小説「海と陸の彼方へ」

 

第一章ブエノス・アイレスの輝き

 

第23話……ボリビアへ行く悪魔のように可愛い女マリア・D

 

前書き

贈収賄事件とレディ・エリザベス・ハリントンの不倫について女性記者ソフィア・ロドリゲス26歳と相互協力の約束を取り付けたルドラは意気揚々と検察に戻ってきた。待ち受けていたルシエンヌから衝撃の事実を聞く。ルドラたち検察の動きを察知したフスト大統領はイギリスとの協力関係にひびが入ることを恐れ、贈収賄事件を闇に葬ることを決意した。イギリス政府は、贈賄側のハリントン鉄道企業のCEOサー・ジェフリー・ハリントンを駐ボリビア英国大使に任命した。またフスト大統領は収賄側のアルゼンチン交通・鉄道省次官ロベルト・メンデスを駐英アルゼンチン大使に任命した。こうなるとイギリスに居るロベルト・メンデスには手を出せないし、ボリビアにいるサー・ジェフリー・ハリントンには更に手を出せないことになる。サー・ジェフリー・ハリントンはハリントン鉄道企業のCEOの地位を妻のレディ・エリザベス・ハリントンに譲ったそうである。サー・ジェフリー・ハリントンの弱みを握り、ハリントン鉄道企業を乗っ取ろうとしたルドラの策略は頓挫した。

 

本文

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登場人物「1935年1月1日時点」
ルドラ・バッシャール24歳。手持ち現金550万アルゼンチン・ペソ。金塊127トン。ブエノス・アイレス司法府裁判検事。ルドラ映画産業㈱会長兼オーナー「資本金6千万アルゼンチン・ペソ」。ルドラ金融㈱会長兼CEO
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カルメン・バッシャール36歳。ルドラの妻。エミリオ・ロドリゲス「死亡」の元妻。
イザベル・ロドリゲス20歳。カルメンの娘。
フェルナンド・ロドリゲス20歳。カルメンの息子
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部下
タリオ「勇敢な戦士」21歳。ルドラ缶詰工業㈱専務。ルシエンヌの兄。シワトルの夫。カリブ族の男。獰猛。格闘技の達人。
シワトル「花の女神」28歳。タリオの妻。元タバスコ領主の妻。聡明で美しく、性格は穏やかで優しい。
ルシエンヌ「明るい」19歳。ブエノス・アイレス司法府検察官「刑事事件の捜査や起訴を担当」。
モンバナ「高い山」男2歳。ルドラとルシエンヌの間の子。
カノア「風」40歳。ルシエンヌの父親。
アマタ「永遠の」38歳。ルシエンヌの母親。
アドリアナ・グラノジェルス25歳。ルドラ金融㈱COO。元ルドラの愛人。カジェタノの元妻。
ヘロニモ・デ・アギラール30歳。スペイン人。元コルテスの部下
イシュトゥル 「Ixchel」19歳。アギラールの妻。
パカル 「Pakal」男5歳。アギラールの息子。
ゴンサーロ・ゲレーロ28歳。スペイン人。
イディア・ンジンガ17歳。ゲレーロの妻。酒好き。陽気なアマゾネス。時々姿をくらます。
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その他の人々
マリア・エバ・ドゥアルテ16歳。悪魔のように可愛い女。高みに連れて行ってくれる男を求めて突進する。手段は選ばない。エバ金融㈱会長兼CEO「資本金2千万米ドル」。
エルヴィラ・ドゥアルテ13歳。マリアの妹。
カタリナ・イルデフォンソ20歳。ルドラ金融㈱営業部長。
中田ボニファシオ38歳。日系人4世の男性。カフェ、レストラン&バーの経営者。
高梨アデルミラ32歳。日系人4世の女性。麻雀店、ビリヤード場の経営者。
レティオ・チュチョ33歳。メスチーソ。エステル・ラジオのプロデューサー。賭博好き。
カタリナ・リベラ・サンドバル34歳。アルベルト・ペレイラ・レボルコ「財閥の当主、政治家」の妻。社交界の華。芸術家支援、慈善活動を行っている。
カルロス・フルベック・オルトゥサル35歳。政治家であり外交官。若い妾を囲っており、妻のロサを顧みない。
ロサ・オルトゥサル30歳。カルロスの妻。アルゼンチンの貴族出身で社交界の名士。
エルナンデス夫妻「夫:フアン・エルナンデス46歳、妻:マリア・エルナンデス44歳」。ブエノス・アイレスの牧牛・牧羊業界の大物。エルナンデス牧場主。
マルティン・ペレス34歳。旧ルイス・ガルシア牧場経営者。元エルナンデス牧場の牧童頭。
パウラ・ペレス26歳。元マルティン・ペレスの妻。フアン・エルナンデスの愛人。
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ルドラ邸スタッフ
執事頭:ジョン・スミス、年齢:45歳
侍女頭:エマ・ジョンソン、年齢:32歳
侍女:ソフィア・ウィリアムズ、年齢:27歳
侍女:オリビア・ブラウン、年齢:29歳
侍女:ルシア・ロドリゲス、年齢:25歳
侍女:アナ・ペレス、年齢:20歳
侍女:ベアトリス・サンチェス、年齢:18歳
庭師:ジェームズ・ジョーンズ、年齢:44歳
ボディガード兼運転手:マイケル・ミラー、年齢:51歳
ボディガード兼運転手:エドゥアルド・ガルシア、年齢:34歳
料理人:ウィリアム・デイビス、年齢:38歳
料理人:マリア・ゴンザレス、年齢:30歳
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大型ガレオン船1隻「2,000名乗り、改良野戦大砲500台搭載」小型ガレオン船10隻「100人乗り、改良野戦大砲30台搭載」、キャラック船50隻「500名乗り、改良野戦大砲50台搭載」、砲丸5万発、後込め式小銃10万丁、弾丸500万発。馬5,000頭。荷馬車500台。
傭兵部隊「シラジの女奴隷軍500名、元ベニン王国黒人女奴隷軍500名」
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中米及び西インド諸島
筑摩書房「大航海時代」ボイス・ペンローズ著。荒尾克己訳。巻末地図。

