小説「海と陸の彼方へ」

 

第二章エドゥアルドの復讐

 

第26話アンヘル実業家への転身を図る

 

前書き

この"エコハーバー・システム"により、HTSは環境保全とコスト効率の両方で優れた港湾を提供できるため、新港建設プロジェクトの受注確率が高まります。独自技術により、ハーバーテックソリューションズは、港湾建設業界で一歩先を行く企業となるでしょう。そこまでアンヘルが説明すると秘書たちやリンダから拍手喝采が飛び交い、会議室は女性たちの興奮のどよめきで沸き返った。秘書の一人:社長。すると我が社も新港建設プロジェクトに入札受注を考えているのですか?そうしていただければ私達も鼻が高いですわ。他の秘書:でもエドゥアルド会長が賛成するかしら?NYHCが受注するという噂が飛び交っているわ。アンヘル:僕は入札に参加するつもりだ。エドゥアルド会長もこの会社のことはお前に任せるとおっしゃったからね。エドゥアルド:お前も訳の分からぬことを言うやつだ。親会社が参加している受注競争に子会社が参加するという話は聞いたことがないぞ。駄目だ。

 

本文

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登場人物「1935年1月1日時点」
エドゥアルド・ガルシア24歳。NYマフィア:コステロ・ファミリーのアンダーボス「大幹部・若頭」。現金20億ドル。普通預金100億ドル。アンダーボス就任に際し、前のアンダーボス:ロマーノの財産を受け継いだ。その他にもコカイン密売で得た現金1億ドルの当座預金を所有している。普段の出費はすべてここから支払う。エドゥアルド総合開発㈱「資本金一億ドル」の会長兼CEO。エドゥアルド警備㈱のオーナー。コロンビアのメデジンに大牧場、ウィラ地区に複数の農園、牧場、山林を所有。
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エドゥアルドの腹心の部下
ルイス・ディアンジェロ(18歳)。コカイン密売の責任者。:ルイスは学校には通っていませんが、彼は非常に賢く、ストリートスマートな青年です。彼は家族をスラム街から引き上げ、良い生活を提供できるようになることを夢見ています。彼は正直で敏捷な性格を持ち、エドゥアルドから将来有望な人材として見出されています。総合建設会社NYHCの社員。
弟アンヘル・ディアンジェロ(16歳):彼は兄のルイスを非常に尊敬しており、彼のようになりたいと思っています。中堅建設会社スカイライン・エンジニアリング・コーポレーション「SEC」の社員。
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ニューヨーク市長
名前: ダニエル・ハリソン
年齢: 42歳
家族構成:
妻: ジェニファー・ハリソン(37歳)
子供: エマ(10歳)、ノア(7歳)
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ニューヨーク市港湾局長
住所:ブルックリン臨海区
 マイケル・スミス(38歳)
妻: クレア・スミス(36歳), 弁護士
子供: ノア(7歳), ミア(4歳)
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エドゥアルドの競争相手「有力な建設会社グローバルテック・コンストラクション・インクGCIのCEO」
ジョン・マッケンジー(35歳)
妻: サラ・マッケンジー(33歳), ファッションデザイナー
子供: ルーカス(8歳), ソフィア(5歳)
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環境保護団体アース・ガーディアンズの代表
住所:ブルックリン・シープシェッドベイ地区「ロシア系」
リンダ・ウォレス(37歳)
夫: アダム・ウォレス(39歳), 医師
子供: エマ(10歳)
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ジャーナリスト
住所:ブルックリン・ベイ・リッジ地区「イタリア系」
エミリー・デイビス(32歳)
夫: ベン・デイビス(34歳), ITエンジニア
子供: エリー(3歳)

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ニューヨーク市の行政地図

アメリカ合衆国東部
昭文社「コンパクト世界地図帳」P52


フロリダ州の地図と出典「南部にマイアミ、更に南部にホームステッドがある」

カリブ海域
岩波現代文庫「コロンブスからカストロまで(Ⅰ)」E.ウィリアムズ著。巻頭の図。

コロンビア共和国
明石書店「コロンビアを知るための60章」二村久則編著。P14

コロンビアのアンデス山脈
明石書店「コロンビアを知るための60章」二村久則編著。P19

コロンビアの河川
明石書店「コロンビアを知るための60章」二村久則編著。P24

マフィアの組織図「パブリックドメイン」

 

1935年3月5日火曜日午前11時:ハーバーテックソリューションズ「HTS」本社社長室
保護団体アース・ガーディアンズの代表リンダ・ウォレス37歳は恋人アンヘル16歳が社長を務めるハーバーテックソリューションズ「HTS」の社長室を訪れた。彼女のファッションは以下のようである。

