第一章第12話宜賓(イービン)を拠点に巴蜀・雲南王を目指す

 

本文

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登場人物「1935年1月1日時点」  
アンヘル・ディアンジェロ16歳:ハーバーテックソリューションズ(HTS)の会長兼CEO。ル・クリスタル・ホテル所有「200万ドルで居抜き購入」。アンヘル航空㈱会長兼CEO「資本金10億ドル」。ヴィヴィ警備会社「資本金1千万ドル」オーナー。軍事産業への共同投資60億ドル「配当金:1,929万ドル/ 週」。現預金50億ドル「シャドウ・ネクサスから略奪」と債権「総額不明」所有。
マリア・エバ・ドゥアルテ16歳。アンヘルの妻。AMレジャー総合開発㈱「資本金1億ドル」社長兼COO。悪魔のように可愛い女。 
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アンヘルの家族 
イタリア系の不法移民で、彼らの家族名は「ディアンジェロ」です。以下はディアンジェロ家の家族構成です: 
・父親ヘクター・ハミルトン(28歳)「10歳の若返り」:アンヘルから10億ドルの資金を貰い、テキサスで石油と天然ガスを発掘した。 
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ヘクターの資金7億4,060万ドル。前々回の最後で石油精製会社の資本金を5千万ドルとして計上した。別途にエドゥワルドから50億ドルの資金を預かる。
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・兄ルイス・ディアンジェロ(18歳):表向きはニューヨーク市警警部兼総合建設会社NYHCの社員。 実はマフィアのアンダーボス。マフィアのボス:エドゥアルドの最愛の妻セリーナ・マッキンノン(27歳)を奪ったことで、アメリカを追われ、中国に逃れる。弟アンヘルの計画「中国共産党最高指導者毛沢東暗殺」に成功し、国民党政府主席蒋介石から、巴蜀・雲南の軍政長官に任命される。ルイスをアメリカら放逐したボスのエドゥアルドも自らの第一夫人クラウディア・コステロ(42歳)「前ボス:コステロの元妻」の不興を買い、香港に逃亡中。 
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ルイスの資金

200億両の為替。

現金9億9493万5000両。事業資金100万両。小遣い数百万両「内緒の金…敵対マフィアからぶんどった隠し金」

前回で506万5千両使ったので、現金10億両の残金が9億9493万5000両となった。

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ルイスの部下
1.周恩来(ジョウ・エンライ)、37歳、江蘇省出身:
・穏やかで知的な性格をしており、どんな状況でも冷静さを失わない。
・話し方には礼儀があり、分析的で思慮深い。
・組織的な思考を持ち、リーダーシップを取れる。
・他者に対しては理解深く、共感を示すことができる。

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ルイスの3人の妻「ムスリム教徒」

ナディア・アミール・アル・サン(42歳)。ルイスの第一夫人「政治担当」。元「宋慶齢(ソン・チンリン)」。上海出身。
・自立心が強く、決断力がある女性。
・社会的な問題に対して意識が高く、積極的に意見を表明する。
・優雅で洗練された振る舞いを持ち、周囲に対しても敬意を払う。
サリマ・ファイサル・アル・ハウ(25歳)。ルイスの第二夫人「会計担当」。元「何叔衡(ホー・シューホン)」。江西省出身。
・勇敢で情熱的な性格。自分の信念に強く固執する。
・感情が豊かで、時に感情的になりやすい。
・直感に頼ることが多く、行動的で果敢な面がある。
王光美(ワン・グアンメイ)(14歳)。ルイスの第三夫人「軍隊担当」。山東省出身。
・年の割には成熟しており、好奇心が強い。
・柔軟な思考を持ち、新しい環境にも早く適応する。
・人懐っこく、周りの人々との交流を楽しむが、時には頑固な一面も。

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マフィアの組織図「パブリックドメイン」


紅軍の長征

中国全土

山川出版社「地域の世界史9……市場の世界史」P171

朝日出版社「西南シルクロード紀行」宍戸茂著。P10

朝日出版社「西南シルクロード紀行」宍戸茂著。P11

朝日出版社「西南シルクロード紀行」宍戸茂著。P49


☆ルイス宜賓(イービン)を拠点とする
6月4日火曜日午後1時:宜賓(イービン)の街:ルイスの豪邸
宋慶齢(ソン・チンリン)(42歳)と賀子珍(ホ・ズージェン)(25歳)が深刻な顔をしながら何やらひそひそと話をしている。ルイスが何事だと聞いてみると、ふたりとも口を揃えて"親や兄弟姉妹からイスラム教徒になるとは何事だ。お前とは親子の縁を切ると言われた"と言う。

