第一章第15話王美玲ワン・メイリンから得た大きいヒント

 

本文

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登場人物「1935年1月1日時点」  
アンヘル・ディアンジェロ16歳:ハーバーテックソリューションズ(HTS)の会長兼CEO。ル・クリスタル・ホテル所有「200万ドルで居抜き購入」。アンヘル航空㈱会長兼CEO「資本金10億ドル」。ヴィヴィ警備会社「資本金1千万ドル」オーナー。軍事産業への共同投資60億ドル「配当金:1,929万ドル/ 週」。現預金50億ドル「シャドウ・ネクサスから略奪」と債権「総額不明」所有。
マリア・エバ・ドゥアルテ16歳。アンヘルの妻。AMレジャー総合開発㈱「資本金1億ドル」社長兼COO。悪魔のように可愛い女。 
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アンヘルの家族 
イタリア系の不法移民で、彼らの家族名は「ディアンジェロ」です。以下はディアンジェロ家の家族構成です: 
・父親ヘクター・ハミルトン(28歳)「10歳の若返り」:アンヘルから10億ドルの資金を貰い、テキサスで石油と天然ガスを発掘した。 
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ヘクターの資金7億4,060万ドル。前々回の最後で石油精製会社の資本金を5千万ドルとして計上した。別途にエドゥワルドから50億ドルの資金を預かる。
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・兄ルイス・ディアンジェロ(18歳):表向きはニューヨーク市警警部兼総合建設会社NYHCの社員。 実はマフィアのアンダーボス。マフィアのボス:エドゥアルドの最愛の妻セリーナ・マッキンノン(27歳)を奪ったことで、アメリカを追われ、中国に逃れる。弟アンヘルの計画「中国共産党最高指導者毛沢東暗殺」に成功し、国民党政府主席蒋介石から、巴蜀・雲南の軍政長官に任命される。ルイスをアメリカら放逐したボスのエドゥアルドも自らの第一夫人クラウディア・コステロ(42歳)「前ボス:コステロの元妻」の不興を買い、香港に逃亡中。 
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ルイスの資金

200億両の為替。

現金9億9493万5000両。事業資金100万両。小遣い数百万両「内緒の金…敵対マフィアからぶんどった隠し金」

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ルイスの部下
1.周恩来ジョウ・エンライ、37歳、江蘇省出身:
・穏やかで知的な性格をしており、どんな状況でも冷静さを失わない。
・話し方には礼儀があり、分析的で思慮深い。
・組織的な思考を持ち、リーダーシップを取れる。
・他者に対しては理解深く、共感を示すことができる。

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ルイスの3人の妻「ムスリム教徒」

ナディア・アミール・アル・サン(42歳)。ルイスの第一夫人「政治担当」。元宋慶齢ソン・チンリン。上海出身。
・自立心が強く、決断力がある女性。
・社会的な問題に対して意識が高く、積極的に意見を表明する。
・優雅で洗練された振る舞いを持ち、周囲に対しても敬意を払う。
サリマ・ファイサル・アル・ハウ(25歳)。ルイスの第二夫人「会計担当」。元賀子珍ホ・ズージェン。江西省出身。
・勇敢で情熱的な性格。自分の信念に強く固執する。
・感情が豊かで、時に感情的になりやすい。
・直感に頼ることが多く、行動的で果敢な面がある。
王光美ワン・グアンメイ(14歳)。ルイスの第三夫人「軍隊担当」。山東省出身。
・年の割には成熟しており、好奇心が強い。
・柔軟な思考を持ち、新しい環境にも早く適応する。
・人懐っこく、周りの人々との交流を楽しむが、時には頑固な一面も。

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マフィアの組織図「パブリックドメイン」


紅軍の長征

中国全土

山川出版社「地域の世界史9……市場の世界史」P171

朝日出版社「西南シルクロード紀行」宍戸茂著。P10

朝日出版社「西南シルクロード紀行」宍戸茂著。P11

朝日出版社「西南シルクロード紀行」宍戸茂著。P49

 

☆ルイスと王美玲ワン・メイリン(28歳)
宜賓の繁華な街角に佇む「雲中鶴」と名付けられた妓楼は、その華やかな佇まいで知られ、街の紳士たちの社交場としての地位を確立していた。

1935年6月5日、水曜日の昼下がり、この妓楼は一際の賑わいを見せていた。木製の暖簾のれんをくぐると、繊細な彫り物が施された柱が立ち並び、やわらかな光が漏れる格子窓が趣を添える。天井は高く、艶やかな赤木が光を反射し、壁には古の詩人が書き記した書が飾られ、知的な気品を漂わせていた。

