小説「海と陸の彼方へ」

 

第一章ブエノス・アイレスの輝き

 

第33話……三合会2派の争い・ルドラNYへ飛ぶ(中編その8)

 

前書き

ルドラは夕食後インタイと一緒にメデジンの街を見学したいとカルロスに申し出た。カルロスは貧民窟を避けて高級住宅街を見物せよという。
カルロス:「ルドラ、インタイ、街を見学するなら、貧民窟は避けて、"エル・パセオ・デ・ロス・リコス"(富豪の散歩道)と呼ばれる高級住宅街を見てきなさい。ただし、"ラ・リベラ・デ・ロス・オルビドゥス"(忘れられた岸)と呼ばれる貧民窟は避けるように。この二つは"リオ・エスペランサ"(希望の川)で隔てられているから、間違えることはないだろう」
ルドラたちは好奇心を抑えきれず危険な貧民街を探索し、途中で倒れている若い男を助けた。コカイン中毒の症状が出ていたのでルドラは貴重なコカイン耐性薬を彼に飲ませ彼の命を救ったが、彼にはカルロスとの深い因縁があった。

 

本文

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登場人物「1935年1月1日時点」
ルドラ・バッシャール24歳。企業からの収益金250万米ドル。1,840米ドルの普通預金「アドリアナと交換したもの」。金塊127トン「運用利息月利3,810万米ドル、日歩127万米ドル」。ブエノス・アイレス司法府裁判検事。ルドラ映画産業㈱会長兼オーナー「資本金6千万アルゼンチン・ペソ」。ルドラ金融㈱会長兼CEO。ボリビア化学薬品㈱会長兼オーナー「資本金1千万米ドル」。ボリビア薬品チェーン㈱会長兼オーナー「資本金1千万米ドル」。
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カルメン・バッシャール36歳。ルドラの妻。エミリオ・ロドリゲス「死亡」の元妻。
イザベル・ロドリゲス20歳。カルメンの娘。
フェルナンド・ロドリゲス20歳。カルメンの息子
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エレナ・モラレス30歳。ルドラの愛人。ルドラ検事付き書記官。次期市長室長。リカルド・モラレスの妻。
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部下
タリオ「勇敢な戦士」21歳。ルドラ缶詰工業㈱専務。ルシエンヌの兄。シワトルの夫。カリブ族の男。獰猛。格闘技の達人。
シワトル「花の女神」28歳。タリオの妻。元タバスコ領主の妻。聡明で美しく、性格は穏やかで優しい。
ルシエンヌ「明るい」19歳。ブエノス・アイレス司法府検察官「刑事事件の捜査や起訴を担当」。
モンバナ「高い山」男2歳。ルドラとルシエンヌの間の子。
カノア「風」40歳。ルシエンヌの父親。
アマタ「永遠の」38歳。ルシエンヌの母親。
アドリアナ・グラノジェルス25歳。ルドラ金融㈱COO。元ルドラの愛人。カジェタノの元妻。農園主「時価5千万米ドル」
ヘロニモ・デ・アギラール30歳。ルドラ警備COO。スペイン人。元コルテスの部下。ジャマイカ島アギラール砂糖キビ農園経営。中級黒人男性奴隷500名。
イシュトゥル 「Ixchel」19歳。アギラールの妻。
パカル 「Pakal」男4歳。アギラールの息子。
ゴンサーロ・ゲレーロ28歳。スペイン人。ジャマイカ島ゲレーロ砂糖キビ農園経営。中級黒人男性奴隷500名。
イディア・ンジンガ17歳。ゲレーロの妻。酒好き。陽気なアマゾネス。時々姿をくらます。
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その他の人々
マリア・エバ・ドゥアルテ16歳。悪魔のように可愛い女。高みに連れて行ってくれる男を求めて突進する。手段は選ばない。エバ金融㈱会長兼CEO「資本金2千万米ドル」。
エルヴィラ・ドゥアルテ13歳。マリアの妹。
カタリナ・イルデフォンソ20歳。ルドラ金融㈱営業部長。
中田ボニファシオ38歳。日系人4世の男性。カフェ、レストラン&バーの経営者。
高梨アデルミラ32歳。日系人4世の女性。麻雀店、ビリヤード場の経営者。
レティオ・チュチョ33歳。メスチーソ。エステル・ラジオのプロデューサー。賭博好き。
カタリナ・リベラ・サンドバル34歳。アルベルト・ペレイラ・レボルコ「財閥の当主、政治家」の妻。社交界の華。芸術家支援、慈善活動を行っている。
カルロス・フルベック・オルトゥサル35歳。政治家であり外交官。若い妾を囲っており、妻のロサを顧みない。
ロサ・オルトゥサル30歳。カルロスの妻。アルゼンチンの貴族出身で社交界の名士。
エルナンデス夫妻「夫:フアン・エルナンデス46歳、妻:マリア・エルナンデス44歳」。ブエノス・アイレスの牧牛・牧羊業界の大物。エルナンデス牧場主。
マルティン・ペレス34歳。旧ルイス・ガルシア牧場経営者。元エルナンデス牧場の牧童頭。
パウラ・ペレス26歳。元マルティン・ペレスの妻。フアン・エルナンデスの愛人。
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ルドラ邸スタッフ
執事頭:ジョン・スミス、年齢:45歳
侍女頭:エマ・ジョンソン、年齢:32歳
侍女:ソフィア・ウィリアムズ、年齢:27歳
侍女:オリビア・ブラウン、年齢:29歳
侍女:ルシア・ロドリゲス、年齢:25歳
侍女:アナ・ペレス、年齢:20歳
侍女:ベアトリス・サンチェス、年齢:18歳
庭師:ジェームズ・ジョーンズ、年齢:44歳
ボディガード兼運転手:マイケル・ミラー、年齢:51歳
ボディガード兼運転手:エドゥアルド・ガルシア、年齢:34歳
料理人:ウィリアム・デイビス、年齢:38歳
料理人:マリア・ゴンザレス、年齢:30歳
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飛行機21台「ボーイング247、10名乗り、積載可能重量7,621 kg、空重量4,055 kg」。大型ガレオン船1隻「2,000名乗り、改良野戦大砲500台搭載」小型ガレオン船10隻「100人乗り、改良野戦大砲30台搭載」、キャラック船50隻「500名乗り、改良野戦大砲50台搭載」、砲丸5万発、後込め式小銃10万丁、弾丸500万発。馬5,000頭。荷馬車500台。
傭兵部隊「シラジの女奴隷軍500名、元ベニン王国黒人女奴隷軍500名」
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中米及び西インド諸島
筑摩書房「大航海時代」ボイス・ペンローズ著。荒尾克己訳。巻末地図。