南米
筑摩書房「大航海時代」ボイス・ペンローズ著・荒尾克己訳、巻末の図。

アメリカ三大文明
中公新書「古代アステカ王国」増田義郎著。P2。

前回のあらすじと今回の展開
ルドラはハリントン家の晩餐会でカルメンが聞き込んできた贈収賄事件の詳細と証拠「銀行の送金記録と贈収賄会合の録音テープ」の存在を知った。

送金記録はバンコ・デ・ブエノスアイレスの元銀行員で、送金の内部調査を行っていたマリア・ゴンザレスという女性が所持しており、贈収賄会合の録音テープは贈収賄の仲介を行ったプライベート・ディテクティブ(私立探偵)のカルロス・ロドリゲスが所持していた。ルドラとルシエンヌは首尾よく証拠を入手することが出来た。

得られた証拠を背後の黒幕を突き止めるための手段として使おうと思い、贈賄側のハリントン鉄道企業のCEOサー・ジェフリー・ハリントンと収賄側のアルゼンチン交通・鉄道省次官ロベルト・メンデスふたりの告発を暫くの間見合わせた。

ところがこれが失敗の元だった。即座に両者を逮捕・告発していればハリントン一家をアルゼンチンから追放することは出来ただろう。カルメンが晩餐会の席で色々と嗅ぎ回っていることを聞きつけたサー・ジェフリー・ハリントンはフスト大統領に善後策を相談し、対策を練っていた。そうとも知らずルドラの気持ちはボリビアから来るカルメンの妹婿が持ち込む儲け話「コカインの密造」に向いていた。

1935年2月6日、水曜日午前9時。検察庁
ルドラは今朝出勤したとき、マリア・Gにタブロイド紙を見せて貰った。彼女は昨夜ゴシップ記事専門のそのタブロイド紙を売店で購入したそうで、飛ぶように売れていたそうである。

そのタブロイド紙は"エル・エスカンダロ"という名前だ。一面に大々的に取り扱われているのは、ハリントン一家の女主レディ・エリザベス・ハリントン34歳がアルゼンチンの有力政治家と不倫関係にあるという記事であった。

彼女の経歴と不倫相手の経歴も詳しく描かれている。レディ・エリザベス・ハリントンはハリントン一家の家長サー・ジェフリー・ハリントン58歳の後妻である。彼女はイギリスの貴族出身で、アルゼンチンの上流社会とのつながりを深め、一家の事業を支える大きな役割を果たしている。

不倫相手はフェルナンド・ガルシア47歳と言い、アルゼンチン議会の上院議員、重要な経済委員会の委員長である。彼はアルゼンチンの有力な政治家で、経済政策における重要な役割を果たしている。彼の影響力は、ハリントン一家の事業にも関連しており、この不倫関係は両者にとって非常にデリケートな問題となっている。ルドラはこの記事を書いた女性記者に早速面会した。

