古都のブログ小説 京の鐘906

 

 

 「無礼者奴」

 秋山の蛮声が轟いた。

 

 

 

 

 すぐ、これに反応したのは山田康則で

「列を妨害する者はただでは済まさん」

 馬上から吠えた。

 

 

 

 

 この制止命令は観衆を引き付け、飛び出して来たマニア

 たちは直ちに引っ込んだ。

 

 

 

 

 康則の怒声は本気度があったか、直ちに効いた。

 

 

 

 

 輿に乗っていた小夜が涙目で、康則に感謝の思いを

 込めて、両手を合わせた。

 

 

 

 

 康則も聊かの恥じらいを含んで、軽く会釈でこれを

 返した。

 秋山一人が苦虫を噛んでいた。 

 

 

 

 

 行列は一路、平安神宮への参道を歩み始めた。

 

 

 

 

 秋山の命で騎馬武者に

「列に割り込む無法者に対応して一層に警護に励め」

 との命に全員が声を揃え

「おーう」

 との蛮声を重ね、沿道からの拍手が沸き上がると、

 肩に力が入り、瞬時、勇ましき姿を見せつけ、

 けっこう自己満足に浸っていた。

 

 

 

 

 列は粛々と進み、奈菜の正確な舞にも声援と拍手が

 追いかけて来ると、

 少し目元に指を重ね控えめに、歓喜の思いを見せていた。

 

 

 

 

 唄無しのおわらの演奏が、

 ゆっくりと続き、誰もが道中の成功を確信していた。

 

 

 

 

 やがて列が平安神宮大鳥居あたりに差し掛かると

 志乃が姿を見せた。

 

 

 

 

 無論、厳重な警護の中に割り込んでいたので、

 暫くは志乃の姿は気づかれなかった。

 

 

 

 

 だが、参道と三条通の交錯する場所に着くと

 大きなうねりがあって、大歓声と、喝采が上がると、

 警護班のきびきびとした動きが遠目にも目立った。

 

 

 

 

 一旦、秋山の声で、列は一旦立ち止まり、

 輿から小夜が降りて、志乃がこれに乗り移った。

 

 

 

 

「志乃ちゃん、志乃姫様―」

 などの大歓声が志乃の元気回復を祝ってくれた。

 

 

 

 

 秋山も志乃の姿が目に入ると、胸が熱くなった。

 ここから、道中は終わりの助走に入った。

 

 

 

 

 沿道に、有料席から駆けつけた老人たちからも手が

 振られ、

 志乃が細かく礼を含んだ会釈を見せた。

 

 

 

 

 舞の先導役の菜奈に代わって小夜が小柄の身を大きく

 広げ、見事な姫舞を披露すると、

 奈菜に負けない歓声と、熱い拍手が木霊した。

 

 ♪ きたさのさ どっこいしょ のしよ

       唄われしょ わしゃ囃す 

 

 唄い手が前囃子を唄い始める。

 

 ♪ 三条通を おわらが通る

       泣いて 舞い手が袖絞る 

 

 

  

    古都の徒然 慶応 全国制覇に・・

 

 

 

 昨日は高校野球の全国大会で、見事、仙台育英を制して、

   107年ぶりで慶応が全国制覇を

 勝ち取りましたね。

 

 

 

 当初より、この結果を予測していましたが、

 予想外に、

 点を取り過ぎた感もする、ワンサイド・ゲーム

 となったのには、少々、

 参りましたが・・

 

 

 

 それにしても、慶応は春の選抜で敗北した育英に

 8-2と段ちの勝利で、

 栄誉に花を飾ったのには驚きと、彼らの逞しさに

 ほれぼれと見入っていたもので・・(笑)。

 

 

 

 これらとは別に

 今大会は敗者の泣きじゃくるシーンのあまりの多さに、

 腰が引けたもので、

 よくあんなに長く泣くシーンを披露する高校生には、

 近年、めったにお目にかからなかったので、

 多少の違和感が拭えず・・

 

 

 

 今年は涙の大安売りの感があって、なんとなく、

 敗者への喝采にも躊躇いがあり、

 もう少し、踏ん張れないかと思ったもので・・・

 

 

 

 だって、負けてから表彰式が終わっても、泣き止まない

 姿は過去にも記憶がないもので・・(~_~;)

 

 

 

 ですが、簡単に泣けるのも、良い時代になったものかも

 知れませんね。

 

  

 

 

   育英に関しては春に勝った相手にズタ負けを喫したのが

 屈辱的であったのかも知れませんが、

 勝負は常ならずで、ほんの少しのミスでも、気にすると

 勝ち運が逃げて行くのが常道なのですから・・

 

 

 

 

 はやく、気にせず立ち向かえば、道が開けることも

 有ります。

 

 

 

 

 二年生は、今年の敗戦を乗り越え、来春にも幸運の

 バラが咲くかも知れません。

 頑張ってくださいね。