小説「海と陸の彼方へ」

 

第六章ルイス中華の皇帝を目指す

 

第7話雲南省奪還計画③「大理占領」

 

前書き

7月23日午後、ルイスと彼の部隊によって包囲された李春華の邸宅でケシの花500トン密輸の現場を発見し、家宅捜索でアヘン精製物5万トン、ケシの花100万トン、銀錠100億両が発見された。李春華とジャン=ピエール・デュモンは逮捕され、李春華の敷地内でアヘン精製所が3か所見つかり、没収された。没収品には絹織物、陶磁器、彫刻品、香辛料、茶葉などの貴重な交易品も含まれていた。 ルイスは没収した土地に社会福祉施設、教育施設、農業開発センターを建設することを決めた。これら新しい施設の建設と運営には、合計で約26,500両(日本円で約5.3億円)が見積もられた。一方で没収された交易品は、総額286,000両(日本円で約57.2億円)と評価された。 また、李春華一家は使用人として屋敷で働くことになり、裁判で李春華とジャン=ピエールには懲役20年が言い渡された。これらの行動はルイスの強いリーダーシップを示し、地域社会への影響と貢献を示した事件となった。

 

本文

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登場人物「1935年1月1日時点」  
アンヘル・ディアンジェロ16歳:ハーバーテックソリューションズ(HTS)の会長兼CEO。ル・クリスタル・ホテル所有「200万ドルで居抜き購入」。アンヘル航空㈱会長兼CEO「資本金10億ドル」。ヴィヴィ警備会社「資本金1千万ドル」オーナー。軍事産業への共同投資60億ドル「配当金:1,929万ドル/ 週」。現預金50億ドル「シャドウ・ネクサスから略奪」と債権「総額不明」所有。
マリア・エバ・ドゥアルテ16歳。アンヘルの妻。AMレジャー総合開発㈱「資本金1億ドル」社長兼COO。悪魔のように可愛い女。 
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アンヘルの家族 
イタリア系の不法移民で、彼らの家族名は「ディアンジェロ」です。以下はディアンジェロ家の家族構成です: 
・父親ヘクター・ハミルトン(28歳)「10歳の若返り」:アンヘルから10億ドルの資金を貰い、テキサスで石油と天然ガスを発掘した。 
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ヘクターの資金7億4,060万ドル。前々回の最後で石油精製会社の資本金を5千万ドルとして計上した。別途にエドゥワルドから50億ドルの資金を預かる。
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・母親ローサ・ディアンジェロ(35歳):ローサ・ディアンジェロは家庭を守りながら、地域の共同体でボランティア活動を行っています。彼女は子供たちが教育を受けることを強く望んでいます。 ヘクターの浮気が発覚し、ヘクターと離婚した。
・兄ルイス・ディアンジェロ(18歳):表向きはニューヨーク市警警部兼総合建設会社NYHCの社員。 実はマフィアのアンダーボス。
・ルイスの双子の姉マリア・ディアンジェロ(18歳):マリア・ディアンジェロは地元の専門校に通っています。 ヘクターに誘われ、行動を共にすることになる。
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ルイスの資金は小切手50億ドル。金塊50トン。銀錠50億両「内訳は一般会計20億両、特別会計30億両である」。第21章第②話までに一般会計は20億両の予算のうち506万5千両支出した。特別会計は30億両の予算を組み、今までに8,345,599両支出した。第6話でオートバイ100台の購入費3万両と、橋梁の追加費用2万両を支出したので、合計8,395,599両の支出である。
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ルイスの元捕虜兵。現在は忠実な部下と妻たち。