1935年2月6日、水曜日の午後。検察庁の事務所からタブロイド紙「エル・エスカンダロ」の編集部へと足を運んだルドラは、記事を書いた女性記者との面会を求めた。

女性記者の名前はソフィア・ロドリゲス26歳。彼女は若く、野心的なジャーナリストで、社会の裏側を暴くことに情熱を注いでいた。彼女の記事は、しばしば社会的な波紋を呼び起こしていた。

ルドラとソフィアは、編集部の会議室で対面した。ルドラは最初に自己紹介をし、ハリントン一家に対する捜査の一環として、彼女の記事に興味を持ったことを説明した。

ソフィアは最初は警戒していたが、ルドラの誠実な態度と、彼の目的が公正な捜査であることを理解すると、協力することを決意した。

ルドラ:「ソフィアさん、この記事に書かれている情報はどうやって入手したのですか?」

ソフィア:「私は数ヶ月にわたり、レディ・エリザベスとフェルナンド・ガルシア上院議員の関係を追っていました。彼らの会合の写真や、信頼できる情報源からの証言など、様々な証拠を集めました」

ルドラ:「その証拠は、私たちの捜査にも役立つかもしれません。協力していただけますか?」

ソフィアは少し考えた後、頷いた。

ソフィア:「私の目的は真実を暴くことです。あなたたちの捜査がその一助になるのであれば、喜んで協力します」

ルドラとソフィアは、その後も詳細な情報の共有と、今後の協力について話し合った。彼らの協力によって、ハリントン一家に対する捜査は新たな方向へと進展することとなった。

この面会は、ルドラにとって大きな一歩であり、ソフィアにとっても、彼女のジャーナリズムが社会的な正義に貢献することの確信となった。


☆午後4時:検察庁
女性記者ソフィア・ロドリゲス26歳と相互協力の約束を取り付けたルドラは意気揚々と検察に戻ってきた。待ち受けていたルシエンヌから衝撃の事実を聞く。

ルドラたち検察の動きを察知したフスト大統領はイギリスとの協力関係にひびが入ることを恐れ、イギリス政府と相談し、贈収賄事件を闇に葬ることを決意した。イギリス政府は、贈賄側のハリントン鉄道企業のCEOサー・ジェフリー・ハリントンを駐ボリビア英国大使に任命した。またフスト大統領は収賄側のアルゼンチン交通・鉄道省次官ロベルト・メンデスを駐英アルゼンチン大使に任命した。こうなるとイギリスに居るロベルト・メンデスには手を出せないし、ボリビアにいるサー・ジェフリー・ハリントンには更に手を出せないことになる。

サー・ジェフリー・ハリントンはハリントン鉄道企業のCEOの地位を妻のレディ・エリザベス・ハリントンに譲ったそうである。サー・ジェフリー・ハリントンの弱みを握り、ハリントン鉄道企業を乗っ取ろうとしたルドラの策略は頓挫した。

ルドラはショックを受けながらもサー・ジェフリー・ハリントンは「ルドラたちが贈収賄事件について調査していること」を何処から聞いたのだろうと疑問を持った。

ルドラたちが調査していることを知っているのはルドラ、カルメン、ルシエンヌ、マリア・G、マリア・D、カルロス・ロドリゲスしか居ない筈だ。

カルロス・ロドリゲスは司法取引して罪を逃れたから彼が口を滑らすとは思えないし、カルメン、ルシエンヌ、マリア・Dは身内だし、マリア・Gもそんな事はしないとルドラは確信していた。

となると検察庁内部にスパイが居ることになる。ルドラは前司法大臣のシプリアノ・レガラド58歳と拘置されている彼の腹心ブラス・セスコ検事41歳の関係者だと目星を付けた。ルドラは人払いをし、次期市警本部長に任命しようと考えていた部下のゴンサーロ・ゲレーロ28歳に電話した。

ルドラ:午後5時になると検察庁から一斉に20名の職員が退庁してくる。お前は今から人を雇ってひとりひとり尾行しろ。大統領官邸に向かう者が居るはずだ。そいつをひっ捕らえてルドラ邸の倉庫に監禁しろ。

ゴンサーロ・ゲレーロ:了解しました。

スパイは30歳の既婚女性書記官、エレナ・モラレスでした。彼女は検察庁で働いている間に、前司法大臣のシプリアノ・レガラドとその腹心ブラス・セスコ検事の関係者と知り合い、彼らの意向でルドラたちの動きを監視していた。

