小説「海と陸の彼方へ」
第六章ルイス中華の皇帝を目指す
第1話エリザベスと元夫ジョン・ハーレイとの別れ
前書き
エリザベス王妃は突然訪れた元夫ジョン・ハーレイに応対し、彼の別れの言葉を静かに聞いた。ジョンはイギリスに帰国すると告げ、エリザベスの実家に伝言を持っていくことを申し出た。エリザベスは彼に手紙を託し、彼女がルイスを愛してしまったことを告白した。ジョンはエリザベスとルイスを恨んではいないと述べ、自身がルイスに命を救われたことを説明した。ルイスは暗殺者からジョンを救い、彼を隠れ家に匿っていた。その後、ルイスはジョンに頭を下げ、エリザベスとの結婚と今後の野望を明かした。ジョンはエリザベスの幸せを願い、彼女が中華の皇后になることを祈った。彼はブリタニア号で重慶に向かい、上海を経由してアジア各地での交易を計画していた。ジョンはエリザベスに別れを告げ、彼女の人生から去った。
本文
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登場人物「1935年1月1日時点」
アンヘル・ディアンジェロ16歳：ハーバーテックソリューションズ（HTS）の会長兼CEO。ル・クリスタル・ホテル所有「200万ドルで居抜き購入」。アンヘル航空㈱会長兼CEO「資本金10億ドル」。ヴィヴィ警備会社「資本金1千万ドル」オーナー。軍事産業への共同投資60億ドル「配当金：1,929万ドル/ 週」。現預金50億ドル「シャドウ・ネクサスから略奪」と債権「総額不明」所有。
マリア・エバ・ドゥアルテ16歳。アンヘルの妻。AMレジャー総合開発㈱「資本金1億ドル」社長兼COO。悪魔のように可愛い女。
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アンヘルの家族
イタリア系の不法移民で、彼らの家族名は「ディアンジェロ」です。以下はディアンジェロ家の家族構成です：
・父親ヘクター・ハミルトン（28歳）「10歳の若返り」：アンヘルから10億ドルの資金を貰い、テキサスで石油と天然ガスを発掘した。
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ヘクターの資金7億4,060万ドル。前々回の最後で石油精製会社の資本金を5千万ドルとして計上した。別途にエドゥワルドから50億ドルの資金を預かる。
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・母親ローサ・ディアンジェロ（35歳）：ローサ・ディアンジェロは家庭を守りながら、地域の共同体でボランティア活動を行っています。彼女は子供たちが教育を受けることを強く望んでいます。 ヘクターの浮気が発覚し、ヘクターと離婚した。
・兄ルイス・ディアンジェロ（18歳）：表向きはニューヨーク市警警部兼総合建設会社NYHCの社員。 実はマフィアのアンダーボス。
・ルイスの双子の姉マリア・ディアンジェロ（18歳）：マリア・ディアンジェロは地元の専門校に通っています。 ヘクターに誘われ、行動を共にすることになる。
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ルイスの資金は小切手50億ドル。金塊50トン。銀錠50億両「内訳は一般会計20億両、特別会計30億両である」。今までに一般会計は20億両の予算のうち506万5千両支出した。特別会計は30億両の予算を組み、今までに83,235,075両支出した。前話で支出した金額は以下の通りである。
特別会計支出「前章第30話分」
これを加えると特別会計の支出総額は83,339,375両である。
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ルイスの元捕虜兵。現在は忠実な部下と妻たち。
1.周恩来（ジョウ・エンライ）（37歳）。ルイスの参謀。江蘇省出身。
・穏やかで知的な性格をしており、どんな状況でも冷静さを失わない。
