古都のブログ小説 京の鐘906

 

 

 先頭が変われば、必然的に各班の班長は前で舞う幹部の

 舞に従うことから、

 舞の方向付けが変わるのも大変だ。

 

 

 

 奈菜と小夜とでは基本的に歩幅が違い、

 しかも、小夜のテンポは、よく言えば優雅、悪く言えば、 

 のんびりと大きく異なる舞い方なので、

 背後に付く準幹部たちは、

 その都度、ほんの少しだが、テンポを速めたり、ゆっくり 

 したりと、それなりの苦労をしていることが、

 秋山の目にも映り、暫し天を仰いだ。

 

 

 

 

 それでも、

 小夜の舞はゆっくりと、平安神宮へ向かって進んでいた。

 

 

 

 

 一般の観衆の目には、その違いが分からないから、

 良いのだが、各班の班長や副班長らは、

 額や小鼻にうっすらと汗を

 かいていた。

 

 

 

 

 幸い、皆が編み笠を根深く被っているので、

 その違いは全く気付かなかった。

 

 

 

 

 小柄な小夜が見栄えを良くするため、舞う手足を大きく

 背伸びをするように伸ばして舞うので、

 見栄えがして、

 節目、節目に拍手が一段と高くなっていた。

 

 

 

 

 輿に乗る志乃が時おり振り返り、秋山を目で呼んでいた。

 これに応え、

 さり気に頷き、ゆっくりと馬体を揃えた。

 

 

 

 

「せんせ、うちも、ゆっくり休んだことで、

 体調が良くなり、せんせのお許るしを得られるなら、

 あの大きな応天門前で、

 京都新・おわらの目玉として、日舞・歌謡おわらを

 舞いたいのですが、如何でしょうか・・」

 秋山も予期せぬことではなかったが、唐突に飛び出した

 志乃の気持ちに沿ってやりたいとの思いが

 先行した。

 

 

 

 

 だが、志乃の体力は既に限界に近く、

 しかも、あの応天門前は滑りの悪い石の上なので

 答えに窮し、即答が出来なかった。

 

 

 

 

 暫しの沈黙の中で、志乃が息を凝らして、

 秋山の口元を、そっと見つめていた。

 「何を舞う」 

 秋山は志乃の思いを遂げさせて、やりたいとの思いが

 重なって、つい、甘い声をかけてしまった。

 

 

 

 

 「それは、うちに舞うことを前提にされてのことどすか」

 志乃の意気込みが伝わる素早い対応では

 あった。 

 

 

 

 

 「たとえば、短い舞を一幕、演ずるのなら、

  行けるかも知れんな」

 「せんせ、短いゆうても、ふた舞は必須で・・」

 「泣き所はそこだ。せめて幹部連が間の、ひと舞を

  中で舞ってくれれば、

  その間、志乃は休むことが出来るのだが・・

  小夜たちとそのへんのところはできているのか」

 

 

 

 

 「いえ、小夜ちゃんに、うちの舞に合わせた即興舞を

  お願いしたいのですが・・」

 「確かに、あの子なら、志乃の期待する舞と合致する

  かも知れんな」

  志乃の顔に赤身がさした。

 

 

      古都の徒然 宮沢エマさん最高!

 

 

   今年の朝ドラは役者たちの演技の旨さが際立つ素晴らしい

 作品になっています(#^^#)。

 

 

 中でも若手では先日も書きましたが、中田青渚さんの

 ベテランのような落ち着きと

 控えめな演技に感嘆したもので・・。

 

 

 今度は元々大好きだった宮澤エマさんの登場で、

 ドラマが一瞬にして、ビシッと引き締まるシーンに

 声も出ませんでした。

    

 

 彼女が登場しているシーンは一事が万事、旨過ぎて・・

 また、

 何処までも丁寧に仕上げてくる

 エマさんの芝居心の憎らしいほどの好演に助けられて、

 良い作品に仕上がっています。

 

 

 彼女の芸の旨さは何年か前の朝ドラで大阪の芸能会社で

 巻き起こす

 あの話、この話の中で登場し、

 また、彼女のラストシーンで場をしっかり

 引き締める技の冴えたことと

 言ったら・・もうぅぅ、

 最高でした。

 

 

 わたしはその前にNHKの番宣の役割で

 タモリ風の行動に関しても、絶品の唄声や人の気を

 反らさない気配り上手にも

 すっかり舞い上がった記憶があります。

 

 

 ああした気配り上手は本番には、しっかりいきて、

 彼女自身の思い描くシーンになっていると

 思います。

 

 

 そしてまた、

 今回のドラマでの彼女の面目躍如の演技は

 全編、冴え渡り

 どの回も油断できず、私はすっかりド坪に嵌った

 ようで、ひたすら感心するばかりで・・。

 

 

 昨日の名演技は散々、ヒロインの浜辺美波への悪態から

 一瞬にして

 彼女を優しく抱きしめ、本音を漏らすシーンの移行は

 ワンカットで撮ったはずで、

 流れに無駄がなく、エマさんの旨さをちゃんと

 見逃さなかった

 スタッフの技も冴えたもので・・。

 

 

 関西もこうした演出家を持たないと

 下手な人では、上手い役者を殺してしまいかねないので、

 今回は彼女も、

 多分、

 自分の演技の奥を覗いてくれているスタッフに

 感謝しているものと思います。

 

 

 なにせ、もう演技が終わったとみせて、目が次の

 演技の助走にはいる旨さは何度見ても

 嬉しくなります。

 

 

 彼女の旨さをいかしたドラマが生まれると

 いいのですが、このままでは

 いつまでも、わき役しかできない女優になってしまう

 のが悔しいですね。