小説「海と陸の彼方へ」

 

第五章大渡河に掛かる橋

 

第20話「内江における戦い」と重慶への追跡

 

本文

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登場人物「1935年1月1日時点」  
アンヘル・ディアンジェロ16歳:ハーバーテックソリューションズ(HTS)の会長兼CEO。ル・クリスタル・ホテル所有「200万ドルで居抜き購入」。アンヘル航空㈱会長兼CEO「資本金10億ドル」。ヴィヴィ警備会社「資本金1千万ドル」オーナー。軍事産業への共同投資60億ドル「配当金:1,929万ドル/ 週」。現預金50億ドル「シャドウ・ネクサスから略奪」と債権「総額不明」所有。
マリア・エバ・ドゥアルテ16歳。アンヘルの妻。AMレジャー総合開発㈱「資本金1億ドル」社長兼COO。悪魔のように可愛い女。 
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アンヘルの家族 
イタリア系の不法移民で、彼らの家族名は「ディアンジェロ」です。以下はディアンジェロ家の家族構成です: 
・父親ヘクター・ハミルトン(28歳)「10歳の若返り」:アンヘルから10億ドルの資金を貰い、テキサスで石油と天然ガスを発掘した。 
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ヘクターの資金7億4,060万ドル。前々回の最後で石油精製会社の資本金を5千万ドルとして計上した。別途にエドゥワルドから50億ドルの資金を預かる。
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兄ルイス・ディアンジェロ(18歳):表向きはニューヨーク市警警部兼総合建設会社NYHCの社員。 実はマフィアのアンダーボス。マフィアのボス:エドゥアルドの最愛の妻セリーナ・マッキンノン(27歳)を奪ったことで、アメリカを追われ、中国に逃れる。弟アンヘルの計画「中国共産党最高指導者毛沢東暗殺」に成功し、国民党政府主席蒋介石から、巴蜀・雲南の軍政長官に任命される。ルイスをアメリカら放逐したボスのエドゥアルドも自らの第一夫人クラウディア・コステロ(42歳)「前ボス:コステロの元妻」の不興を買い、香港に逃亡中。 
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ルイスの資金

190億両の為替。銀錠20億両。一般会計10億両と特別会計10億両に分けてある。一般会計の方は506万5千両支出した。特別会計10億両はルイスが握っているが、すでに342,900両支出した。前話で張銘チャン・ミンに騙され13,055,800両支出したた。都合13,398,700両の特別会計支出である。

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ルイスの部下
1.周恩来ジョウ・エンライ、37歳、江蘇省出身:
・穏やかで知的な性格をしており、どんな状況でも冷静さを失わない。
・話し方には礼儀があり、分析的で思慮深い。
・組織的な思考を持ち、リーダーシップを取れる。
・他者に対しては理解深く、共感を示すことができる。

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ルイスの3人の妻「ムスリム教徒」

ナディア・アミール・アル・サン(42歳)。ルイスの第一夫人「政治担当」。元宋慶齢ソン・チンリン。上海出身。
・自立心が強く、決断力がある女性。
・社会的な問題に対して意識が高く、積極的に意見を表明する。
・優雅で洗練された振る舞いを持ち、周囲に対しても敬意を払う。
サリマ・ファイサル・アル・ハウ(25歳)。ルイスの第二夫人「会計担当」。元賀子珍ホ・ズージェン。江西省出身。
・勇敢で情熱的な性格。自分の信念に強く固執する。
・感情が豊かで、時に感情的になりやすい。
・直感に頼ることが多く、行動的で果敢な面がある。
王光美ワン・グアンメイ(14歳)。ルイスの第三夫人「軍隊担当」。山東省出身。
・年の割には成熟しており、好奇心が強い。
・柔軟な思考を持ち、新しい環境にも早く適応する。
・人懐っこく、周りの人々との交流を楽しむが、時には頑固な一面も。

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マフィアの組織図「パブリックドメイン」


紅軍の長征

中国全土

山川出版社「地域の世界史9……市場の世界史」P171

朝日出版社「西南シルクロード紀行」宍戸茂著。P10

朝日出版社「西南シルクロード紀行」宍戸茂著。P11

朝日出版社「西南シルクロード紀行」宍戸茂著。P49

 

6月12日水曜日、午前10時:四川省富順県貢井・李立三リー・リーサンの四合院
ルイスと王光美ワン・グアンメイは兵隊3名を残して飛行機に乗ることにした。四合院の家宅捜査など3名で十分だ。下女や下男も5名ずついる。捕虜の王明ワン・ミン(31歳)と第二夫人のナターシャ・イワノヴナ(32歳)を連れて行こうとした時、下女頭の李麗花リー・リーファ(34歳)が"私も連れていけ"とごね始めた。

ルイス:お前は亭主の張偉チャン・ウェイ(37歳)や子供たちをどうするつもりなんだ?