南米
筑摩書房「大航海時代」ボイス・ペンローズ著・荒尾克己訳、巻末の図。

アメリカ三大文明
中公新書「古代アステカ王国」増田義郎著。P2。

☆2月12日火曜日午後7時半:コロンビア・メデジンのカルロス牧場の母屋
ルドラは夕食後インタイと一緒にメデジンの街を見学したいとカルロスに申し出た。カルロスは貧民窟を避けて高級住宅街を見物せよという。

カルロス:「ルドラ、インタイ、街を見学するなら、貧民窟は避けて、"エル・パセオ・デ・ロス・リコス"(富豪の散歩道)と呼ばれる高級住宅街を見てきなさい。ただし、"ラ・リベラ・デ・ロス・オルビドゥス"(忘れられた岸)と呼ばれる貧民窟は避けるように。この二つは"リオ・エスペランサ"(希望の川)で隔てられているから、間違えることはないだろう」

エル・パセオ・デ・ロス・リコス(高級住宅街)
ルドラとインタイはカルロスの運転手、ルイスに送ってもらい、"エル・パセオ・デ・ロス・リコス"に到着する。この地区は美しい庭園、高級車、豪華な邸宅が立ち並び、セキュリティも厳重に施されている。彼らは美術館や高級レストラン、ブティックなども見学する。特に、"ミュゼオ・デ・アルテ・モデルノ"(現代美術館)が印象的だった。

リオ・エスペランサ(希望の川)
この川はメデジンを二つに分けており、一方は繁栄と豊かさの象徴であり、もう一方は貧困と困難の象徴となっている。川にかかる橋から、ルドラとインタイはその対比をしみじみと感じる。

ラ・リベラ・デ・ロス・オルビドゥス(貧民窟)
川の反対側に広がるこの地区は、狭い通りと急な坂、手作りの家々が密集している。多くの人々が日々の生計を立てるために働いている。ルドラとインタイはカルロスの忠告に従い、この地区を避けるが、その存在を無視することはできない。

感想
ルドラ:この街は美しいけれど、対比が激しいね。

インタイ:そうだね、でもそれが現実。何かできることはないかな?

