小説「海と陸の彼方へ」

 

第二章エドゥアルドの復讐

 

第4話エドゥアルド「組織のアンダーボスとアンジェロとの抗争」

 

前書き

「アンジェロからホームセンターチェーン㈱を経営せよと言われ、資本金1千万ドルを受け取った。とりあえず10店舗作ることにした。記念すべき第一号店はこのビルの一階にある空き店舗を使用したい。出来れば同じようなアパートも後9棟購入し、同じ形態で賃貸収入とホームセンターチェーン経営収入を得たい」以上のようにエドゥアルドは説明した。ルドラは「昇格祝いにアパートはくれてやる。しっかり経営せよ。それからインタイが近々お前の家に行くそうだ。歓待してやれよ」と言って電話を切った。エドゥアルドは不動産屋に電話し、アパートEGと同じような形態のアパートを9棟購入し、90万米ドルを銀行振り込みした。アパートEGと同じように空き店舗が1階に10軒あるから話が早い。空き店舗をホームセンターように改装すれば済む。次に建設屋に電話し、ホームセンターの店舗改装を一軒辺り1万ドルで頼んだ。結局総額100万ドルで賄えた。資本金残額は900万ドルである。

 

本文

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登場人物「1935年1月1日時点」
ルドラ・バッシャール24歳。企業からの収益金250万米ドル。1,340万米ドルの普通預金「アドリアナと交換したもの」。金塊127トン「運用利息月利3,810万米ドル、日歩127万米ドル」。ブエノス・アイレス司法府裁判検事。ルドラ映画産業㈱会長兼オーナー「資本金6千万アルゼンチン・ペソ」。ルドラ金融㈱会長兼CEO。ボリビア化学薬品㈱会長兼オーナー「資本金1千万米ドル」。ボリビア薬品チェーン㈱会長兼オーナー「資本金1千万米ドル」。
インタイ・アルマンドは16歳。ラ・パスの一流大学の医学部修士卒博士号取得「飛び級」。現在は同大学で助手を務めながら工学を専攻しており、医師免許も持っています。ボリビア薬局チェーン㈱社長兼COO。普通預金250万米ドル。純度99.9%の粉末コカインを1トン所有。
エドゥアルド・ガルシア24歳。元コロンビア:ウィラ地区にコーヒー農園を所有する地主だったがイカサマ賭博に引っかかり、農園と1千万米ドル及び妻のローザ・ガルシア22歳を奪われる。
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ニューヨーク市の行政地図

アメリカ合衆国東部
昭文社「コンパクト世界地図帳」P52


フロリダ州の地図と出典「南部にマイアミ、更に南部にホームステッドがある」

カリブ海域
岩波現代文庫「コロンブスからカストロまで(Ⅰ)」E.ウィリアムズ著。巻頭の図。

コロンビア共和国
明石書店「コロンビアを知るための60章」二村久則編著。P14

コロンビアのアンデス山脈
明石書店「コロンビアを知るための60章」二村久則編著。P19

コロンビアの河川
明石書店「コロンビアを知るための60章」二村久則編著。P24

マフィアの組織図「パブリックドメイン」

 

2月16日土曜日午後7時:ブロンクスのモリス・ハイツ地区のアパートEG
エドゥアルドは今日もマリア一家のために夕食を用意し、楽しいひとときを一緒に過ごした。マリアは一旦子どもたちを連れて3階の自宅に帰って行った。エドゥアルドはコロンビアのルドラの別宅に電話し、アパートEGを譲ってくれるように頼んだ。

ルドラ:もちろん、譲ってはやるが事情を話せ。

「アンジェロからホームセンターチェーン㈱を経営せよと言われ、資本金1千万ドルを受け取った。とりあえず10店舗作ることにした。記念すべき第一号店はこのビルの一階にある空き店舗を使用したい。出来れば同じようなアパートも後9棟購入し、同じ形態で賃貸収入とホームセンターチェーン経営収入を得たい」

以上のようにエドゥアルドは説明した。鷹揚なルドラは「昇格祝いにアパートはくれてやる。しっかり経営せよ。それからインタイが近々お前の家に行くそうだ。歓待してやれよ」と言って電話を切った。エドゥアルドは不動産屋に電話し、アパートEGと同じ形態のアパートを9棟購入し、90万米ドルを銀行振り込みした。アパートEGと同じように空き店舗が1階に10軒あるから話が早い。空き店舗をホームセンター用に改装すれば済む。

