小説「海と陸の彼方へ」

 

第二章エドゥアルドの復讐

 

第28話モントリオール市長の義弟誘拐事件

 

前書き

「まず、全体の予算は30億ドルです。この中で、設計と調査には1.3億ドル、建設費には10.5億ドル、インフラと設備には5億ドル、運営費には3.5億ドル、マーケティングと広報には3000万ドル、その他の費用には4000万ドルを見積もっています」「それは非常に詳細な計画ですね。しかし、何故あなたの会社がこのプロジェクトに適していると思うのですか?」市長は疑問を投げかけた。「それは私たちの独自の"エコハーバー・システム"にあります。このシステムによって、環境への影響を最小限に抑えながら、高いコスト効率と持続可能性を実現します。特に、1935年という時点でこのような先進的な環境技術を持っていることは、他の競合他社と比べて大きな優位点です」市長はしばらく考え込んだ後、にっこりと笑った。「それは確かに魅力的です。よろしい、このプロジェクトはハーバーテックソリューションズにお任せします」

 

本文

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登場人物「1935年1月1日時点」
エドゥアルド・ガルシア24歳。NYマフィア:コステロ・ファミリーのアンダーボス「大幹部・若頭」。現金20億ドル。普通預金100億ドル。アンダーボス就任に際し、前のアンダーボス:ロマーノの財産を受け継いだ。その他にもコカイン密売で得た現金1億ドルの当座預金を所有している。普段の出費はすべてここから支払う。エドゥアルド総合開発㈱「資本金一億ドル」の会長兼CEO。エドゥアルド警備㈱のオーナー。コロンビアのメデジンに大牧場、ウィラ地区に複数の農園、牧場、山林を所有。
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エドゥアルドの腹心の部下
ルイス・ディアンジェロ(18歳)。コカイン密売の責任者。:ルイスは学校には通っていませんが、彼は非常に賢く、ストリートスマートな青年です。彼は家族をスラム街から引き上げ、良い生活を提供できるようになることを夢見ています。彼は正直で敏捷な性格を持ち、エドゥアルドから将来有望な人材として見出されています。ニューヨーク市警警部兼総合建設会社NYHCの社員。
弟アンヘル・ディアンジェロ(16歳):彼は兄のルイスを非常に尊敬しており、彼のようになりたいと思っています。ハーバーテックソリューションズ(HTS)の会長兼CEO。エドゥアルドから10億ドル受け取り、預金額は10億1,200万ドルである。
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ヴィヴィアン・"ヴィヴィ"・ロッソ(43歳)。ヴァレンティーノ・ファミリーの元アンダーボス「フランク・"フランキー"・ロッソ(49歳)」の妻。
・フランキーが懲役に入ってからは、家庭を支える主力となっている。
夫:フランク・"フランキー"・ロッソ(49歳)。現在拘置所に収監中「30年の懲役刑」。
長女:ソフィア・ロッソ(18歳)
・高校を卒業し、近くのコミュニティカレッジに通っている。
次女:エミリー・ロッソ(15歳)
・高校生で、学業と並行してアルバイトをして家計を支えている。
その他の親戚:
フランキーの妹:アンジェラ・ロッソ(41歳) - ローカルの病院で看護師として働いている。
フランキーの弟:ジョン・ロッソ(38歳) - フランキーがいなくなってからは、一家のビジネスを手伝おうとしたがルイスによって放逐された。現在行方不明である。
ペット:
ミミ(ミニチュア・シュナウザー、5歳)
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モントリオール市長一家の構成
市長:ジャン=クロード・デュモン(35歳)
奥さん:エリザベート・デュモン(33歳)
子供:リュック(8歳)、ソフィー(5歳)

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ニューヨーク市の行政地図

アメリカ合衆国東部
昭文社「コンパクト世界地図帳」P52


フロリダ州の地図と出典「南部にマイアミ、更に南部にホームステッドがある」

マフィアの組織図「パブリックドメイン」

 

1935年3月8日金曜日午前6時:モントリオール市内の高級ホテル
ヴィヴィはアンヘルのベッドから抜け出し、身繕いをした。アンヘルもすぐに目を覚ませて起き出した。ヴィヴィは昨夜のことでアンヘルと顔を合わせるのは面映ゆかったが、思い切って明るくアンヘルに「社長、お早うございます」と挨拶した。

