小説「海と陸の彼方へ」

 

第一章ブエノス・アイレスの輝き

 

第9話……カタリナとマリアの結託

 

前書き

ロサさんはルドラを会場で出迎えます。会場は華やかで煌びやかな雰囲気に包まれており、名士たちは全員輝かんばかりの衣装を身に着けています。中でもエルナンデス夫妻は、ブエノス・アイレスでも名高い牧牛・牧羊業者であり、その富と影響力は広く知られていました。夫のフアンは威厳ある髭を蓄え、頭上にはスタイリッシュなセンテナリアーノハットを被っていました。妻のマリアは優雅なドレスに身を包み、ダイヤモンドのネックレスが彼女の美しさを一層引き立てていました。ロサさんはエルナンデス夫妻「夫:フアン・エルナンデス46歳、妻:マリア・エルナンデス44歳」にルドラのことを熱を込めて紹介してくれました。ルドラも持ち前の愛嬌で先ず奥様に気に入ってもらいました。彼らはブエノス・アイレスの牧羊業界の重鎮であり、地元経済に大きな貢献をしている人たちです。エルナンデス夫妻は地元の伝統と誇りを胸に、広大な牧場を所有し、数多くの牛や羊を飼育しています。

 

本文

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登場人物「1935年1月1日時点」
主人公ルドラ15歳「24歳と偽っている」。手持ち現金550万アルゼンチン・ペソ。金塊127トン。ブエノス・アイレス司法府裁判検事。ルドラ映画産業㈱会長兼オーナー「資本金6千万アルゼンチン・ペソ」。ルドラ金融㈱会長兼CEO
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部下
タリオ「勇敢な戦士」21歳。ルドラ缶詰工業㈱専務。ルシエンヌの兄。シワトルの夫。カリブ族の男。獰猛。格闘技の達人。
シワトル「花の女神」28歳。タリオの妻。元タバスコ領主の妻。聡明で美しく、性格は穏やかで優しい。
ルシエンヌ「明るい」19歳。ブエノス・アイレス司法府検察官「刑事事件の捜査や起訴を担当」。
モンバナ「高い山」男2歳。ルドラとルシエンヌの間の子。
カノア「風」40歳。ルシエンヌの父親。
アマタ「永遠の」38歳。ルシエンヌの母親。
アドリアナ・グラノジェルス25歳。ルドラ金融㈱COO。元ルドラの愛人。カジェタノの元妻。
ヘロニモ・デ・アギラール30歳。スペイン人。元コルテスの部下
イシュトゥル 「Ixchel」19歳。アギラールの妻。
パカル 「Pakal」男5歳。アギラールの息子。
ゴンサーロ・ゲレーロ28歳。スペイン人。
イディア・ンジンガ17歳。ゲレーロの妻。酒好き。陽気なアマゾネス。時々姿をくらます。
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その他の人々
マリア・エバ・ドゥアルテ16歳。悪魔のように可愛い女。高みに連れて行ってくれる男を求めて突進する。手段は選ばない。
フアナ・イバルグレン41歳。ルドラの愛人。マリアの母親。
エルヴィラ・ドゥアルテ13歳。マリアの妹。
カタリナ・イルデフォンソ20歳。ルドラ金融㈱営業部長。中田ボニファシオ38歳。日系人4世の男性。カフェ、レストラン&バーの経営者。
高梨アデルミラ32歳。日系人4世の女性。麻雀店、ビリヤード場の経営者。
レティオ・チュチョ33歳。メスチーソ。エステル・ラジオのプロデューサー。賭博好き。
カタリナ・リベラ・サンドバル34歳。アルベルト・ペレイラ・レボルコ「財閥の当主、政治家」の妻。社交界の華。芸術家支援、慈善活動を行っている。
カルロス・フルベック・オルトゥサル35歳。政治家であり外交官。若い妾を囲っており、妻のロサを顧みない。
ロサ・オルトゥサル30歳。カルロスの妻。アルゼンチンの貴族出身で社交界の名士。
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大型ガレオン船1隻「2,000名乗り、改良野戦大砲500台搭載」小型ガレオン船10隻「100人乗り、改良野戦大砲30台搭載」、キャラック船50隻「500名乗り、改良野戦大砲50台搭載」、砲丸5万発、後込め式小銃10万丁、弾丸500万発。馬5,000頭。荷馬車500台。
傭兵部隊「シラジの女奴隷軍500名、元ベニン王国黒人女奴隷軍500名」
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南アメリカ
帝国書院「地歴高等地図」P75,76

アンデス越え
帝国書院「新詳高等地図」P82

☆これまでの経緯いきさつ
ブエノスアイレス市で繁盛する大企業を経営する24歳の若者、ルドラはある日、30歳の美しいロサさんと出会いました。ロサさんはヴィラ・オルトゥサル女性協会の設立者の一人であり、彼女の魅力にルドラは一瞬で心を奪われました。彼は猛烈なアタックを続け、ついにロサさんを説得し、彼女の自宅でのランチに招待されることに成功しました。

