第一章第3話ルイスと朱徳軍瀘定橋南部で激突する

 

前書き

第3話は、過酷な状況の中での勇気と戦略、そして友情と裏切りが交錯する、息をのむような物語です。ルイスとその仲間たちの冒険は、読者にとって予測不可能な展開を提供し、歴史的背景に深い色彩を加えます。

 

本文

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登場人物「1935年1月1日時点」  

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主人公ルイス・ディアンジェロ(18歳):元マフィアのアンダーボス。マフィアのボス:エドゥアルドの最愛の妻セリーナ・マッキンノン(27歳)を奪ったことで、アメリカを追われ、中国に逃れる。弟アンヘルの計画「中国共産党最高指導者毛沢東暗殺」に乗っかり、成功した。その功績を評価され、国民党政府主席蒋介石から、巴蜀・雲南の軍政長官に任命される。

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ルイスの資金

敵対するニューヨーク・マフィア から奪った朱堤銀200億両「日本円で400兆円」という莫大な隠し財産を為替で持っている。
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ルイスの家族 
イタリア系の不法移民で、彼らの家族名は「ディアンジェロ」です。以下はディアンジェロ家の家族構成です: 
・父親ヘクター・ハミルトン(28歳)「10歳の若返り」:次男アンヘルから10億ドルの資金を貰い、テキサスで石油と天然ガスを発掘した。 

・弟アンヘル・ディアンジェロ16歳:ハーバーテックソリューションズ(HTS)の会長兼CEO。ル・クリスタル・ホテル所有「200万ドルで居抜き購入」。アンヘル航空㈱会長兼CEO「資本金10億ドル」。ヴィヴィ警備会社「資本金1千万ドル」オーナー。軍事産業への共同投資60億ドル「配当金:1,929万ドル/ 週」。現預金50億ドル「シャドウ・ネクサスから略奪」と債権「総額不明」所有。
マリア・エバ・ドゥアルテ16歳。アンヘルの妻。AMレジャー総合開発㈱「資本金1億ドル」社長兼COO。悪魔のように可愛い女。 
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ヘクターの資金7億4,060万ドル。前々回の最後で石油精製会社の資本金を5千万ドルとして計上した。別途にエドゥワルドから50億ドルの資金を預かる。

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真珠湾基地責任者と家族
・ジェームズ・ハリントン大佐: 真珠湾基地の責任者。45歳。長年の軍歴を持ち、特に戦略的思考と組織運営に長けている。
・マーガレット・ハリントン(42歳): ジェームズの妻。地域社会でのボランティア活動に積極的で、特に子供たちの教育と福祉に関心を持っている。
・エリザベス・ハリントン(20歳): 長女。大学で政治学を学びながら、軍事基地内での青少年プログラムに参加している。
・ウィリアム・ハリントン(18歳): 長男。大学進学を控え、将来は海軍に入隊することを夢見ている。

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マフィアの組織図「パブリックドメイン」


紅軍の長征


瀘定橋

中国全土

山川出版社「地域の世界史9……市場の世界史」P171

朝日出版社「西南シルクロード紀行」宍戸茂著。P10

朝日出版社「西南シルクロード紀行」宍戸茂著。P11

朝日出版社「西南シルクロード紀行」宍戸茂著。P49

麗江古城

☆ヘクターの動向
1935年5月11日土曜日午前10時:カーペンター家の豪邸「ダラス郊外」
ヘクターはソフィアと一緒にカーペンター家に結婚の報告を行った。すでに婚姻届をダラス市役所に提出した後である。

ヘクター、ソフィア:私達は結婚の決意を定めました。どうかお許しください。

エドワード・カーペンター:ソフィア。お前は何を血迷っているのだ。7月14日日曜日にジェームズ・ハミルトンと結婚式を上げることになっているだろう。今更中止など出来るものか。

ソフィア:ジェームズとは別れたわ。彼が踊り子と浮気したのよ。

母親のキャサリンはジェームズの浮気を信じず、ハミルトン家に電話した。たまたま土曜日でジェームズは家にいた。

キャサリン:ソフィアが貴方と別れたと言うんだけど本当なの?

ジェームズ:残念ながら本当です。私がザ・ロケッツ(The Rockettes) のダンサーと密会しているところを嗅ぎつけられました。彼女の知り合いのルイスという男に現場を押さえられたのです。

キャサリン:それでどうするつもりなの?

