小説「海と陸の彼方へ」

 

第五章大渡河に掛かる橋

 

第29話ルイス海賊となる「外国商船との戦い」④

 

前書き

周恩来(ジョウ・エンライ):殿様、御后様。妻を連れてまいりました。鄧穎超(デン・インチャオ):鄧穎超と申します。31歳で御座います。夫も怪我が治りましたので一緒に参りました。ルイス:そうだったか。周恩来良く来てくれたな。皆に紹介しよう。彼は私の部下の一人で参謀をしてもらっている。戦闘で大怪我をして療養していたのだ。ルイス:私も巴蜀・雲南国王に推戴して貰ってな。一緒にいるのが王妃のエリザベスだ。控えているのが側室の3名で、王華(ワン・ファ)(45歳)、李芳蓉(リー・ファンロン)(37歳)、劉芸芸(リウ・ユェンユェン)(38歳)と言う。ルイス:それにしても私がここにいることが良く分かったな?王華:周恩来は私の昔からの知り合いなのです。ルイス:何とそうでしたか。大奥様もお顔が広いですね。王華:大奥様と呼ばずに、王華と呼び捨てになさいませ。妻なのですから。ルイス:そうでしたな。中々それも急には難しうございますね。

 

本文

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登場人物「1935年1月1日時点」  
アンヘル・ディアンジェロ16歳:ハーバーテックソリューションズ(HTS)の会長兼CEO。ル・クリスタル・ホテル所有「200万ドルで居抜き購入」。アンヘル航空㈱会長兼CEO「資本金10億ドル」。ヴィヴィ警備会社「資本金1千万ドル」オーナー。軍事産業への共同投資60億ドル「配当金:1,929万ドル/ 週」。現預金50億ドル「シャドウ・ネクサスから略奪」と債権「総額不明」所有。
マリア・エバ・ドゥアルテ16歳。アンヘルの妻。AMレジャー総合開発㈱「資本金1億ドル」社長兼COO。悪魔のように可愛い女。 
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アンヘルの家族 
イタリア系の不法移民で、彼らの家族名は「ディアンジェロ」です。以下はディアンジェロ家の家族構成です: 
・父親ヘクター・ハミルトン(28歳)「10歳の若返り」:アンヘルから10億ドルの資金を貰い、テキサスで石油と天然ガスを発掘した。 
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ヘクターの資金7億4,060万ドル。前々回の最後で石油精製会社の資本金を5千万ドルとして計上した。別途にエドゥワルドから50億ドルの資金を預かる。
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・母親ローサ・ディアンジェロ(35歳):ローサ・ディアンジェロは家庭を守りながら、地域の共同体でボランティア活動を行っています。彼女は子供たちが教育を受けることを強く望んでいます。 ヘクターの浮気が発覚し、ヘクターと離婚した。
・兄ルイス・ディアンジェロ(18歳):表向きはニューヨーク市警警部兼総合建設会社NYHCの社員。 実はマフィアのアンダーボス。
・ルイスの双子の姉マリア・ディアンジェロ(18歳):マリア・ディアンジェロは地元の専門校に通っています。 ヘクターに誘われ、行動を共にすることになる。
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ルイスの資金は小切手50億ドル。金塊50トン。銀錠50億両「内訳は一般会計20億両、特別会計30億両である」。今までに一般会計は20億両の予算のうち506万5千両支出した。特別会計は30億両の予算を組み、今までに827,799,250両支出した。前話でイギリス商船ブリタニア号とその積荷を買い取り、所有者の妻エリザベスに銀錠380,150両分の為替を支払った。またイントレピッド号の水夫たち150名にそれぞれ500両の報奨金「合計75,000両」を支払った。総計すると特別会計は30億両の予算のうち支出額は83,235,075両である。
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ルイスの元捕虜兵。現在は忠実な部下と妻たち。
1.周恩来(ジョウ・エンライ)(37歳)。ルイスの参謀。江蘇省出身。
・穏やかで知的な性格をしており、どんな状況でも冷静さを失わない。
・話し方には礼儀があり、分析的で思慮深い。
・組織的な思考を持ち、リーダーシップを取れる。
・他者に対しては理解深く、共感を示すことができる。
2.ナディア・アミール・アル・サン(42歳)。ルイスの第一夫人「政治担当」。上海出身。
・自立心が強く、決断力がある女性。
・社会的な問題に対して意識が高く、積極的に意見を表明する。
・優雅で洗練された振る舞いを持ち、周囲に対しても敬意を払う。
3.サリマ・ファイサル・アル・ハウ(25歳)。ルイスの第二夫人「会計担当」。江西省出身。
・勇敢で情熱的な性格。自分の信念に強く固執する。
・感情が豊かで、時に感情的になりやすい。
・直感に頼ることが多く、行動的で果敢な面がある。
4王光美(ワン・グアンメイ)(14歳)。ルイスの第三夫人「軍隊担当」。山東省出身。
・年の割には成熟しており、好奇心が強い。
・柔軟な思考を持ち、新しい環境にも早く適応する。
・人懐っこく、周りの人々との交流を楽しむが、時には頑固な一面も。
5.テンパ・ティンリー(24歳)。パイロット。チャン・ユン(42歳)の長男。チャン・ユン(42歳)は摩梭(モソ)族:落水下村出身。
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イギリス人捕虜
船長:ジョン・ハーレイ(John Harley)
年齢: 40歳
背景: イギリス出身の熟練した船長。厳格だが公正で、乗組員からの信頼が厚い。商船航海に長年従事しており、東アジアの海域に精通している。
性格: 最初はルイスの行動に反発していたが、その公正な行動原理と人間性に次第に感銘を受け、ルイスに忠誠を誓うようになる。
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ルイス18歳:巴蜀・雲南王と言っても、元清朝の王女:王華(ワン・ファ)が認めただけである。この物語の主人公。
ルイスの妻:エリザベス・ハーレイ。元ジョン・ハーレイ(40歳)「ブリタニア号の船長」の妻。
年齢: 38歳
背景: イギリスの中流家庭出身。元夫の仕事を支えるために、度々海を渡る。
性格: 温和で思慮深く、家族を深く愛する。元夫と同様に最初はルイスに不信感を抱いていたが、彼の真摯な態度に心を動かされ、夫と別れてルイスと結婚する。
義理の息子:ウィリアム・ハーレイ
年齢: 16歳
背景: 船長の息子として海上生活に慣れ親しんでいる。航海術に興味を持ち、父から学んでいる。
性格: 好奇心旺盛で活発。ルイスの冒険的な精神に魅了され、彼を尊敬するようになる。
義理の娘:エマ・ハーレイ(Emma Harley)
年齢: 14歳
背景: 船長の娘として幼少期から多くの国を訪れている。異文化に対する興味が強い。
性格: 社交的で好奇心が強く、新しい環境にすぐに適応する。ルイスの持つ異文化への敬意と好奇心に共感を覚える。
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ルイスには他にも妻「側室」がいる。王華(ワン・ファ)(45歳)、李芳蓉(リー・ファンロン)(37歳)、劉芸芸(リウ・ユェンユェン)(38歳)の3名である。