・話し方には礼儀があり、分析的で思慮深い。
・組織的な思考を持ち、リーダーシップを取れる。
・他者に対しては理解深く、共感を示すことができる。
2.ナディア・アミール・アル・サン（42歳）。ルイスの第一夫人「政治担当」。上海出身。
・自立心が強く、決断力がある女性。
・社会的な問題に対して意識が高く、積極的に意見を表明する。
・優雅で洗練された振る舞いを持ち、周囲に対しても敬意を払う。
3.サリマ・ファイサル・アル・ハウ（25歳）。ルイスの第二夫人「会計担当」。江西省出身。
・勇敢で情熱的な性格。自分の信念に強く固執する。
・感情が豊かで、時に感情的になりやすい。
・直感に頼ることが多く、行動的で果敢な面がある。
4王光美（ワン・グアンメイ）（14歳）。ルイスの第三夫人「軍隊担当」。山東省出身。
・年の割には成熟しており、好奇心が強い。
・柔軟な思考を持ち、新しい環境にも早く適応する。
・人懐っこく、周りの人々との交流を楽しむが、時には頑固な一面も。
5.テンパ・ティンリー（24歳）。パイロット。チャン・ユン（42歳）の長男。チャン・ユン（42歳）は摩梭（モソ）族：落水下村出身。
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イギリス人捕虜
船長：ジョン・ハーレイ
年齢: 40歳
背景: イギリス出身の熟練した船長。厳格だが公正で、乗組員からの信頼が厚い。商船航海に長年従事しており、東アジアの海域に精通している。
性格: 最初はルイスの行動に反発していたが、その公正な行動原理と人間性に次第に感銘を受け、ルイスに忠誠を誓うようになる。
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ルイス18歳：巴蜀・雲南王と言っても、元清朝の王女：王華（ワン・ファ）が認めただけである。この物語の主人公。
ルイスの妻：エリザベス・ハーレイ。元ジョン・ハーレイ（40歳）「ブリタニア号の船長」の妻。
年齢: 38歳
背景: イギリスの中流家庭出身。元夫の仕事を支えるために、度々海を渡る。
性格: 温和で思慮深く、家族を深く愛する。元夫と同様に最初はルイスに不信感を抱いていたが、彼の真摯な態度に心を動かされ、夫と別れてルイスと結婚する。
義理の息子：ウィリアム・ハーレイ
年齢: 16歳
背景: 船長の息子として海上生活に慣れ親しんでいる。航海術に興味を持ち、父から学んでいる。
性格: 好奇心旺盛で活発。ルイスの冒険的な精神に魅了され、彼を尊敬するようになる。
義理の娘：エマ・ハーレイ
年齢: 14歳
背景: 船長の娘として幼少期から多くの国を訪れている。異文化に対する興味が強い。
性格: 社交的で好奇心が強く、新しい環境にすぐに適応する。ルイスの持つ異文化への敬意と好奇心に共感を覚える。
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ルイスには他にも妻「側室」がいる。王華（ワン・ファ）（45歳）、李芳蓉（リー・ファンロン）（37歳）、劉芸芸（リウ・ユェンユェン）（38歳）の3名である。
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ニューヨーク市の行政地図
アメリカ合衆国東部
昭文社「コンパクト世界地図帳」P52
フロリダ州の地図と出典「南部にマイアミ、更に南部にホームステッドがある」
北米「ダラスを中心として」
帝国書院「地歴高等地図」P67,68
マフィアの組織図「パブリックドメイン」
紅軍の長征
中国地図
出典 建築資料研究社「住まいの民族建築学」浅川滋男著 P8
今から二日前に遡り、南充ルイス邸での出来事を記す。
☆エリザベスと元夫ジョン・ハーレイとの別れ
6月23日日曜日午後4時、南充ルイス邸：庁堂「客間」
エリザベス王妃は突然訪ねてきた元夫ジョン・ハーレイに応対していた。千々に乱れる心を沈めながら、ジョンの別れの挨拶を黙って聞いた。
