小説「海と陸の彼方へ」

 

第二章エドゥアルドの復讐

第1話……エドゥアルド(マフィアの準構成員となる)

 

前書き

ルドラとエドゥアルドが機内で携帯食「サンドイッチとコーヒー程度のもの」を食べているとき、無線が突然繋がった。メデジンのソフィアの声だった。横にはインタイも居る。ソフィア:インタイがカルロスを射殺し、ローザは逃げた。射殺するところは目撃されていない。インタイを助けるために銃の暴発事故でカルロスは死亡したということにし、メデジン市警もそれで納得した。兄にはどう説明したら良いのか?ルドラ:インタイがやったなんて言うんじゃないぞ。インタイは優秀な男で将来がある。カルロスを殺す動機もない。動機があるのはエドゥアルドとお前だ。お前がエドゥアルドに頼んでカルロスを殺してもらったことにしろ。丸一日医者が手当を尽くしたが助からなかったことにすれば全てが丸く収まる。エドゥアルドの顔も立つし、インタイもマフィアに関わりを持たなくて済む。

 

本文

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登場人物「1935年1月1日時点」
ルドラ・バッシャール24歳。企業からの収益金250万米ドル。1,340万米ドルの普通預金「アドリアナと交換したもの」。金塊127トン「運用利息月利3,810万米ドル、日歩127万米ドル」。ブエノス・アイレス司法府裁判検事。ルドラ映画産業㈱会長兼オーナー「資本金6千万アルゼンチン・ペソ」。ルドラ金融㈱会長兼CEO。ボリビア化学薬品㈱会長兼オーナー「資本金1千万米ドル」。ボリビア薬品チェーン㈱会長兼オーナー「資本金1千万米ドル」。
インタイ・アルマンドは16歳。ラ・パスの一流大学の医学部修士卒博士号取得「飛び級」。現在は同大学で助手を務めながら工学を専攻しており、医師免許も持っています。ボリビア薬局チェーン㈱社長兼COO。普通預金250万米ドル。純度99.9%の粉末コカインを1トン所有。
エドゥアルド・ガルシア24歳。元コロンビア:ウィラ地区にコーヒー農園を所有する地主だったがイカサマ賭博に引っかかり、農園と1千万米ドル及び妻のローザ・ガルシア22歳を奪われる。
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ニューヨーク市の行政地図

アメリカ合衆国東部
昭文社「コンパクト世界地図帳」P52


フロリダ州の地図と出典「南部にマイアミ、更に南部にホームステッドがある」

カリブ海域
岩波現代文庫「コロンブスからカストロまで(Ⅰ)」E.ウィリアムズ著。巻頭の図。

コロンビア共和国
明石書店「コロンビアを知るための60章」二村久則編著。P14

コロンビアのアンデス山脈
明石書店「コロンビアを知るための60章」二村久則編著。P19

コロンビアの河川
明石書店「コロンビアを知るための60章」二村久則編著。P24

☆マイアミからニューヨークまでの機内:午後7時半
ルドラとエドゥアルドが機内で携帯食「サンドイッチとコーヒー程度のもの」を食べているとき、無線が突然繋がった。メデジンのソフィアの声だった。横にはインタイも居る。

ソフィア:インタイがカルロスを射殺し、ローザは逃げた。射殺するところは目撃されていない。インタイを助けるために銃の暴発事故でカルロスは死亡したということにし、メデジン市警もそれで納得した。兄にはどう説明したら良いのか?

ルドラ:インタイがやったなんて言うんじゃないぞ。インタイは優秀な男で将来がある。カルロスを殺す動機もない。動機があるのはエドゥアルドとお前だ。お前がエドゥアルドに頼んでカルロスを殺してもらったことにしろ。丸一日医者が手当を尽くしたが助からなかったことにすれば全てが丸く収まる。エドゥアルドの顔も立つし、インタイもマフィアと関わりを持たなくて済む。

ソフィア:分かったわ。インタイのためにそういうことにするわ。今から兄に電話しておく。でもエドゥアルドは兄に一目置かれるわね。中々根性があるって。実は根性なしなのにね。