ランチの日、1935年1月20日の日曜日の朝10時、ルドラは最高のスーツに身を包み、ロサさんに会いに行きました。彼女は素晴らしい料理を振る舞い、ルドラは彼女の優雅さにますます惹かれていきました。

食事中、ルドラは自分の想いを率直に伝え、ロサさんの美しさや知性を絶賛しました。さらに、彼女の夫カルロスが彼女を軽視していることに触れ、彼女がもっと幸せになるべきだと説得しました。ロサさんはルドラの言葉に感動し、少しずつ心を開いていきます。

実はロサさんも先週の市長選の演説会でルドラの熱い演説を聞き、感銘を受けていたのです。彼女は自らが理事長を務める「ヴィラ・オルトゥサル女性協会」の趣旨に沿ったルドラの演説に心を動かされていました。

ロサはルドラをブエノス・アイレスの名士たちが集う会場へと誘導します。そこは華やかで豪華な装いを凝らした紳士・淑女が集う場所です。

ブランチ会場では、ロサさんは名士たちにルドラを紹介し、彼の演説について熱く語りました。ルドラの言葉は女性の地位向上、教育、健康、就労機会の拡大、そして家長制の打破を求めるものであり、会場の人々に深い感銘を与えました。そして、彼女は名士たちに対し、ブエノス・アイレス市長選でルドラに投票するよう訴えました。

ロサさんはルドラに対し、エルナンデス夫妻「夫:フアン・エルナンデス46歳、妻:マリア・エルナンデス44歳」のことをとりわけ熱心に紹介しました。ルドラも持ち前の愛嬌を披露して奥様のマリア・エルナンデスの好意を勝ち取ります。

彼らはブエノス・アイレスの牧牛・牧羊業界の重鎮であり、地元経済に大きな貢献をしています。エルナンデス夫妻は地元の伝統と誇りを胸に、広大な牧場を所有し、数多くの牛や羊を飼育しています。

夫のフアンは威厳ある髭を蓄え、頭上にはスタイリッシュなセンテナリアーノハットを被っていました。妻のマリアは優雅なドレスに身を包み、ダイヤモンドのネックレスが彼女の美しさを一層引き立てていました。

彼らは牧牛・牧羊業におけるリーダーシップを持ちながらも、謙虚さと人間味を忘れず、地域社会への貢献も行っています。エルナンデス夫妻の存在は、ブエノス・アイレスの名士たちにとっても大きな存在であり、彼らとの交流はルドラにとって貴重な経験となりました。それだけではなく市長選の選挙に於いても彼らが後半ルドラに応援してくれるのです。

閑話休題なにはともあれ、ルドラとロサはこの場にいる誰から見ても似合いのカップルに見えました。ロサがカルロスの妻であることは妨げにはならないように見えたのです。

しかし、この相愛のふたりに嫉妬心を抱く者がいました。それは最近ルドラと関係を持ちながら、彼に袖にされたカタリナ34歳であり、ロサさんの夫であるカルロスでした。

1935年1月20日日曜日の午後2時:ロサ・オルトゥサル邸
招待客も全て送り出した後にはロサとルドラしか残りませんでした。夫のカルロスはこのふたりに苦々しい気持ちを抱きながらも同伴した愛人のエスター・ロドリゲス21歳を連れて出ていきました。彼はエスターをブエノス・アイレス市内に囲っており、普段はロサの家には来ないのです。

ロサはカルロスがロサとルドラに向ける憎悪の目が気になりましたが、まさかルドラを襲うようなことはしないだろうと甘く見ていました。

ルドラは脳天気な男ですからカルロスやカタリナがルドラとロサのふたりを苦々しく思っていることなど気が付きもしないし、気が付いたとしても無視するでしょう。

何れにしても、ロサとルドラはお互いの愛情を今日のランチの場で再確認し、ブエノス・アイレスの社交界に半ば公然とふたりの仲を発表したのです。

ふたりは日が暮れるのを待ちきれず、ロサの寝室の中で愛を確かめ合いました。ロサはルドラの何時果てるとも分からぬ若くたくましい精力に圧倒され、ルドラはロサの美しさと抜群のスタイル及び全身から匂い立つような芳しくも生々しい女性臭に奮い立ちました。

またアドルフはロサの体毛が薄いのも気に入りました。カタリナのような剛毛の持ち主だとその時は気づかない毛切れによる傷が後からかなり痛むのです。カタリナともう一度会う気が薄れたのは毛切れによる傷が嫌になったせいです。

☆1月19日土曜日午後1時:マリア・エバ・ドゥアルテ16歳「悪魔のように可愛い女」
マリアはルドラが明日ロサのランチに招かれていることを母親のフアナから聞いて知っていました。

