古都のブログ小説 京の鐘916

 

 

 

 特別に許された幹部たちが一人舞の創作に四苦八苦して

 いる間に、12月を迎え、穂香が先ず音を上げ、

 次いで彩に泣きが入った。

 

 

 

 そこで、初めて、志乃が自分の新舞を含め五人分の

 オワラを創作してあったとの報告を受け、

 泣き虫の穂香だけでなく、ほぼ全員が棒泣きとなった。

 

 

 

 涙を見せなかったのは志乃とN大の小夜の二人だけで

 あった。

 

 

 

 その日から、家元の白河流の稽古場で初稽古が始まった。

 

 

 

 始めに志乃が新作の一人舞で、初恋の恋模様を、

 控えめな仕草としっとりとした舞に乗せ、

 同級生たちと家元の沙織子や筆頭師範の沙緒らを魅了

 した。

 

 

 

 殊に、腰を落として片膝を地につけ、

 恋する男を見上げる振りに、沙織子がすっかり嵌ってい

 た。

 

 

 

 舞い終えたあと、始めに口を利いた沙織子が

「七代目、この舞、うちにくれない」

 と、声高に言ったのには沙緒や志乃が一番驚き、

 同級生らを困惑させた。

 

 

 

「お家元さま、それは無理な話でしょう。これはあくまで

 初恋の舞ですよ。酷い。それを言うなら、

 うちがもらいたいもので・・」

 日頃、口数の少ない沙緒が、とがった物言いに一同、

 啞然としたものだ。

 

 

 

 学生たちが一斉に沙緒を見つめたため、はっとして我に

 返った沙緒が両手で顔を負い、素早くその場を

 立ち去った。

 

 

 

 家元の沙織子がその背に声をかけたが、沙緒は戻って

 来なかった。

 

 

 

 残った学生たちは唯、呆然として口もきけず、

 互いに顔を見合わせ、肯き合ったまま口が利けなかった。

 

 

 

 志乃も凍り付いたその場の雰囲気に息を呑み、

 返す言葉に詰まり、沙織子を見つめ直した。

 少し落ち着いた沙織子が

「沙緒ちゃんには珍しいことで、私にもどういっていいか

 分からへん。こないことになるなんて、志乃ちゃん、

 どうするのよ。うちかて我を忘れて、あらぬことを

 口にするなんて、恥ずかし過ぎ・・」

 今一度、顔を覆った。

 

 

 

 暫く誰からも声がなかった。

 

 やがて、徐に志乃が重い口を開いた。

 

「何か、うちがしたのかしらん。どないしょ。うち、

 何をどうしていいやら・・。奈菜ちゃん、何かゆうて」

 菜奈に縋った。

 

 

 

 奈菜も戸惑いを隠さず、

「志乃ちゃんの生きざまからすると、この一人舞の

 積極的な、おなごの恋心が伝わって来て、

 せつのうて、

 たまらへん。それだけに、うちも、どないゆうて、

 いいやら、さっぱり分からへん」

 三者三様の意味のない声だけの、やりとりであった。

 

 

     古都の徒然 科学の実験競技の・・

 

 

 

   昨夜のNHKの「魔改造の夜」で、勝利者と敗者の差が

 あり過ぎて、無様に負けたチームの涙が

 勝利社の流す涙に比べて

 哀れ過ぎて・・

 

 

 この世は実力社会とは言いますが、

 一見、この番組ほど熾烈なものはありません。

 

 

 子供の遊びのように見えて

 その実、大の大人がまるで命を削るような戦いに

 臨む姿勢に先ず感動します。

 

  

 ここで、この番組の内容を簡単にご紹介しますね。

 

 

 主催するNHKから出されるスピードを競う課題に対して、

 挑戦したい

 会社や学校などで10人程度の参加者がひとつの組を

 作って、

 最優秀の製品を製作し、結果を争うものです。

 

 

 ただのタイム・レースと違うのは

 ひと月余りで出された命題に応えるため、あらゆる

 問題を解決し、

 大人の考える技術の制度の高さを競う、まじめな

 人生ドラマであることです。

 