シックなビジネスカジュアル
・服装: ブラックのテーパードパンツに、白いVネックブラウスを合わせます。ブラウスは袖口にリボンデザインがあるものを選び、女性らしさを強調。
・インナー: ヌードカラーのシームレスブラを選び、ブラウスの透け感を気にせずに着用。
・アクセサリー: シルバーのスタッドピアスと、シンプルなシルバーブレスレットで洗練された印象を与える。
・バッグ: ブラックのレザートートバッグで、収納力とスタイルを兼ね備えます。

アンヘルは、若く優秀な経営者らしく、ビジネスカジュアルなものを選んで着ていました。

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・服装: ネイビーブルーのスリムフィットスーツに、白いドレスシャツを合わせます。スーツはシンプルながらも高級感のあるものを選びます。
・ネクタイ: シルバーとブルーのストライプのネクタイで、若々しさとプロフェッショナリズムを兼ね備えます。
・シューズ: ブラウンのレザードレスシューズを選び、全体のコーディネートを引き締めます。
・ベルト: シューズと同じ色のブラウンレザーベルトを使用。
・アクセサリー: シンプルなシルバーの腕時計で、洗練された印象を与えます。
・バッグ: ブラックのレザーブリーフケースを持ち、ビジネス用途にも適したスタイリッシュな印象を与えます。
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二人が豪華な応接室のソファーに向かい合って座ったとき、秘書の女性がコーヒーを運んできた。

アンヘルは秘書室の女性たちも全員呼び、会議を開くことにした。先ずリンダにこの会社の内容を詳しく説明した。秘書たちも自社が他社と比べてどのような優れた点があるのか興味津々であった。

アンヘルの経営する技術会社は社名をハーバーテックソリューションズ「HTS」という。

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分野: 港湾建設と環境テクノロジー
主なサービス: 
・ 港湾設備の設計と建設
・環境影響評価
・持続可能な資材の研究と提供
特徴: 
・エコフレンドリーな建設技術に特化
・高度なシミュレーション技術で、プロジェクトの成功確率を高める
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アンヘルの経営する会社は新港建設プロジェクトをも受注することの出来る優秀な会社ですが、具体的に他社よりも優位に立つと思える技術を創造している。

それはハーバーテックソリューションズ(HTS)と呼ばれる独自技術である。

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"エコハーバー・システム"
概要:
このシステムは、港湾建設において環境への影響を最小限に抑えるための革新的な技術です。特に、鉄筋コンクリートと持続可能な木材「例: 竹、地元産木材、再生木材」を併用することで、強度と持続可能性を両立しています。

主な特徴:
1.バイオコンクリート: 従来のコンクリートに代わり、CO2を吸収する微生物を用いたバイオコンクリートを使用。これにより、建設過程での炭素排出を大幅に削減。

2.スマートフィルタリング: 港湾の水質を自動的にモニタリングし、必要に応じて浄化するフィルタリングシステムを設置。

3.再生エネルギー: 港湾設備のエネルギーは、太陽光や風力、潮力を利用した再生可能エネルギーで賄います。

4.持続可能な木材の活用: 鉄筋コンクリートの内部に持続可能な木材を組み込むことで、建材自体が持つ環境負荷を低減。具体的には、ニューヨーク近辺で採取できる「白樺(White Birch)」や「アメリカン・チェスナット(American Chestnut)」を使用します。これらの木材は地元で調達することで、地域経済にも貢献。

競合他社との優位点:
この"エコハーバー・システム"により、HTSは環境保全とコスト効率の両方で優れた港湾を提供できるため、新港建設プロジェクトの受注確率が高まります。特に1935年という時点でこのような先進的な環境技術を持っていることは、大きな競争優位となります。このような独自技術により、ハーバーテックソリューションズは、1935年の港湾建設業界で一歩先を行く企業となるでしょう。

そこまでアンヘルが説明すると秘書たちやリンダから拍手喝采が飛び交い、会議室は女性たちの興奮のどよめきで沸き返った。

秘書の一人:社長。すると我が社も新港建設プロジェクトに入札受注を考えているのですか?そうしていただければ私達も鼻が高いですわ。

他の秘書:でもエドゥアルド会長が賛成するかしら?NYHCが受注するという噂が飛び交っているわ。

アンヘル:僕は入札に参加するつもりだ。エドゥアルド会長もこの会社のことはお前に任せるとおっしゃったからね。でも確かに親会社の意向は聞いておいて方が良いだろう。今会長に電話して聞いてみる。

アンヘル:エドゥアルドさん。アンヘルです。

エドゥアルド:アンヘルか?何の用だ?