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ニューヨーク市の行政地図 

アメリカ合衆国東部 
昭文社「コンパクト世界地図帳」P52 


フロリダ州の地図と出典「南部にマイアミ、更に南部にホームステッドがある」 

北米「ダラスを中心として」
帝国書院「地歴高等地図」P67,68


マフィアの組織図「パブリックドメイン」


紅軍の長征

中国地図
出典 建築資料研究社「住まいの民族建築学」浅川滋男著 P8

 

6月24日月曜日午前6時、新たな始まりの日が明けた。夜が明けるとともに、ルイス王邸のエリザベスの居室は、新婚の温もりと家庭の穏やかな空気で満たされていた。エリザベスは台所でイングランドの家庭料理を丁寧に作り上げていた。この日から、彼女は女主人としての新しい生活を始めるのだ。

朝の光が窓から差し込み、寝室の八脚床(パー ジャオ チュアン)で眠っていたルイスが静かに目覚めた。彼はゆっくりとベッドから身を起こし、エリザベスのもとへと向かった。彼女の姿は、朝の忙しさの中でも穏やかさを失っていなかった。

ルイス(微笑みながら):おはよう、エリザベス。こんな素敵な朝食を作ってくれてありがとう。

エリザベス(優しく微笑んで):おはよう、ルイス。今日は特別な日だから、私たちだけの朝食を用意したの。ウィリアムとエマももうすぐ起きてくるわ。

やがて、ウィリアムとエマが目をこすりながら寝室から出てきた。2人は新しい家族としての朝を迎えることに胸を躍らせていた。

ウィリアム:おはよう、ママ。おはよう、ルイス。朝食、いい匂いがするね!