 

 でも、私は今回、番組を全てを見ていたわけではあり

 ません。

 半分、見るのを忘れていたのです( ;∀;)。

 

 

 今回の勝負は選ばれた3チームが動力付きの子猫を高い

 屋根裏から

 地上に落として、25m先のゴールまで走らせ、

 そのタイムを競うものです。

 

 

 参加した各チームとも、それまで、研究工夫して来た

 ユニークな製品で二回のタイムレースに

 挑んだものです。

 

 

 

 その結果

 残念ながら落下した衝撃で動力が故障したか、

 まったく

 走らない無様な負け方をしたチームもあれば

 

 

 せっかく、

 地上に、なんとか降りたのに、

 背負わせた落下傘が走る小猫に絡みきつき、動力を失い

 のろのろ走るのも途中で、止まってしまう  

 残念な結果となるチームもあって

 "(-""-)"

 

 

 まるで

 人生ゲームのような結果に涙するチームの皆さんの

 真剣さが余計、胸に沁みます。

 

 

 ここで、もう少し詳しい展開を説明すると、

 最もひどかった例は

 子猫の背中にサッカーボールのような丸いものを

 背負わせ、

 屋根裏から落とされると、まっさかさまに墜落して

 1mも進まないで勝負が決まってしまった

 勝負にならない展開に、

 それまでの苦労が水泡に帰した無念さに思わず、

 涙する大人の姿に‥

 私自身の・・人生と重ね合わせ・・

 辛かったですね。

 

 

 でも、落ち着いて考えて見ると、

 一体,このチームは何を考えているのか、理由がさっぱり

 分からないことです。

 

 

 サッカーボールにどんな浮力を期待したのか

 参加するまでに何度実験したのか、そして、その結果は

 どうだったのか

 そうゆう,途中の経過が知りたかったですね。

 それは最初から見なかった私の責任なのですが・・

 

 

 彼らは

 この悲惨な結果を全国の皆さんに晒されるのですから

 さぞかし、辛いものがあるかと思います。

 

 

 気の毒ですが、それが競技の厳しさと言うものです。

 

 

 科学者としての惨めな敗者となった原因を突き止め、

 名誉挽回の為にも次の機会に成果を上げて

 欲しいものです。

 

 

 一方、

 勝利者になったチームは子猫の背中に傘を逆さにした

 ようなものを

 背に負わせて浮力をつけ、

 高いところから落とすと、始めは頭を逆さに落ちながら

 途中から、浮力で頭が上になり

 腰が低くなってバランスを取り、着地に成功し、

 その後、コースをひた走り、 

 見事11秒36て゛優勝と成りました!(^^)! 

 

 

 お見事の一言ですが、明らかに、この社の企画力と

 実現向けての誠実さに

 誇っていい会社かと思います。

 

 

 因みに、番組では社名や学校名を隠して

 イニシアルで表示する方法で社の名誉が傷つかない

 よう配慮しているのですが

 

 なんとなく、私には分かるので、

 勝負に臨んだ社の中で社名を大きく傷つけたものも

 あれば、

 見事に2回とも大成功した社もあって、

 まさに悲喜こもごもで!(^^)!

 

 

 其処がこの番組の面白いところで、

 下手なドラマより遥かに真剣に、そして楽しく見る

 ことが出来て・・

 

 

 因みに今回、見事に成功したチームのS社は

 あの有名な

 ウォークマンを製造した会社で・・

 これは番組の中で、観戦者が口を滑らせたもので

 分かったのですが・・

 

 

 あの会社の研究室の名が挙がったのは仕方ないこと

 でしょうね。

 

 

 それにしても

 若者から中年男子までの苦闘の成果での嬉し涙と、

 敗者の悔し涙の競演が見事に

 描かれていて

 残酷ですが、久しぶりに心から楽しませてくれた

 終わり方が

 妙に心に残った一夜でした(笑)

 

 

 追記

 この番組は毎月最終木曜日に放送されています。