ジョン：王妃。私はブリタニア号に乗ってイギリスに戻ります。ご実家のご両親やご兄弟・ご姉妹に言付けがありましたら私が届けます。
エリザベスは実家の両親に宛てた手紙をジョンに託した。ルイス邸を辞そうとするジョンをエリザベスは引き止め、”私とルイスを許して下さい。貴方のことを思わなかったわけではありません。私は貴方以外の人を愛してしまったのです”とだけ告げた。
ジョン：許すも許さぬもありません。それは貴女の選択ですから。私は貴女もルイスも憎んでは居ません。実際、ルイスには命を助けられましたからね。
エリザベス：命を助けられたとはどういうことですか？
ジョンはその状況を詳しく、エリザベスに説明した。
”捕らえられた私はブリタニア号の船倉にしばらく監禁されていました。二日目の深夜のこと。船倉に突然兵士が数名雪崩込んで来ました。劉天賜（リウ・ティエンスー）と劉鵬飛（リウ・ペンフェイ）にジョンを殺せと命令された暗殺者でした。私は手枷、足枷を掛けられた身。命は風前の灯火です。しかし、この事態を予測していた人物がたった一人いました。ルイスです。彼は暗殺者が船倉になだれ込むやいなや電光石火の速さで彼らに当身を食らわし、気絶させたのです。彼は人を殺傷するのが嫌いでよほどの場合以外は武器を持たないのです”
”ルイスは私の拘束を解き、別の屋敷に私をしばらく匿いました。数日後ルイスが訪れ、私に頭を下げ、「南充の元王女から巴蜀・雲南王の推戴を受け、受諾した。エリザベスを愛している。彼女を王妃にした。貴方の妻を奪う形になったことを許して欲しい」と言ったのです”
”私は彼にこう答えました。「確かにエリザベスは私の妻だが、選択するのは彼女自身だ。私に謝る必要はない。願わくば永遠にその愛が続くことを願う」。すると彼はこう答えました。「私は中華の皇帝になろうと考えている。その途中で何カ国かの国王に就任すると思う。一つの国には王妃を一人置かねばならない。エリザベス以外の王妃も何人か置くことになると思うが、私はエリザベスを皇后にする」”
”私は一介の商人で難しいことは分かりませんが、ルイスが貴女を愛していることだけは確信しました。他の側室たちや将来の貴女以外の王妃たちとの争いに勝利され、中華の皇后になられることを願います”
エリザベス：貴方はお金を持っているの？積み荷はあるの？
ジョン：ブリタニア号と水夫たち200名及びケシの花やアヘン以外の積み荷はルイスが返してくれました。今から重慶でブリタニア号に乗り、上海へ向かいます。アヘンには手を出さず、東南アジアや琉球、日本などと交易するつもりです。上海まではイントレピッド号が護衛してくれます。
エリザベスはジョンの姿を見つめ、深い罪悪感とともに心の奥底で渦巻く愛情の葛藤に苛まれていた。彼女の瞳にはかつての情熱が映っていたが、それは今や遠い過去のものとなっていた。彼女は静かに口を開き、言葉を紡いだ。「私は貴方以外の人を愛してしまったのです」。その言葉には、彼女がジョンと共に過ごした時間への懐かしさと、新たな愛への罪悪感が混ざり合っていた。
エリザベスの心は、かつてジョンとの幸せだった日々を思い返していた。彼との初めての出会い、一緒に過ごした日々、互いの夢を語り合った夜。しかし、時間が経つにつれ、彼女の心は変化し始めていた。ルイスとの出会いが彼女の内面を根底から揺さぶり、新たな愛の感情が芽生えていた。ジョンへの愛が色褪せることはなかったが、ルイスへの惹かれは否定できない現実だった。
彼女は、ルイスとの未来を夢見る自分自身に戸惑い、それをジョンに告げることの重みに苦しんでいた。ルイスへの愛情が彼女の心を支配していく中で、ジョンへの感謝と愛情は変わらずに残っていた。エリザベスは、ジョンとの別れがどれほど辛く、心を引き裂かれるようなものだったかを内心で感じていた。彼女は、ジョンへの深い感謝と、ルイスへの新たな愛情という複雑な感情の中で、新しい人生への一歩を踏み出そうとしていた。
ジョンは軽く頭を下げてルイス邸の庁堂を出ていき、二度とエリザベスに会うことはなかった。