1.周恩来(ジョウ・エンライ)(37歳)。ルイスの参謀。江蘇省出身。
・穏やかで知的な性格をしており、どんな状況でも冷静さを失わない。
・話し方には礼儀があり、分析的で思慮深い。
・組織的な思考を持ち、リーダーシップを取れる。
・他者に対しては理解深く、共感を示すことができる。
2.ナディア・アミール・アル・サン(42歳)。ルイスの第一夫人「政治担当」。上海出身。
・自立心が強く、決断力がある女性。
・社会的な問題に対して意識が高く、積極的に意見を表明する。
・優雅で洗練された振る舞いを持ち、周囲に対しても敬意を払う。
3.サリマ・ファイサル・アル・ハウ(25歳)。ルイスの第二夫人「会計担当」。江西省出身。
・勇敢で情熱的な性格。自分の信念に強く固執する。
・感情が豊かで、時に感情的になりやすい。
・直感に頼ることが多く、行動的で果敢な面がある。
4王光美(ワン・グアンメイ)(14歳)。ルイスの第三夫人「軍隊担当」。山東省出身。
・年の割には成熟しており、好奇心が強い。
・柔軟な思考を持ち、新しい環境にも早く適応する。
・人懐っこく、周りの人々との交流を楽しむが、時には頑固な一面も。
5.テンパ・ティンリー(24歳)。パイロット。チャン・ユン(42歳)の長男。チャン・ユン(42歳)は摩梭(モソ)族:落水下村出身。
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ルイス18歳:巴蜀・雲南王と言っても、元清朝の王女:王華(ワン・ファ)が認めただけである。この物語の主人公。
ルイスの妻:エリザベス・ハーレイ。ジョン・ハーレイ(40歳)「ブリタニア号の船長」の元妻。
年齢: 38歳
背景: イギリスの中流家庭出身。元夫の仕事を支えるために、度々海を渡る。
性格: 温和で思慮深く、家族を深く愛する。元夫と同様に最初はルイスに不信感を抱いていたが、彼の真摯な態度に心を動かされ、夫と別れてルイスと結婚する。
義理の息子:ウィリアム・ハーレイ
年齢: 16歳
背景: 船長の息子として海上生活に慣れ親しんでいる。航海術に興味を持ち、父から学んでいる。
性格: 好奇心旺盛で活発。ルイスの冒険的な精神に魅了され、彼を尊敬するようになる。
義理の娘:エマ・ハーレイ
年齢: 14歳
背景: 船長の娘として幼少期から多くの国を訪れている。異文化に対する興味が強い。
性格: 社交的で好奇心が強く、新しい環境にすぐに適応する。ルイスの持つ異文化への敬意と好奇心に共感を覚える。
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ルイスには他にも妻「側室」がいる。王華(ワン・ファ)(45歳)、李芳蓉(リー・ファンロン)(37歳)、劉芸芸(リウ・ユェンユェン)(38歳)、劉月華(リウ・ユエファ)(48歳)、陳明花(チェン・ミンファ)(38歳)の5名である。

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ニューヨーク市の行政地図 

アメリカ合衆国東部 
昭文社「コンパクト世界地図帳」P52 


フロリダ州の地図と出典「南部にマイアミ、更に南部にホームステッドがある」 

北米「ダラスを中心として」
帝国書院「地歴高等地図」P67,68


マフィアの組織図「パブリックドメイン」


紅軍の長征

中国地図
出典 建築資料研究社「住まいの民族建築学」浅川滋男著 P8

 

7月23日の火曜日、午後4時。大理にある李春華の邸宅は、ルイスと彼の部隊によって包囲されていた。彼らは李春華「42歳」とジャン=ピエール・デュモン「28歳」を、ケシの花500トンの密輸で現行犯逮捕し、李春華邸を家宅捜索した。敷地内の倉庫からは、アヘン関連の物品や各種の交易品及び莫大な軍資金が発見され、その量は驚異的だった。アヘン精製物5万トン、ケシの花100万トン、そして銀錠100億両にのぼる。

