古都のブログ小説 京の鐘929

 

 

 

 前唄のあと、本歌になり、秋山がおわらの舞納め用に作詞

 していた、おわらの二作目の新作が流れ出した。

 

 

  君のみ胸に 埋めたうちの

            思いしらずの オワラ 憎い人

 

 女子大生の三人が揃って感動の拍手と歓声を上げた。

 

 

 

「やっぱ、せんせ、頭いいわ」

 穂香の弾んだ声が被さった。

 志乃が耳を赤く染め、両手で顔を覆った。

 

 

 

「でも、せんせ、自分の作詞した唄を志乃姫ちゃんに

 歌わせるなんて、何を考えているのかしらん」

 奈菜がタイミングを計らって口を差した。

 

 

 

 医師が秋山の様子を伺っていたが、何も変化が見られず、 

 肩を落とした。

 

 

 

 志乃が医師とは反対側の窓際に来て、尚も流れている

 音曲に合わせ、おわらを舞い始めた。

 

 

 

 医師もナースも無言で、志乃の舞を凝視した。

 

 

 

 志乃の品格のある優雅な舞がサビの部分に来ると、

 秋山の瞼が微かに動き出した。

 

 

 

 右手が何かを探るように感じで動き出した。

 

 

 

 「やったー」

 穂香のバカでかい声で、医師とナースが目を剥いた。

 

 

 

 だが、志乃が静々と舞続けていると、確実に音曲に

 合わせ、秋山の両手が軽くリズムを取っていた。

 

 

 

 と同時に、目が微かに開きかけた。

 更に続いて、眩しそうに瞼を瞬いた。

 

 

 

 小夜が素早く、カーテンを引いて室内を暗くした。

 秋山の目が薄く開き出した。

 

 

 

 息をする音が酸素と混じって漏れて出た。

 志乃が舞をやめ、秋山の左手を取り、さすり始め出した。

 

 

 

 医師が、それが良いよと言うように頷き、これで大丈夫

 との思いを抱かせるような気がして

 志乃に安堵の思いを

 抱かせた。

 

 

 

 穂香が志乃を誘い、奈菜と小夜が肩を抱き合い、

 息を殺して忍び泣いた。

 

 

 

 間もなく、ナースが二人、医療用装置車を押してやって

 来た。

 

 

 

 一旦、志乃たちに席を外すように言って、器具を取り付け

 始めた。

 

 

 

 志乃たちが部屋から離れがたく、ドアの前で立ち止まり、 

 屋内の物音に聞き耳を立てたが、

 何一つ物音は聞こえて

 来なかった。

 

 

 

 不安と安堵の入り交ざった時間が経った。

 

 

 

 「小夜ちゃんには本当にお世話になりました。

 ありがとうね」

 志乃の弱々しいが、心からの感謝の意が皆に伝わり、

 穂香が誰より先に肩を揺らした。

 

 

 

「多分、今、先生の目覚めが本物かどうかを確めていると

 思うの」

 小夜が小声で囁いた。

 

 

      古都の徒然 夢って・・!(^^)!

 

 

 皆さまは子供の頃、将来、何になりたいかと問われ、

 なんと答えていましたか?

 

 

   現代の子も、

 ひと昔前には圧倒的に男の子はプロ野球選手だった

 気がしますが、

 最近はサッカーも入って来て、相変わらず

 スポーッ選手の時代が長かった

 感じがします。

 

 

 女の子は何になりたかったのかな・・残念ですが興味が

 なかったので、全然、知りませんでしたが・・(__)。

 

 

 私は何度も、この欄で記事に書いているので、

 ご存じの方も多いかと思いますが、

 30代まで、すっかり忘れていて、同窓会の夜に

 同席した隣の女性が

 当時の卒業文集を持って来て、

 私に・・君は放送局に入って、番組作りをしてみたいと

 書いてあったのを知らされ、

 啞然!

 

 

   まったく意表をつく話に、オタオタしているのを横目に、

 喝采を浴びて得意顔の女性に・・むっ

 

 

 私の場合は何も本気で書いた分けではないのですが、

 結句、

 書いたものと似たことになっただけで・・

 

 

 それも、

 色々曲折があってのことで・・始めからすっきり

 その職業に付いた分けではなく、

 また、放送局でも民間放送で、しかも、企画・構成・

 演出する部局でもありませんので、

 似たような制作も手に

 したことはもありましたが、

 それが、たまたま、そうなっただけで、希望して何かを

 制作したわけでもありませんし・・

 

 

 これで夢が叶ったと言うのには、少し無理があり・・

 

 

 でも

 報道の仕事はやりがいのある職場で、

 記事を書くのも、インターをとるのも、映像撮影も

 大好きなので、文句は言え

 ません・・

 

 

 もう一度、

 生まれ変わっても、報道に席を置きたいと思います。

 たぶん、

 私の性にあっているのかも知れませんね。

 

 

 と、言っても、

 報道意外に道はなかったかと自問すると、

 他にも沢山

 やりたかったことがあり、

 報道以外に道はないとは思っていません。

 

 

 例えば、

 自分の好きな学問の道へはかなりの部分、

 今も未練があります(笑)

 

 

 でも

 自分の研究テーマを講義室で学生たちに話す快感は

 例えようもないもので、

 タイミングがあっていれば、大学に残ることも出来た

 のですが・・ 

 

 

 恩師が何度も再起を待つと言われましたが

 長い闘病生活では

 先生の希望に添えず、残念ながら・・

 残念と言えば、本心、残念ではありましたが・・

 

 

 でも、報道の道へ入ると、見るもの、聞くもの、

 すべてが

 目新しくて、好奇心を掻き立てられたことは間違い

 ありません。

 

 

 社会の木鐸とは言えませんが、

 世の乱を制し、国民にミス・リードすることなく、

 福を呼ぶ記事だけ書けるなら、

 良いのですが・・

 

 

 世の中、そんなに甘いものではありません。

 

 

 およそ、望みと言うものは、

 考えているうちが花で、実現すると、大したことでは

 ないもので・・

 

 

 物書きも、ほんの少しだけ、高い評価を受けた後は

 もしかして・・と

 泡沫に夢に浸ったことも有りましたが、

 若さゆえに、

 原稿依頼を待つだけの作家生活に未練が無く

 さっさと切り替えの速さが

 わが身を救った気がして、悔いはありませんでしたね。

 

 

 何事も

 あまり、目的のために身を犠牲にしてまで、

 やるものではないと言うのが、今の私の素朴な思いです。

 

 

 でも、大谷翔平さんのように、夢を実現し、幸せに

 なっているなら、

 それはそれで、拍手したい思いであることも一面

 事実です。

 

 

 親が自分の果たせなかった夢を子に託すのは本末転倒

 かも知れませんし・・

   子がお父さんみたいになりたいと言うのなら、

 それを拒む必要も当然、ありませんし・・

 これは難しい話ですね。

 

 

 結句、

 人には色々の考え方があるので、一面的に決めつける

 のは避けますが、

 せめて、悔のない人生を送って欲しいのが

 本音です。

 

 

 今日の古都の徒然は

 私の本音が出ているケースとして稀有なものと

 なりそうで・・(笑)

 自分の為の永久保存版かも‥(笑)