エマ:おはようございます。今日からここが私たちの家なんですね!

家族が集まると、エリザベスは愛情を込めて作った朝食をテーブルに並べた。彼女の料理は、伝統的なイングランドの味わいを持ちながらも、新しい家族のために特別な工夫が施されていた。

ルイス:これからは毎日が冒険だ。家族として新しい一歩を踏み出すんだ。

エリザベス:私たちは皆、お互いを支え合い、新しい生活を築いていくわ。

ウィリアムとエマは、新しい父親としてのルイスに期待と尊敬の眼差しを向け、エリザベスは家族を見守る温かな眼差しでそれを受け止めた。この朝食は、彼らがこれから共に歩む人生の新しい始まりの瞬間であり、家族の絆が一層深まる貴重な時間となった。

"殿様。いらっしゃいますか?周恩来(ジョウ・エンライ)(37歳)とおっしゃる方が奥様:鄧穎超(デン・インチャオ)(31歳)と一緒にお見えですよ"と侍女の、王雅静(ワン・ヤジン)の呼ぶ声がする。

ルイスとエリザベスは大慌てで庁堂へと向った。

☆午前8時:庁堂「客間、大食堂」
そこには、王華(ワン・ファ)(45歳)、李芳蓉(リー・ファンロン)(37歳)、劉芸芸(リウ・ユェンユェン)(38歳)の3名が揃っていた。
側室の3名が揃ってルイスとエリザエスに挨拶する。"国王様、王妃様お早うございます"

ルイスもエリザベスも恐縮し、"「ルイス、エリザベス」と呼び捨てにしてくれ"と頼む。そうも行かないので、「殿様、御后様」と呼ぶことに統一した。

周恩来(ジョウ・エンライ):殿様、御后様。妻を連れてまいりました。

鄧穎超(デン・インチャオ):鄧穎超(デン・インチャオ)と申します。31歳で御座います。夫も怪我が治りましたので一緒に参りました。

ルイス:そうだったか。周恩来(ジョウ・エンライ)良く来てくれたな。皆に紹介しよう。彼は私の部下の一人で参謀をしてもらっている。戦闘で大怪我をして療養していたのだ。

ルイス:私も巴蜀・雲南国王に推戴して貰ってな。一緒にいるのが王妃のエリザベスだ。控えているのが側室の3名で、王華(ワン・ファ)(45歳)、李芳蓉(リー・ファンロン)(37歳)、劉芸芸(リウ・ユェンユェン)(38歳)と言う。

ルイス:それにしても私がここにいることが良く分かったな?

王華(ワン・ファ):周恩来(ジョウ・エンライ)は私の昔からの知り合いなのです。

ルイス:何とそうでしたか。大奥様もお顔が広いですね。

王華(ワン・ファ):大奥様と呼ばずに、王華(ワン・ファ)と呼び捨てになさいませ。妻なのですから。

ルイス:そうでしたな。中々それも急には難しうございますね。

周恩来(ジョウ・エンライ):ルイス様。いや、これは失礼しました。殿様、私がこうして参りましたのはルノーFT-17という軽戦車のことでございます。私が共産党時代知り合ったモスクワの闇武器商人が購入してくれないかと言うのです。

ルイスは彼に"軽戦車とはどういう仕様だ"と聞いた。周恩来(ジョウ・エンライ)は次のように答えた。闇商人からの受け売りである。

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ルノーFT-17は、第一次世界大戦中にフランスで設計・製造された軽戦車です。1917年に導入され、戦車の設計におけるいくつかの重要な革新を含んでいました。

1.設計の革新性:
・フルトレーラーデザイン:FT-17は、ドライバーと戦闘室を別の場所に配置する、いわゆる「フルトレーラー」設計を採用していました。これは、以前の多くの戦車が持っていたドライバーと砲手が同じ場所にいるデザインからの重要な進歩でした。
・砲塔の回転:この戦車は、完全に回転可能な砲塔を備えていました。これにより、戦車は停止せずにあらゆる方向に火力を提供できるようになりました。これは後の戦車設計の標準的な特徴となりました。

2.武装と装甲:
・主武装:主砲として37mm砲または7.92mm機関銃を装備していました。
・装甲:装甲は比較的薄く、最大22mm程度でした。これは、当時の標準的な小火器や砲弾からの保護を意図していました。
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ルイスは"悪くはないが、殺傷武器を中国人に使用したくないので非致死性の催涙ガス弾を撃てる砲台が欲しかった。勿論自衛のための軽機関銃「チェコスロバキア製ブルノZBVz26」を装填出来るかどうかも確かめたい。また軽機関銃を跳ね返せるだけの装甲があるかどうかも確認したい"と答えた。