交易品には貴重な絹織物、陶磁器、伝統的な彫刻品、香辛料、茶葉などが含まれていた。これらは高い市場価値を持ち、李春華の広範なネットワークを示していた。

ルイスの部下たちは、李春華の敷地を隈なく捜索し、3箇所のアヘン精製所を発見した。これらの証拠は、李春華のアヘン取引の実態を浮き彫りにした。発見された物品は全て没収され、アヘン関連物品は焼却処分された。

ルイスは、没収した敷地内に社会福祉施設、教育施設、農業開発センターを建設することを決めた。アヘン精製所があった場所には、地域社会のための新しい施設が建設されることになった。これは、ルイスの地域に対する責任感と持続可能な発展への取り組みを象徴するものであった。

李春華の邸宅から没収された貴重な交易品の評価と、社会福祉施設、教育施設、農業開発センターの建設および運営に関する費用の算出は以下の通りです。

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交易品の評価
1.絹織物
・数量: 5万反
・単価: 1反あたり5両
・総額: 250,000両「日本円で約50億円」

2.陶磁器
・数量: 2,000個
・単価: 1個あたり10両
・総額: 20,000両「日本円で約4億円」

3.伝統的な彫刻品
・数量: 200個
・単価: 1個あたり50両
・総額: 10,000両「日本円で約2億円」

4.香辛料各種
・数量: 500斤「斤は約600グラム」
・単価: 1斤あたり2両
・総額: 1,000両「日本円で約2,000万円」

5.茶葉
・数量: 50トン
・単価: 1トンあたり100両
・総額: 5,000両「日本円で約1億円」

建設費用と運営費用

1.社会福祉施設
・建設費用: 約5,000両「日本円で約1億円」
・年間運営費用: 約1,000両「日本円で約2,000万円」

2.教育施設
・建設費用: 約10,000両「日本円で約2億円」
・年間運営費用: 約2,000両「日本円で約4,000万円」

3.農業開発センター
・建設費用: 約7,000両「日本円で約1.4億円」
・年間運営費用: 約1,500両「日本円で約3,000万円」
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第21章第7話の特別会計収支は100億両と259,500両の収入となったが、100億両は特別会計には入れず貯金しておくことにした。

李春華一家は、かつての豊かな生活から一変し、使用人として屋敷で働くことになった。家族構成は、妻の劉秋「39歳」と息子、李偉「20歳」及ぼ娘の李婷「18歳」、李芸「16歳」で、彼らは新たな生活に適応せざるを得なくなった。

裁判では、李春華とジャン=ピエールに懲役20年の判決が下された。この判決は、ルイスの領域内での法の厳格な実施を示し、地域社会に対する彼の正義感を明確にした。

これらの出来事は、ルイスにとって重要な転機となった。彼の行動は、地域社会への深い影響をもたらし、彼のリーダーシップと地域への貢献に新たな章を加えたのであった。

7月23日の火曜日、夜が更ける頃の旧李春華邸は静けさに包まれていた。しかし、邸内の小さな厨房では、李春華の妻劉秋とそのふたりの娘李婷と李芸が忙しく立ち働いていた。彼女たちは、かつて仕えるべき主人の逮捕により、突然自らの手で食事の準備をする羽目に陥っていた。

使用人たちが屋敷を去った後、劉秋たちは初めての雲南料理に挑戦していた。彼女たちはこれまで、侍女に任せきりの贅沢な生活を送ってきたため、料理はまるで未知の世界だった。不慣れな手つきで調理を進める劉秋の目には、時折涙が浮かんでいた。

その夜、ルイスは女性陣を連れてこなかった。彼はこの屋敷の将来についてまだ何も決めていなかった。劉秋たちが懸命に作った雲南料理を食べると、その不味さに彼も苦笑いを浮かべたが、彼らの事情を知っていたルイスは怒ることなく、代わりに彼女たちに料理のコツを教え始めた。