アンヘル:ヴィヴィさん、アンヘルと呼んでよ。もう他人じゃないんだから。

ヴィヴィ:でも人目もありますので。アンヘルちゃんと呼ぶのは二人きりのときだけにします。

アンヘル:じゃあ、それで良いよ。

アンヘルはヴィヴィを抱き締め情熱的なキスを仕掛けた。こう来るとは思っていなかったヴィヴィは断りもならず、黙ってアンヘルの舌を受け入れた。

二人は一緒にシャワーを浴び、正装に着替えてホテルの食堂へ向かった。

1935年3月8日金曜日午前9時
アンヘル、16歳、ハーバーテックソリューションズ(HTS)の会長兼CEO、とヴィヴィ、43歳、秘書室長、はモントリオール市役所の豪華な会議室で市長ジャン=クロード・デュモンと対面した。

「お会いできて光栄です、デュモン市長」アンヘルは握手を交わしながら言った。

「こちらこそ、アンヘルさん。あなたの会社がこの新港建設プロジェクトにどれほど貢献できるのか、非常に興味があります」市長は笑顔で応じた。

ヴィヴィが資料を整え、アンヘルに渡した。アンヘルは資料を開き、見積もりの詳細について説明を始めた。

「まず、全体の予算は30億ドルです。この中で、設計と調査には1.3億ドル、建設費には10.5億ドル、インフラと設備には5億ドル、運営費には3.5億ドル、マーケティングと広報には3000万ドル、その他の費用には4000万ドルを見積もっています」

「それは非常に詳細な計画ですね。しかし、何故あなたの会社がこのプロジェクトに適していると思うのですか?」市長は疑問を投げかけた。

「それは私たちの独自の"エコハーバー・システム"にあります。このシステムによって、環境への影響を最小限に抑えながら、高いコスト効率と持続可能性を実現します。特に、1935年という時点でこのような先進的な環境技術を持っていることは、他の競合他社と比べて大きな優位点です」

市長はしばらく考え込んだ後、にっこりと笑った。

「それは確かに魅力的です。よろしい、このプロジェクトはハーバーテックソリューションズにお任せします」

アンヘルとヴィヴィは安堵の表情を浮かべた。これで、ハーバーテックソリューションズは1935年の港湾建設業界で一歩先を行く企業となるでしょう。

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モントリオール市長一家の構成
市長:ジャン=クロード・デュモン(35歳)
奥さん:エリザベート・デュモン(33歳)
子供:リュック(8歳)、ソフィー(5歳)
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モントリオール見物と昼食の接待
アンヘルとヴィヴィは、モントリオールの高級ホテル「ル・クリスタル・モントリオール」で宿泊していました。市長の奥さん、エリザベート・デュモンは、午前中にホテルのロビーで二人を迎えました。

「おはようございます、アンヘルさん、ヴィヴィさん。今日はモントリオールの素晴らしい場所をいくつかご案内させていただきます」

最初に訪れたのは、歴史的なオールドモントリオール地区。石畳の道と古い建築物が美しく、アンヘルとヴィヴィはその風情に魅了されました。次に、エリザベートは二人をモントリオール美術館に連れて行き、カナダのアートを堪能しました。

昼食は、市内で有名なフレンチレストラン「ラ・プティット・マゾン」で楽しみました。献立は以下の通りです。

前菜:フォアグラのテリーヌ、トリュフの香り
メイン:ローストダック、オレンジソース添え
デザート:クレーム・ブリュレ
ドリンク:モントリオール産の白ワイン
「どうぞ、お召し上がりください」エリザベートは笑顔で言いました。

アンヘルとヴィヴィは、美味しい料理とエリザベートの温かい接待に感激しました。

「エリザベートさん、素晴らしい一日をありがとうございます。モントリオールは本当に美しい都市ですね」

「お楽しみいただけたようで何よりです。これからもモントリオールとハーバーテックソリューションズが良い関係を築いていけることを願っています」

この日の経験は、アンヘルとヴィヴィにとって、モントリオール市とのビジネス関係だけでなく、その文化と人々に対する深い理解と愛着をもたらしました。

☆エリザベートの苦悩
エリザベートは最初に歴史的なオールドモントリオール地区を案内し、アンヘルもヴィヴィもその素晴らしさに感激したが、エリザベートはこの地区の良いところばかりを案内したに過ぎなかった。単純なアンヘルは騙せてもヴィヴィの目をごまかすことは出来なかったし、ヴィヴィはエリザベートが時たま垣間見せる悲痛な表情をも見逃さなかった。