次に建設屋に電話し、ホームセンターの店舗改装を一軒辺り1万ドルで頼んだ。結局総額100万ドルで賄えた。資本金残額は900万ドルである。リリアナ・ガルシア(38歳)の夫: ホセ・ガルシア(42歳)が電話で応対したのにはびっくりした。リリアナの話では来週いっぱいダラスに出張するそうだがな。エドゥアルドは一度リリアナに聞いてみようと思った。

エドゥアルドはマリアが来るのを心待ちにしていたが彼女は中々来なかった。

 

"亭主のカルロスが帰ってきたのかもな。あいつは深夜勤だから午後8時に相棒と一緒にでかけ翌朝返ってくるはずだがな"

 

色々考えているとき、電話がリーンと鳴った。なんとなく嫌な予感がしたが案の定アンジェロからの電話だった。

アンジェロ:明後日の昼12時にアンダーボス(34歳)のヴィンセント・"ヴィニー"・ロマーノが対立するマフィアの幹部二人と密会するようだ。どうせ俺を暗殺する相談だろうが、その証拠を掴みたい。何とか手を貸してくれ。お前には給料を1万ドル/月支払うし、密売の歩合も5割にしてやろう。

エドゥアルド:了解しました。お任せ下さい。

エドゥアルドはマリアに電話した。カルロスが出れば切ってしまえば良い。マリアが出た。

マリア:ごめんね。子供がぐずっていたのよ。今から行くわ。

エドゥアルド:今日は仕事があって帰りは11時ころになる。

マリア:それなら勝手にあんたのベッドに入っておくわ。

エドゥアルド:分かった。今から出てくる。

エドゥアルドはアリシア・ヴァスケス(24歳)を電話で呼びつけ、警官の制服一式を用意させた。

☆シーン: トリニティ・バル&グリル
夜のモリス・ハイツ地区は静かで、トリニティ・バル&グリルの暖かい照明が通りに灯りを投げかけていた。エドゥアルドは心臓が高鳴るのを感じながら、レストランの扉を開けた。

☆レストランでの交渉:
レストランの中は暖かい照明と心地よい香りで満たされていた。エドゥアルドはウェイトレスのエマに声をかけ、レストランのオーナーであるロベルトとイザベラを呼び出させた。彼らは恐怖と期待の入り混じった表情でエドゥアルドに近づいてきた。

エドゥアルドは彼らに対して誠実かつ冷静に話した。彼の言葉は重く、しかし確固たる決意を持って彼らに語りかけた。彼は彼らに協力を求め、彼らの安全とレストランの将来を保証した。

ロベルトは、関わりたくないと強くエドゥアルドに言った。また、彼は客のプライバシーを守るという立場から、写真を撮ったり会話を漏らしたりすることを拒否した。しかし、エドゥアルドは彼らに安心感を提供した。エドゥアルドはロベルトに"証拠収集は全て俺達がやる。彼らに負担は掛けない"と説明し、さらに"協力してくれたら、レストランを綺麗に改修してやる"と請け負った。

イザベラがこの提案に関心を持ち、改修の設計について質問してきた。エドゥアルドは彼女の質問に答え、"ロベルトやイザベラの希望通りに改修してやるし、費用はすべて俺が持つ"と保証した。

☆従業員の買収とレストラン改修資金の提供
エドゥアルドはウェイターとウェイトレスに1,000ドルずつ渡した。彼らの顔には驚きと喜びが広がった。そして、彼はイザベラに1万ドルを渡した。この金額はレストランの改修のためのものであり、エドゥアルドの計画に協力する見返りとして提供された。イザベラの目には感謝と期待が輝いていた。彼女はエドゥアルドに感謝の言葉を述べ、彼の提案に感謝した。

エドゥアルドはその場で業者に電話をかけ、ワイヤーレコーダーと隠しマイクの設置を頼んだ。彼の声は冷静であり、その中には強い決意と使命感が滲んでいた。彼は業者に対して、状況を詳細に説明し、機材の設置と撤去のタイミングを明確に指示した。

ロベルトとイザベラはエドゥアルドの言葉に安堵の表情を見せた。彼らはレストランの将来に対する期待と、この危険な取引に関わる不安が交錯する心境だった。しかし、エドゥアルドの冷静かつ確固たる態度は彼らに安心感を与え、彼らはエドゥアルドの計画に協力することを決意した。

エドゥアルドはオーナーの妻イザベラを気に入り、彼女には内緒で5,000ドル握らせ、誰も見ていないことを確認して熱烈なキスを仕掛けた。イザベラは満更でもないという態度を見せた。