ルドラ:考えてみよう。少なくとも、私たちが何かを始めるきっかけにはなるだろう。

メデジンの夕方:ルドラとインタイの街歩き(続き)

エル・パセオ・デ・ロス・リコス(高級住宅街)の見学に飽きたルドラとインタイは好奇心を抑えきれずラ・リベラ・デ・ロス・オルビドゥス(貧民窟)に車を止めて探索することにした。

その地区は確かに危険で、大通りでさえアンフェタミンやコカインの売買が堂々と行われていた。けばけばしい化粧をした娼婦や娼男たちが二人の袖を引き、ホテルに誘おうとする。

突如、警官とコカインの密売人との乱闘騒ぎが発生。警官たちは遠慮なく拳銃や小銃をぶっ放し、密売人も負けじと応戦していた。巻き込まれて怪我をするのも馬鹿らしいと感じたルドラとインタイは、車に逃げ込もうとしたその瞬間、目の前に20代の男が倒れているのを見つけた。

救出と選択
ルドラは即座に男を介抱し、車に乗せてその場を脱出。彼の症状からコカイン中毒と判断し、アマラから購入したコカイン耐性薬を一粒飲ませた。

インタイ:ルドラさん、高価な薬をそんな男に飲ませるのはもったいないですよ。

ルドラ:もったいないかもしれないけど、人命が最優先だ。

意外な因縁
後で分かったことだが、この男はカルロスと何らかの因縁があるらしく、カルロスの牧場に連れて行く提案を頑なに拒否した。ルドラは仕方なく、貧民窟近くの安ホテルに彼を泊め、明日もう一度彼から事情を聞くことにした。

帰還と反省
二人はその夜、メデジンの多面性とその未来について深く考えながら、カルロス牧場に戻った。特にルドラは、弱い立場の人々に対する自分の責任感を新たに感じていた。

この挿話は、ルドラとインタイがメデジンの裏側を垣間見た結果、彼ら自身の価値観や行動原理に影響を与える重要な出来事となりました。そして、それはカルロス一族との関係にも新たな局面をもたらすこととなるのでした。

☆その日の夜
離れで寝ていたルドラのベッドにソフィアが全裸で潜り込んできた。母屋からルドラたちが泊まっている離れまでは結構距離もある。パジャマ一枚でルドラを訪れたに違いない。メデジンは北緯6度の熱帯地方だが、標高約1500メートルの盆地にあり、2500m級の山々に囲まれている。よって気温は安定しており、16度から28度の範囲で増減する。はっきり言って非常に暮らしやすいところなのだ。

ソフィアは「男と寝たのは10数年ぶりだ。この機会を逃すと一生男と楽しむことは出来ない。ルドラが嫌だと言っても相手してもらうよ」と言い、朝までルドラを離さなかった。ルドラとしても望むところであり、ソフィアの純スペイン人らしい真っ白い肌の色と豊満で頑健な身体には魅力があった。

ソフィア:ルドラちゃん。あんたが持って来た純度99.9%のコカインだけど私に売ってくれないか?1キロ2万ドルで買うよ。

ルドラは思案した。売ってやっても良いが、ソフィアが1キロ2万米ドルで買ったコカインをどこでいくらで売るのかそのことに興味があった。

ルドラ:1キロ2万米ドルで買ったコカインをどこでいくらで売るのか教えてくれ。俺がそいつに直接売るよ。

ソフィア:ただじゃあ教えられないね。見返りが無いと駄目だ。

ルドラ:取引ごとに利益の5%支払うよ。それが嫌なら300万米ドル一括で支払う。

ソフィアは仲介料として一括で300万米ドル支払うことを要求した。

ルドラは成功したら支払うと約束し、密売人の名前を聞いた。それはニューヨークのマフィアの幹部アンジェロ・"エンジェル"・マルティネス47歳だった。

ニューヨークのマフィア組織:コステロ・ファミリー
大幹部「カポ・ディ・トゥッティ・カピ」
名前: ヴィンセント・"ヴィニー"・コステロ
年齢: 52歳
特徴: 組織のトップとして、多くの非合法ビジネス(賭博、麻薬取引、武器密売など)をコントロールしている。