李麗花リー・リーファ(34歳):ルイス様。私もここの夫人にして下さい。何時までも下女は嫌なんです。第三夫人でも構わないので夫人にして下さい。

ルイス:亭主はどうするのだ?

李麗花リー・リーファ:あんな奴はどうでも良いのです。どうせ、文句など言えやしません。

ルイス:なら、お前が亭主と別れたら第三夫人にしてやろう。

李麗花リー・リーファは離婚届に署名し、亭主と交渉し始めた。亭主が"別れるなら手切れ金を寄越せ"というので、ルイスは面倒になり、亭主の張偉チャン・ウェイ(37歳)に銀錠500両を支払ってやった。

ルイスは改良DC-2飛行機10機を率いて、内江山中に向かった。ルイスの乗っているDC-2 は最後尾に付けている。一時間ほどの飛行で目的地の上空に到着した。ルイスの無線に依る指令でルイス機以外の9機「90名」は連中に気付かれぬよう、一山越えたところに着陸させた。90名がアジトまで来るのに30分は掛かるだろう。ルイスの乗る飛行機だけがアジトに向かった。

☆内江での戦い
1935年6月12日午前11時、中国四川省の山中にひっそりとたたずむ共産党の隠れ家。茅葺き屋根の質素な木造建築は、周囲の密林にほとんど紛れて見える。小さな空き地には、ハンマーと鎌の赤旗が控えめに掲げられている。周囲には地元の村人に溶け込むような平服を着た見張りが配置されている。煙突から上がる煙や、野菜が栽培されている小さな庭など、活動の微かな兆しも見られる。秘密主義でありながら静かな活動に満ちた雰囲気が、この場所が秘密作戦基地であることを示している。背景には四川省の険しい山々が描かれ、霧のかかった朝がこの場面の秘密めいた感じを一層高めている。

ルイスの乗る飛行機を見つけた共産党員がライフル片手にアジトから飛び出して来た。4,50名はいるだろう。周りの民家からも続々兵隊が出てくる。操縦士のルイスと副操縦士のテンパ・ティンリー(24歳)が機銃をバラバラと撃ち、連中の足を止める。

その隙に王光美ワン・グアンメイがアジトから出てきた幹部たち4,50名目掛けて催涙弾を投げ入れた。グオーンという爆発音と同時に白煙が辺りを真っ白にすると幹部たちは全員その場に倒れた。

ルイスは悠々とアジトの前の広場に着陸し、幹部たちを全員拘束した。幹部たちにライフル銃を突きつけると、兵隊たちは観念して降伏し、武装解除した。

☆捕虜たちへの尋問
ルイスがアジトから出てきた幹部と思しき兵隊たちを拘束し、周辺の兵隊を武装解除させている間に山向こうに派遣しておいた90名の兵隊たちが帰還してきた。この辺り一帯が共産党の残党が隠れ住む土地だったようで、残党たち5,000名を拘束したそうだ。

ルイス:お前たち良くやった。しかし、捕虜の王明ワン・ミン(31歳)が"成都、内江、重慶の3都市でそれぞれ5万名規模の反乱を起こす"と言っていたのに比べると人数が少なすぎるな。全員合わせても一万名ほどしか居ないぞ。

王光美ワン・グアンメイ:幹部らしきアジトから出てきた奴らを尋問してみましょう。

王光美ワン・グアンメイとテンパ・ティンリーが尋問を開始した。ルイスも李立三リー・リーサンの四合院で逃してしまった男4名、女3名が居ないかと調べた。

ルイス:おい。お前はあの時にいた女の一人だな。西洋人だから俺も覚えていたぞ。名を名乗れ。

女は顔を覚えられていたことに観念し、名前と年齢及び素性を名乗った。"私はリサ・ロンと言います。32歳のロシア人です"

ルイスはピンときた。"こいつが李立三リー・リーサンの本妻に違いない。ナターシャ・イワノヴナ(32歳)に面通しさせてみよう"

ルイスはナターシャを呼び、リサ・ロンと面通しさせた。リサ・ロンはナターシャを見て、顔面蒼白となり、ナターシャは"この女性が李立三リー・リーサンの本妻です"と証言した。

王光美ワン・グアンメイは"リサ・ロンを拷問し、李立三リー・リーサンの居所を白状させよう"と主張した。見ればリア・ロンも拷問され、強姦されると覚悟しているかのように身体をブルブルと震わせている。

ルイスがリサ・ロンに近づくと、彼女は後退りした。ルイスは彼女に"俺は拷問とか強姦とかはしない。心配するな。勿論殺したりもしない。ただ聞きたいことがあるだけだ"と言った。