ルイスは手際よく厨房に立ち、具体的な調理方法を丁寧に説明し始めた。彼の動きは手慣れたもので、材料の扱い方から火加減の調整まで、彼女たちに分かりやすく教えた。

劉秋と娘たちは、ルイスの手ほどきに目を輝かせながら、彼の指導に従って料理を進めた。料理が完成すると、李偉も含めた家族は、ルイスが作った雲南料理を味わい、「こんなに美味しい雲南料理は初めて」と感激の声を上げた。

その夜、旧李春華邸の厨房は、不安と緊張が支配していた空間から、新たな学びと交流の場へと変わり、ルイスと李家の家族との間には、予期せぬ絆が生まれ始めていた。料理を通じて、彼らは互いの生活を理解し、新たな関係を築き始めていたのである。

☆李春華一家の背景

李春華は、若い頃からその抜きん出た商才で名を馳せる男だった。雲南省の小さな村で生まれ、貧しい家庭に育った彼は、早くから家族を支えるために働き始めた。賢明で冷静な彼は、商売の機会を見逃さず、徐々に小さな商店を立ち上げた。

結婚して劉秋(リュウ・チウ)を妻に迎え、彼女との間に李婷「18歳」と李芸「16歳」、そして息子の李偉「20歳」を授かった。彼の事業は拡大し続け、やがて彼は雲南省の有力者として知られるようになった。

しかし、李春華の成功の裏には、暗い秘密があった。彼はアヘン取引に手を染めており、その利益で豪華な屋敷を建て、家族に裕福な生活を提供していた。長い間、劉秋と子供たちは夫の事業の真実を知らず、彼らは表面的な幸福の中で暮らしていた。

しかし、李春華の違法活動は次第に家族にも影響を与え始めた。李婷はある日、父の書斎で偶然アヘン取引に関する書類を見つけ、真実に気づく。ショックを受けた彼女は家族に真実を告げることができずにいたが、心の中では父親への信頼が揺らいでいた。

李芸と李偉も、周囲の変化に気づき始め、父親の事業に対する疑念を抱くようになった。劉秋も夫の行動が以前とは異なることに気づき、家族内に不穏な空気が漂い始めた。

家族は、表面的な幸せの裏に隠された秘密に苦悩しながら、日々を過ごしていた。彼らにとって、李春華の逮捕は衝撃的な出来事であり、同時に、長年抱えていた重荷からの解放でもあった。

このように、李春華一家は外見上の豪華さとは裏腹に、家族内では葛藤と不安が渦巻いていた。ルイスの出現は、彼らにとって新しい人生の始まりであり、過去の暗い影から逃れる機会となったのである。

ルイスが彼らに料理の手ほどきをした時、劉秋と娘たちは、彼らの人生が新たな道を歩み始めていることを感じた。彼らは、かつての贅沢な生活を捨て、真の家族の意味を見つめ直す機会を得たのだった。李春華一家の物語は、成功と失敗、家族の絆と再生の物語として、彼ら自身の人生を変えるものとなった。

☆午後8時
ルイスの元にパイロットのテンパ・ティンリーが姿を表した。彼も飛行機ではなく、オートバイクに乗りルイスと行動を共にしていたのである。

ルイス:お前に折り入って頼みがある。怒龍橋の建設現場へ行き、軽戦車隊隊長のウィリアム・ハーレイに合って来い。

テンパ・ティンリー:何を話せば良いのですか?

ルイス:お前もラ・シレーヌ号の行き先を不審に思っただろう?

