小説「海と陸の彼方へ」

 

第四章新主人公ヘクター石油王国を設立する

 

第9話ヘクター石油を掘り当てる(中編その4)

 

前書き

朝早くルイスから電話があり、"セリーナがどうしても整形は受けないと頑なに言い張るのでインタイ医師は断ってくれ"と言う。ヘクターはインタイ医師のところに断りの電話を入れた。ヘクターは"まあ、無理もない。顔を変えたらエドゥワルドに再開した時、エドゥワルドにどう思われるか心配になったのだろう"と思い、納得した。エドゥワルドにセリーナを匿う資金を50億ドルも預かっているし、ヘクターと一緒に南京に行かせるわけには行かない。中国も国共内戦と抗日の戦いに明け暮れているからな。ここの敷地に小さなキリスト教会を建設し、セリーナを住まわせるのが一番良いだろう。ダラスなどの大都市ではかえって危ないが、クラウディア・コステロ42歳もまさか此処に居るとは気付かないだろう。

 

本文

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登場人物「1935年1月1日時点」  
アンヘル・ディアンジェロ16歳:ハーバーテックソリューションズ(HTS)の会長兼CEO。ル・クリスタル・ホテル所有「200万ドルで居抜き購入」。アンヘル航空㈱会長兼CEO「資本金10億ドル」。ヴィヴィ警備会社「資本金1千万ドル」オーナー。軍事産業への共同投資60億ドル「配当金:1,929万ドル/ 週」。現預金50億ドル「シャドウ・ネクサスから略奪」と債権「総額不明」所有。
マリア・エバ・ドゥアルテ16歳。アンヘルの妻。AMレジャー総合開発㈱「資本金1億ドル」社長兼COO。悪魔のように可愛い女。 
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アンヘルの家族 
イタリア系の不法移民で、彼らの家族名は「ディアンジェロ」です。以下はディアンジェロ家の家族構成です: 
・父親ヘクター・ハミルトン(28歳)「10歳の若返り」:アンヘルから10億ドルの資金を貰い、テキサスで石油と天然ガスを発掘した。 
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ヘクターの資金7億4,060万ドル。前々回の最後で石油精製会社の資本金を5千万ドルとして計上した。別途にエドゥワルドから50億ドルの資金を預かる。
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・母親ローサ・ディアンジェロ(35歳):ローサ・ディアンジェロは家庭を守りながら、地域の共同体でボランティア活動を行っています。彼女は子供たちが教育を受けることを強く望んでいます。 ヘクターの浮気が発覚し、ヘクターと離婚した。
・兄ルイス・ディアンジェロ(18歳):表向きはニューヨーク市警警部兼総合建設会社NYHCの社員。 実はマフィアのアンダーボス。
・ルイスの双子の姉マリア・ディアンジェロ(18歳):マリア・ディアンジェロは地元の専門校に通っています。 ヘクターに誘われ、行動を共にすることになる。
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マリア・エバ・ドゥアルテ「マリア・D」16歳の家族 
・エルヴィラ・ドゥアルテ13歳。マリアの妹。 
・カタリナ・イルデフォンソ20歳。ルドラ金融㈱営業部長。 
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マリア・ヴァレンティーノ「マリア・V」54歳。アンヘルの恋人兼投資パートナー。ヴァレンティーノ・ファミリーの死亡したボス:ヴィンセント・"ヴィニー"・ヴァレンティーノ(56歳)の元妻。莫大な資産「推定500億ドル」を持つ。軍事産業への共同投資60億ドル「配当金:1,929万ドル/ 週」。
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セリーナ・マッキンノン(27歳)。エドゥワルドの第2夫人。クラウディア・コステロ(42歳)から追われている。亭主のエドゥワルド(24歳)はクラウディアに追われて海外逃亡している。
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トーマス・ウェブスター(43歳)。ヘクター綿花農園支配人。の土地と作物を愛する熱心な男で、彼の深い眼差しには農園への誇りがにじんでいる。
アン・ウェブスター(31歳)「10歳の若返り」。ヘクターの愛人。トーマス・ウェブスターの妻。ヘクター綿花農園副支配人。夫を支えるしっかり者で、地域の学校で子供たちに読み書きを教える傍ら、農園の事務も見ていた。二人の子供、ジェームズ(15歳)とエリー(12歳)は、学校から帰ると農園の手伝いをしている。
ジェイコブ・ハリス(36歳)。ヘクター綿花農園農夫頭。筋骨隆々の腕で一日中畑を耕し、綿花の栽培に情熱を注いでいる。
エマ・ハリス(24歳)「5歳の若返り」。ヘクターの愛人。ジェイコブ・ハリスの妻。ヘクター綿花農園農婦頭。農園のキッチンを切り盛りし、農作業で疲れた人々に温かい食事を提供している。彼らには3歳の愛らしい娘、リリーがおり、彼女の無邪気な笑顔は農園の人々の心を和ませている。

