小説「海と陸の彼方へ」

 

第一章ブエノス・アイレスの輝き

 

第10話……マリア酷暑の中、水着モデルを務める

 

前書き

マリアはカタリナの剛毛の処理を母親のフアナにブラジリアンワックスを用いてさせる見返りに、民営のラジオ局と雑誌社にコネ入社をさせてもらった。18歳と偽り入社したマリアはその抜群の美貌を見込まれ、雑誌社で早速仕事を掴むが、最初の仕事は水着モデルの仕事であった。アルゼンチンは南半球にあるため、1月が最も暑い季節である。

 

本文

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登場人物「1935年1月1日時点」
主人公ルドラ15歳「24歳と偽っている」。手持ち現金550万アルゼンチン・ペソ。金塊127トン。ブエノス・アイレス司法府裁判検事。ルドラ映画産業㈱会長兼オーナー「資本金6千万アルゼンチン・ペソ」。ルドラ金融㈱会長兼CEO
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部下
タリオ「勇敢な戦士」21歳。ルドラ缶詰工業㈱専務。ルシエンヌの兄。シワトルの夫。カリブ族の男。獰猛。格闘技の達人。
シワトル「花の女神」28歳。タリオの妻。元タバスコ領主の妻。聡明で美しく、性格は穏やかで優しい。
ルシエンヌ「明るい」19歳。ブエノス・アイレス司法府検察官「刑事事件の捜査や起訴を担当」。
モンバナ「高い山」男2歳。ルドラとルシエンヌの間の子。
カノア「風」40歳。ルシエンヌの父親。
アマタ「永遠の」38歳。ルシエンヌの母親。
アドリアナ・グラノジェルス25歳。ルドラ金融㈱COO。元ルドラの愛人。カジェタノの元妻。
ヘロニモ・デ・アギラール30歳。スペイン人。元コルテスの部下
イシュトゥル 「Ixchel」19歳。アギラールの妻。
パカル 「Pakal」男5歳。アギラールの息子。
ゴンサーロ・ゲレーロ28歳。スペイン人。
イディア・ンジンガ17歳。ゲレーロの妻。酒好き。陽気なアマゾネス。時々姿をくらます。
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その他の人々
マリア・エバ・ドゥアルテ16歳。悪魔のように可愛い女。高みに連れて行ってくれる男を求めて突進する。手段は選ばない。
フアナ・イバルグレン41歳。ルドラの愛人。マリアの母親。
エルヴィラ・ドゥアルテ13歳。マリアの妹。
カタリナ・イルデフォンソ20歳。ルドラ金融㈱営業部長。中田ボニファシオ38歳。日系人4世の男性。カフェ、レストラン&バーの経営者。
高梨アデルミラ32歳。日系人4世の女性。麻雀店、ビリヤード場の経営者。
レティオ・チュチョ33歳。メスチーソ。エステル・ラジオのプロデューサー。賭博好き。
カタリナ・リベラ・サンドバル34歳。アルベルト・ペレイラ・レボルコ「財閥の当主、政治家」の妻。社交界の華。芸術家支援、慈善活動を行っている。
カルロス・フルベック・オルトゥサル35歳。政治家であり外交官。若い妾を囲っており、妻のロサを顧みない。
ロサ・オルトゥサル30歳。カルロスの妻。アルゼンチンの貴族出身で社交界の名士。
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大型ガレオン船1隻「2,000名乗り、改良野戦大砲500台搭載」小型ガレオン船10隻「100人乗り、改良野戦大砲30台搭載」、キャラック船50隻「500名乗り、改良野戦大砲50台搭載」、砲丸5万発、後込め式小銃10万丁、弾丸500万発。馬5,000頭。荷馬車500台。
傭兵部隊「シラジの女奴隷軍500名、元ベニン王国黒人女奴隷軍500名」
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南アメリカ
帝国書院「地歴高等地図」P75,76

アンデス越え
帝国書院「新詳高等地図」P82

1935年1月、ブエノス・アイレスの砂浜は酷暑に包まれていた。太陽は容赦なく地上を焼き、砂は熱を帯びて足元を灼いていた。そんな中、一組のスタッフと若き美女が砂浜に立っていた。彼女の名はマリア、18歳と偽り、その美貌を見込まれてグラビア雑誌社に入社したばかりの新人だ。