テンパ・ティンリー:それはそうですね。"ケシの花500トンを積んで何処へ行くのだろう?"とは思っていました。

ルイス:ケシの花500トンの仕入れ値は25,000両だと言っていた。売値は8万両から10万両だろう。それだけの金を持っているのは、劉月華(リウ・ユエファ)(48歳)しかいない。

テンパ・ティンリー:ルイス城を捜索するおつもりですね。

ルイス:そうだ。共犯者も含めて全員捕らえねばならぬ。劉月華(リウ・ユエファ)を拘束するのは辛いがやむを得ない。

テンパ・ティンリー:了解しました。吉報をお待ち下さい。

テンパ・ティンリーが退出した後に、劉秋(リュウ・チウ)がお茶と餅を持って入ってきた。

彼女はピンクのノースリーブトップスを着ている。トップスは深いVネックで、肩には広いストラップがある。また、黒いショートパンツを履いており、足元にはヌードカラーのサンダルを履いている。彼女は金色のフープイヤリングと複数のネックレスを身につけており、手首にもアクセサリーが見える。この服装は暑い気候や屋内作業に適しているようだが、何か作業でもしていたのだろうか?

ルイス:劉秋(リュウ・チウ)よ。何か作業でもしていたのか?

劉秋(リュウ・チウ):ルイス様のお部屋の周りの草むらで蚊が大量に発生したものですから、私が殺虫剤を撒いておりました。今の時間になっても蒸し暑うございますので、このような軽装で居りました。お見苦しいところをお見せいたしました。

ルイス:いやいや。ご苦労さまであった。感謝するぞ。そなたも此処で少し寛(くつろ)いでいけ。

ルイスは、劉秋(リュウ・チウ)をソファーに座らせ、手ずから酒を注いでやった。劉秋(リュウ・チウ)は大家の妻らしく鷹揚で快活なところがあり、酒も良く飲んだ。結局ふたりは11時ころまで酒盛りを続け、劉秋(リュウ・チウ)は自室には帰らず、ルイスのベッドに潜り込むことになった。運命とは分からぬものである。

ルイスも気に入ったクロエとはしばらく男女の中にはならず、何とも思っていなかった女と臥所を共にする羽目になった。

翌朝、劉秋(リュウ・チウ)の作ったまずい料理を掻き込むと、ルイスはカバンに機密文書を入れて役所に出かけた。

7月24日水曜日、午前8時。大理の役所。
幹部連中は全員出勤していた。ルイスが入ってくると緊張が走った。ピリピリした空気感が周りを包んでいる。ルイスが宣言する。

"大理の全域はルイス雲南軍政長官の指揮下に入った。皆の者従え"

後ろの方で発言を求める声がする。

ルイス:発言するのは自由だ。今のうちに言いたいことを言っておけ。首を刎ねられると物も言えなくなるぞ。

まさか、こういう態度に出てくるとは思ってもいなかったのだろう。男は挙手を下ろした。

ルイス:発言するだけなら殺しはしない。おい、お前は挙手をして発言を求めただろう。言いたいことを言ってみろ。

男1:申し上げます。李春華(リー・チュンファ)長官はどうなりましたか?

ルイス:ケシの花500トン密輸入の罪で拘束し、屋敷を家宅捜索したところアヘンが大量に見つかった。アヘンの不法所持とケシの花密輸入の罪で昨夜懲役20年の刑に処すことが決まった。

男2:貴方様はどのような権限でそういう刑を決められたのですか?

ルイス:俺はルイスと言い、国民党政府の蒋介石総統から巴蜀・雲南の軍政長官を命じられた。いわば国民党政府から委嘱を受けた権限により、刑を決め、執行したのだ。今発言した者ふたりは姓名を述べよ。

ルシスがどう出るか予測も出来なかったふたりは正直に姓名を名乗った。ルイスは機密書類を開き、ふたりの名前が記載されていることを確認し、ふたりに近寄り、当て身を食らわして気絶させた後ロープで拘束した。ルイスは即刻このふたりを軍規に照らして懲役10年の刑を言い渡し、オートバイ部隊に指示し、役所の牢屋にぶち込んだ。

役所内は驚きのざわめきとどよめきに支配されたが、ややあって静寂に包まれ、ほぼ全員フウーというため息をついた。

ルイスはしばらく待ち、次の言葉を発しようとした瞬間、ある男がルイスの前に進み出た。

男3:私は幸いにして、ケシの花の密輸入には関与していないが、今回の摘発は漢民族を追い出すためではないのか?