"イスラム教徒でも一般の男は妻を一人しか持たないが、お前は3人の妻の一人になってしまった。これでは先祖に申し訳が立たない。いっそのこと名前も変えて我が一族と無縁の女性になってくれ"と言われたそうである。

ルイスは已む無く宋慶齢(ソン・チンリン)(42歳)と賀子珍(ホ・ズージェン)(25歳)の名前をアラブ風に改名することにした。アラブ圏の名前は、通常、個人の名前(ファーストネーム)、父親の名前、そして家族名(サーナーム)から成り立っている。

宋慶齢(ソン・チンリン)(42歳)の名前は、ナディア・アミール・アル・サンとし、賀子珍(ホ・ズージェン)(25歳)の名前はサリマ・ファイサル・アル・ハウとした。

王光美(ワン・グアンメイ)(14歳)に"お前は改名しなくて良いのか?"と聞くと"私の家族はけんもほろろな態度で拒絶するばかりだから私も腹が立ち、電話をがちゃんと切ってやったわ。お母さんが認めてくれたから良いのよ"と言う。

ルイスは妻たちと今後のことについて話し合った。

ルイス:私は、国民政府の蒋介石から巴蜀地方と雲南地方の軍政長官を仰せつかった。当初は蜀の成都もしくは巴の重慶何れかに拠点を築こうと考えていたが、ここ宜賓(イービン)の街が地理的、経済的、政治・軍事的に最も優れているのではないかと考え始めた。君たちの意見を聞かせてくれ。

ナディア・アミール・アル・サン(42歳):私も宜賓(イービン)の街が良いと思います。今中国は国民政府と共産党、地方軍閥間の激しい権力闘争が繰り広げられています。宜賓は四川省内での戦略的な位置を持ち、特に蒋介石率いる国民政府にとって重要な拠点です。

サリマ・ファイサル・アル・ハウ(25歳):私も宜賓(イービン)の街が良いと思います。宜賓は長江と金沙江の合流点に位置しており、水運による交通の要衝です。長江は中国を東西に横断する主要な水路であり、宜賓は四川盆地を出て東へ向かう船の出発点であると同時に、雲南省や他の南西部地域からの物資が集まる地点でもあります。

王光美(ワン・グアンメイ)(14歳):宜賓は交通の便が良いため、商業活動が盛んであり、特に農産物や鉱物資源の取引の中心地としての役割を果たしています。また、周辺の農村地域からの物資が集まる市場としても機能しています。私も宜賓(イービン)の街が良いと思います。

ルイス:良し。満場一致で此処を拠点にすることが決定した。軍事的なことは王光美(ワン・グアンメイ)に任せる。今の兵力は航空兵1万名と飛行機1000機だけだが、兵隊は先ず10万名に増やそう。飛行機を改良して爆撃できるようにすれば無敵となるだろう。軍艦とジープもアメリカ合衆国から入手して欲しい。

ルイス:経済的なことだが、以前に言っていたアヘンの忌避薬製造は後回しにする。今やるべきことは、名産の白酒の生産・販売と農産物加工業の発展である。名産の白酒の生産・販売はナディア第一夫人に任せる。農産物加工業の発展はサリマ第二夫人に任せる。資金についてはいくらでも出してやるからその都度相談せよ。

ルイスは宜賓(イービン)の街を拠点にするという決定を妻たちと話し合った後、宜賓(イービン)の街の大通りを歩いていた。

ルイスは、ひときわ賑わっている茶屋に目を留めた。好奇心に駆られて店内に入ると、広々とした座敷には賑やかな団体客が座っていた。彼の注意を引いたのは、その中の一つの光景だった。美しい女性が、他の女性たちから馬鹿にされ、苛められているように見えた。

その女性は、他の客たちの言葉には笑顔を返しつつも、その目には隠しきれない寂しさがあった。ルイスは、何が起こっているのかを理解するため、そっとその場に近づいた。彼は紳士的に介入し、落ち着いた態度で団体の人々に話しかけた。彼の冷静な仲裁により、徐々に周囲の空気は和らぎ、女性たちもその態度を軟化させた。

苛められていた女性に話を聞くと、彼女はこの町で生まれ育った地元の娘で、最近、家族の事情で困難な状況に直面していることが分かった。彼女はルイスの優しさと理解に感謝し、自分の状況について少し話した。ルイスは彼女の話に耳を傾け、宜賓の街の日常生活の一端を垣間見ることができた。

彼女は劉雅麗(リウ・ヤーリー)(32歳)と名のり、宜賓(イービン)の街では3本の指に入るほどの有名な酒屋の若女将であった。詳しいことは言いたがらなかったが、ルイスが巴蜀と雲南の軍政長官を国民政府から拝命したルイス(18歳)であると名乗ると態度を改め詳しい事情を話してくれた。

彼女は利川永(リーチュアンヨン)と言う宜賓(イービン)の街一番の白酒酒屋の嫁で、当主は陳偉成(チェン・ウェイチェン)(37歳)と言う。かつては事業に情熱を持っていたが、最近は複数の女性と博打にうつつを抜かし、経営に手が回らなくなっている。

ルイス:女は一人だけか?博打はどんなものをやっているのだ?借金はあるのか?