6月25日火曜日、午前11時。ルイスとウィリアムが成功裏にアヘン精製所を襲い、泸水（ルーシュェイ）の役所に戻ると、劉月華（リウ・ユエファ）がルイスに素早く掛けより、ぴったりとルイスに寄り添って来た。一方でウィリアムは、周恩来（ジョウ・エンライ）、テンパ・ティンリー、李小芳（リー・シャオファン）、王美麗（ワン・メイリー）に囲まれ、彼らに捜索の話を熱心に語っていた。
ルイスはウィリアムの勇敢な行動を称賛し、軽戦車隊の隊長に任命するとともに、年俸として500両、一時金としてさらに500両を支給した。ウィリアムはその大金の一部「50両」を銅銭「銀錠1両＝1貫文＝1,000文」に両替し、実際に使えるようにした。
その時、劉月華の子供たちが姿を現した。長男の黄剛（ホアン・ガン）、長女の黄蓮（ホアン・リエン）、次男の黄志強（ホアン・ジーチャン）、次女の黄小芸（ホアン・シャオユン）であり、それぞれが家族の中で独自の道を歩んでいた。
ウィリアムの目は特に、色白で小柄な黄小芸に惹かれたが、彼は恥ずかしさから直接話しかけることができなかった。そこで、彼は王美麗にアドバイスを求めた。王美麗は二人を昼食の準備に巻き込むことを提案し、ウィリアムには黄小芸との接近のチャンスを与えた。
昼食の準備は李小芳と王美麗が指揮を取り、上海料理を中心に進められた。メニューには紅焼肉「豚の煮込み」、青椒肉絲「豚肉とピーマンの炒め物」、葱油餅「ネギ油のパンケーキ」、白米飯が含まれていた。料理の下拵えでは、ウィリアムと黄小芸が一緒に野菜を切ったり、調味料を準備したりする中で、微笑ましいやり取りが生まれた。ウィリアムは黄小芸に簡単な料理の質問をしつつ、彼女の笑顔に心を奪われていた。
黄小芸はウィリアムの手際の良さに感心し、穏やかな笑顔で彼の質問に答えながら、二人は自然と会話を楽しんだ。昼食の準備が進む中、ウィリアムは黄小芸の家族や趣味について聞き、彼女もまたウィリアムの勇敢な行いや趣味に興味を持ち始めていた。
最終的に、昼食は家族と一緒に楽しく食べられ、ウィリアムと黄小芸の間には新たな絆が芽生え始めていた。ウィリアムはこの日を、彼の成長と新たな友情の始まりとして心に刻んだ。
ウィリアムは、アヘン精製所の襲撃作戦に成功したことにより、自分自身に新たな自信を見出していた。彼はこれまでの自分とは違う、成長した自分を感じ始めていたのである。彼の心の中では、少年から成人への移行期にある複雑な感情が渦巻いていた。
彼はこれまで、義父ルイスの影に隠れ、自分の存在を確立するのに苦労していた。しかし、今回の作戦で示した勇気と判断力は、彼自身にとっても驚きであり、自らの可能性を新たに認識するきっかけとなった。この成功体験は、ウィリアムに自己効力感を与え、彼の自尊心を高めることにつながっていたのである。
また、彼はルイスからの認識と期待を得ることにより、自分が家族内で重要な役割を果たせることを実感していた。ウィリアムは自分の行動が家族や周囲の人々に影響を与え、尊敬される存在になれることに気づき始めていた。
しかし、内面ではまだ若さゆえの不安や戸惑いを感じていた。特に黄小芸への感情は、彼にとって新しい経験であり、自分の感情をどう表現してよいか戸惑っていた。彼は初めての恋愛感情に興奮しつつも、それをどのように扱ってよいかわからず、内心で葛藤していた。
ウィリアムの内面には、勇敢な戦士としての自信と、若者としての不確実性が共存していた。彼は自分がこれからどのような人物になるか、どのように家族や社会に貢献できるかを真剣に考え始めていた。また、自分の未来に対する期待と同時に、恋愛や人間関係における新しい挑戦に対しても積極的になりつつあった。
昼食後、ルイスは劉月華（リウ・ユエファ）一家と一緒に劉月華（リウ・ユエファ）の亡き夫、黄文遠（ホアン・ウェンユエン）の葬式に出かけた。残されたウィリアムは手持ち無沙汰を紛らすため、話しかけやすい、李小芳（リー・シャオファン）、王美麗（ワン・メイリー）と世間話をした。
李小芳（リー・シャオファン）：坊っちゃんはアヘン精製所をやっつけたことをお母様に報告したの？