エドゥアルドはショックを受けている。

ルドラ:話は聞いたか?インタイがお前のために仇を討ってくれたぞ。お前の気持ちも複雑だろうが何れにせよ一番の仇カルロスは死に、ローザは逃げた。あとはお前が金と権力を握り、カルロスの妹夫婦「妹:エミリア・ロドリゲス(35歳)、妹の夫:ホセ・ロドリゲス(37歳)」から奪われたウィラのコーヒー農園と1千万米ドルの金を取り返すだけだ。

ルドラ:今度の件でアンジェロがお前を部下に取り立ててくれるかもしれん。チャンスを逃すなよ。お前に軍資金1万米ドルとコカイン耐性薬100錠、コカインン拒否薬100錠、新万金丹100個をやる。新万金丹は毎日一個飲むんだぞ。一週間で効き目が現れる。

エドゥアルド:ルドラさん。何から何まで有難うございます。必ず目的を果たします。この恩は一生忘れません。

ルドラ:まあ、良いよ。お前も根性なしに見えるが、実は思慮深くて優しいところがある。そこがお前の良いところだ。インタイは男らしいが、血気に逸り過ぎる。あいつを助けてやれよ。お前とインタイは良いコンビだと思うぞ。

2月14日木曜日午後8時:ニューヨーク市サウス・ブロンクス私設飛行場「アンジェロ所有」
ルドラとエドゥアルドはマイアミの私設飛行場を午前11時に出発し、8時間の飛行を終えてやっと到着し、アンジェロの倉庫に純度99.9%の粉末コカインを1トン積み込むことが出来た。アンジェロの部下たちが中身を確かめている。ルドラたちはアンジェロに呼ばれて事務所まで出向いた。

アンジェロ:お前たちがルドラとエドゥアルドか?

ルドラ:私がルドラ、こいつがエドゥアルドです。

アンジェロ:先ず取引を済ませよう。確かに物(ブツ)は本物だった。約束通り、4千万米ドルの小切手を渡そう。来月も16日までに頼むぞ。

ルドラ:了解しました。それでは私はこれで失礼します。

アンジェロ:まあ、ちょっと待て。俺の話も聞いてくれ。

アンジェロ:俺は今コカイン密売の他にスロットマシン事業とカジノ経営をやろうと考えている。妹のソフィアからエドゥアルドが根性のある男だと聞いている。エドゥアルドを俺の部下にしたい。

ルドラ:ボリビアからコカインを運ぶ仕事は誰がするんですか?エドゥアルドにやってもらうつもりでいたんですがね。

アンジェロ:月に一回のことだろう。兼業でやれば良い。運び賃として一回当たり3,000米ドルやるよ。

エドゥアルド:粉末コカインの運び賃はリスクが大きいですから1トン当たり1万ドル貰いたいですな。

アンジェロ:良し。そうしてやろう。俺の部下としての給料は月に3,000米ドルだ。今回の運び賃と合わせて13,000米ドルやろう。

エドゥアルドは歩合でないのが不満だったが、ここは大人しくありがたく貰っておいた。

アンジェロ:エドゥアルド。お前はしばらく事務所で寝泊まりせい。電話番をするんだ。

ルドラはそのまま私設飛行場から飛び立ち、マイアミからカルロス牧場まで出発した。

2月14日木曜日午後10時:サウス・ブロンクス・アンジェロ事務所
夜の静寂が事務所を包む中、エドゥアルドは疲れ果てた身体をベッドに沈めようとしていた。しかし、その静寂は突如として破られ、ドアがガラリと開けられた。入ってきたのは、力強い眼差しと豊かな体型を持つ女性、ビアンカ・マルティネスだった。彼女はアンジェロの妻であり、その存在感は部屋中を満たしていた。

ビアンカはエドゥアルドに向かって声をかける。

「あんたがエドゥアルドかい。私はビアンカ・マルティネス。アンジェロの妻さ」

エドゥアルドは彼女の言葉に驚き、急いで身を起こした。彼は彼女の前で恐縮しながらも、礼儀正しく自己紹介をした。

「私がエドゥアルド24歳です。何も分かりませんが精一杯やりますので宜しくお願い致します」

ビアンカはエドゥアルドの言葉とその態度に微笑みを浮かべた。彼女は彼の若さと熱意に感じ入ったようだった。

エドゥアルドの平身低頭ぶりが気に入ったようで、彼女は「そんなにかしこまらなくて良いよ。もっと気楽にしな。ところで上物のコカインを持っていたら、少し私にくれないかい」と言う。