ルイス:それはどういう意味だ。

男3:漢民族以外でもアヘンに関与すると逮捕されるのか?

ルイス:当たり前だ。イギリス、フランス、漢民族、少数民族全て逮捕する。

ルイス:但し、生活のためやむを得ずアヘンを精製していたことが判明すれば、アヘン精製所は撤去するが関与していた者たちの生活支援を行い、2度とアヘンの精製に関わらせないように援助を行っている。

男3:利益追求のためにやっているものは罰するが、生活のためにやむを得ずやっていると分かれば事情を考慮するというのか?

ルイス:大雑把に言えばそうだな。お前もアヘンに関わっていないならば、俺の陣営に加われ。

男はアヘンに関わっておらず、役所の中にも他にふたりだけ清廉潔白な男が居た。ルイスはその3名を役所の幹部に任命し、それ以外の連中の罪については追求しなかった。但し、彼らに"もし、再度アヘンに関わったことが判明すれば、極刑に処す"と告げ、署名捺印を求めた。

ルイスは大理の役所において一定の成果を収めた。確実とも言えないが、官僚たちはルイスに従うことを誓い、幹部たち3名の協力により、当面は安泰と考えられる。

ルイスにはここ大理を雲南省の副首都とする計画があった。首都は勿論昆明でなければならず、ルイスも泸水(ルーシュェイ)の城の問題が解決すれば、大理から昆明に向かうつもりであった。

そこで役所のとなりに大理城「敷地購入費5万両、建設費5万両」を建立することにし、地元の不動産屋と建設業者に料金を支払った。ルイスの計画ではこの城にはクロエを城主として置くつもりであった。

7月24日の水曜日の夕方、李春華邸では何か新しいことが始まろうとしていた。午後6時、劉秋(リュウ・チウ)は、主人であるルイスの帰りを、彼女なりの恭しい態度で迎えた。彼女の顔には、不安と期待が交錯する複雑な表情が浮かんでいた。

ルイスは、その晩の夕食を自ら手掛ける意向を示し、劉秋と彼女の娘たち、李婷「18歳」と李芸「16歳」を呼び寄せた。キッチンに立つ彼の姿は、どこか落ち着いた雰囲気を放っており、劉秋たちにとっては新鮮な光景だった。

「今日はみんなに少し特別な料理を作って見せるよ」とルイスが言うと、李家の女性たちは興味深く彼の動作を眺めた。ルイスが手がけるのは、雲南料理をメインにしつつ、サブメニューとしてタコスとトルティーヤを作るというもの。特に、トウモロコシを使ったニシュタマリゼーション処理は、彼女たちにとって見慣れない光景だった。

ルイスはトウモロコシの粒を丁寧に選び、石灰水に浸す工程から始めた。彼はその間、ニシュタマリゼーション処理の背景や、これがタコスやトルティーヤの風味と食感にどのように影響するのかを説明した。劉秋たちは、この新しい知識に驚きながらも、ルイスの手際の良さに感心していた。

処理が終わると、ルイスはトウモロコシの粒を洗い、すりつぶして生地を作り、それを薄く伸ばしてトルティーヤを焼き始めた。彼はタコスに詰める具材も同時に準備し、劉秋と娘たちは彼の動きに目を奪われていた。

夕食の時、テーブルには色とりどりの料理が並び、特にルイスが作ったタコスとトルティーヤは、李家の女性たちにとって新しい味の発見となった。特にトルティーヤを気に入ったようだ。

テーブルには、具材がたっぷりと詰められたトルティーヤ料理が盛り付けられている。これらのトルティーヤは、きれいに焼かれた表面に特徴的な焼き目がついており、中には肉、チーズ、トマト、緑のピーマンなどの色鮮やかな具材が使われている。料理は色とりどりのストライプ模様のテーブルクロスの上のプレートに盛り付けられている。