アンヘルがこの地域の町並みに感動し、古い店に入り込み、買い物をしている時、ヴィヴィはエリザベートに「何か心配なことがあるのですか?」とずばり聞いてみた。

エリザベート:この地域の港湾エリアにいわゆる暗黒街があるのです。

ヴィヴィ:何処の街にもあるスラム街ですね?でもそれが貴女に何の関係があるのですか?

エリザベート:昨夜、私の弟がその暗黒街で拉致されたと思われるのです。

ヴィヴィ:弟さんはお幾つですか?

エリザベート:まだ18歳の大学生です。以前にも何回かこういう事があり、その時は無事に帰って来たのですが。

ヴィヴィ:何故、弟さんが拉致されたの思われるのですか?友達の家に泊まっているだけかも知れませんよ。

エリザベート:何時もつるんでいる友達から電話があり、急に姿が見えなくなったそうなのです。

ヴィヴィ:場所はそのスラム街ですか?

エリザベート:そうです。

ヴィヴィ:聞きにくいことをお尋ねしますが、弟さんは薬物をされていたのではありませんか?

エリザベート:恥ずかしながら、コカインを常用していました。以前、姿をくらましたときには弟から電話があり、「1万ドル出してくれないか。そうでないと殺されるんだ」というのでお金を出してやりました。

エリザベート:今度はその電話もないので心配しています。主人に言いましたが、「世間体が悪いので、弟さんから連絡して来るまで待て」と言うのです。

ヴィヴィは30年の懲役刑を食らっているヴァレンティーノ・ファミリーの元アンダーボスの妻であり、マフィアの裏事情にも通じている。姿をくらませているジョン・ロッソ(38歳)に連絡するため、義理の妹のアンジェラ・ロッソ(41歳)にジョン・ロッソ(38歳)の行き先を聞いたところ、モントリオールにいることが分かった。

モントリオールの暗黒街での救出作戦

地点: ジョン・ロッソの隠れ家、モントリオール
ヴィヴィとアンヘルはジョン・ロッソの隠れ家に到着。ジョンは驚きながらも二人を中に招き入れる。

ジョン: ヴィヴィ、何でこんなところに?

ヴィヴィ: ジョン、モントリオール市長の妻エリザベートの弟が行方不明になっているのよ。薬物のチンピラグループが関与していると聞いたわ。情報が必要なの。

ジョン: 分かった、そのグループは東区の廃工場で活動している。でも危険だぞ。

地点: 東区の廃工場
アンヘルは黒いスーツに身を包み、手には拳銃を携えている。彼は工場の裏口から忍び込む。

地点: 工場内部
アンヘルは目の前に広がる薬物製造の現場を見つけ、その奥に若い男、マシューが縛られているのを見つける。

アンヘル: (心の中で)"見つけた。"

アンヘルは拳銃を構え、一発、二発と発砲。チンピラたちは驚き、逃げ出す。アンヘルはマシューのもとへと急ぐ。

マシュー: 誰だ、お前は?

アンヘル: 後で説明する。今は出るんだ。

地点: 工場外
アンヘルとマシューは工場から脱出。ヴィヴィが待つ車に飛び乗る。

ヴィヴィ: アンヘルちゃん、マシューは無事だったの?

アンヘル: 問題ない、彼はマシューだ。

マシュー: ありがとう、本当に。でも、なんで助けてくれたんだ?

ヴィヴィ: それはエリザベートがお願いしたからよ。

マシュー: エリザベート姉さんが?