彼女の最初の仕事は水着モデル。砂浜での撮影は容易なものではなかった。砂は熱く、太陽は強く、海風は塩辛かった。しかし、マリアは決して弱音を吐かなかった。彼女は自分の美貌と頑張りがこれからどのように彼女自身を変えていくのか、楽しみに思っていた。

「マリア、次のポーズへ移動して!」カメラマンの声が響くと、マリアはすぐに指示に従った。彼女は砂浜に転がる波を背景に、自信に満ちた表情でカメラに向かってポーズをとった。彼女の美しい姿は、砂浜の風景を一層引き立てた。

スタッフたちは彼女の美しさとプロフェッショナリズムに感銘を受けた。彼女は砂浜の熱さや太陽の強さにもめげず、一生懸命に仕事をこなしていた。彼女の頑張りは、スタッフたちにも力を与えた。

撮影が終わると、マリアは疲れ果てて砂浜に座り込んだ。しかし、彼女の顔には満足感が溢れていた。彼女は自分の頑張りが報われ、自分の美貌が認められたことを実感していた。

「よく頑張った、マリア」カメラマンが彼女に声をかけると、マリアは微笑んで頷いた。「ありがとう。これからも頑張ります」

その日、マリアは自分の美貌と頑張りがこれからどのように彼女自身を変えていくのか、楽しみに思っていた。

1935年1月21日、月曜日の午後6時。ブエノス・アイレスのルドラ邸、5階のマリアの居室の前で、彼女は一日の疲れを感じながらも、自室への扉を開ける前に、両隣の部屋を覗いた。向かって右がルドラの居室、向かって左が母親フアナと妹エルヴィラの居室である。しかし、ルドラの部屋は静かで、まだ帰っていないようだった。フアナの部屋には、妹のエルヴィラだけが居た。

「お姉ちゃんのお弁当もあるから、私と一緒に食べようよ」とエルヴィラが話しかける。

「お母さんは何処へ行ったの?」とマリアが尋ねると、エルヴィラは「何処へ行くかは言わなかったけど、ルドラちゃんが車の中で『今日はお母さんとランチデートだ』と言っていたわ」と答えた。

マリアにはそれで察しが付いた。「お母さんはルドラを連れてカタリナに会いに行くんだわ。情夫アマンと一緒にカタリナの剛毛を処理するなんてどういうつもりだろう」と自分が頼んだことを棚に上げて思った。

他愛もないことを喋りながら弁当を食べた。急にエルヴィラが妙なことを言い始めた。

エルヴィラ:今日は珍しく、ルドラちゃんがお姉ちゃんのことを喋ったよ。

マリア:ええ、何て言ったの。どうせ悪口でしょう。彼奴はろくなことを言わないからね。持ち上げといて落とすのよ。絶対に素直に褒めないのよ。

エルヴィラ:こう言ったわ。

"マリアは色々欠点がある。数え上げればきりがない。だが、マリアはその欠点を補って余りある美貌の持ち主だ。これだけはフアナもカタリナもいやロサでさえも敵わないだろう"

マリアは少し考え込んだ。「やはり、褒めているのかな?」と感じた。

その日、フアナとルドラは連れ立ってカタリナの屋敷を訪れた。フアナはルドラを助手にして、カタリナの脇と股間の剛毛処理を行うのだ。ブラジリアンワックスで処理を行う。

フアナとルドラがカタリナの部屋に入ると、カタリナはすでにベッドに横たわっていた。彼女の肌は恥ずかしさで紅潮し、その剛毛が露わになっていた。フアナはまず、シャボンを手に取り、カタリナの脇と局部に丁寧に塗り始めた。その泡立つ感触に、カタリナは思わず身を震わせた。

フアナはシャボンで剛毛を柔らかくし、その後、カミソリを取り出し、カタリナの剛毛をあらかた剃り落とした。その間、ルドラはワックスを温めていた。

カミソリで剃り終えると、フアナはルドラにワックスを手渡した。ルドラはワックスをスパチュラ……注①に取り、カタリナの肌にゆっくりと塗り始めた。その感触にカタリナは思わず息を呑んだが、ルドラの手は確かで、彼の動きは優雅であった。

