第一章第8話ルイス:摩梭(モソ)族の村周辺を探索する

 

前書き

本話は、ルイスが中国の深い自然と古代から続く摩梭族の文化に触れ、新たな発見と自己発見の旅をする物語です。特に、格姆女神山への探索は、彼にとって重要な冒険であり、摩梭族の村周辺の自然と神話に深く触れる機会を提供します。

 

本文

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登場人物「1935年1月1日時点」  

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主人公ルイス・ディアンジェロ(18歳):元マフィアのアンダーボス。マフィアのボス:エドゥアルドの最愛の妻セリーナ・マッキンノン(27歳)を奪ったことで、アメリカを追われ、中国に逃れる。弟アンヘルの計画「中国共産党最高指導者毛沢東暗殺」に乗っかり、成功した。その功績を評価され、国民党政府主席蒋介石から、巴蜀・雲南の軍政長官に任命される。

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ルイスの資金

敵対するニューヨーク・マフィア から奪った朱堤銀200億両「日本円で400兆円」という莫大な隠し財産を為替で持っている。
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ルイスの捕虜兵
1.周恩来(ジョウ・エンライ)、37歳、江蘇省出身:
・穏やかで知的な性格をしており、どんな状況でも冷静さを失わない。
・話し方には礼儀があり、分析的で思慮深い。
・組織的な思考を持ち、リーダーシップを取れる。
・他者に対しては理解深く、共感を示すことができる。
2.宋慶齢(ソン・チンリン)、42歳、上海出身:
・自立心が強く、決断力がある女性。
・社会的な問題に対して意識が高く、積極的に意見を表明する。
・優雅で洗練された振る舞いを持ち、周囲に対しても敬意を払う。
3.王光美(ワン・グアンメイ)、14歳、山東省出身:
・年の割には成熟しており、好奇心が強い。
・柔軟な思考を持ち、新しい環境にも早く適応する。
・人懐っこく、周りの人々との交流を楽しむが、時には頑固な一面も。
4.賀子珍(ホ・ズージェン)、25歳、江西省出身:
・勇敢で情熱的な性格。自分の信念に強く固執する。
・感情が豊かで、時に感情的になりやすい。
・直感に頼ることが多く、行動的で果敢な面がある。
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ルイスの家族 
イタリア系の不法移民で、彼らの家族名は「ディアンジェロ」です。以下はディアンジェロ家の家族構成です: 
・父親ヘクター・ハミルトン(28歳)「10歳の若返り」:次男アンヘルから10億ドルの資金を貰い、テキサスで石油と天然ガスを発掘した。 

・弟アンヘル・ディアンジェロ16歳:ハーバーテックソリューションズ(HTS)の会長兼CEO。ル・クリスタル・ホテル所有「200万ドルで居抜き購入」。アンヘル航空㈱会長兼CEO「資本金10億ドル」。ヴィヴィ警備会社「資本金1千万ドル」オーナー。軍事産業への共同投資60億ドル「配当金:1,929万ドル/ 週」。現預金50億ドル「シャドウ・ネクサスから略奪」と債権「総額不明」所有。
マリア・エバ・ドゥアルテ16歳。アンヘルの妻。AMレジャー総合開発㈱「資本金1億ドル」社長兼COO。悪魔のように可愛い女。 
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ヘクターの資金7億4,060万ドル。前々回の最後で石油精製会社の資本金を5千万ドルとして計上した。別途にエドゥワルドから50億ドルの資金を預かる。

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マフィアの組織図「パブリックドメイン」


紅軍の長征

中国全土

山川出版社「地域の世界史9……市場の世界史」P171

朝日出版社「西南シルクロード紀行」宍戸茂著。P10

朝日出版社「西南シルクロード紀行」宍戸茂著。P11

朝日出版社「西南シルクロード紀行」宍戸茂著。P49

麗江古城


☆ヘクターの動向
1935年5月11日土曜日午後11時:カーペンター家の豪邸「ダラス郊外」
エリザベスとの情事の真っ最中にニューヨークのアンヘルから電話が掛かった。野暮なやつだとぼやきながら、ヘクターは電話に出た。

アンヘル:父さんにお願いがあるんだ。

ヘクター:何だ。俺に出来ることならやってやるから言ってみろ。

アンヘル:ルイス兄さんが中国に亡命したことがクラウディア・コステロにバレた。エドゥワルドさんもクラウディアに追われて香港の九龍城砦に逃げたそうだ。

ヘクター:クラウディア一味の居所は分からないのか?