李芳蓉(リー・ファンロン)(37歳):殿様。その闇武器商人とやらにお会いになり、軽戦車の見本を見せてもらえば良いのでは?軽機関銃「チェコスロバキア製ブルノZBVz26」なども売ってくれるかも知れませぬ。

ルイス:そうだな。物を見ないことには始まらぬ。周恩来(ジョウ・エンライ)よ。彼と会う手はずを整えてくれ。出来たら郊外の方が良いな。

周恩来(ジョウ・エンライ)は闇武器商人に連絡を取り始めた。その間を利用してルイスは、陳浩然(チェン・ハオラン)(33歳)に連絡し、重慶郊外にあるアヘン精製工場を偵察させた。

周恩来(ジョウ・エンライ):殿様。その男は雲南省の泸水(ルーシュェイ)におり、軽戦車を使って重慶に行くことは出来ないと言っています。

ルイス:大きな船に乗せれば良いだろう。何故来れないんだ?

劉芸芸(リウ・ユェンユェン)(38歳):お殿様。四川省の重慶は長江本流の沿岸にあり、雲南省の泸水(ルーシュェイ)は怒江(ヌージャン)の河畔にあります。残念ながら、長江水系と怒江(ヌージャン)は交わらないのです。

劉芸芸(リウ・ユェンユェン):怒江と長江は、「三江並流」と称されるエリアのなかで非常に接近して流れていますが、これは中国の雲南省にあって、長江の金沙江、怒江、およびランツァン江「メコン川」の三つの大河が並行して流れる地域を指します。これらの河川は地理的には近いですが、交わることはなく、それぞれ別々の方向へと流れていきます。

ルイス:そうだったか。軽戦車が渡れるような構造の橋は何処にも無いのが現状だ。普通の乗用車すら橋を通れないからな。流石に、劉芸芸(リウ・ユェンユェン)は知識が豊富だな。俺は惚れ直したぞ。

エリザベスは、ルイスが劉芸芸(リウ・ユェンユェン)を褒め称えるのを聞き、心の奥底に渦巻く複雑な感情を抑えきれなかった。彼女の内面では、愛する夫に対する深い愛情と、他の女性に対する嫉妬心が交錯していた。

彼女は自分の役割に自信を持ちながらも、中国の文化や地理に対する自身の知識の不足を痛感していた。劉芸芸が持つ豊富な知識とその堂々とした態度は、エリザベスに自分の不足を痛烈に感じさせた。

エリザベスの心の中では、自分がルイスにとって十分でないのではないかという不安が渦巻いていた。彼女はルイスを支え、彼の側にいることに誇りを感じていたが、同時に他の女性が彼の注意を引くことへの不安も募っていた。

この複雑な感情は、彼女の日常の振る舞いにも影響を及ぼし始めていた。エリザベスは、ルイスとの間の深い絆を保ちつつ、自らの立場を強化するために、中国文化への理解を深める努力を始めた。彼女は、自分自身の価値を再確認し、ルイスの心に再び自分の存在を刻み込むために、新たな学びに挑戦する決意を固めた。

エリザベスは、自分の心の葛藤と向き合った。彼女はルイスのため、そして自分自身のためにも、自分の中の嫉妬と不安を乗り越える強さを見つける必要があると感じていた。

この一連の出来事は、エリザベスにとって新たな自己発見の旅の始まりであり、彼女は自分自身の成長と変化を受け入れる準備をしていた。

ルイス:そういうことなら、こちらから出向けば良い。昼から飛行機で行こう。

☆午前11時
会議の区切りが付き、女性陣が昼食の準備に取り掛かった。その矢先に、陳浩然(チェン・ハオラン)(33歳)から連絡があった。

陳浩然(チェン・ハオラン):お殿様。アジトの様子が掴めました。中で作業しているのは30人ほどの中国人です。おそらく近くの農民でしょう。見張りは表にふたり、中には数人おりますが、軽機関銃は所持しておらず、ライフル銃もしくは拳銃の類かと思われます。

この知らせを聞き、ルイスは単身馬に乗り、現地に向かった。

アヘン精製工場の襲撃

午前11時、重慶近郊のアヘン精製工場は、日常の静けさに包まれていたが、この平穏は突如として破られた。ルイスは馬に乗り、単独で工場に向かっていた。彼の瞳には決意の光が宿っていた。