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ニューヨーク市の行政地図

アメリカ合衆国東部
昭文社「コンパクト世界地図帳」P52


フロリダ州の地図と出典「南部にマイアミ、更に南部にホームステッドがある」

北米「ダラスを中心として」
帝国書院「地歴高等地図」P67,68

マフィアの組織図「パブリックドメイン」

 

5月10日金曜日朝6時:ヘクター綿花農場「テキサス州西部」
朝早くルイスから電話があり、"セリーナがどうしても整形は受けないと頑なに言い張るのでインタイ医師は断ってくれ"と言う。ヘクターはインタイ医師のところに断りの電話を入れた。

ヘクターは"まあ、無理もない。顔を変えたらエドゥワルドに再開した時、エドゥワルドにどう思われるか心配になったのだろう"と思い、納得した。

エドゥワルドにセリーナを匿う資金を50億ドルも預かっているし、ヘクターと一緒に南京に行かせるわけには行かない。中国も国共内戦と抗日の戦いに明け暮れているからな。

ここの敷地に小さなキリスト教会を建設し、セリーナを住まわせるのが一番良いだろう。ダラスなどの大都市ではかえって危ないが、クラウディア・コステロ42歳もまさか此処に居るとは気付かないだろう。

ソフィアがヘクターに"朝食のメニューはどんな物が良いか"と聞いてきた。ヘクターはソフィアにチュッとキスして"普通のテキサスの朝食メニューで良い"と答えておいた。

結婚が決まってからは、ヘクターとソフィアの地位が逆転し、ソフィアはヘクターの言うことは何でも受け入れるようになった。

5月10日金曜日朝のヘクター綿花農場:テキサス名物の朝食
朝6時、ヘクター綿花農場では、新たな日の始まりと共に活気が満ちていた。ルイスからの電話を受けたヘクターは、彼の朝のスタートを切り、その後すぐにソフィアが朝食の準備を始めた。

ソフィアは未来のオーナー夫人としての貫禄を見せつけながら、アン・ウェブスター、エマ・ハリス、そして友人たちに朝食メニューの指示を出す。彼女の指示は明確で、自信に満ちていた。ソフィアのリーダーシップのもと、朝食の準備はスムーズに進む。

テキサス名物の朝食
・ビスケットとグレービー: ふわふわのビスケットに濃厚なソーセージグレービーをたっぷりとかける。
・タコス: スクランブルエッグ、チョリソ、チーズが詰まった朝食用タコスを用意する。
・ミゲス: 卵、トルティーヤの切れ端、トマト、チーズを炒めたメキシカンスタイルの朝食。
・ブリスケット: スモークされた柔らかい牛肉のブリスケットも供される。

朝食が準備される中、ソフィアはヘクターに優しく気遣いを見せる。彼の好みをよく理解しており、彼が好むように料理を調整する。ヘクターが朝食を始めると、ソフィアは彼のそばに寄り添い、彼の朝の一杯のコーヒーやビスケットにバターを塗るなど、細やかな配慮を見せる。

ヘクター綿花農場のダイニングルームには、準備された朝食が美しく並べられている。テーブルの上には豊かな香りが立ち込め、料理の色とりどりの姿が食欲をそそる。ヘクター、ソフィア、そして仲間たちは、和やかな雰囲気の中でテキサス名物の朝食を楽しむ。ソフィアはヘクターに対して愛情と尊敬を込めた態度を崩さず、彼に対する従順さを示す。

☆朝食後、ソフィアたち女学生4人は綿花農場のオーガニックコットンの製造過程を見物したいと農園支配人のトーマス・ウェブスター(43歳)に申し入れた。ヘクターは"ルイス(18歳)とセリーナ・マッキンノン(27歳)及びヘクターの娘マリア・ディアンジェロ(18歳)が来るから、昼までには帰ってくるように"と彼女たちに伝えた。

☆ソフィアと友人たちのオーガニックコットン製造過程への教育的な訪問
朝食後、ヘクター綿花農園では、ソフィアと彼女の友人たちが農園の日常から一歩踏み出し、オーガニックコットン製造の奥深い世界へと導かれることになった。農園支配人のトーマス・ウェブスター、農夫頭のジェイコブ・ハリス、そして農婦頭のエマ・ハリスが案内役となり、彼女たちの知識と興味を豊かにする旅を始める。