アンヘル:今内の会社で新港建設プロジェクトに参加しようという声が高くなりましてね。うちも受注競争に参加したいのですが。よろしいですか?

エドゥアルド:お前も訳の分からぬことを言うやつだ。親会社が参加している受注競争に子会社が参加するという話は聞いたことがないぞ。駄目だ。

アンヘル:そうですか。それなら私の会社は貴方の傘下から離れます。

エドゥアルド:資本金の1千万ドルはどうするつもりだ?払えるのか?

アンヘル:私も1,200万ドル持っているんですよ。即金で支払います。その代わり会長とは今日限りでお別れですよ。兄貴にも話をして会長と離れさせます。

エドゥアルド:いや。まあ待て。それは困る。良し、分かった。お前の会社が新港建設プロジェクトに参加することを認めてやろう。自力で受注競争を勝ち抜くんだな。

アンヘル:どうもありがとうございます。1千万ドルの小切手は郵送します。これでハーバーテックソリューションズ「HTS」は名実ともに私のものですね。

エドゥアルド:まあそうなるな。お前のことだから、スカイライン・エンジニアリング・コーポレーション「SEC」で開発したお前の技術にも特許を申請しているだろうな?

アンヘル:前もって特許の申請は出しておきました。でも私の特許は一つだけですよ。

アンヘルの取得した特許

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アンヘルの特殊コンクリートの独自の化学配合
基本成分
1.ポートランドセメント: 40%
2.砂: 25%
3.砂利: 20%
4.水: 10%
特殊成分
1.ナノシリカ: 2% - 微細なシリカ粒子で、コンクリートの密度を高める。
2.ポリプロピレン繊維: 1% - 耐久性と引っ張り強度を向上させる。
3.カルシウム炭酸塩: 1% - 環境に優しく、コンクリートの硬化を促進する。
4.チタン酸塩: 0.5% - 光触媒作用で自己清浄能力を持たせる。
5.酸化アルミニウム: 0.5% - 耐火性を高める。
付加技術
1.高周波振動処理: 混合後、高周波振動をかけて気泡を取り除く。
2.冷却処理: 硬化過程で一定の低温を保つことで、内部の応力を低減。
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エドゥアルド:それだけでも十分だ。まあ、良い。お前を実業家に育てるのは最初からの俺の方針だからな。

エドゥアルド:アンヘル。独立するのは良いが、俺と敵対するなよ。

アンヘル:もちろんですよ。エドゥアルドさんには深い恩義があります。敵対する気もなければ裏切る気など毛頭ありません。ただ私にも夢がありましてね。誰の紐付きにもなりたくないのです。

エドゥアルド:お前がそう思うのは分からんでもないが、お前が俺のカポ・レジーム「若頭補佐」であることには変わりがない。俺の命令には従ってもらうぞ。

アンヘル:了解しました。

話を興味深く聞いていた環境保護運動家のリンダはアンヘルの会社が持つ技術"エコハーバー・システム"は木材が豊富に採れる地域、特にカナダや北欧で非常に有利な技術だから、私が持つ人脈を通じてカナダ政府、北欧政府に売り込んであげると言ってくれた。この結果近くのカナダ政府からの受注が得られ、アンヘルの会社は順調な滑り出しを迎えることが出来た。

1935年3月6日、水曜日。昨日の会議からわずか一日後、アンヘルとリンダはニューヨーク市内の高級レストラン「ル・シャトー」で祝杯のランチを共にいただいていた。店内は落ち着いた照明と高級なインテリアで、ビジネスマンやセレブリティが頻繁に訪れる場所だ。

アンヘル:本当にありがとう、リンダ。君のおかげでカナダ政府からの受注が決まったんだ。これからのビジネスが楽しみだよ。

アンヘルは感謝の意を込めてリンダに微笑んだ。リンダも笑顔で応える。

リンダ:いえいえ、私たちの目的は同じ。持続可能な未来を作ること。君の"エコハーバー・システム"はそのための素晴らしい手段だから。

ウェイターがテーブルに料理を運んできた。メニューはシーフードのアペタイザー、オーガニックビーフのステーキ、季節の野菜サラダ、そしてデザートにはフレンチスタイルのショコラムース。もちろん、料理に合わせて選ばれたワインも用意されていた。