ジェームズ:私はソフィアに謝ろうとしたのですが、話も聞いてもらえませんでした。

キャサリン:ソフィアが許せば貴方はソフィアとよりを戻すつもりなのね。

ジェームズ:そのつもりでしたが、ソフィアに拒否されました。残念ですが、婚約は破棄します。

キャサリンはガチャンと電話を切り、ヒステリックにがなり立てた。

キャサリン:私は絶対に反対よ。二人の結婚は許しません。

ソフィアが必死になり、父親のエドワードを説得します。

ソフィア:お父さん。お願い。ヘクターとの結婚を許して下さい。

エドワード:ソフィア。お前はヘクターの素性を知っているのか?ヘクターはイタリアの不法移民だぞ。イタリアのシチリア島に位置する都市アグリジェント(Agrigento)の出身でヘクター・ディアンジェロ(38歳)と言うのが本名だ。離婚して独身だが、先妻との間に子供が3人いる。

ソフィア:彼から聞いて知っているわ。お父さんにお金を払ってアメリカ国籍を取得したんでしょう。ヘクター・ハミルトン(24歳)と言う名前になったと聞いたわ。でもおかしいわね。浮気者のジェームズ・ハミルトン(24歳)と同じ歳でしかも姓まで同じハミルトンだなんて。

エドワードはしどろもどろになり、その話を避けようとした。ソフィアはおかしいと直感し、更に父親を追求した。エドワードはついに白状した。

以前からソフィアの元婚約者ジェームズの父親から銀行業の苦境「借金50万ドル」を何とかして欲しいと頼まれていた。そこにヘクターのアメリカ国籍取得の申込みを受けてヘクターをジェームズの両親の実子として籍を入れる代わりに父親の借金50万ドルを肩代わりしてやることになったそうだ。

ソフィア:でもヘクターは100万ドル支払ったと言っていたわよ。差額の50万ドルはどうしたの?まさかお父さんがピンハネしたんじゃないでしょうね。

エドワード:ソフィア。お前とヘクターの結婚を認めるからそれ以上の追求は止めてくれ。

ソフィア:仕方がないわね。でもそうなると結婚式にはハミルトン家を呼ばないといけなくなるわね。この際そうするか。

ソフィアは父親の説得が上手く言ったので母親の説得はヘクターと父親に任せて、3人の同級生をそれぞれの自宅まで送り届けることにした。

☆ルイスと瀘定橋の塹壕:5月26日午後2時半
ルイスはジェームズと操縦を代わり、瀘定橋の西側にある険しい山岳、峡谷地帯を隈なく捜索した。ルイスの目は土草に覆われてはいるが鉄条網に守られた11本の塹壕を鋭く発見した。

やはり紅軍は此処にいた。紅軍も苦労して此処までたどり着いたのだろう。

☆ルイスが飛んでくるまでの紅軍と国民党軍の戦い「紅軍視点」

太陽がゆっくりと四川省の山岳地帯に昇り、瀘定橋の西側にある紅軍の塹壕からは、生き残りと決意に燃える兵士たちの姿が見えた。彼らは大渡河の渓谷の中、渓谷の両側にそびえる険しい山々と速い川の流れに囲まれた地に立ち、歴史の重圧を感じていた。この地形は、彼らにとって渡河や進軍における巨大な障害であり、最も重要な関門であった。

国民党の5万の兵による瀘定橋の死守は、紅軍にとって厳しい挑戦だった。橋の長さはわずか100メートルだが、その向こう側からは砲撃が雨あられと降り注いだ。紅軍は一キロメートルほど後退し、苦難の道を再び切り開くことを余儀なくされた。森林を切り開き、岩石を砕きながら塹壕を掘った。100メートルおきに10個の塹壕が並び、それぞれの塹壕には約3,000名の兵士が配置された。紅軍の兵は27,200名に減少していたが、その目は未だに戦いの炎を宿していた。

最前線には、過去にこの道を通って重慶へ行ったことのある朱徳将軍がいた。彼の存在は、兵士たちに勇気と安心を与え、彼らの決意を固めさせた。最後尾の塹壕には、毛沢東や周恩来などの幹部が揃っており、彼らの戦略的な思考がこの戦いを支えていた。

紅軍が塹壕を掘り進める中、大地は静かながらも緊張で響いた。空気は火薬の匂いと砲撃の音で満たされ、戦場の空は予期と不安で曇っていた。それでも、紅軍の兵士たちは、自らの信念と使命のために、山岳地帯の厳しい自然と敵の圧倒的な軍力に立ち向かった。彼らの勇気と犠牲は、ルイスが見ても立派なものであった。