下位幹部「カポレジーム」
名前: アンジェロ・"エンジェル"・マルティネス
年齢: 47歳
特徴: 賭博と麻薬取引を担当。

名前: フランク・"フランキー"・ロッソ
年齢: 44歳
特徴: 武器密売と脅迫を担当。

名前: マリア・"マリー"・デルガード
年齢: 39歳
特徴: 組織の財務とマネーロンダリングを担当。

その他の主要メンバー
名前: ジョニー・"スリム"・ウィリアムズ
年齢: 35歳
特徴: アンジェロの右腕として賭博場を運営。

名前: リサ・"リッキー"・スミス
年齢: 31歳
特徴: マリアの助手として財務を管理。

名前: トニー・"トーン"・ベラスケス
年齢: 29歳
特徴: フランクの部下として武器の取引を行う。

この組織は、ニューヨーク市内で多くの非合法活動を行っており、その影響力は日に日に拡大しています。

ルドラはアンジェロ・"エンジェル"・マルティネスとの最初の取引が成功したらソフィアに仲介料として300万米ドル支払うつもりだったが、後腐れを避けるために今ソフィアに金を小切手で支払うことにした。

ソフィアに金塊の運用料から300万米ドルの小切手を切って渡すと「あんた。後腐れを避けて先に金を支払うつもりだろうが、簡単には別れてやらないよ」と怖いことを言う。

「まあ、アルゼンチンまでは追いかけてこないだろう。追いかけてきたら来たときのことだ」とルドラも覚悟を決めた。

ルドラ:ソフィアさん。脅かしても無駄ですよ。そんなことを言うなら今ここで貴女を追い出しますよ。

ソフィアは脅しが逆効果になったことを知り、慌てて低姿勢に出た。

ソフィア:ルドラちゃんも冗談を本気にしたら駄目だよ。兄貴には今連絡しとくから機嫌を直しなよ。

ソフィアはニューヨークに長距離電話した。母屋にも離れにも受話器を置いている。ルドラが離れに案内されたとき少し内部を調べたが、最新式の無線装置までいくつか設置しているようだ。カリブ海を通る密輸船や飛行機との連絡用だろう。

無線機を置くのは本格的に密輸ビジネスを行っている証拠だ。兄貴に連絡すると言っていたがソフィアはマフィアの幹部を兄に持っていたのだな。

ソフィアはルドラに電話を替わった。

ルドラ:もしもし。替わりました。ルドラ24歳と申します。

 アンジェロ:純度99.9%のコカインを持っているそうだな。いくら持っているんだ。こちらに持ってくることは出来るのか?

ルドラ:手持ちは1トンですが、自前の飛行機でボリビアから運んできました。

アンジェロ:月にいくら位供給出来るのだ?

ルドラ:当座は月に1トンですが3か月後には月に20トン製造できます。

アンジェロ:何?20トンも作れるのか。それは有り難いな。1キロ4万米ドルで買おう。先ずお前が今持っている1トンを俺の飛行場まで持って来い。内容を確かめたらコカイン1トンと現金4千万米ドルとを交換しよう。2月16日までに持って来い。

ルドラ:分かりました。

ルドラは取引が上手くいきそうなのでソフィアに感謝した。ソフィアに礼を言うと「感謝の気持ちを身体で表せ」と言い、再度の交合を迫ってきた。時計を見るともう朝の4時になっていた。

ルドラ:もう母屋に帰った方が良いですよ。カルロスさんにバレたらどうするんですか?

ソフィア:カルロスは母屋には食事のとき以外は来ないんだよ。博打の形で奪った若い女を妾にして毎晩その女の住んでいる離れで寝ているよ。

ルドラはそれを聞き安心してソフィアを抱いた。見つかったら見つかったときのことでそんなに心配はしていないのだが、ソフィアが不味いことになると可哀想なのでなるべくいざこざは避けたいのだ。最初からソフィアに手を出さなければ良いと思うのだが、ルドラは頭で考えるよりも先に行動してしまうのである。

2月13日水曜日午前6時:カルロス牧場の離れ
夜が明け、ルドラは目を覚ました。枕元の時計を見ると、既に6時を過ぎていた。ソフィアはすでに母屋に戻っていたようだ。ルドラは急いでベッドから飛び起き、身支度を整えた。今日は特別な日、彼はカルデロン一族にアルゼンチンの家庭料理を振る舞うつもりだった。

朝食の献立
エンパナダ(Empanadas): アルゼンチンの代表的な料理で、肉や野菜、チーズを包んだパイ。
マテ(Mate)茶: アルゼンチンの伝統的なハーブティー。
チミチュリ(Chimichurri): ハーブとオリーブオイル、酢で作るソース。エンパナダやパンにつけて食べる。
パン・デ・カソ(Pan de Queso): チーズパン。
フルーツサラダ: 季節のフルーツで彩りを添える。

ルドラはキッチンに向かい、まずはエンパナダの生地を作り始めた。生地が冷蔵庫で休ませている間、彼は具材の準備に取り掛かった。牛肉、玉ねぎ、パプリカ、スパイスを炒め、エンパナダの具を完成させた。