エドゥアルドを強く抱きしめ、彼の言葉が偽りでないかと確かめるように彼の一物を掴み、暫くの間その全長に漲る若さを味わっていた。エドゥアルドがイザベラを本当に気に入っていることを確信した彼女は素早くメモを取り出し、「私は木曜日が非番なの。家まで会いに来て頂戴。電話番号を書いておくわ」と記しエドゥアルドの一物に貼り付けた。

エドゥアルドはレストランを出る前に、ロベルトとイザベラに向かって深く頷いた。彼の目は感謝と信頼を示していた。彼は彼らに向かって手を振り、レストランを後にした。

そして、彼は家に向かった。家に帰ると、マリアが待っていた。彼女はエドゥアルドの顔を見て安堵の表情を見せ、彼の冷たい手を取り、温かい手のひらで包んだ。

☆マリアとの一夜
マリアがエドゥアルドを一番気に入っているには彼がマリアの体臭をちょっと嗅いだだけで強烈に催し、彼女を押し倒してくるところです。もちろん、マリアは嗜虐性を持っていますから、彼の持つ被虐性質は性に合うのですがそれだけでは物足りないのです。嗜虐性もエドゥアルドは持ち合わせており、彼の嗜虐性はマリアの性臭によって引き出されるのです。こうなったときの彼は大暴れするので制御するのに苦労します。

彼には暴力体質は皆無ですからその点は良いのですが、延々とマリアを求め続けるのだけは少し抑えてほしいと思うのです。亭主のカルロスが早朝5時にはパトロール勤務を終えて帰ってきますからそれまでには帰らなければなりません。

エドゥアルドを振り切って帰れば良いってなものですが、マリアはエドゥアルドを愛するようになってしまいそれが中々出来ないのです。今夜もエドゥアルドが埒をあけたのは午前3時半でした。慌てて家に帰りシャワーを浴びるともう4時半です。

2月17日日曜日午前6時、ブロンクスのモリス・ハイツ地区のアパートEGでは特別な朝食会が開かれていました。エドゥアルドはパートで働く主婦たちとその家族を大会議室兼大食堂に招待していました。夜勤明けのマリアの夫カルロスと出張中のリリアナの夫ホセ・ガルシアを除き、総勢20名が集まりました。

会議室は朝の光で明るく照らされ、テーブルにはカラフルなテーブルクロスが敷かれていました。子供たちの目をキラキラさせるような、ヴァイキング形式の豪華な朝食バイキングが用意されていました。

献立は、新鮮なフルーツの盛り合わせ、様々な種類のパンとジャム、新鮮な野菜とチーズ、ヨーグルトとシリアル、そして温かい料理としてはスクランブルエッグ、ベーコン、ソーセージ、ハッシュブラウンが用意されていました。また、パンケーキとワッフルステーションもあり、子供たちは自分でトッピングを選んで楽しむことができました。

子供たちは目を輝かせながら、自分たちのお皿に好きなものを取り分けていました。大人たちはコーヒーや紅茶を手に取りながら、リラックスした雰囲気で会話を楽しんでいました。

エドゥアルドは微笑みながら周りを見渡しました。彼はこのコミュニティの一部として、家族たちが一緒に時間を過ごすことの重要性を理解していました。彼は心から、彼らが安心して楽しむことができる空間を提供したいと思っていました。

子供たちは笑顔で食事を楽しみ、大人たちは心地よい会話を楽しんでいました。この朝食会は、コミュニティの絆を深めるとともに、新しい一日をポジティブな気持ちでスタートさせる素晴らしい機会となりました。

☆スラム街の星「ルイス・ディアンジェロ(18歳)」
エドゥアルドはコカインの密売の歩合が5割になったことをきっかけに仕事を部下に任せることにしました。使っていた密売人5人の中から18歳の少年ルイス・ディアンジェロを抜擢しグループリーダーとしました。

2月17日日曜日午前8時:ブロンクスのモリス・ハイツ地区裏通り
エドゥアルドは見張りの少年と密売人5名を呼びました。
エドゥアルド:今から昇格人事を発表する。ルイス・ディアンジェロ(18歳)をグループリーダーとし、歩合を1割に引き上げる。見張りを密売人に昇格させる。今から見張り一人と密売人5人を探さないといけない。ルイスよ。誰か良い人材はいないか。

ルイス:私の弟アンヘル16歳に見張りをさせます。お前たちの身内で誰か密売人をやりたいやつはいないか?