リサ・ロン:私はたとえ殺されようとも李立三リー・リーサンの居所は白状しません。

ルイス:良いんだ。言わなくても。どうせ重慶に向かっているに違いない。台所の様子を見るに李立三リー・リーサンは30分ほど前に出発したようだな。今頃は内江の港から重慶行きの船に乗っているはずだ。

リサ・ロンはルイスの言葉に鋭く反応した。"いえ。違います。李立三リー・リーサンは成都行きの船に乗ったのです。重慶ではありません"

ルイスはアジトの捜索を後回しにし、リサ・ロンを副操縦席に乗せて出発した。同じアジト→内江の港→重慶の港のコースだが、李立三リー・リーサンは船で重慶に向かい、ルイスたちは飛行機で向かっている。明らかにルイスの方が有利である。

☆内江の港
共産党の軍隊を乗せた船が順番に船出して行く。ここから重慶に向かうのは李立三リー・リーサンを含めて約1万名の軍隊のようだ。100名ずつ乗り込んで一隻ずつ100隻の船が出港して行く。

☆機銃に依る銃撃
ルイスたちは共産党船団100隻の前に回り、前から順番に機銃攻撃を仕掛けた。53隻目を撃ち始めた時、副操縦席のリサ・ロンが大騒ぎし始めた。さては53隻目に総大将の李立三リー・リーサンが乗っていると直感したルイスは無線で連絡を取り、"53隻目の船を総攻撃し、武装解除させろ"と指示した。

10機のDC-2 に機銃攻撃されては船も持たない。李立三リー・リーサンは白旗を掲げてきた。ルイスは彼を拘束し、船団の軍隊1万名を入手した。ルイスはテンパ・ティンリーに命じて、李立三リー・リーサンを南京の蒋介石の元に送り届けた。

また王光美ワン・グアンメイに命じて、内江のアジトに残した捕虜約1万名を収容し、アジトを捜索するよう命じた。自身はこのまま重慶の国民党政府支部へ行くつもりである。

☆重慶国民党支部
6月15日土曜日午前9時、重慶の国民党支部で、ルイスは部下たちの熱烈な歓迎を受ける。支部長の陳大文チェン・ダーウェン(45歳)は、堂々とした風格と知的な眼差しを持つ男性で、蒋介石からの直接の信任を受けている。彼はルイスの到着を待ちわびており、その手腕と勇敢さを高く評価していた。

重慶国民党支部の広々とした会議室には、鮮やかな青と金色の絨毯が敷かれ、壁には国民党の象徴である青天白日満地紅旗が掲げられている。部屋の中央には大きな木製の会議テーブルがあり、その周りには国民党の幹部たちが集い、ルイスの成功を祝福している。

陳大文チェン・ダーウェンはルイスに向かって手を差し伸べ、「ルイス将軍、貴方の勇気と決断力に敬意を表します。貴方のリーダーシップのもと、我々は共産党の脅威からこの地を守ることができました」と賞賛の言葉を述べる。

ルイスは謙虚に頭を下げ、「これもすべては蒋介石閣下の英断と、皆さんの支援のおかげです。我々の戦いはまだ終わっておらず、共産党の脅威を根絶するためには、引き続き全力を尽くさなければなりません」と返答する。

支部長の陳大文チェン・ダーウェンはルイスの言葉を聞き、さらに彼のリーダーシップを信頼し、今後の行動計画について熱心に討議を始める。部屋は活気に満ち、新たな目標に向けての決意が固まっていく。重慶国民党支部のこの日は、歴史に残る重要な一歩となったのである。

☆ルイスと3人の女たち
内江から重慶までの船旅でルイスと3人の女たちの仲はそれぞれ深まった。第二夫人のナターシャ、第三夫人の李麗花リー・リーファは言うに及ばず、リサ・ロンまでもルイスに身を任せたのである。

リサ・ロンは李立三リー・リーサンが拘束された後、"これからどうしよう"と思い悩んでいたが、その心と身体の隙をルイスが上手く突いてリサ・ロンを言葉巧みに我が物とし、李立三リー・リーサン邸の第四夫人とした。

3人の夫人たちは内心はともかくルイスの前では3姉妹のように仲良く振る舞い、お互いにボロを出さぬように振る舞った。

李麗花リー・リーファ:ルイス様。宜賓イービンも良い都市ですが、重慶も大きな都市ですよ。ぜひ一度見物され、此処にも拠点をお持ちになったら如何ですか?

ルイス:重慶とはどのような都市なのだ?