アンヘル:これからは北欧も狙っていきたいな。君の人脈があれば、きっと成功する。

リンダ:それはいい考え。私も全力でサポートするわ。

二人は料理に舌鼓を打ちながら、これからのビジネスプランについて熱く語り合った。ランチが終わる頃、アンヘルはリンダに向かって真剣な表情で言った。

アンヘル:リンダ、君と一緒に働けること、本当に嬉しいよ。これからもよろしくね。

リンダ:もちろん、アンヘル。これからが本当のスタートよ。

二人はグラスを持ち上げ、未来への期待と成功を祈願して乾杯した。その瞬間、アンヘルは自分の会社、そして自分自身が新たな歴史を刻むスタートラインに立ったことを実感した。

昼食後、アンヘルはリンダをアパートEG2階の201号室に招いた。リンダはアンヘルが自分の部屋に招いた意味を十分分かっていた。アンヘルに会うまで夫を裏切るつもりなど一切なかったリンダだが、アンヘルに誘われるのは必然に思えた。リンダは心の中では随分前からアンヘルを愛していたのである。事細かく内容を記すことは控えるがリンダにとってアンヘルは最愛の男であり、重要かつ親密なパートナーでもあった。

☆リンダとアンヘルの会話
リンダ:カナダ政府との大きな仕事が決まったのだから、ブルックリン臨海区の新港建設プロジェクトは断念すべきだわ。二兎を追う者は一兎をも得ずと言うじゃないの。

アンヘル:そうですね。欲をかくのは止めておきましょう。

アンヘルはエドゥアルドに電話を入れたが、彼は留守であった。代わりに第2夫人のセリーナ・マッキンノン27歳さんが応対した。

セリーナ:エドゥアルド邸でございます。私は留守を預かっておりますセリーナ・マッキンノン27歳と申します。あいにく主人は居りませんが伝言を仰って下さい。

アンヘル:私はエドゥアルドさんの部下の一人アンヘル16歳と申します。「カナダ政府との受注が決まりました。残念ですがブルックリン臨海区の新港建設プロジェクト受注競争からは降りさせていただきます」とお伝え下さい。

セリーナ:了解しました。アンヘルさんておっしゃるのね。主人の部下にしては怖くなさそうなお声ですね。

アンヘル:そうですか。兄のルイスとは正反対だと良く言われます。

セリーナ:あら。ルイスさんの弟さんなの?ルイスさんはお顔も怖いけど声も物凄く怖いのよ。貴方はそうじゃなさそうね。きっとお母さん似なのね。

アンヘルは大笑いして、「でも顔は兄と良く似てるんですよ。子供の頃から兄には助けてもらってばかりなんです。兄は顔は怖いけど中身は優しいんですよ」と答えておいた。

リンダは程なく家に帰り、アンヘルはフィットネスクラブに顔を出しトレーニングに精を出した。午後5時頃だろうか?自室に戻ると電話が鳴り、出てみると兄のルイスだった。

ルイス:アンヘルか?仕事は順調に行っているのか?

アンヘルはカナダ政府との仕事が決まったと説明し、新港建設プロジェクトからは降りさせて貰ったことを説明した。

ルイス:それは結果的に良かったな。アンヘル。エドゥアルドさんに逆らうんじゃないぞ。今から言うことを良く聞け。

ルイス:ヴァレンティーノ・ファミリーを滅ぼしたぞ。エドゥアルドさんがヴァレンティーノ・ファミリーのボスの座を奪い、俺がアンダーボスになった。エドゥアルドさんは俺にもお前にも10億ドル分け前をくれたんだ。預金の残高を確認してみろ。

ルイスはそれだけ言って電話を切った。アンヘルが銀行に電話して残高を確認すると確かに10億ドル増えていた。あまりの大金にアンヘルは足が震えた。

今回はここまでにいたしましょう。次回をお楽しみに。

 

後書き

リンダ:カナダ政府との大きな仕事が決まったのだから、ブルックリン臨海区の新港建設プロジェクトは断念すべきだわ。二兎を追う者は一兎をも得ずと言うじゃないの。アンヘル:そうですね。欲をかくのは止めておきましょう。アンヘルはエドゥアルドに電話を入れたが、彼は留守であった。代わりに第2夫人のセリーナ・マッキンノン27歳さんが応対した。セリーナ:エドゥアルド邸でございます。私は留守を預かっておりますセリーナ・マッキンノン27歳と申します。あいにく主人は居りませんが伝言を仰って下さい。アンヘル:私はエドゥアルドさんの部下の一人アンヘル16歳と申します。「カナダ政府との受注が決まりました。残念ですがブルックリン臨海区の新港建設プロジェクト受注競争からは降りさせていただきます」とお伝え下さい。セリーナ:了解しました。アンヘルさんておっしゃるのね。主人の部下にしては怖くなさそうなお声ですね。