古都のブログ小説 京の鐘915

 

 

 

    全員に秋山の意図が知らされるのは早かった。

    皆、一様に歓喜の声を上げた。

 

 

 

 秋山が穂香や奈菜と小夜たち、上級者に一人舞を

 演じたい者は、

 自分で新たな振り付けを考えて見なさいとの言葉に、

 大きな歓喜と若干の不安の混ざった、ぎゃーっ、という

 不可思議な悲鳴が炸裂した。

 

 

 

 だが、その直後に穂香が、

「うちは到底、自前の一人舞の振り付けなど、考えたら、

 絶対、作れない。どうしよう」

 と、早々と泣きを入れた。

 

 

 

「なら、諦めるの」

 

「諦めたくない」

 

「でしょ。せんせは、其処を狙っているのでしょう」

 

「狙っても、何も浮かばなかったら、どうしょう」

 

「やる前から、諦めてどうするの」

 

 穂香と奈菜の尽き果てるともない、無駄な遣り取りが

 繰り広げられ、彩や小夜を呆れさせた。

 

 

 

 だが、いつもの稽古に加えて、新作を制作するのが

 いかに難しいことか、

 奈菜たちも、その難しさに頭を抱えだした。

 

 

 

 何を考えても、誰かの舞に似ているので、

 制作は自宅で考えるようにすることに決まった。

 

 

 

 それからは皆一様に深い悩みに落ち込んで行った。

 

 

 

 志乃は一人で、あっという間に五人分を創り上げたが、

 割と積極的な奈菜までが、

 途中、何度も根を上げていた。

 

 

 

 穂香の頬がげっそりやつれて来て、可愛い顔が泣き顔に

 なっていた。

 

 

 

 これで、新しい舞を生む苦しみを自らの身をもって、

 知るようになって、秋山が改めて上級者を集め、

「私が言った新作を創れとの真の意味がようやく分かった

 ようだな。これは私たちが立ち上がりに、

 いかに苦労して創作したかを、身をもって知ったこと

 だろう」

 一同、無言で肯くばかりだ。

 

 

 

 小夜が深いため息を漏らしたあと、

「初めて一人舞の創作の難しさを、本気で考えさせられ

 ました」

 

 

 

 日頃にない、か細い声で正直に辛さと苛立ちを口にした。

 

 

 

 一同、無言で、これに頷いた。

 

 

 

 菜奈も彩も

「出だしが旨く行ったかと思うと、続く舞に迷い、

 これがなんと解消すると、

 また、新たな迷いが生まれ、ホント、何度も、気が狂い

 そうになりました」

 五人が揃ってお手上げであることを正直に口にした。

 

 

      古都の徒然 木屋町通の料亭で・

 

   

 昨日、久しぶりに木屋町通の料亭で会食する機会があり

 懐かしい顔が揃い、

 談論風発で楽しい時を過ごしました。

 

 

 ただ、私がお酒が飲めないので、ノンアルコールビール

 か、末茶かを希望したのですが、

 あいにく、

 どちらも無いとの無常な返事に・・( ノД`)シクシク…

 

 

   確かに、以前も同じことを言って、二の句が告げられ

 なかったことを思い出しましたが、

 これが、四条通の高級料亭なら、客の好みを満たす

 のが当たり前で、

 当店では用意が出来ませんと、しらっと言う神経が

 分かりません。

 

 

 何かしら、客より自分の店が上だとの思いが隠れ

 潜んでいる気がします。

 

 

 京都と言う所は本当に摩訶不思議な街なのです。

 

 

 料亭に入るときは少し多めにご用意していた方が無難

 です。

 

 

 もしかしての場合はカードを忘れてはいけません。

 これが鉄則です(笑)。

 

 

 しかも、

 昨日の料理の辛いことと言ったら・・もうぅぅ(-_-;)。

 なにしろ

 お吸い物や水物など全て塩辛いのですから

 たまりません。

 

 

 多分

 先日、どこかで、

 100人を超す食中毒を起こした店があり、

 この二の舞は避けたいとの思いがあったのかも

 知れませんが・・

 

 

 子鮎の塩焼きは鴨川で釣ったものらしく、新鮮で

 見た目は美味しそうなのですが、

 案の定、これも塩分が多すぎて、何処を食べても

 塩の味がしみて・・もうぅ(-_-;)。

 

 

 そして、中を飛ばして、最後のご飯ですが、

 小さな茶わんですが、

 口が広い普通のもので、中には野菜の付味が効いた

 もので、割と美味しく頂きました(笑)。

 

 

 例の底に穴はありません。

 あれは細長い湯呑のような渋い茶碗に限りますので・・

 

 

 これが意外と美味しくて、お代わりをしたいところで

 時間が参りましたのと言葉に

 天を仰ぎ・・

 

 

 こんな店を何で選んだかな・・と

 でも

 先代の亭主とは仲良く付き合ったことがあり、

 若い者に声をかけると、

 委縮するからと言って、店を出て高瀬川沿いに

 小ぎれいな店を設け、

 安い価格で食が楽しめるのですが、

 洋風の造りなので、私好みではなく、今一なのが・・

 

 

 そして、

 色々ありましたが、楽しい会食が終わりました(笑)。