ウィリアム：そういえば、まだだった。報告しなきゃいけないね。ところでルイスさんは貴女たちに優しいかい？
李小芳（リー・シャオファン）：勿論、優しくして下さるわ。
王美麗（ワン・メイリー）：でも誰にでも優しいのよね。私にだけ優しくして欲しいわ。
李小芳（リー・シャオファン）：それは無理というものね。誰にでもお優しいけど、王妃は別格ね。
ウィリアム、王美麗（ワン・メイリー）：どういう意味で別格なの。
李小芳（リー・シャオファン）：この間ね。ルイス様と周恩来（ジョウ・エンライ）さんが話しているのを聞いたのよ。こんな感じだったわ。
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6月25日火曜日、午前11時。ルイスとウィリアムが成功裏にアヘン精製所を襲い、泸水（ルーシュェイ）の役所に戻ると、その場にいた周恩来（ジョウ・エンライ）がルイスに次の一手を尋ねた。
周恩来（ジョウ・エンライ）：ルイス様、次はどの地を攻めるおつもりですか？
ルイス：貴州省だ。彼らはアヘン精製を行い、私腹を肥やしている。
周恩来（ジョウ・エンライ）：しかし、蒋介石の国民党政府もアヘン税を取っています。似た者同士ではないですか？
ルイス：違う。国民党政府はアヘン密売商人から税を徴収し、資金を政府に入れている。貴州省の責任者は個人的に懐を肥やしている疑いがある。
周恩来（ジョウ・エンライ）：貴州省を攻め滅ぼした後、貴州王になられると思いますが、王妃はどうなさいますか？
ルイス：それが悩みの種だ。エリザベスを王妃にすると、巴蜀・雲南の王妃がいなくなる。
周恩来（ジョウ・エンライ）：でも、現在雲南には王妃がおらず、問題ないのでは？
ルイス：国内が安定しない。私の考えは、貴州王妃をエリザベスにし、巴蜀王妃は王華（ワン・ファ）にする。
周恩来（ジョウ・エンライ）：雲南王妃は？
ルイス：まだ適任者がいないが、エリザベスには皇后も兼ねてもらうつもりだ。
周恩来（ジョウ・エンライ）：しかし、王華（ワン・ファ）様が黙っているとは思えませんね。
ルイス：困りものだが、エリザベスには後宮に味方がいない。後宮の全員が王華（ワン・ファ）の身内だからな。
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ウィリアム：そうだったのか。お母様も前途多難だな。後宮に一人くらい味方を作らないといけないな。
李小芳（リー・シャオファン）、王美麗（ワン・メイリー）：王子様。私達を側室に推薦して下さいませ。お願いいたします。
ウィリアム：急に王子様と言いだすんだから。現金なやつらだ。でもお前たちでは役不足だと思う。お前たちをルイスさんの側女にしろと言ってやるよ。それで我慢しろ。でも側室にふさわしい女性が誰かいないかな？そうだ。お亡くなりになった炭田王の奥様：劉月華（リウ・ユエファ）（48歳）さんはどうだろう？一度、お母様に電話してみるよ。
ウィリアムは南充ルイス邸の主エリザベスに電話した。先ずアヘン精製所の攻撃に成功し、ルイスから軽戦車隊の隊長に任ぜられ、年俸500両と一時金500両を頂いたことを報告した。エリザベスは涙を流して喜び、ルイスに感謝した。引き続いて、ルイスと周恩来（ジョウ・エンライ）との会話の内容を説明し、王華（ワン・ファ）がエリザベスの強敵になっていることを話した。
ウィリアムは”後宮に味方をひとり増やしたほうが良い。劉月華（リウ・ユエファ）（48歳）「炭田王の未亡人」さんを後宮に入れたら良いと思う。彼女ならお母さんの生涯の味方になってくれると思う。また、ここで私と仲の良い李小芳（リー・シャオファン）（25歳）、王美麗（ワン・メイリー）（28歳）のふたりをお母さんの侍女兼ルイスさんの側女にするのが良いと思う”と母親に意見を述べた。
エリザベスも後宮の女性たちが表面上はエリザベスを立てているが、実際は、王華（ワン・ファ）を王妃として扱っているのを知っていた。しかし、後宮に誰も味方も知り合いもいない状態では如何ともしがたかった。