劉雅麗(リウ・ヤーリー)(32歳):詳しくは言いませんが、店から持ち出すお金の額から想像すると複数名囲っているようでございます。博打についてもありとあらゆる物に手を染めておりますが、以前から商店主との間で麻雀に凝っております。

劉雅麗(リウ・ヤーリー)(32歳):借金については何も言わなかったのですが、今日の酒造組合の会合で多額の借金を副組合長からしていることが判明いたしました。とても私どもでは支払えない金額でございます。

ルイス:そうか。それで苛められておったのだな。元金は幾らで利子はいくらになっているのだ?

劉雅麗(リウ・ヤーリー)(32歳):はい。3ヶ月前に5千両借りたそうで、今では2万両に膨れ上がっております。

ルイス:何と。法外な利息ではないか。

劉雅麗(リウ・ヤーリー)(32歳):この辺りではヤミ金融が横行しておりまして取り締まる役人も居ないのでございます。

ルイス:了解した。年利10%を超えるものは違法とし、今日から取り締まろう。但し、法律の効果が出るのは交付してからなので、貴女の夫のした借金は支払わなければならない。

劉雅麗(リウ・ヤーリー)(32歳):店を売却してもとても2万両など支払うことはかないませぬ。こうなっては子供と一緒に心中するしかございません。

ルイス:まあ。待て。早まるでない。これも何かの縁だ。俺が肩代わりしてやろう。

ルイスは、劉雅麗(リウ・ヤーリー)の手を取り、決意を固めて副組合長である長発升一家の家を訪れた。玄関を開けたのは、劉雅麗(リウ・ヤーリー)を苛めていた王美玲(ワン・メイリン)(28歳)だった。彼女は茶屋での出来事を思い出し、驚きと緊張の表情を隠せなかった。

ルイス:貴方が王美玲さんか。私はルイス、この街の新しい軍政長官だ。今日は劉雅麗さんの借金の件で話がある。

王美玲:ええ、そうですわ。私が美玲です。しかし、どうしてそんなことに…。

ルイス:借金の元金5千両と利息、合計2万両を支払う。しかし、これからは法外な利息は許されない。

王美玲は少し動揺しながらも、ルイスから金を受け取り、借用書を返した。彼女はこの交渉が夫の知るところとなることを懸念していたが、ルイスの堂々とした態度と彼の身分に抗うことはできなかった。

劉雅麗は、ルイスの行動に深く感謝し、彼に敬意を表した。一方で、王美玲はこの出来事が今後の自分と夫の立場にどのような影響を及ぼすかを考え、心配そうな表情を隠せなかった。

☆ルイスと劉雅麗(リウ・ヤーリー)(32歳)
劉雅麗(リウ・ヤーリー)(32歳):ルイス様。お陰で一家心中しなくて済みました。どうやってお礼をすれば良いのか分かりません。お借りしたお金は必ずお返しいたします。利息の方もお支払いいたしますので仰って下さい。

ルイス:そうだな。金は別に返さなくても良いが、貴女に仕事をしてもらおう。

劉雅麗(リウ・ヤーリー)(32歳):どんなお仕事でしょう?何でもやりますのでお申し付け下さい。

ルイス:今度のことでヤミ金融が横行していることが分かった。金を適正な利息で借りたい者も多いであろう。私が小口金融の会社を開くから貴女が社長になってくれ。資本金は98万両だ。100万両持っていたのだが、今2万両支払ったからな。利息は年利8%としよう。

劉雅麗(リウ・ヤーリー)(32歳):年利8%なら妥当だと思います。

ルイス:儲けの3割を貴女にやろう。残りの7割は資本家の私の取り分だ。これで良いか?

劉雅麗(リウ・ヤーリー)(32歳):願ってもない良い条件でございます。でもお貸しいただいた2万両の件が残っております。どうすればよろしうございますか。私の身体で良ければ何時でもお抱き下さいませ。

ルイス:うん。またそのうちにな。私も忙しい身だからな。

この出来事は、宜賓の社会における力関係の変化を示唆しており、ルイスの影響力がこの街で確固たるものとなりつつあることを示していた。

今回はここまでにいたしましょう。次回をお楽しみに。