エドゥアルドはルドラやインタイから少し「500グラムほど」貰っていたのでビアンカに0.2グラムほどの紙包を渡した。

ビアンカはそれを美味そうに吸い、残りを「あんたも吸いなよ」と言って渡してくれた。元コカイン中毒者には毒なのだが、ルドラから以前飲ませて貰った耐性コカイン薬の効き目は永遠にあるようでエドゥアルドはいくらコカイン粉末を吸っても中毒にはならなかった。

全身に快感が広がり多幸感が増してくる。眼の前に居るビアンカが世界一の美人に見えてくるから不思議なものだ。実際にもビアンカはサウス・ブロンクスでは3本の指に入るほどの美人でもあるのだが。ルドラから貰った新万金丹も一粒飲んでいるのでエドゥアルドはみるみるうちに勃起して止まらなくなった。

ルドラならそのままビアンカをいただいてしまうところだろうが、残念ながらエドゥアルドにはそういう男ではなかった。必死になり足の間に隠して事なきを得た。

ビアンカはエドゥアルドの変化に気づいていたが、彼女も夫の部下に粉をかけるほどの馬鹿な女ではなかった。エドゥアルドが手を出そうものなら即座に射殺されていただろう。ビアンカは紳士的なエドゥアルドを気に入り、もう少し一緒にいたいと思った。

ビアンカ「嫌じゃなかったら、明日の一日の料理の下ごしらえを手伝ってくれないかい?」

エドゥアルドは喜んで手伝うことにした。エドゥアルドも彼女の美しさに惹かれていたのである。そして二人はキッチンへ向かった。

キッチンでは、ビアンカがエドゥアルドに料理のコツや家庭のレシピを教えながら、一緒に料理の準備を始めた。ビアンカは彼に野菜の切り方や肉の調理法を指南した。エドゥアルドは彼女の指示に従い、一生懸命に作業を進めた。

彼らは一緒に笑いながら料理をした。ビアンカはエドゥアルドの料理技術の進歩を褒め称え、彼も彼女の料理知識に感銘を受けた。彼らは互いに協力し、キッチンは温かい光と楽しい会話で満たされた。

事務所に誰も居ないことを知っている二人は時折熱いキスを交わした。ビアンカは友情のキスだと思い込もうとしたがそうではなかった。深夜に交わす熱いキスが友情のキスであろうはずがない。ほとばしる愛情の表れであるはずだ。

時間が経つにつれ、エドゥアルドはビアンカの人柄に引かれ、彼女も彼の誠実さと努力を評価するようになった。ビアンカはエドゥアルドの気持ちを察していたが、最後の物を許す気にはなっていなかった。中途半端と言われようと彼の気持ちが本当だと確信しなければその気にはなれない。アンジェロからもエドゥアルドの事情を聞いて知っており、元妻のローザをまだ愛していることも分かっていたから。

夜遅くまでキッチンで過ごした後、エドゥアルドは疲れてベッドに横たわった。彼はその日の出来事を思い返しながら、眠りについた。彼は彼女に気に入られたことを心から嬉しく思った。しかし、心の奥底では行方知れずのローザのことを思っていた。

2月15日金曜日午前6時:サウス・ブロンクス・アンジェロ事務所
朝の光が事務所に差し込む中、エドゥアルドは既にキッチンで働いていた。昨夜ビアンカと一緒に下ごしらえをした食材を利用して、アンジェロ一家全員の朝食を準備していた。彼は手際よくパンをトーストし、新鮮なフルーツをカットしていた。また、彼は家族の好みを考え、オムレツとパンケーキも用意した。

やがて一家が集まり、朝食の時間が始まった。テーブルにはアンジェロとビアンカの他に、アンジェロの妹であるルチアとその子供たちも座っていた。アンジェロとビアンカの子供たち、10歳のマリオと8歳のリリアも元気いっぱいに食卓に加わった。

エドゥアルドは皆に食事を振る舞い、その間にも彼はアンジェロの指示を待っていた。

食事の間、一家は楽しげに会話を交わしていた。ルチアは子供たちの学校の話をし、ビアンカは最近見た映画について語っていた。アンジェロは一家の話を静かに聞きながら、時折エドゥアルドに視線を送っていた。