周りにはさまざまなサイドディッシュやディップが添えられており、フレッシュなサルサ、クリーミーなソース、アボカドを使ったグアカモーレなどがある。トマト、ライムのくし切り、レタスが飾りとして加えられており、新鮮さと味のバランスを強調している。この料理は、メキシコ料理を彷彿とさせる豊かな味わいと多様なテクスチャーが特徴で、カラフルで活気あるプレゼンテーションがされているルイスは彼女たちに食べ方を教えながら、楽しく会話を続けた。

この夜、ルイスが作った料理を囲んで、李家の食卓には久しぶりに温かな笑顔が戻った。劉秋と彼女の娘たちは、この特別な夕食を通じて、雲南料理とともに新たな料理の魅力を学んだのだった。そして、ルイスもまた、彼女たちとの時間を通じて、予期せぬ家庭の温もりを感じ取っていた。

☆ルイスの考え
李春華邸の敷地には農場や畜産牧場があります。ルイスは残された妻:劉秋(リュウ・チウ)やその子供たちにルイスがいなくなっても生計が維持できるようにしてやりたいと考えています。

1. 米の栽培と品種改良
・大理地域の気候と土壌:大理は温暖で湿潤な気候を持つため、米作りに適しています。土壌も肥沃で水はけが良いため、米の生産が盛んです。
・玄米の品種改良:玄米は栄養価が高く、市場での需要も増えています。食べやすく、栽培しやすい新しい品種の開発に取り組むことで、李家の農場は特色ある米の生産者としての地位を確立できます。

2. トウモロコシの栽培と加工
・ニシュタマリゼーション処理:トウモロコシをアルカリ処理し、栄養価と消化吸収を向上させるニシュタマリゼーションは、特にタコスやトルティーヤなどの製品製造に利用されます。この加工技術を取り入れることで、地元の農産物を付加価値の高い製品に変えることができます。

3. 小麦の大規模栽培
・農機具の導入:アメリカからの農機具導入により、効率的かつ大規模な小麦栽培を行うことが可能です。これにより、安定した小麦供給源としての役割を担い、地域の食糧安全保障に貢献できます。

4. 畜産牧場の運営
・家畜の飼育:牧場では、牛、羊、豚などの家畜を飼育し、肉や乳製品を生産します。特に地域の伝統に根差した家畜飼育方法や品種を選択することで、質の高い食品を市場に提供できます。

こういった計画を持っていたので、ルイスは彼女たちに「とうもろこしのニシュタマリゼーション処理」を教えたのです。

今回はここまでにいたしましょう。次回をお楽しみに。

 

後書き

7月23日の夜、贅沢な生活から一転して自ら料理をしなければならなくなった李春華の妻劉秋と娘たちである李婷と李芸は、雇い主であるルイスによって料理の指導を受ける。ルイスは彼女たちに雲南料理の作り方を教え、一緒に食事をすることで意外な親密さを築き始める。 一方でルイスは、アヘン取引の資金源である劉月華を捕らえる計画を進めていた。彼の部下であるパイロットのテンパ・ティンリーを使って他の共犯者たちを捕らえるよう命じた。 翌日、ルイスは雲南の軍政長官としての権力を行使して、アヘン取引に関与する者たちを処罰し、李春華らが逮捕された後の大理の役所の管理を固める。加えて、李春華邸を使い、農業開発に力を入れて劉秋と子供たちが自立できるよう支援する計画を始める。米、トウモロコシ、小麦の栽培や畜産を通じて、一家に持続可能な収入源を提供しようとする。 ルイスは同時に大理城を建設する計画を立て、地元の不動産や建設業者に支払いを行っていた。7月24日の水曜日夕方には、彼女たちが作る夕食を楽しみながら、ルイスと李春華一家は少しずつお互いの立場を理解し合い、新しい関係を築き始めていた。