エレナは先天性の難病を持つ長男の治療費を稼ぐためにこの危険な仕事を引き受けていた。関係者と知り合った切っ掛けは長女を彼に誘拐されたことであった。エレナの夫もまともに勤めてはいたが、単なる公務員であり、長男の高額な治療費など逆さになっても稼ぎ出すことは無理だった。長女をさらわれ、やむを得ず男と会ったとき、ルドラの動きを逐一調べこちらに文章で知らせよ。そうすれば長男の高額治療費などいくらでも出してやるとそそのかされたのだ。

☆午後6時:ルドラ邸の倉庫
エレナはゴンサーロ・ゲレーロによって捕らえられ、ルドラ邸の倉庫に監禁されました。彼女は怯えていましたが、ゴンサーロは冷静に尋問を始めました。

ゴンサーロ:エレナ・モラレス、お前が検察庁のスパイだという証拠が揃っている。今からお前に聞くことに正直に答えるんだな。

エレナ:私は何も悪いことはしていません。私はただ、家族を救うために…

ゴンサーロ:家族のためとは言え、お前は法を犯した。誰がお前に指示を出していたのか、全て話せ。

エレナは涙を流しながら、シプリアノ・レガラドとブラス・セスコ検事の関係者との接触、ルドラたちの動きの報告、そして彼らから受け取っていた報酬について語り始めました。

エレナ:私は彼らに弱みを握られていました。先天性の難病を持つ長男の治療費を稼ぐため…彼らは私に協力するよう強要してきたのです。

ゴンサーロはエレナの話を録音し、ルドラに報告しました。ルドラは彼女に対しては司法取引を提案し彼女を2重スパイにすることも考えました。

ルドラ:エレナ、お前の話は全て録音してある。お前の協力があれば、シプリアノ・レガラドとブラス・セスコ検事を追い詰めることができる。お前と家族の安全は保証する。だが、これからは正直に生きるんだ。

エレナはルドラの言葉に感謝の涙を流しました。彼女の協力によって、ルドラたちは検察庁内部の陰謀を暴く新たな道筋を見つけたのでした。しかしこれらの取り決めは保証されたわけではありません。お互いの裏切りにより何時でもひっくり返すことができるのです。エレナはルドラが約束を守らずエレナを罪に問うのではないかと内心恐れていました。

1935年2月6日、水曜日の午後7時。ルドラ邸の食堂は、豪華なシャンデリアの光で照らされ、美しい銀食器とクリスタルのグラスが並べられていました。大理石の床は磨き上げられ、壁には高級な絵画が飾られている。食堂の中央には長い館長テーブルが置かれ、その周りには家族とゲスト、そしてルドラ邸のスタッフが勢揃いしていました。

ルドラがゴンサーロ・ゲレーロ次期市警本部長とエレナ・モラレスを連れて食堂に現れた時にはすっかり豪華な夕食の準備が整っており、ボリビアからはカルメンの妹夫婦「妹:ソフィア・デ・ラ・クルス・アルバレス33歳、妹の夫:エドゥアルド・アルバレス35歳」とマリア・エバ・ドゥアルテ16歳も来ていました。

ルドラの妻カルメンが皆を笑顔で迎え、ルドラはゴンサーロ・ゲレーロとエレナ・モラレスを紹介しました。エレナは少し緊張している様子でしたが、カルメンの温かい言葉に安心した表情を見せました。

料理人ウィリアム・デイビスとマリア・ゴンザレスが手掛けた夕食の献立は、アルゼンチン料理の粋を集めたものでした。

1️⃣前菜:エンパナダ(肉や野菜の入ったパイ)
2️⃣スープ:ロカロ(アルゼンチンの伝統的なスープ)
3️⃣魚料理:グリルド・シーバス、チモリーノソース添え
4️⃣主菜:アサード(アルゼンチンのバーベキュー)、様々な部位の肉と野菜をグリルして
5️⃣サラダ:トマトとアボカドのフレッシュサラダ
6️⃣デザート:ドゥルセ・デ・レチェ(ミルクキャラメル)のクレープ
7️⃣飲み物:アルゼンチン産の赤ワイン、白ワイン、そして伝統的なマテ茶

食事が始まると、ルドラ邸のスタッフが皆に料理を運び、エレガントにサーブしました。会話は活発で、特にルドラの義理の子供たちイザベルとフェルナンドは、エレナの子供たちの話に興味津々でした。

ゴンサーロ・ゲレーロはエレナに感謝の意を表し、彼女の勇気に敬意を表しました。エレナは涙ぐみながら、自分の行いが正しいことだと信じていると語りました。

夕食が進むにつれ、エレナの緊張もほぐれ、皆と笑顔で交流する姿が見られました。この夜は、正義と人間の温かさ、そしてアルゼンチンの美味しい料理が結びついた、特別な夜となりました。

このシーンは、ルドラ邸の豪華な生活と、彼らの人間味、正義感を強調するもので、エレナ・モラレスの人物像と彼女の置かれた状況に対する共感を深める重要なエピソードとなります。

夕食後。ルドラとカルメンの妹夫婦及びマリア・Dの4人で話した。

ルドラ:この件に関してはここに居るマリア・Dに任せた。今後は彼女を窓口にしてくれ。

カルメンの妹ソフィア:ルドラお義兄さん。お金は貸してくれるの?