アンヘル: そうだ、家に帰るときは、もう少し考えて行動するんだな。

マシューは頷き、車は夜のモントリオールを走り去る。そして、ヴィヴィとアンヘルは一つの危機を乗り越えたことを実感するのだった。

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エリザベートの実家の家族構成
父親:ジョセフ・マルティン - 62歳、退職した教授
母親:マリー・マルティン - 59歳、主婦
弟: マシュー・マルティン - 18歳、大学生「コカインを常用している」
妹:クレア・マルティン - 21歳、大学生
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アンヘルは車でマシューをマルティン家に送り、マルティン家で電話を借りて市長と市長の妻エリザベートに「マシューを無事救出した」と連絡した。その前にコカイン拒否薬をマシューに飲ませたことは言うまでもない。エドゥアルドがくれたものだ。

3月8日金曜日午後8時:ル・クリスタル・ホテル
モントリオールの高級ホテル「ル・クリスタル・ホテル」に到着し、レストランで食事をしていると市長の妻エリザベート・デュモン(33歳)がわざわざ訪れアンヘルに丁重なお礼を述べた。

エリザベート:今回は命がけで弟のマシューを救っていただき、本当に有難うございました。

アンヘル:お礼を言うならこのヴィヴィに言って下さい。僕はヴィヴィに言われるまで貴女が悩みを抱えていることなど分からなかったのですから。

エリザベート:もちろん、ヴィヴィさんのお陰も大きいですわ。でも実際にマシューを救ってくれたのはアンヘル様ですから。

アンヘル:そう言われるとお恥ずかしいです。今度からは女性の表情も気をつけて観察することにいたします。

ヴィヴィ:男の人は鈍感なくらいが良いのですよ。気をつける必要はありません。

アンヘル:そんなものなのかな?僕は自分でも鈍感だと思うよ。ヴィヴィを見習わないといけないね。ところで奥さん。少しお聞きしたいことがあるのです。

エリザベート:どんなことでしょうか?

アンヘルが市長の奥さんエリザベートに「コカインの密売グループはあんなチンピラばかりなのですか?」と聞いたところ、オールド・モントリオール(Vieux-Montréal)の港湾エリアに大きなマフィアの組織があり、武器密輸や賭博、違法薬物・人身売買、港湾組合幹部との癒着、市役所幹部との癒着などを大っぴらに行っていると言われた。奥さんはマフィアの組織についても詳しく教えてくれた。

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モントリオール港湾エリアのマフィア組織:「ル・クラン・ド・ラ・リヴィエール」(Rivière Clan)
組織のトップ
・リーダー(ボス):ジャック・"ル・ロワ"・デュモン(45歳)
 ・組織全体を指揮し、市役所や港湾組合との癒着を担当。
幹部
・アンダーボス:ピエール・"ル・フクス"・マルティン(40歳)
 ・ボスの右腕として、組織の日常業務を監督。
・コンシリエーレ(顧問):アンドレ・"ル・サージュ"・ラファイエット(50歳)
 ・法的な問題や戦略的なアドバイスを提供。
キャップ(部隊長)
・武器密輸部門:ジャン=ポール・"ル・ガン"・ベルトラン(35歳)

・賭博部門:マリー・"ラ・クイーン"・デュフォー(32歳)

・違法薬物部門:ルイ・"ル・ケミスト"・ルノー(28歳)

・人身売買部門:クロード・"ル・ハンター"・モロー(38歳)

兵隊(ソルジャー)
・50~60人程度の兵隊が各部門で活動。
連携組織・団体
・港湾組合
・市役所の一部幹部
・国際的な犯罪組織との連携も噂されている。

このような組織構成により、「ル・クラン・ド・ラ・リヴィエール」はオールド・モントリオールの港湾エリアで多岐にわたる犯罪活動を展開しています。特に市役所や港湾組合との癒着により、その影響力は一層拡大していると言われています。
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今回はここまでにいたしましょう。次回をお楽しみに。

 

後書き

モントリオールの暗黒街での救出作戦……地点: ジョン・ロッソの隠れ家、モントリオール…ヴィヴィとアンヘルはジョン・ロッソの隠れ家に到着。ジョンは驚きながらも二人を中に招き入れる。ジョン: ヴィヴィ、何でこんなところに?ヴィヴィ: ジョン、モントリオール市長の妻エリザベートの弟が行方不明になっているのよ。薬物のチンピラグループが関与していると聞いたわ。情報が必要なの。ジョン: 分かった、そのグループは東区の廃工場で活動している。でも危険だぞ。地点: 東区の廃工場……アンヘルは黒いスーツに身を包み、手には拳銃を携えている。彼は工場の裏口から忍び込む。地点: 工場内部……アンヘルは目の前に広がる薬物製造の現場を見つけ、その奥に若い男、マシューが縛られているのを見つける。