ルイスは妓楼の二階、窓際の好位置に設えられた個室で王美玲ワン・メイリンと対面していた。部屋は満ちんばかりの日差しで温もりを帯び、外の喧騒が遠い世界のものとなる。彼らの前には、細工を凝らした銀の器に盛られた精緻な料理が並び、蒸篭からは湯気とともに四川の香り高いスパイスが漂っていた。食事の度に、器用な手つきで給仕が新しい料理を運び、その都度、室内は新たな香りで満たされる。

ルイスと王美玲ワン・メイリンは、鮮やかな色の食器を前に対話を交わしていた。王美玲ワン・メイリンが興味深い話題を提供してくれたことに、ルイスは純粋な興味と戦略的な計算を隠し持っていた。彼女が語る自貢市の富順県における火井の豊富さは、ルイスにとって新たな事業機会の予感となった。絹のような繊細な声で語られる情報は、ルイスの事業家としての情熱を燃やし、会食は単なる社交の場を超え、未来を切り開く門出となったのだった。

ルイス:自貢市の富順県における火井というのはどの辺りにあるのか?

王美玲ワン・メイリン:祖父の話によると、富順県の貢井 ・自流井と言うところだそうでございます。

ルイス:竹筒「パイプ」を地中に通して天然ガスを取り出していたと申すのだな。

王美玲ワン・メイリン:はい。左様でございます。四川と言うところは昔から塩井、油井「原油」、火井「メタンガス、天然ガス」が豊富でございます。

ルイス:地中に穴を掘り、塩水を汲み出し、火井から出る天然ガスで塩水を熱して塩を抽出したというわけだな。

王美玲ワン・メイリン:はい。富順の貢井 ・自流井を含む自貢というところには塩を扱う富裕な商人が沢山おります。自貢は中国最大の製塩都市で御座います。長江の沿岸にありますので、宜賓→瀘州→富順の貢井 ・自流井→内江→重慶と船で行くことが出来ます。

ルイス:貢井 ・自流井に行くにしても掘るべき土地を所有せねばどうにもなるまい。

王美玲ワン・メイリン:宜賓や重慶の街へ行けば大きな不動産屋があります。一度足をお運びになっては如何ですか?

ルイスは王美玲ワン・メイリンと共に宜賓の不動産屋へ行き、富順の貢井 ・自流井の塩井1000ヶ所と火井20ヶ所を購入した。塩井は1ヶ所に付き銀錠100両、火井は1ヶ所1000両で購入した。合計支出額は3万両である。

宜賓の筠連県にある筠連鉱区「炭田」を買い占めようと思い、不動産屋に打診してみた。幸いなことに所有者が大慶に移転する計画を持っており、その結果如何では売ってくれる可能性があるそうだ。

不動産屋曰く、"炭田の持ち主は黄文遠ホアン・ウェンユエン(54歳)と言い、宜賓地区にて長年炭田を経営してきたが、より大規模な商売を求めて大慶に移転する計画を進めている。彼はその地域社会において尊敬される立場にあり、炭田の取引においても信頼の置ける人物と見なされている"そうである。

問題は値段であるが、黄文遠ホアン・ウェンユエンは銀錠2万5千両を希望しており、不動産屋もそれくらいが相場だという。ルイスにとっては安い買い物だと思ったが、石炭掘り技術の伝授をしてくれるならばもう少し上乗せしても良いと考え提案してみることにした。石炭掘り技術の教授料込みで銀錠5万両を提示したのである。交渉は妓楼「雲中鶴」で夕食を摂りながら行うことになった。

夕暮れ時の宜賓、雲を彩る色彩が変わりゆく中、「雲中鶴」の灯りが一層強く輝き始めていた。夕食の席が片付けられた後、個室は重要な会話の場へと変わる。富順県の貢井・自流井に関する情報に続き、ルイスは筠連鉱区の炭田買収に向けての大胆な一手を打とうとしていた。

黄文遠ホアン・ウェンユエンは、豊かな白髪を後ろで束ね、深い知識と経験が刻まれた顔立ちでルイスを見つめる。隣には劉月華リウ・ユエファが座り、落ち着いた美しさと穏やかな微笑みで若きルイスを迎えていた。

ルイス:黄先生、貴方の炭田は非常に興味深いです。私は貴方が進める大慶への移転計画を全力で支持したいと思っています。そして、炭田を引き継ぎ、この地域の発展に寄与したい。