ルドラ:もちろんだ。マリア・Dには2,000万米ドルをとりあえず渡してある。マリア・Dに詳しくお前たちの計画を話して金を用立ててもらえ。

妹婿エドゥアルド・アルバレス:コカの葉から一次ペーストを作製する作業所はすでに建設してあります。一次ペーストをコカインに精製する工場を建設する費用が嵩むのです。

マリア・D:いくら掛かるの?

エドゥアルド:一か所に付き5万米ドルかかります。

マリア・D:何ヶ所作るつもりなの?

エドゥアルド:人手の都合もありますので精々10ヶ所くらいですね。

マリア・D:一か所で月にどのくらい精製出来るの?

エドゥアルド:10キロくらいですね。

マリア・D:合計100キロか。サンプルを持ってきましたか?

エドゥアルド:ここに1キロあります。

マリア・Dは舌でペロッと舐めて品質を確かめた。ブエノス・アイレスで出回っている物よりは品質が良さそうである。純度は90%程度だと判定した。上の下くらいのものだ。

マリア・D:これじゃ、あまり高く売れないわ。コロンビアの業者もそんなに良い値では引き取ってくれないでしょうね。最低でも純度は95%くらいないとね。

エドゥアルド:それじゃあ、投資は無理ですか?

マリア・D:投資するかどうかはもう少し考えてから決めるわ。ところで技術者は何人くらい居るの?一度話を聞いてみたいわ。

エドゥアルド:彼らは飛行機が苦手なので外国には行きたくないと言うんですよ。

マリア・D:それじゃ、私の方からお伺いするわ。

ルドラ:ボリビアに行くならマリア・Dとエドゥアルドさんだけで行きなさい。ソフィアは暫くの間ブエノス・アイレスに滞在するそうだから。それからサンプルの品物は俺に譲ってくれ。精製コカイン1キロ4,000米ドルで買ってやろう。

エドゥアルド:そんなにいただけるんですか。喜んでお渡ししますよ。

ルドラ:コロンビアの売人はいくらで買ってくれるんだ?

エドゥアルド:精製コカインは1キロ3,000米ドルですよ。

ルドラ:コロンビアの売人は一次ペースト1キロをいくらで買ってくれるんだ。

エドゥアルド:一次ペースト1キロを50米ドル、コカの葉1キロを0.25米ドルで引き取ってくれます。

ルドラ:そうか。俺がコカの葉1キロを0.3米ドル、一次ペースト1キロを80米ドルで引き取ってやるよ。ボリビアに行ったとき何時でもマリア・Dに渡せ。

エドゥアルド:分かりました。そうさせていただきます。

マリア・D:ルドラ。私に任せると言ったでしょう。どういうつもりなの?

ルドラ:大口はお前に任せるよ。これは捜査上で使うためさ。

マリア・Dは納得し、話はそれで終わった。

今回はここまでにいたしましょう。次回をお楽しみに。

 

後書き

夕食後。ルドラとカルメンの妹夫婦及びマリア・Dの4人で話した。ルドラ:この件に関してはここに居るマリア・Dに任せた。今後は彼女を窓口にしてくれ。カルメンの妹ソフィア:ルドラお義兄さん。お金は貸してくれるの?ルドラ:もちろんだ。マリア・Dには2,000万米ドルをとりあえず渡してある。マリア・Dに詳しくお前たちの計画を話して金を用立ててもらえ。妹婿エドゥアルド・アルバレス:コカの葉から一次ペーストを作製する作業所はすでに建設してあります。一次ペーストをコカインに精製する工場を建設する費用が嵩むのです。マリア・D:いくら掛かるの?エドゥアルド:一か所に付き5万米ドルかかります。マリア・D:何ヶ所作るつもりなの?エドゥアルド:人手の都合もありますので精々10ヶ所くらいですね。以下略。エドゥアルドが渡したコカイン粉末の純度が気に入らないマリアは一度ボリビアの技術者と話をするつもりになった。