アンヘル:香港に到着し、エドゥワルドさんを追っていると聞いた。九龍城砦を探しているだろうが、あそこは伏魔殿と聞いている。いくらクラウディア・コステロでも容易ではないだろう。

アンヘル:エドゥワルドさんが見つからなければルイス兄さんを探しに掛かると思う。父さん、中国へ行ってルイス兄さんを助けてやってくれないか?

ヘクター:そうだな。ルイスを何とか守ってやらんといかんな。よし、俺が今から中国まで行ってやろう。農場や牧場及びセリーナの世話はソフィアに任せ、石油事業は娘のマリアに任せよう。

ルイスは妻のソフィア、娘のマリアに連絡を取り、事情を説明した。

車に乗ろうとするとエリザベスがちゃっかりと先回りして助手席に座っている。アンヘルとの電話を盗み聞きしていたのだ。

ヘクター:エリザベス。中国に連れて行ってはやるが、お前は単なる愛人のひとりに過ぎないんだからな。俺の女房づらをするなよ。

エリザベス:分かっているわ。さっき旦那にはヘクターから1,000万ドルで買われたと言っておいたし、お金も執事に預けておいたから旦那も何も言わないわ。私も知らない土地に行ってみたいわ。

ヘクターとエリザベスはダラスの飛行場まで行き、とりあえず南京を目指した。ルイスと合流できるのは果たして何時のことになるやら。

☆ルイスと摩梭(モソ)族との交流
1935年5月31日金曜日の朝、雲南省の摩梭(モソ)族の村、落水下村では、族長ナムゾン(40歳)の家では忙しさが漂っていた。族長の妻ラモ(36歳)は、朝食の準備を指揮し、村の女性たちが腕を振るっていた。その中でルイスはラモの指示に従い、力を貸して、料理の手伝いをしていた。

朝食が終わると、ナムゾンとラモの息子ソナム(12歳)が、訪れた一行をグムニコ洞窟へ連れて行こうと提案し、特に王光美(ワン・グアンメイ)(14歳)と親しげに話をしていた。ルイスが洞窟について問いかけると、宋慶齢(ソン・チンリン)(38歳)が熱心に説明し始めた。

「グムニコ洞窟は格姆女神山の頂上付近にあり、その名は“女神が住む場所”を意味しています。洞窟は石灰岩の壮大な構造と美しい幾何学模様で知られ、モソ族にとって宗教的な意味合いを持っています」と彼女は続けた。

ラモは宋慶齢の詳細な説明に驚き、彼女の知識の深さを賞賛した。宋慶齢は自身の学術的背景を明かし、以前からモソ族の文化に興味を持っていたことを語った。

この光景は、異文化の交流と共感の瞬間を捉えていた。ルイスは宋慶齢の知性に心を奪われつつも、その感情を言葉にせず、内心で彼女の魅力を噛み締めていた。

1935年5月31日、ルイスとその同行者たちは、雲南省にある格姆女神山(ゲームー ニューシェン シャン)の山頂付近へと足を踏み入れていた。彼の案内人は12歳のソナムであり、捕虜となった周恩来(ジョウ・エンライ)(37歳)、宋慶齢(ソン・チンリン)(42歳)、王光美(ワン・グアンメイ)(14歳)、賀子珍(ホ・ズージェン)(25歳)が彼に従っていた。

彼らは山の自然の美しさに圧倒されながらも、警戒心を解かずに進んでいた。しかし、捕虜兵たちが少しずつ遅れを取り始め、ルイスとソナムとの間には50メートルほどの距離が開いていた。ルイスは彼らが追いつくのを待つために立ち止まり、周囲の景色に目を向けていた。

その時、突然、山深い唸り声が響き渡り、その後には悲鳴が続いた。ルイスはすぐに虎かクマの仕業と確信し、ライフルを手に取り声の方向へ急いだ。到着すると、そこには身長3メートルほどの巨大なクマが、捕虜兵たちを襲っている最中だった。