ワックスが肌に塗られると、カタリナはその熱さに驚いた。しかし、その驚きもすぐに消え、代わりに心地よい温かさが広がった。ルドラはワックスを肌に塗り終えると、ワックス脱毛専用の不織布をその上にあて、しっかりと押し付けた。

そして、ルドラは一息ついてから、不織布を一気に引きはがした。その瞬間、カタリナは思わず息を呑んだ。しかし、その痛みもすぐに消え、代わりにスッキリ感が広がった。

フアナとルドラは、カタリナの肌に残ったワックスを丁寧に取り除き、鎮痛効果のあるローションを塗った。その後、カタリナの肌はスベスベになり、彼女自身も新たな自分を感じた。その瞬間、カタリナは自分が変わったことを実感し、ルドラに対する想いを新たにした。

フアナもルドラのカタリナに対する反応が変わったのを感じた。ルドラはカタリナのツルツルした肌の触感に性的な興奮を覚えていた。フアナは今更ながらルドラを連れてきたことを後悔した。しかし、こうでもしなければカタリナに会うのを嫌がっていたルドラにカタリナとのデートを承服させることなど出来はしなかったのだ。

フアナは帰り際にルドラがカタリナにメモを渡し、メモを見たカタリナの目が輝いた瞬間を見逃さなかった。これでマリアとした約束「カタリナとルドラをデートさせる」を守ることは出来たが、うかうかするとロサ以外に恋敵がもうひとり増えるかも知れない。

一方、マリアは自室で一人、エルヴィラから聞いたことを思い出していた。ルドラが「マリアは全ての欠点を補って余りある美貌の持ち主でこれだけはフアナもカタリナもいやロサでさえも敵わないだろう」とマリアを評していたそうだ。

1935年1月21日月曜日:ルドラ邸
ルドラとフアナが帰ってきた時にはもう午後8時になっていた。娘たち「マリアとエルヴィラ」はフアナの居室で弁当を食べ終わり、エルヴィラは学校の宿題をやっており、マリアは自分の居室で音楽を聴いている。フアナとルドラはルドラの居室に入って行った。ふたりとも空腹であった。

フアナはキッチンに向かい、自分たちの夕食の準備を始めた。彼女は手際よく食材を取り出し、ブエノス・アイレスの伝統的な家庭料理を作り始めた。彼女の手は確かで、料理の経験が長いことが見て取れた。

キッチンはすぐに香ばしい匂いで満たされ、その匂いは家中に広がった。フアナは鍋を振り、スパイスを振りかけ、野菜を切り、肉を焼き始めた。彼女の動きはリズミカルで、まるでダンスを踊っているかのようだった。

ルドラはその様子を見て、感心していた。彼はフアナの料理の腕前を知っていたが、その手際の良さと料理への情熱にはいつも感銘を受けていた。

キッチンからは、フライパンで肉が焼かれる音や、野菜が切られる音、スパイスが振りかけられる音が聞こえてきた。それらの音は、家庭の暖かさと安らぎを感じさせ、フアナとルドラの日常の一部を形作っていた。

フアナが作った料理の献立は、アルゼンチンの伝統と彼女の料理の腕前が見事に融合したものでした。

まず、前菜としては「エンパナダ」が出されました。これはパイ生地で肉や野菜を包み、オーブンで焼いたもので、フアナは手作りのパイ生地に牛肉、タマネギ、パプリカ、そしてアルゼンチンの伝統的なスパイスを詰めて焼き上げました。エンパナダは外側はサクサクとしていて中はジューシーで、一つ一つが愛情を込めて作られたことが伝わってきました。

メインディッシュは「アサード」でした。これはアルゼンチンの伝統的なバーベキュー料理で、フアナは牛肉のリブを長時間低温でじっくりと焼き上げました。肉は外側はカリッと焼けていて、中は柔らかくジューシーで、その香ばしい香りが部屋中に広がりました。彼女はこのアサードに、自家製のチミチュリソースを添えました。これはパセリ、ニンニク、ビネガー、オリーブオイルをベースにしたソースで、肉の味を引き立てる役割を果たしていました。