彼らはまず、手入れの行き届いたコットン畑へと彼女たちを連れて行く。トーマスが農場のオーガニックコットンが化学肥料や農薬を使わずに育てられていることを説明すると、ソフィアたちは畑の自然な美しさに心を奪われた。彼の言葉には自然と農業の調和を大切にする情熱が込められていた。

次に、ジェイコブとエマが収穫のデモンストレーションを行う。彼らの手つきは繊細で、一つ一つのコットンボールを慎重に摘む様子は、オーガニックコットンの品質を最大限に引き出すための配慮が見て取れた。ソフィアたちは彼らの手仕事に感銘を受け、農場の持続可能な農業への取り組みを深く理解する。

トーマスとジェイコブは、農場が地球に優しい方法でコットンを生産する方法について熱く語る。その言葉は、ソフィアたちの心に持続可能性の重要性を深く刻む。彼女たちは農場の日々の努力と環境への敬意を新たに認識し、多くの質問を投げかける。オーガニック農業の利点、地球環境への影響、製品の品質に関する彼女たちの興味は尽きることがない。

この訪問は、ソフィアと彼女の友人たちにとって、単なる見学以上のものだった。彼女たちはオーガニック農業の深い意義を学び、ヘクター綿花農場がどのようにして高品質のオーガニックコットンを生産しているかについて、深い理解を得ることができた。農園を歩きながら、彼女たちの心には環境への新たな敬意が芽生え、教育的な体験から得た知識は彼女たちの意識を変えるきっかけとなった。

☆ヘクターと副支配人アン・ウェブスター(31歳)「10歳の若返り」との密やかな関係
たまたま訪れてきたヘクター石油開発㈱の幹部社員ジョン・スミス(32歳)と貯油タンク、貯油ガスタンク建造の話をしていたヘクターは、ドアを開けて入ってきたアン・ウェブスターのスタイルに目を奪われた。

話を早々に切り上げ、ジョン・スミスを部屋から追い出して、アンを迎え入れた。ジョンには綿花農園以外の土地を車で見て回り、新しい油田を探せと無理難題を言いつけておいたからしばらくこの部屋に入って来る者は誰も居ない。

アン・ウェブスターは無地の単色で、身体にフィットするタンクトップとレギンスのアンサンブルを着ており、色は均一な淡い茶色である。この服装は、リラックスしたり運動をする際によく選ばれるアスレジャースタイルと言われるもので、アスレチック(運動用)とレジャー(余暇)を組み合わせたファッションスタイルである。

汗を吸収しやすい素材で作られているが、アン・ウェブスターの豊満な肉体にぴったりとフィットしており、彼女の全裸姿を容易に想像させるセクシーな服装である。

アンも"このスタイルでヘクターを訪れれば、ヘクターは欲望を掻き立てられアンを拒むことは出来まい"と十二分に計算した上でヘクターの応接室を訪れたのである。案の定ヘクターは誘惑に乗り、アン・ウェブスターを2,3時間も抱いて離さなかった。

アン自身も、ヘクターがソフィアと結婚までしてしまったことを知り、このままでは忘れられてしまうと危機感を抱いていたのである。ヘクターはややこしい関係を少しずつ精算しようと思ってはいたのだが、とうとうまたアン・ウェブスターを抱いてしまったと後悔の念に駆られた。

☆アンの疑問
アン:ヘクター。貴方、どうしてソフィアみたいな小娘と結婚までしてしまったの?

ヘクター:俺も結婚まではするつもりが無かったけど、成り行きさ。ソフィアが婚約者に裏切られ気の毒に思ったこともある。

アン:じゃあ。あの子を愛してはいないのね。

ヘクター:そうじゃない。俺はソフィアを愛している。だが年の差があるから無理だろうと思っていたのさ。

アン:そうなの。私がトーマス・ウェブスター(43歳)と別れるから結婚してとお願いしたらどうする?

ヘクター:もちろんお断りだが、貴方の方もトーマスと別れる気は無いだろうしな。仮定の話をしても無意味だし、アンと結婚するならお互いもっと早くにしていたと思うぜ。

アン:悔しいけどそれは認めるわ。私も虫の良い考えをしていたのね。トーマス・ウェブスター(43歳)と別れずに貴方と密やかに関係を続けるってね。

ヘクター:そういう事だ。俺は虫の良い考えは持っていない。もし、ソフィアにこの事がバレたらアンとは即座に別れることになるだろう。

アンは悔しかったが、"慌てて自ら墓穴を掘るよりも一番適切な対応を取ろう"と考えた。この場合一番適切な態度は"見ざる。言わざる。聞かざる"であった。

その結果、ヘクターとアン・ウェブスターはソフィアに気取られるまでの危うい関係をしばらく続けることになった。

☆ルイス、セリーナ・マッキンノン(27歳)とマリア・ディアンジェロ(18歳)の来訪
ほぼ同時にルイス、セリーナ・マッキンノン(27歳)とマリア・ディアンジェロ(18歳)がヘクター綿花農園を訪れた。オーナーのヘクター・ハミルトン(24歳)以下農園支配人トーマス・ウェブスター(43歳)、副支配人アン・ウェブスター(31歳)、農夫頭ジェイコブ・ハリス(36歳)、農婦頭エマ・ハリス(24歳)、農夫20名、農婦20名、ヘクターの妻ソフィア・カーペンター(19歳)、エリザベス・モリス(19歳)、マーガレット・ジョンソン(19歳)、アンナ・グリーンウッド(20歳)総出で彼らを出迎えた。