エリザベスはウィリアムの意見を深く考慮してみた。ウィリアムが側室の候補として挙げた劉月華（リウ・ユエファ）（48歳）さんだが、良いところは2つあった。
一つは炭田の知識が豊富であり、中国の地理や歴史に詳しいこと。これは劉芸芸（リウ・ユェンユェン）（38歳）の学識に対抗できる人材だということである。
もうひとつは48歳という年齢である。失礼だが子供を妊娠できるとは思えない高齢である。エリザベスは彼女を側室として認めることにした。
またもう一つのウィリアムの案「李小芳（リー・シャオファン）、王美麗（ワン・メイリー）」のふたりを自分の侍女兼ルイスの側女（そばめ）にすることも了解した。若い二人の魅力でルイスを自分の部屋に呼ぶことも出来ると考えたのである。
6月25日の火曜日、夕方6時。劉月華（リウ・ユエファ）一家は、黄文遠（ホアン・ウェンユエン）の葬儀を終え、泸水（ルーシュェイ）の城へ戻った。この城はかつて黄文遠の所有物で、ルイスが10万両で炭田を購入した際に劉月華から贈られたものである。
ルイスは既に泸水の役所に戻っており、騒動の事後処理に専念していた。その最中、エリザベスからの電話を受け、劉月華を側室に迎えること、そして「李小芳（リー・シャオファン）、王美麗（ワン・メイリー）」を侍女兼側女にするという提案を受け入れることにした。
ルイスは内心の喜びを抑えつつ、提案を受諾する旨を伝え、馬を駆って劉月華から贈られた城へと急行した。城には、劉月華一家の他にもウィリアム、テンパ・ティンリー、周恩来（ジョウ・エンライ）、李小芳、王美麗が揃っていた。
ルイスは、劉月華を側室に、李小芳と王美麗をエリザベスの侍女兼自身の側女に任命するという驚きの決定を公表した。この発表に、劉月華、李小芳、王美麗の三人は感動と喜びで満たされ、その場に集まった全員から祝福と冷やかしの言葉を受けた。
彼女たちの笑顔は、その場の空気を一変させ、葬儀の哀しみが一気に喜びと祝福の雰囲気へと変わった。かつての愁嘆場が、今や歓喜に満ちた祝宴の場へと変貌を遂げたのだった。
☆新婚初夜
ルイスは当然側室の劉月華（リウ・ユエファ）を伽に呼んだが、劉月華（リウ・ユエファ）は固辞する。不審に思い、理由を聞くと、”私は昨夜お情けを頂きました。今宵は側女（そばめ）を夜伽に召されませ。彼女たちは何時もルイス様のお情けを頂戴したいと言っております”と言う。
劉月華（リウ・ユエファ）は彼女たちの辛い過去を知っており、彼女たちに深い同情の念を抱いていたのだ。
顧みれば確かにふたりの人生は聞くだに耐え難く辛いものであった。李小芳は辛い人生を送ってきた女性で、幼い頃に両親を亡くし、若くして結婚したが、夫は家庭を顧みない人物だった。彼女は家計を支えるため、農作業とアヘン精製の仕事に従事していた。一方、王美麗は若い頃に人身売買の犠牲となり、長年苦難の日々を過ごしたが、逃げ出し、新しい生活を始めるために農村へとやってきた。
ルイスは今夜の伽に王美麗を選び、彼女の人生に一時の輝きと喜びを与えた。
後書き
6月25日火曜日、ルイスとウィリアムはアヘン精製所を襲撃し、泸水（ルーシュェイ）の役所に戻る。周恩来（ジョウ・エンライ）との会話で、ルイスは次の目標として貴州省を挙げる。彼はエリザベスを貴州王妃に、巴蜀王妃には王華（ワン・ファ）を据え、エリザベスを皇后にする計画を明らかにするが、後宮には王華の影響力が強いことが悩みの種となっていた。ウィリアムはこの状況を母エリザベスに報告し、劉月華（リウ・ユエファ）（48歳）を側室に、李小芳（リー・シャオファン）（25歳）、王美麗（ワン・メイリー）（28歳）をエリザベスの侍女兼ルイスの側女にすることを提案する。この提案はエリザベスによってルイスに伝えられ、彼はこれを受け入れる。劉月華は炭田に関する豊富な知識を持ち、年齢的にも子供を産む可能性が低いため、側室として理想的な選択であるとエリザベスは考える。李小芳と王美麗は若く魅力的であり、ルイスをエリザベスの部屋に引き寄せる助けになると期待されていた。
今回はここまでにいたしましょう。次回をお楽しみに。