デザートには「ドゥルセ・デ・レチェ」を使ったパンケーキが出されました。ドゥルセ・デ・レチェは練乳を長時間煮詰めて作るアルゼンチンの伝統的な甘味で、そのリッチな甘さとクリーミーな食感がパンケーキと絶妙にマッチしていました。

これらの料理は、フアナの手によって一つ一つ丁寧に作られ、その愛情とアルゼンチンの伝統が感じられる献立となりました。

夕食の準備が整うと、フアナは料理をテーブルに運び、ルドラに呼びかけた。彼らはテーブルにつき、美味しそうな料理を前に、一日の終わりを静かに祝った。

夜の10時、ブエノス・アイレスのルドラ邸で、夕食を終えたルドラとフアナは、同じ女性、カタリナのことを考えていた。

ルドラは15歳の若さで大手企業の経営者となり、フアナは41歳、ルドラの愛人であり家政婦でもあった。彼らの心を掴んだのは、カタリナとの一夜と、その後の特別な体験だった。

カタリナは、フアナの娘マリアの就職を世話する交換条件として、ルドラとのデートの約束をマリアに取り付けさせていた。ルドラは最近カタリナと性行為を持ったが、カタリナがあまりにも剛毛だったため、行為の後一物が毛切れのため傷つき、カタリナとは2度と会おうとしなかった。

しかし、マリアがそのことを聞きつけ、カタリナと話を付けた。母親フアナがブラジリアンワックスの達人だから、フアナと一緒にルドラを行かせる。ルドラもその話に興味を持つだろう。女性の脇と局部にシャボンを塗りたくり、剃毛させてやると言えば断る男は居ない。

実際にカタリナの剛毛処理は上手く行き、カタリナはルドラとのデートの約束を取り付けたが、フアナは心穏やかではなかった。自分の身が只の愛人兼家政婦と言えど、ルドラを心から愛していたからだ。

その日の夜、ルドラはフアナに対しても剃毛とブラジリアンワックス処理をさせろと迫った。大人しく受け入れたフアナも新しい刺激に興奮した。

ルドラはフアナの脇と局部にシャボンを塗り、剃刀を滑らせる。フアナは初めての経験に緊張しながらも、ルドラの手つきに心を奪われていた。

ルドラはフアナの体を丁寧に扱い、ブラジリアンワックスを塗布し、一枚一枚の毛を抜き取った。その痛みと快感が混ざり合い、フアナは新たな感覚に身を任せた。ルドラの手がフアナの肌に触れる度に、彼女の心は高鳴り、新たな愛の形を見つけた。

ルドラはフアナの肌が滑らかになるのを確認し、満足げな笑みを浮かべた。フアナはルドラの顔を見つめ、彼が自分をどれだけ大切に思ってくれているかを感じた。

今回はここまでにいたしましょう。次回をお楽しみに。

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注①……スパチュラ
スパチュラは、一般的には平たい、幅広のツールを指します。料理で使われるものが最もよく知られていますが、美容や医療の分野でも使用されます。

ブラジリアンワックス脱毛の際に使われるスパチュラは、ワックスを肌に均一に塗布するための道具です。このスパチュラは、通常、木製またはプラスチック製で、先端が平らで幅広い形状をしています。この形状が、ワックスを肌に均一に広げ、適切な厚みで塗布するのに役立ちます。

剃毛の際にスパチュラが使われることは少ないですが、ワックス脱毛やクリーム脱毛の際には、脱毛剤を肌に塗布するために使用されることがあります。
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後書き

フアナと一緒にカタリナの屋敷へ行き、ブラジリアンワックスを用いた剛毛処理を行ったルドラ。彼はその前にフアナがカタリナに施したシャボンを塗りたくって剃毛処理をするプロセスとその結果を非常に気に入り、自分でもやってみたいと思うようになった。マリアの策略により、只の好色男に化してしまったルドラはフアナを相手に剃毛とブラジリアンワックスによる脱毛を実践し、大きな喜びを得る。ルドラが馬鹿をやっている間にもブエノス・アイレス市長選の相手候補は着実に地盤を押さえているようだ。選挙情勢が悪化していることをマリアから知らされたルドラはブエノス・アイレス一番の牧羊業者であるエルナンデス夫妻「夫:フアン・エルナンデス46歳、妻:マリア・エルナンデス44歳」に面会を求める。