次に、チミチュリソースの準備。新鮮なパセリ、オレガノ、ガーリックを細かく刻み、オリーブオイルと酢、塩、赤唐辛子で味を調えた。

パン・デ・カソは比較的簡単に作れる料理だった。チーズ、タピオカ粉、卵、ミルクを混ぜ合わせ、オーブンで焼き上げた。

最後に、フルーツサラダを作る。バナナ、オレンジ、リンゴを切り、ハチミツとレモン汁でマリネした。

マテ茶は最後に煮立て、一族が集まる頃にはすべての料理がテーブルに並んでいた。

「おはようございます、皆さん。今日はアルゼンチンの朝食をご用意しました。どうぞお召し上がりください」とルドラは笑顔で一族に挨拶した。

ソフィアとカルロス、そして子供たちは驚きと喜びでルドラを称賛した。特にエンパナダとチミチュリソースが大好評で、ルドラは内心で成功を喜んだ。

こうして、アルゼンチンとコロンビア、二つの文化が美味しい料理を通じて繋がったのであった。

貧民街の安ホテルでの出来事
ルドラとインタイは朝食後、昨夜助けた男が泊まっている貧民街の安ホテルに向かった。昨夜、ソフィアから聞いた話が気になっていた。カルロスが闘牛賭博の借金で手に入れた若い女性を離れに囲っているというのだ。この女性が昨夜の男の妻ではないかと疑っていた。

ホテルに到着すると、昨夜の男はすでに目を覚ましていた。彼の名前はエドゥアルド・ガルシア、年齢は24歳。妻の名前はローザ・ガルシア、年齢は22歳だった。

「エドゥアルドさん、昨夜は大変でしたね。あの、ちょっと聞きたいことがあるんですが……」ルドラは慎重に言葉を選んだ。

「何ですか?」エドゥアルドは疲れた表情で尋ねた。

「実は、カルロス・カルデロンが最近、闘牛賭博で手に入れた女性がいるんです。その女性、もしかしてローザさんでは?」ルドラは直球で質問した。

エドゥアルドの顔色が変わった。「どうしてそんなことを……?」

「ソフィアさんから聞きました。もしローザさんがその女性なら、何とかして助け出したいと思っています」

エドゥアルドはしばらく沈黙した後、頷いた。「はい、その女性はローザ、私の妻です。カルロスのイカサマ闘牛賭博に引っかかり、ウィラ地域のコーヒー農園と現金1千万米ドル、そして最も大切なローザまで奪われました」

ルドラとインタイは互いに顔を見合わせた。これはただの借金問題以上の何か大きな問題に巻き込まれそうだった。

ルドラ:エドゥアルドさん、私たちは何とかしてローザさんを助け出します。そしてカルロスが行っている闘牛賭博の裏側も暴きたいと思っています。だけど貴方は先ず身体の衰弱を直さねばなりません。

エドゥアルドは涙ぐんだ目でルドラに感謝の意を示した。「ありがとう、ルドラさん。私が何を言っても足りないくらい、感謝しています」

こうして、ルドラとインタイ、そしてエドゥアルドの三人は、カルロス・カルデロンという男が仕組む闘牛賭博の闇を暴くための危険な冒険が始まることとなった。

エドゥアルドの衰弱が激しいのでルドラとインタイは彼をニューヨークまで連れていき、入院させることにした。ルドラはマフィアとの仕事もあるし、ローザを奪い返すのは金では難しいと判断したのである。金をいくら積まれてもカルロスはローザを手放さないだろう。

何らかの方法でカルロスを罠にかけ司法の手で裁かせねばならない。カルロスのコカイン密売ルートはソフィアのルートとはどうも異なるようだ。ソフィアの兄アンジェロが何か事情を知っているかもしれない。

3人はその足でニューヨークまで飛んだ。2月13日水曜日午前11時出発である。

今回はここまでにいたしましょう。次回をお楽しみに。

 

後書き

貧民街の安ホテルでの出来事
ルドラとインタイは朝食後、昨夜助けた男が泊まっている貧民街の安ホテルに向かった。昨夜、ソフィアから聞いた話が気になっていた。カルロスが闘牛賭博の借金で手に入れた若い女性を離れに囲っているというのだ。この女性が昨夜の男の妻ではないかと疑っていた。ホテルに到着すると、昨夜の男はすでに目を覚ましていた。彼の名前はエドゥアルド・ガルシア、年齢は24歳。妻の名前はローザ・ガルシア、年齢は22歳だった。