見下ろすようにそびえ立ち、博南道を結ぶ重要な交通の要となることが期待されている。まだ完成には遠いが、そのたびに橋の形はよりはっきりとしていき、その壮大さが少しずつ現実のものとなっていった。

2週間の作業を経て、怒龍橋は着実にその姿を変えている。太陽が高く昇るにつれ、橋の影は長く川面に映し出され、そこに働く人々の労苦と希望が刻まれていく。

☆ルイスの訪問
土木責任者のエレーヌ・レミー(30歳):ルイスさん。クロエ・デュモン(30歳)が意気消沈しているわ。早く行って慰めてあげなさい。
ルイス:僕のことを怒っているだろうな。
エレーヌ:貴方はやるべきことをやっただけよ。責任は無いわ。

ルイスは何時もクロエが作業している建設小屋を訪れた。そこには建設小屋はなく、立派な小振りの一軒家が建っていた。おそらくクロエが自分のために建てた家だろう。勿論クロエだけで建てられるはずはない。何人かの後押しがあったと思われる。何はともあれ、ルイスは家の中に入ってみた。ドアは開いており、中ではクロエが黙々とストレッチをしていた。

クロエはピンクと黒のハート模様のトップスと、ワインレッド色のショートパンツを着用している。トップスは肩紐のあるデザインで、スポーティな外観である。足元は裸足で、動きやすい服装をしている。 

背景には、窓、灰色のカーテン、ベッド、白い壁が見え、家具も配置されている。部屋は明るく、日光が入っている。

ルイスが声を掛け、クロエは振り向いて立ち上がった。

クロエ:あら。ルイスさんじゃない。私に何か用なの?

ルイス:貴女に会いたくてオートバイクで飛んできたのさ。ご主人のことはもう聞いたかい?

クロエ:聞いたわ。懲役20年ですってね。彼が出てきたら48歳になるわ。人生も半ばを過ぎることになるわね。

ルイス:模範囚になれば刑期は短縮されるだろう。

クロエ:貴方は懲役10年だと言っていたわね。あれは嘘だったの?

ルイス:いや。あの時点ではケシの花不法所持だけが容疑だったからね。あとからケシの花密売の現行犯が加算された。

クロエ:貴方には罪が無いっていうのね。それはそうよね。貴方には罪はないわ。でも私はどうなるの?彼を此処で20年も待たなくちゃいけないの?

ルイス:待つ、待たないは君の自由だ。彼は君のことなど頭にないよ。君のことが心配なら、僕が大理の役所で彼と別れた時、君に会いに来たはずだ。だけど彼は君に会いにこず、大理の宿屋でケシの花45トンが馬車で大理まで来るのを待っていた。

クロエはルイスに事実を指摘され、混乱した。

クロエ:ルイスさん。本当にジャンは大理の役所で貴方と別れたの?貴方に拘束されていたのではなかったの?

ルイス:他の誰に聞いても僕が言っていることが事実だと証明してくれるさ。

クロエは混乱していたが、心の奥底ではルイスの言っていることが真実だということを分かっていた。ただ認めたくなかったのだ。

クロエ:それが事実だとして、貴方は私をどうしたいの?部下にしたいの?それとも女の一人にしたいの?それとも解放してくれるつもりなの?

ルイス:僕の本心は君を僕の物にしたい。だが僕には妻もいるし、沢山の側室たちや側女たちも抱えている。だから、今建設している大理城を君に与え、城主を兼ねた夫人にしたい。受けてくれないか?嫌なら断っても構わない。その場合には銀錠10万両を君に進呈しよう。これは僕の気持ちの表れだ。遠慮しないでくれ。

クロエは小考して、大理城の女主人になることを引き受けた。彼女は条件を付けた。大理城には側室を置かないことと側女を置く場合には彼女の了解を得ることの2つだ。ルイスは承諾し、まだ完成していない大理城の仮宿舎まで彼女をオートバイクに乗せて連れて行った。

今回はここまでにいたしましょう。次回をお楽しみに。

 

後書き

ルイスはオートバイクで怒江橋の建設現場へクロエを訪ねて行った。ジャン=ピエール・デュモンの懲役20年の判決を知った後、クロエは意気消沈していた。建設現場には2週間前から1100人の労働者が橋を建設しており、工事は順調に進んでいた。 クロエは意気消沈していたが、ルイスは彼女に会い、ジャンが判決を受けたこと、彼の犯罪が当初考えていたよりも深刻であったことを伝えた。クロエは戸惑いながらもジャンを待つべきか悩んでいたが、ルイスは彼女がジャンを待つか否かは自らの選択であると言った。 ルイスはクロエに2つの選択肢を提示した。「大理城の城主兼ルイスの夫人になるか、銀錠10万両を受け取り解放されるか」の2択である。クロエは城主の地位を受け入れることを選び、いくつかの条件を求めました。ルイスはこれを受け入れ、未完成の大理城へ彼女を連れて行った。