ナターシャ:灯影牛肉 、重慶火鍋、豆花 、小面 などの美味しいものがあります。

ルイス:何だ。食べ物ばかりだな。お前は見かけによらず、食いしん坊なんだな。

"そんなことはありません"とナターシャはすねた。

ルイスが重慶の名産品について尋ねると、李麗花は熱心に説明を始めた。「重慶には様々な名産品がありますよ。まず、蜀繍は四川省特有の伝統的な刺繍で、南宋時代から中国四大名繍の一つとされています。それから、栄昌折扇は清時代から外国に輸出されていた伝統的な民間工芸品です。栄昌県で特に有名なんです。また、灯影牛肉は百年以上の歴史を持つ四川風の食品で、痺れる辛さと香ばしさ、甘さが特徴で、非常に薄く切られており、光にかざすと透けるほどです。最後に、竹編も四川省特有の工芸品で、古くから茶道具や花瓶などに用いられています」と彼女は紹介した。

ルイス:長江三峡というのを聞いたことがある。往復でどのくらい掛かるかな?

リサ・ロン:10日間ほど掛かると聞いたことがあります。2週間の予定をお組みになられたら如何ですか?

ルイス:そうだな。たまには良いかも知れぬ。先ず重慶の街を散策しよう。ナターシャのために飲み食いの場を提供せねばな。

ナターシャは"まあ。嫌だわ"と言い、ルイスをぶつ真似をした。

ルイスと3人の夫人たちは重慶の街を散策に出かけた。

内江からの船旅を終え、重慶の街に足を踏み入れたルイスと彼の3人の夫人たちは、この大都市の活気と魅力に満ちた街並みを探索し始めた。重慶の街は、古くからの歴史と現代の躍動が交錯する場所で、その独特な雰囲気に彼らはたちまち魅了された。

彼らの最初の目的地は現在「解放碑広場」と呼ばれている広場で、その周辺はショッピング街として賑わい、多彩な店舗が立ち並んでいた。ナターシャは特に、地元の特産品を扱う店舗に興味を示し、蜀繍や栄昌折扇などの伝統工芸品に見入っていた。ルイスもこれらの精巧な工芸品に感心し、いくつかを購入して旅の記念にした。

その後、彼らは重慶の伝統料理を味わうために地元の食堂に向かった。重慶火鍋の辛さと豊かな風味に、特にナターシャは大いに満足していた。李麗花とリサ・ロンも、地元の小面や豆花などの料理に舌鼓を打ち、重慶の食文化の深さを楽しんだ。

食後、彼らは洪崖洞に向かい、重慶の伝統的な建築と川沿いの景色を楽しんだ。夜には灯りが街を照らし、幻想的な雰囲気が漂っていた。3人の夫人たちは、この美しい光景に息をのみ、ルイスもその美しさに心を奪われた。

最後に、彼らは長江沿いを散歩し、その壮大な景観に感動しながら、重慶の街が持つ魅力と多様性に改めて驚嘆した。この日の終わりに、ルイスと彼の夫人たちは重慶の街が彼らにもたらした豊かな体験と新たな思い出に感謝しながら、宿泊先に戻ったのだった。

今回はここまでにいたしましょう。次回をお楽しみに。

 

用語解説

長江三峡

長江三峡は、中国中部の長江(揚子江)に位置する、世界で最も壮大な自然景観の一つである。この地域は、巫峡、瞿塘峡、西陵峡の三つの峡谷から成り、合わせて約200キロメートルにわたる。これらの峡谷は、それぞれ独特の美しさを持ち、長江の流れを追いながら壮大な景色と迫力ある自然を体験することができる。

巫峡ウー・シア:最も神秘的な景観を提供する峡谷で、約45キロメートルにわたる。この地域はしばしば霧に包まれ、幽玄な雰囲気を醸し出している。巫山が有名で、古代から多くの詩人や画家にインスピレーションを与えてきた。

瞿塘峡チュータン・シア:最も短いが、最も険しい峡谷で約8キロメートル。その壮大な景観は、峡谷の入口に位置する巨大な「瞿塘門」から始まる。この峡谷はその急峻な崖と狭い水路で知られている。

西陵峡シーリン・シア:最も長い峡谷で、約76キロメートルにわたる。多くの急流や瀬があり、古くから航行の難所とされてきた。しかし、三峡ダムの建設によって水位が上昇し、その景観は大きく変化した。

三峡ダムは、長江三峡地域に建設された世界最大の水力発電所であり、洪水制御、発電、船舶の通行を容易にするなど、多くの利点をもたらしている。しかし、ダムの建設は環境への影響や、数千の村が水没し数百万人が移住することを余儀なくされるなど、論争の的にもなっている。

長江三峡は、その自然の美しさと歴史的、文化的重要性から、多くの観光客を引きつけている。この地域の探索は、中国の自然と文化の深い理解を提供する。