密売人たち5人が一人ずつ紹介してきた。ルイスはひとりずつと面談し、全員の合格を決めた。エドゥアルドは今日のノルマ6万包をルイスに渡し、密売業務をルイスに任せた。

2月17日日曜日午前9時:ブロンクスのモリス・ハイツ地区のアパートEG
エドゥアルドが自宅に帰ってきたら来客があり、遠慮会釈もなく居間のソファーに陣取っているようだ。合鍵を持っていたのかな。

「おお。エドゥアルド帰っていたか。昼まで待たねばならんかなと思っていたぞ」

インタイの声がする。エドゥアルドはドアを開けて入った。やはりインタイだった。ふたりは抱き合って久しぶりの挨拶を交わした。お互いに微妙な問題「カルロスの射殺とローザの逃亡」には触れない。蒸し返しても詮無いことでもある。

インタイ:ルドラさんから聞いたが正式の構成員になったそうだな。そればかりではなくホームセンターチェーン㈱の経営まで任せられたと聞いているぞ。

エドゥアルド:そうなんだ。嬉しいよ。ところでお前はこれからどうするつもりなんだ。大学の先生になるのか?

インタイ:とりあえずは総合病院を開こうと思っているんだ。もう土地や建物は契約してある。来月からは開院するぞ。

エドゥアルド:そうか。俺も調子が悪くなったら是非お願いするよ。

インタイ:ところでお前、住民票とかは入手したか?まさか不法移民のままじゃないだろうな?

エドゥアルド:いや。不法移民のままだな。何もしていないぜ。

インタイ:それは不味いぞ。警察の手入れが入ったとき、すぐに収監されるぞ。罪がなくてもな。

エドゥアルド:そうなのか。どうしたら良いんだ。教えてくれないか?

インタイ:まともな仕事に就いていれば比較的早く住民票もアメリカ国籍も取れるだろうが、職業がマフィアの正規構成員だと永遠に下りないな。

インタイ:俺の伝手であと二人だけアメリカ国籍とニューヨーク州の住民票やニューヨーク市の住民票を取ることが出来る。ルドラさんとエドゥアルドのために確保しておいたんだ。

インタイ:でもお前はコロンビア国籍のまま居たいんだよな。名前と姓が同じでも同姓同名と言い張ることも出来るが写真を照合されると不味い。そうだ。俺が今整形してやろう。手術道具も持っているし、麻酔はコカインを吸えば大丈夫だろう。作業室を借りるぜ。

あれよあれよと言うままにエドゥアルドはインタイの整形手術を受けさせられた。隣の作業室で整形手術を行っているものだから、パートの主婦たちの噂になり、5人が全員押しかけてきてインタイの見事な施術を息をごくりと飲み込みながら見物している。

アナ・キム(35歳):元々良い男だけど、更に男っ振りが上がったね。

エレナ・ジョンソン(30歳):色が黒くなって精悍さが増したわね。鼻も随分と高くなったね。まるで別人だね。

ソフィア・パテル(35歳):今度の顔はそそられてしまうね。前の顔は柔かったからね。顔だけで飛びついて行きたくはならなかったけどね。

リリアナ:精気に満ち溢れていてこれぞマフィアという外観をしている。危険な男という匂いがプンプンしてくる。

マリア:独占して私の男と言えたらどんなに良いだろうね。もう頂いてしまうよ。

今回はここまでにいたしましょう。次回をお楽しみに。

 

後書き

アンジェロ「若頭補佐NO.3」とコステロファミリーのNO.2であるアンダーボス「若頭」との抗争が勃発した。エドゥアルドを部下に持ち、勢いをつけてきているNO.3のアンジェロを警戒したアンダーボスがアンジェロの暗殺を計画したのがことの発端だ。アンダーボスはコステロファミリーと対立している他のマフィアにアンジェロの暗殺を頼み、見返りとしてアンジェロの縄張りを渡すという悪辣な謀略であった。アンジェロに頼まれ、彼らの謀議の証拠集めに奔走するエドゥアルド。その件の解決策が見つかったときにインタイが久しぶりにエドゥアルドの前に顔を見せる。彼に諭されアメリカ合衆国の国籍を取ることを決意したエドゥアルドだったが、彼にも信念があり、コロンビア国籍を捨てたくなかった。2重国籍は認められていないため、顔写真の照合を回避するための方法をインタイが考えた。それは整形手術を行い、同姓同名の別人だと言うことにする方法であった。