黄文遠ホアン・ウェンユエン:ルイス君、貴方の意気込みは感じておる。だが、私の炭田は単なる土地ではない。そこには私たち家族の魂が宿っている。

劉月華リウ・ユエファが微笑みを深める。彼女はルイスの野心を賞賛し、黄文遠ホアン・ウェンユエンの言葉に頷きを返した。

ルイス:その価値を理解しております。ですので、ただの取引以上のものを提案したいのです。炭田と共に、その採掘技術を教えていただけるなら、銀錠5万両をお支払いします。

黄文遠ホアン・ウェンユエンは一瞬考え込むが、彼の瞳には既に決断の光が宿っていた。劉月華は夫の顔を見て、静かにうなずき、ルイスの提案に対する答えを述べた。

劉月華リウ・ユエファ:ルイス君、私たちもあなたのような若者に我が家の技術が受け継がれることを望んでいます。私が3ヶ月間、貴方に炭掘りの技を伝授いたしましょう。

ルイスは感謝の意を表しつつ、この提案に心からの同意を示した。若さと熱意が溢れる彼に、劉月華は特別な好感を抱き、彼女自らが指導者となることに何一つ躊躇はなかった。

妓楼「雲中鶴」で行われた夕食後の交渉は、ルイスの実業家としての道を大きく開くものであり、黄家にとっては新天地への一歩であった。彼らの会話は宜賓の夜に響き渡り、新しい未来への扉を開いたのであった。

ルイスはその場で劉月華リウ・ユエファに石炭発掘に必要な器具と人員を聞いた。

劉月華リウ・ユエファ:石炭発掘に必要な器具と人員は、以下の通りです:

器具:

1.ピックアックスとショベル:石炭を掘り出す基本的な手工具です。
2.トロリーまたは鉱車:掘り出した石炭を運ぶための車両。
3.揚げ機:鉱井から石炭を地表まで運び上げる機械。
4.支柱と梁:鉱井の安全を確保するための支え。
5.ランプと安全灯:鉱井内の照明用具。
6.ガス検知器:ガス爆発の危険を避けるための検知器。
7.換気ファン:鉱井内の空気を清浄に保つための換気装置。

人員:

1.鉱夫:石炭を直接掘り出す作業員。
2.マネージャー:鉱山の日々の運営を管理する人物。
3.技術者:機械のメンテナンスや鉱山の設計を担当。
4.監督者:安全を確保し、鉱夫たちを指揮する。
5.会計係:賃金の支払いや経費の管理を行う。
6.医療スタッフ:怪我人の応急処置を行うための医者や看護師。

劉月華リウ・ユエファ:石炭発掘にはこれらの器具が必要です。また、少なくとも30人の鉱夫がいれば、効率的な運営が可能でしょう。その中には、経験豊富な監督者と技術者も含まれます。鉱山の安全と生産性を確保するためには、これらの人員が不可欠です。

ルイス:資金こそ豊富にありますが、技術者がおりません。また奥様のような素晴らしい指導者もおりません。

ルイス:まあ。劉月華リウ・ユエファ様のようなお美しくて気品のある指導者など中国広しと言えども他にはいらっしゃるまいと思いますが。

ルイスは劉月華リウ・ユエファ(48歳)を褒めちぎり、彼女の自尊心と母性愛をくすぐった。彼女はただでさえルイスの若さと精悍な容貌に惹かれていたこともあり、ルイスの役に立ってやろうという強い衝動に駆られた。

劉月華リウ・ユエファ:私どもの技術者を置いて行きましょう。きっとお役に立ちますよ。

ルイスはこう答えた。"奥様が私の傍に居て下されば私はもう何も求めません"

劉月華リウ・ユエファは返答に困ったが、黙ってルイスを抱き寄せキスをした。ルイスも強い衝動に駆られたが人目もあるのでここは彼女が口の中に差し入れてきた芳しい舌を舐めしゃぶるだけで我慢することにした。

しかし、この行為は劉月華リウ・ユエファに久々の官能を呼び覚ませたようである。彼女はルイスにメモを渡してきた。明日の午後1時の逢瀬の約束である。

というわけでルイスは劉月華リウ・ユエファの言葉に耳を傾け、必要な器具と人員を確保するための準備を始めた。これにより、彼の炭田事業は、安全かつ効率的な基盤の上でスタートを切ることができるようになった。

今回はここまでにいたしましょう。次回をお楽しみに。