クマはすでに周恩来を襲い、彼は無力に地面に倒れていた。女性たちは恐怖に駆られて逃げ惑っていたが、クマの手が賀子珍(ホ・ズージェン)の顔目がけて振り下ろされようとしたその瞬間、ルイスのライフルが轟音を立てた。彼の放った銃弾はクマの眉間を正確に貫き、続く一発はクマの右目に命中した。クマは少しの間動きを止めた後、ゆっくりと倒れていった。

ルイスはすぐに女性たちの無事を確認し、その後周恩来の傷を調べた。クマの一撃によって彼は大きな怪我を負い、肋骨が何本か折れていたが、命に別状はない様子だった。

その間にソナムは村人に知らせに走り、程なく村人たちが救助に駆けつけた。彼らは周恩来とクマの死骸を村へと運び去った。

格姆女神山の山麓での緊迫した出来事の後、ルイスは周恩来を村人に任せ、3人の女性捕虜兵と共に周囲の山林を探索し始めた。目的は、周の治療に役立つかもしれない薬草やハーブ、食用になる山菜を探すことだった。

山の深部へと足を踏み入れた彼らは、自然豊かな環境の中で、さまざまな薬草やハーブを発見した。彼らが見つけたものには、消炎作用があるクマツヅラや傷の治癒を助けるヨモギ、消化を助けるセイヨウノコギリソウなどが含まれていた。また、食用となるタラの芽や山ウドも見つかった。

この探索中、ルイスは女性たちに自然の中でのサバイバルスキルや植物の知識を伝えた。特に賀子珍(ホ・ズージェン)との交流は、彼女の命を救ったことで特別なものとなっていた。ルイスは彼女に優しく接し、彼女も徐々にルイスに心を開いていった。彼らの間には、共に危険を乗り越えた経験を通じて、互いの理解と信頼が深まっていった。

この一連の出来事は、ルイスと女性たちにとって自然の中での一種の絆を築く貴重な経験となり、彼女たちの中にはルイスへの新たな尊敬の念が芽生えた。特に賀子珍(ホ・ズージェン)は、ルイスに対する感謝の気持ちを深く持ち続けることとなった。この山での時間は、彼ら全員にとって忘れられない思い出となり、今後の彼らの関係にも大きな影響を及ぼすこととなる。

この出来事は、自然の厳しさと、山野での予期せぬ危険に常に備える必要性を改めてルイスたちに思い知らせた。恐ろしさと同時に、彼らは人間と自然の関わりの深さを実感し、この冒険が彼らの記憶に深く刻まれることとなった。

☆午前11時:落水下村族長ナムゾン(40歳)の家の離れ
離れで療養している周恩来(ジョウ・エンライ)(37歳)の傷を調べにルイスが訪れ、傷口に山で採集した幾つかの薬草、ハーブを塗った。主なものはよもぎを除けば次の3種類である。

1.アロエベラ: アロエベラのジェルには、抗炎症作用や皮膚の修復を助ける効果がある。また、軽度の火傷や擦り傷に対しても効果的です。湿度が高く温暖な環境に適しているため、山岳地帯のより暖かい斜面や渓谷部で見つかる可能性がある。

2.カレンデュラ「マリーゴールド」: カレンデュラは、傷の治癒を促進し、炎症を和らげる効果があります。皮膚の問題に広く使われ、敏感肌にも優しい特性を持ちます。日当たりの良い開けた場所に生育することが多いため、山の斜面や草地で見つけることができる。

3.ハマメリス「ウィッチヘーゼル」: このハーブは、その強い収斂作用「組織を収縮させる作用」で知られており、切り傷や擦り傷に対して効果的である。また、肌の炎症を和らげ、出血を止めるのにも役立つ。森林の縁や林道沿いなど、湿度が高く半日陰の場所に自生していることが多いので、山中の適切な場所で見つかる可能性がある。

ルイスの治療の様子を賀子珍(ホ・ズージェン)は熱心に観察し、ノートに書き留めていた。案外彼女はこう言った医学・薬学の方面に向いているのかも知れぬ。ルイスは頭の片隅にその事実をしまい込んでおいた。