ロサとルドラの仲を引き裂くのは難しいが、ルドラを盲目的に愛してしまっているフアナのために助力してやろうと考えていました。

ロサとライバル関係にあるカタリナとルドラはどんな関係なんだろうと思い、母親のフアナに聞いてみました。

"カタリナとは一度寝たが、彼女の剛毛の所為で毛切れが酷くあまりに痛すぎるのでもう二度と寝る気がしなくなった"

そんなふうにルドラが言っていたそうです。

マリアはカタリナに手紙を書きました。内容は剛毛の処理方法についてです。

マリアは高級娼婦をカタリナ・イルデフォンソ「自称マリアの姉」の仲介で何回かやっていたこともあるので、その種のことには医者よりも詳しいのです。

"自分でカミソリ処理をするよりもブラジリアンワックスを用いた剃毛をお勧めします"

上記の内容を手紙に書きカタリナの屋敷に直接届けました。

カタリナは手紙を読み、マリアを応接間に通し、紅茶を出して彼女と話しました。

カタリナ:貴女とルドラの関係は知っているわ。ルドラの選対委員長をしている人でしょう。私を助ける目的は何なの?

マリア:私はルドラをブエノス・アイレス市長にさせたいのです。貴女を助ける見返りに私をラジオ局のパーソナリティーに就任させて欲しいのです。

カタリナ:良いわ。

私営のラジオ局:
1️⃣ラジオ・ミトレ (Radio Mitre)
2️⃣ラジオ・スペクトラム (Radio Spectrum)
3️⃣ラジオ・ベルグラーノ (Radio Belgrano)
4️⃣ラジオ・エルミタージュ (Radio Elmiro)
ファッション雑誌:
1️⃣カリーバ (Caras y Caretas)
2️⃣プレンサ (Prensa)
3️⃣マルタ (Marta)
4️⃣バニダーデス (Vanidades)
5️⃣フェム (Fem)
6️⃣ミム・マリリン (Mim-Marilyn)

カタリナ:何処でも紹介してあげるわ。

マリア:私営のラジオ局はラジオ・ミトレ、ファッション雑誌はカリーバでお願いします。

カタリナは直ぐに電話してマリアの採用を決めた。私営だから年齢要件などはいくらでもごまかせるのである。

カタリナ:その代わりに私とルドラのデートの段取りをつけるのよ。

マリア:了解しましたが、剛毛の方は何とかして下さいね。

カタリナ:うるさいわね。言われなくても必死でなんとかするわ。でも私が出来るのは限られているわ。自分で剃り上げるしか無いじゃないの。ブラジリアンワックスというのはどうしたら良いの?

マリア:ブラジリアンワックスは、女性の陰部周辺の毛を完全に除去するために使用される脱毛方法です。ブラジルで生まれたため、その名前がついています。

マリア:この方法は、通常、ハードワックスを使用して行われます。軟らかいワックスよりも効果が高く、長期間毛を取り除くことができます。ワックスは、専用の加熱器で加熱され、体温に近い温度に保たれます。ワックスは、陰部周辺に広げられ、急激に引き剥がされます。この方法は痛みが強いため、多くの人が抵抗を感じます。

マリア:ブラジリアンワックスは、陰毛だけでなく、陰唇の周りの毛も完全に取り除くことができます。この方法は、ビキニラインやプールやビーチでの水着の着用時など、外見をよくするためにも人気があります。

カタリナ:ブラジリアンワックスは何処で売っているの?誰か専門の人がやってくれるんじゃないの?

マリア:ブラジリアンワックスの成分は、通常、樹脂、蜜蝋、ミツロウ、アロエベラ、カモミール、オリーブオイル、アーモンドオイル、ビタミンE、そして香料などが含まれています。一部の製品には、グリセリン、ヒマワリオイル、キャンデリラワックス、ココナッツオイル、ジョジョバオイルなどの天然成分も含まれています。これは私と私の母親フアナが作ります。最初は私の母親フアナにやらせましょう。

カタリナ:分かったわ。お願いするわね。上手く行ったらルドラの選挙を私も応援してあげるわ。私の敵はルドラじゃないのよ。ロサだけなの。

今回はここまでにいたしましょう。次回をお楽しみに。

 

後書き

マリアはロサを牽制するために、ロサのライバルカタリナ・リベラ・サンドバル34歳と手を組み、カタリナの剛毛の剃毛処理に協力し、ブラジリアンワックスを掛けて自らカタリナに協力します。そのおかげでカタリナはルドラの愛を取り戻すことが出来ました。それだけにとどまらず、ルドラはカタリナの剃毛を喜んで引き受けるようになり、カタリナ自身もルドラにやってもらうブラジリアンワックスを用いた剃毛にやみつきになってしまいました。