彼が工場の周辺に近づくと、不穏な空気を察知し、彼は一瞬の躊躇もなく行動を開始した。まず、表の見張りを素早く、しかし静かに倒し、彼は工場内へと潜入した。中の護衛たちは気づき、銃を発砲するが、ルイスは冷静に対処した。

戦闘の中で、ルイスの経験と訓練が光る。彼は周囲を瞬時に把握し、敵の弱点を見つけ出す。彼は自らの動きを最小限に抑え、敵の攻撃を巧みにかわしながら、一つずつ敵を制圧していった。

緊張感溢れる戦闘の中、ルイスは工場の土間に催涙弾を転がした。煙が立ち上り、視界が奪われた敵は混乱に陥った。ルイスはこの機を逃さず、一人ずつ敵をロープで縛り上げ、次々と捕獲していった。

この行動はルイスの戦略的思考と、彼の状況に応じた迅速な対応力を示していた。彼の動きは猛獣が獲物を狩るかのように俊敏で、敵にはまるで対抗する余地がなかった。

戦闘の後、工場は無事に石油精製工場として再利用されることになった。ルイスの決断は、彼が目指す平和と安定の実現への一歩であった。この襲撃は、ルイスのリーダーシップと彼の目的に対する強い決意を証明するものとなった。

☆昼12時、アヘン精製工場での昼食
重慶近郊のアヘン精製工場での昼食時、ルイスは作業員たちの中から特に料理の腕前に長けた二人の女性を選び、彼女たちに昼食の準備を依頼した。一人は李小芳(リー・シャオファン)、25歳と名乗り、もう一人は王美麗(ワン・メイリー)、28歳と名乗った。

李小芳は辛い人生を送ってきた女性で、幼い頃に両親を亡くし、若くして結婚したが、夫は家庭を顧みない人物だった。彼女は家計を支えるため、農作業とアヘン精製の仕事に従事していた。一方、王美麗は若い頃に人身売買の犠牲となり、長年苦難の日々を過ごしたが、逃げ出し、新しい生活を始めるために農村へとやってきた。

彼女たちが作った料理は、上海焼きそば、蒸し鶏、青菜の炒め物、赤飯、蓮の実入りスープといった一連の料理で、上海の伝統と彼女たちの辛い過去が反映されていた。

ルイスは彼女たちの話に耳を傾け、深い同情と敬意を覚えた。そのため、彼は彼女たちを自分の側に連れて行くことを決め、彼女たちの料理の腕前を今後の彼の生活において重要な役割を果たすと確信した。

この昼食の時間は、ルイスにとって単なる食事以上のものとなり、彼の心に深い印象を残した。李小芳と王美麗の辛く苦しい過去は、ルイスが彼女たちの未来に希望を提供するきっかけとなったのだった。

ルイスは王美麗(ワン・メイリー)に電話の在り処を聞き、エリザベスに電話した。

エリザベス:貴方。大丈夫だったのね。死ぬほど心配したのよ。単身戦に出かける王様が何処の世界にいるのよ。王様は城に居て戦闘は部下に任せるのではないの?

ルイス:王妃よ。心配するな。私は不死身だ。弾丸などにやられたりしない。周恩来(ジョウ・エンライ)を呼んでくれ。今から、雲南省の泸水(ルーシュェイ)に行かねばならん。

周恩来(ジョウ・エンライ):殿様。ご無事でしたか?アヘン精製工場はどうなりましたか?

ルイス:心配するな。全員捕縛したぞ。この連中を全員家に連れて行ってくれ。機密書類と戦利金品を忘れずに持っていくのだ。この住所は知っているだろうな。

周恩来(ジョウ・エンライ):大丈夫です。陳浩然(チェン・ハオラン)から聞きました。

ルイス:今から重慶の飛行場へ行く。お前も先に行ってくれ。

☆午後2時、重慶の飛行場から雲南省の泸水(ルーシュェイ)へ
午後2時、重慶の飛行場はルイス、周恩来(ジョウ・エンライ)、李小芳(リー・シャオファン)、王美麗(ワン・メイリー)の4人で賑わっていた。彼らは重慶から雲南省の泸水(ルーシュェイ)へと向けて飛行機に搭乗した。泸水(ルーシュェイ)は雲南省と言っても北西にあり、かなり重慶からは離れている。距離にして6時間ほどの飛行であり、着陸地点を見つけるのにも大変な苦労をした。