昼の12時、ヘクター綿花農園はルイス、セリーナ・マッキンノン、マリア・ディアンジェロの来訪で賑わっていた。ヘクター・ハミルトンと農園スタッフが温かい歓迎の準備を整え、ソフィアは未来のオーナー夫人として、テキサス名物のバーベキュー料理を総指揮していた。

農園のスタッフや家族が一堂に会し、訪問者たちを熱心に出迎えた。ソフィアは自信に満ちた様子で女性陣を率い、豪華な肉料理やサイドディッシュの準備に取り組んでいた。バーベキューの香ばしい香りが農園に広がり、訪問者たちの期待を一層高めた。

ルイスは以前の電話でのソフィアの生意気な態度から一変し、ヘクターに対して示す従順な態度に驚いた。彼はソフィアの成長とヘクターとの関係の深さを新たに感じた。バーベキューが完成し、みんなで集まって食事を楽しんだ。ルイス、セリーナ、マリアは初めて味わうテキサスのバーベキューに感動し、農園の暖かい雰囲気に溶け込んでいった。

食事を囲んだ会話は活発で、訪問者たちはテキサスの文化や農園の生活について多くを学んだ。この昼食は、新たな友情の始まりと農園の家族的な雰囲気を象徴するものとなり、ソフィアのリーダーシップと家族的な雰囲気が、農園を訪れた全員に心地よい印象を与えた。

☆昼食後の会談
参加者:ヘクター、ソフィア、ルイス、セリーナ・マッキンノン、マリア・ディアンジェロ

ヘクター:事情は皆聞いているだろうから改めての説明は省略する。今後の計画を次のように考えた。

ヘクター:ルイスは今から飛行機でロスアンゼルスへ飛ぶ。そこからは飛行機、船、車を利用して南京の国民党政府に顔を出してくれ。蒋介石に会わせてくれと言い、この紹介状を渡せ。段取りは全て付けた。お前の持っている100億ドルの小切手はこの為替と交換する。

ヘクター:セリーナさんはルイスと別れるのは嫌かもしれないが此処に残ってキリスト教会の司祭を務めて欲しい。教会は今建設に取り掛かっているのでそれまではここの離れに泊まってくれ。護衛は付けておく。

ヘクター:マリアはこの1億ドルを資金にしてヘクター石油開発㈱の子会社ヘクター運輸㈱を経営してくれ。その中には貯油タンクや貯油ガスタンクの運営も入っているので石油開発㈱幹部社員のジョン・スミスと話をして決めてくれ。

彼らは一様に黙り込んだ。ヘクターに聞きたいことがあるようで無かった。ルイスとセリーナはクラウディア・コステロに追われており、選択肢が無かったのだ。マリア・ディアンジェロはいくらでも言える立場だったが、彼女は父親ヘクターの仕事を手伝ってやろうと誓っていたのでヘクターの言うようにしようと考えていた。

今回はここまでにいたしましょう。次回をお楽しみに。

 

後書き

ヘクター:ルイスは今から飛行機でロスアンゼルスへ飛ぶ。そこからは飛行機、船、車を利用して南京の国民党政府に顔を出してくれ。蒋介石に会わせてくれと言い、この紹介状を渡せ。段取りは全て付けた。お前の持っている100億ドルの小切手はこの為替と交換する。ヘクター:セリーナさんはルイスと別れるのは嫌かもしれないが此処に残ってキリスト教会の司祭を務めて欲しい。教会は今建設に取り掛かっているのでそれまではここの離れに泊まってくれ。護衛は付けておく。ヘクター:マリアはこの1億ドルを資金にしてヘクター石油開発㈱の子会社ヘクター運輸㈱を経営してくれ。その中には貯油タンクや貯油ガスタンクの運営も入っているので石油開発㈱幹部社員のジョン・スミスと話をして決めてくれ。彼らは一様に黙り込んだ。ヘクターに聞きたいことがあるようで無かった。ルイスとセリーナはクラウディア・コステロに追われており、選択肢が無かったのだ。