☆朱徳将軍の突撃とルイスの戦い
大渡河のほとり、瀘定橋の前線で、朱徳将軍は敵の砲撃が一時的に中断したのを見て、決死隊を組織した。数十名の兵士たちは、塹壕から飛び出し、国民党本部への突撃を開始した。彼らの軍服は泥と汚れで覆われ、ヘルメットをかぶり、ライフルを手にしていた。彼らの表情は疲れ切っていたが、目の前の目標に向けての決意は揺るぎなかった。

その時、突如空から飛行機が現れ、先頭の兵士たちに機銃掃射を始めた。兵士たちは一旦塹壕に戻ったが、飛行機からの攻撃は致命的なものではなく、彼らは再び塹壕を飛び出し、瀘定橋を目指した。決死隊22名が先に橋を渡り、その後朱徳将軍以下の兵士たち2万7千名も続いた。最後に本部の200名が塹壕を出ようとすると、再び飛行機が現れた。ジェームズが見事な技術で飛行機を操り、10番目の最後尾の塹壕の前に着陸させた。

ルイスは塹壕に入ると宣言し、飛行機からは白い煙が放出され、紅軍200名の視界は遮られた。この間に、ルイスは素手で200名の兵士を次々と拘束し始めた。彼は素早く動き、兵士たちを一人ずつ飛行機に乗せていった。この無慈悲でありながら巧妙な戦術により、紅軍は一時的に動けなくなっていた。

最後には、ルイスと毛沢東との一騎打ちが発生した。二人の間の戦いは激しく、互いに熟練した戦闘技術を駆使していた。最終的に、ルイスが辛勝し、毛沢東を拘束した。ルイスの行動は計算されたもので、彼は戦術的な知恵と肉体的な力を見事に組み合わせた。

この壮絶な戦いの後、ルイスは毛沢東を含む200名の兵士を飛行機に乗せ、瀘定橋の戦場を離れた。彼の行動は、その後の紅軍にとって大きな打撃となった。

ルイスは彼らを収容するため、ロケット砲や機銃類を皆塹壕内に捨てた。捕虜たちの荷物も捨てさせ、自分たちが持っていた機関銃5丁と弾丸100万発だけは残しておいた。

燃料も残り少ないこともあり、宜賓イービンどころか西昌シーシャンへ行くのもおぼつかない。ルイスは金沙江「長江の主要な源流の一つ」が南から北へと180度大きく曲がる地点にある長江第一湾に向かうことを決意した。その辺りに国民党の薛岳が率いる中央軍が居ると考えたのだ。

ルイスが出発しようとした時、大事件が起きた。フランクリン・D・ルーズベルト大統領から毛沢東の暗殺命令をルイスとともに受けていたジェームズが毛沢東を機関銃で撃ち殺したのである。こうなると拘束されていた残りの者たちも黙ってはいない。全員ロープで拘束されていたが、必死の力を振り絞り、ルイスたち5名と大乱闘になった。ジェームズは彼らに押しつぶされ命を落とした。男たちの大半は飛行機を脱出し、ルイスが辛うじて拘束したのは女性兵士3名と男性兵士1名だけであった。

ルイスは大旋回して長江第一湾に向かった。

☆中国雲南省の玉龍納西族自治県:石鼓鎮シー・グゥ・ジェンでの朝
5月27日の早朝、ルイスたちは長江第一湾南側にある石鼓鎮シー・グゥ・ジェンに到着し、一面の広がる草原に飛行機を着陸させた。村はまだ静まり返っており、田んぼに出る村人の姿は見えなかった。彼らはジェームズを失った悲しみを背負いながらも、村長の家を探し出した。

村長の家に着くと、村長は温かく迎えてくれた。彼は中年の男性で、穏やかな口調と慈悲深い目を持つ人物だった。村長はルイスたち「ルイス、ジェームズの妻マーガレット・ハリントン(42歳)、長女エリザベス・ハリントン(20歳)、ウィリアム・ハリントン(18歳)」と捕虜4名「女性3名、男性1名」のために、簡素だが栄養豊かな朝食を用意してくれた。朝食には伝統的な雲南料理が含まれており、新鮮な野菜、地元産の米、そして数種の地元のハーブを使った料理が並んだ。

食卓では、ルイスたちと村長の間で会話が交わされた。ルイスは、彼らが辿ってきた困難な旅の話をした。村長は、彼らの冒険に同情を示し、石鼓鎮の平和な生活について語った。また、国民党の薛岳率いる中央軍が対岸の村へ向かったことをルイスたちに伝えた。