飛行機が青空を切り裂くように飛び立つと、窓外に広がる景色は息をのむほどの美しさだった。四川省の豊かな自然が眼下に広がり、山々が連なる壮大な景観が織り成す絵画のような光景が、彼らを魅了した。雲の上を滑るように進む飛行機は、地上とは異なる、天空の世界を彼らに体験させてくれた。

特に、李小芳と王美麗にとっては、これが人生初の飛行機体験だった。最初は緊張していた彼女たちだったが、やがて窓外に広がる雄大な自然の美しさに心を奪われ、恐怖が興奮と驚嘆に変わった。彼女たちは、小さくなった町や流れる川、緑豊かな山々を見下ろしながら、言葉を失うほどの感動を味わっていた。

飛行機は雲南省の泸水(ルーシュェイ)に近づくにつれ、地形が変わり始め、怒江(ヌージャン)沿いの独特な景色が目の前に広がった。怒江の蛇行する様子や、その周囲に広がる未開の自然は、彼らにこの地域の素晴らしさと壮大さを改めて認識させた。

着陸の際は、李小芳と王美麗は少し緊張した様子を見せたが、無事に着陸すると、彼女たちは新たな土地への到着に喜びと期待を感じていた。飛行機から降り立った彼らを待っていたのは、雲南省の泸水(ルーシュェイ)という新しい冒険の始まりだった。

午後8時、ルイスたちは泸水(ルーシュェイ)郊外の炭田に到着した。突然、彼は女性の悲鳴のような声を聞き取った。彼は即座に小型拳銃と催涙弾を手に取り、声のする方向へと駆け寄った。

炭鉱夫たちが一家を取り囲んでいる様子が目に飛び込んできた。緊張が空気を支配する中、ルイスは瞬く間に状況を判断し、手榴弾を投げつけた。白煙が辺りを覆い尽くし、炭鉱夫たちは視界を失い、混乱した。

ルイスはこの混乱を利用し、敵を一人ずつ迅速に縛り上げた。その動きは疾風のように速く、炭鉱夫たちには何が起こったのか理解する暇も与えられなかった。

救出された家族は驚きと感謝の表情を浮かべ、ルイスに感謝の言葉を述べた。この瞬間、ルイスはただの戦士ではなく、救世主としての彼の姿が明らかになった。

そして、劉月華(リウ・ユエファ)が現れ、ルイスとの再会を喜んだ。彼女はルイスに炭田の技術を教えた恩人だった。この再会は、ルイスにとって過去と現在が交差する感動的な瞬間だった。

こうして、ルイスの行動は、彼が直面した危険に立ち向かい、正義を守るためには手段を選ばないことを示していた。彼の強さと決意は、彼を取り巻く人々に深い印象を残し、彼のリーダーシップをさらに確固たるものにした。

遠くで、周恩来(ジョウ・エンライ)を呼ぶ声がする。ルイスが声の方を見ると、軽戦車に乗り、こちらに近づいてくる男の顔が見えた。

今回はここまでにいたしましょう。次回をお楽しみに。

 

後書き

ルイスが飛行機を停めたのは、泸水(ルーシュェイ)郊外の山の麓にある炭田であった。若く耳の良いルイスが女性の悲鳴らしき物音を聞きつけた。ルイスは手に小型拳銃と催涙弾「非致死性のガスを吹き出す」を持ち、声のする方へ駆け寄った。残りの3人も行こうとしたがルイスが制止した。炭鉱夫数十名が家族らしい人々を取り囲んでいる。どうも炭鉱夫たちに拉致され拷問されているようだ。父親らしき老人は拷問に耐えかねて絶命した様子だ。一刻の猶予もないと判断したルイスは手榴弾を投げつけた。あっという間に辺りは真っ白い闇に覆われ、視界は失われた。炭鉱夫たちがキョロキョロしている間にルイスは素早く連中をひとりひとり拘束し、ロープで縛った。彼らに拉致されていた人々も視界を失っていたが、時の経過に連れて少しずつ闇は晴れていき、そこには一人の若い大男がニコニコしながら経っていた。劉月華(リウ・ユエファ)(48歳)は彼が懐かしいルイスだと気付き、飛びついて抱擁し、彼にキスを求めた。彼女はルイスに炭田の発掘技術を教授してくれた、劉月華(リウ・ユエファ)であった。