ルイスは格姆女神山(ゲームー ニューシェン シャン)のような自然豊かな山岳地帯で食用となる数々の山菜やきのこなどを採集した。特に永寧地域落水下村、落水上村の近くの山麓では松茸が採れると聞いていたこともあり、松茸も採集した。

大量に採集したものは次の通りである。

1.松茸「Tricholoma matsutake」: この地域で特に価値の高い、香り豊かな高級きのこである。

2.ワラビ: 春によく見られる山菜で、茹でてから食べることが多い。

3.タラの芽: 春先に収穫される若芽で、天ぷらや炒め物に使われる。

4.フキノトウ: 春に出るフキの芽で、苦味が特徴的である。天ぷらや味噌汁に用いられる。

5.シイタケ「Lentinula edodes」: 森林でよく見られる食用きのこで、様々な料理に使われる。

6.エノキタケ「Flammulina velutipes」: 木の根元などで見られ、独特の食感が楽しむことが出来る。

7.クレソン: 清流や湿地に生育する野菜で、サラダやスープに適している。

族長の妻ラモを訪れ、ルイスたちが採集した食用となる山菜やきのこなど以上のものを渡した。ラモは大喜びしてくれ、ルイスのほっぺたにちゅっとキスをしてくれた。その様子を捕虜の女性たちが複雑そうな目で見つめていたことをルイスは知らなかった。

☆捕虜の女性兵3人の会話
宋慶齢(ソン・チンリン)(42歳):ルイスは能天気に格姆女神山(ゲームー ニューシェン シャン)探索などをしているが、彼は世界情勢を知らないのだろうか?

王光美(ワン・グアンメイ)(14歳):私がルイスにそれとなく聞いたところでは一切何も知らない様子です。

賀子珍(ホ・ズージェン)(25歳):満州事変があったことも知らなければ、満州が今日本の統治下にあることも知らないようです。

宋慶齢(ソン・チンリン)(42歳):共産党も国民党も互いに争っている場合ではあるまい。中国全国民が一致団結して日本に対決せねばならない。

賀子珍(ホ・ズージェン)(25歳):聞けばルイスは"毛沢東同士を暗殺せよ"とフランクリン・D・ルーズベルト大統領直々に命令されたそうです。

王光美(ワン・グアンメイ)(14歳):ルイスは催涙弾を利用し、我々を眠らせた上で飛行機に拘束して閉じ込めた。

賀子珍(ホ・ズージェン)(25歳):その時に、毛沢東同士を殺そうと思えば出来たにも関わらず殺さなかった。しかし、ジェームズ大佐が機関銃で毛沢東同士を撃ち殺した。

宋慶齢(ソン・チンリン)(42歳):今までのルイスの対応を見る限り、彼はただの暗殺者とは思えない。

賀子珍(ホ・ズージェン)(25歳):我々の思想を彼に説き、味方に引き入れたいと思いますが如何ですか?

宋慶齢(ソン・チンリン)(42歳):そこまでは無理だろう。世界情勢を説明してやるのが良いと思う。彼の資質は優れているから、我々の同士とはならないとしても日本の味方は間違ってもするまい。抗日で一致すれば良い。

全員が同意し、宋慶齢がルイスに満州事変の経緯を説明することになった。彼女はルイスが共感を示すことを期待して、満州事変の背景、日本の侵略行為、中国の対応について丁寧に解説することを決意した。

この会話は、女性兵士たちがルイスに対して新たな関わりを模索し、彼に世界情勢の重要性を理解させようとする一環として展開されました。彼女たちは、ルイスに真実を教え、中国の抵抗運動への共感を促そうとしていました。

今回はここまでにいたしましょう。次回をお楽しみに。

 

後書き

第一章第8話は、ルイスの中国での冒険記の中でも特に記憶に残る一節である。摩梭族の村周辺、特に格姆女神山とグムニコ洞窟の探索は、彼らにとって自然の脅威を身を持って知る貴重な機会となった。突然熊に襲われ、周恩来が大怪我を負う。危うく熊に殺されそうになった賀子珍(ホ・ズージェン)をルイスが助けたことで、賀子珍(ホ・ズージェン)は何時しかルイスを慕うようになった。残りの者たちも偏見「アメリカ・マフィア上がりのギャング」を捨て去り、ルイスを信頼するようになる契機となった。