朝食の間、マーガレット・ハリントンと彼女の子供たちは、夫と父を失った悲しみを抱えつつも、村長の家庭的な雰囲気に少し安堵を感じていた。捕虜たちは当初警戒していたが、徐々に食事に手を伸ばし始め、その朝のひと時は予期せぬ和解の場となった。

食後、ルイスは村長に感謝を述べ、これからの行動計画について考え始めた。村長の情報により、ルイスたちは中央軍の動向について新たな手がかりを得たのだった。この朝食は、ルイスたちにとって困難な旅の中の一時的な安らぎとなり、彼らは次なる行動に向けて力を蓄えることができた。

村長の妻は王華ワン・ファと言い、地元の事情に精通し、34歳の年齢で豊富な経験と知識を持つ頼もしい女性であった。彼女は長身で逞しく強靭な肉体を持っているルイスに興味を持った。

ルイスは父や弟とは違い、寡黙な青年であったが王華ワン・ファのような快活な女性が好みであった。マーガレットも同じような性格であり、そのためルイスと仲良くなったのだが、ジェームズの死を切っ掛けとして彼女たちはハワイに帰国することを決心していた。子供たち二人の望みでもある。

王華ワン・ファは片言の会話を身振り手振りを交えて行い、ルイスの希望が国民軍と合流することにあると知った。彼女は亭主の村長の了解を得て、渡し船でルイスたちを対岸の村まで案内することになった。対岸の村は沙末碧村シャーモービー・ツゥンと言い、石鼓鎮シー・グゥ・ジェンよりはかなり小さな村である。

王華ワン・ファの案内
王華ワン・ファは朝食後ルイスを連れて石鼓鎮シー・グゥ・ジェンの町並みを案内してくれた。

石鼓鎮シー・グゥ・ジェンの風景は、中国雲南省の自然と文化が融合した生活のパノラマを展開しているように思える。複雑な山脈が背後にそびえ、その山々はさまざまな色合いの緑と灰色の岩肌で構成されている。一部の山頂には雪がわずかに残り、冷涼な気候を思わせる。

中央に位置するのは、川が蛇行しながら流れる平和な光景で、その水面は穏やかであり、周囲の景色を反射している。川の両岸には、緑豊かな樹木が茂り、平和な自然環境を提供している。

王華ワン・ファとルイスの前には、石鼓鎮シー・グゥ・ジェンの村が広がっており、伝統的な灰色の屋根が段々に並ぶ家々が見える。家々の間には、黄色い花が咲く菜の花畑が広がっており、色彩のコントラストが鮮やかである。村はその地形に沿って自然に配置されており、人々が自然の恵みと調和して生活している様子がうかがえる。

この景色は玉龍納西族自治県が持つ豊かな自然環境と、そこで営まれる伝統的な生活様式を表現しており、雲南省の魅力的な一面を示している。

今回はここまでにいたしましょう。次回をお楽しみに。

 

用語解説

 

長江第一湾

長江第一湾は、中国雲南省麗江市玉竜ナシ族自治県の石鼓鎮に位置しています。この場所は、「世界の屋根」と呼ばれる青海チベット高原から勢いよく流れる長江が、雲南省北西部を流れる際にV字を描くように大きく曲がる点であり、非常に特徴的な地形を形成しています。長江第一湾は、その壮大な自然景観で知られ、多くの観光客に愛されています。

この地域は、長江が瀾滄江、怒江と並んで横断山脈の高山深谷の中を流れる点でも注目されています。特に、麗江県石鼓鎮における長江のこの部分は、万里の長江が「世界の屋根」である青蔵高原から流れ下り、ここで初めて大きな湾曲を見せるため、「第一湾」と呼ばれています。

長江第一湾の周辺地域は、肥沃な土地と穏やかな気候に恵まれ、農業が盛んであり、美しい自然とともに地元の文化や伝統も体験することができます。また、この地域は近代史においても重要な役割を果たしており、中国共産党の長征の途中でこの岸を渡り、長江を越えることに成功した地点としても知られています。長江第一湾を一望できる丘には、その記念碑が建てられています。

このように、長江第一湾はその自然の美しさだけでなく、歴史的な意義も併せ持つ特別な場所です。その絶景と歴史的背景は、訪れる人々に深い印象を与えることでしょう。

 

後書き

第3話の終わりには、読者はルイスと朱徳軍の間の激しい戦いの結果とその後の影響を目の当たりにします。このエピソードは、強さと決断力、そして人間性の深淵を探る物語として、読者に強い印象を残します。