食事が終わると、アンジェロはエドゥアルドを呼び寄せ、彼に今日の仕事の指示を出した。

「エドゥアルド、今日は大事な仕事がある。コカインの取引だ。これは初めての仕事だから、緊張するかもしれないが、冷静に行動するんだ。ブロンクスのモリス・ハイツ地区で行うんだ。」

エドゥアルドはアンジェロの言葉に頷き、緊張と期待に満ちた気持ちで彼の指示を受けた。彼は今まで経験したことのない世界に足を踏み入れることになると感じていた。

アンジェロはエドゥアルドに取引の詳細を説明し、彼にどのように行動するべきかを指南した。彼はエドゥアルドに警戒心を持つようアドバイスし、取引がスムーズに行くよう心掛けるよう言った。

エドゥアルドはアンジェロの言葉を真剣に聞き入れ、彼の指示に従うことを誓った。彼はこの新しい仕事に全力を尽くす決意を固め、アンジェロの信頼を勝ち取ることを目指していた。

そして、エドゥアルドはアンジェロの指示のもと、新たな仕事の準備を始めた。彼は心の中で自身を奮い立たせながら、未知の世界への第一歩を踏み出した。

☆下っ端からの卒業
☆午前8時:ブロンクスのモリス・ハイツ地区
エドゥアルドはモリス・ハイツ地区の裏通りに立ち、周囲を警戒しながら取引を行っていました。彼はインタイから学んだ知識を活用し、コカイン粉末にカフェインを混ぜて売却していました。彼はこの方法でコカインを5倍に膨らませ、1包1ドルで販売していました。彼はこの取引で利益を上げることができ、その利益は彼の新しい生活の第一歩となりました。

☆昼12時:サウス・ブロンクス・アンジェロ事務所
昼になり、エドゥアルドは事務所に戻って昼食の準備を始めました。アンジェロが事務所に入ってきて、エドゥアルドに取引の結果を尋ねました。エドゥアルドは正直に売上を報告し、アンジェロは彼に報酬として600ドルを渡しました。

アンジェロはさらにエドゥアルドに自身の住居を探すよう指示しました。エドゥアルドは感謝の意を示し、昼食の準備を続けました。

ビアンカはその場にいて、エドゥアルドが事務所を去ることになると聞いて心から寂しさを感じました。彼女はエドゥアルドが事務所にいることで起こり得る複雑な関係を理解していました。彼女はエドゥアルドとの関係がアンジェロとの関係を損ねる可能性があることを知っていました。

しかし、彼女も理解していました。エドゥアルドが事務所に留まることは彼の成長を妨げ、彼とビアンカの間に不必要な緊張を生じさせる可能性がありました。彼女はエドゥアルドが自身の道を歩むことを受け入れ、彼に幸運を祈りました。

エドゥアルドは最後の昼食の準備を心を込めて行いました。彼はこの新しい始まりに期待と興奮を感じていましたが、ビアンカとの別れは彼の心に深い寂しさを残しました。

彼はビアンカに感謝の意を示し、彼女に微笑みかけました。

今回はここまでにいたしましょう。次回をお楽しみに。

 

後書き

☆下っ端からの卒業……☆午前8時:ブロンクスのモリス・ハイツ地区……エドゥアルドはモリス・ハイツ地区の裏通りに立ち、周囲を警戒しながら取引を行っていました。彼はインタイから学んだ知識を活用し、コカイン粉末にカフェインを混ぜて売却していました。彼はこの方法でコカインを5倍に膨らませ、1包1ドルで販売していました。彼はこの取引で利益を上げることができ、その利益は彼の新しい生活の第一歩となりました。
☆昼12時:サウス・ブロンクス・アンジェロ事務所……昼になり、エドゥアルドは事務所に戻って昼食の準備を始めました。アンジェロが事務所に入ってきて、エドゥアルドに取引の結果を尋ねました。エドゥアルドは正直に売上を報告し、アンジェロは彼に報酬として600ドルを渡しました。アンジェロはさらにエドゥアルドに自身の住居を探すよう指示しました。エドゥアルドは感謝の意を示し、昼食の準備を続けました。アンジェロはさらにエドゥアルドに自身の住居を探すよう指示しました。エドゥアルドは感謝の意を示し、昼食の準備を続けました。