古都のブログ小説 京の鐘899

 

 

 

 志乃の意識がはっきりしたのは府立医大の救急救命室に

 入った時であった。

 

 

 

 

 明らかに疲労の蓄積のような肩の重さが気になった。

 

 

 

 

 担当医は主事医ではなかったが、

 志乃の状況をよく理解していたようで、次々と新たな

 検査と同時に適切な対応策が行われ、

 体調回復に努めてくれた。

 

 

 

 

 わずか30分程度だが、素早い対応が志乃にある種の

 自信を齎せてくれた。

 

 

 

 

 何も考えていない時でも、

 志乃は確かに何かしら、先の見込みを常に探っていた

 ことが意識のどこかで無理を犯していたのを

 把握してはいなかったことだ。

 

 

 

 

 思えば、

 そうしたことが積み重なり、

 時には異常なほどのリアクションが生まれていたのだ。

 

 

 

 

 医師から

「それも一つの原因かもしれない」

 との返事もあり、何か予測外のことが発生すると過剰に

 反応する気質が、

 大きな騒ぎを引き起こすなら、

 以後の対応に気をつければ穏やかに収まる可能性が

 考えられ、気が幾らか楽になった。

 

 

 

 

 それと、常に志乃の側にいて、医師の気づかないことを

 助言する看護師の福井麻由子の存在も大きかった。

 

 

 

 

 また、志乃の身の安全に無償で尽くしてくれる

 中井恵美や里中緑ら級友の存在も忘れてはならない。

 

 

 

 

 同時に、

 自分が気づかない内に救いの手を差し出してくれる

 仲間がいることに深く感謝していた。

 

 

 

 

 一方、志乃の急病で突然、お濃の身代わりになった

 穂香は始めこそ緊張して身を固くしていたが、

 あちこちから、穂香を力づける声が飛び交うようになる

 と、途端に、いつもの癖が飛び出した。

 

 

 

 

 近場で声を上げてくれた同級生に

「おう、ありがと。わらわはお濃・・志乃姫様の代理で

 あるがな」

 などと気軽過ぎる対応に観客から笑いが一斉に上がり、

「こんどの濃姫様は随分とお気楽な方で・・」

 等の声にも満面に笑みを浮かべ、

「みな、大儀じゃ」

 などと、

 俄かお濃にすっかり満足して、右に左に手を振り撒き、

 笑いと喝采を浴びて得意満面であった。

 

 

 

 

 秋山は急ぎ、

 康則を呼んで穂香に、もう少し口を慎み、品格のある

 お濃になるよう伝えると、気落ちしたように俯いて、

 肩を震わせ涙を零し、康則を慌てさせた。

 

 

 

 

 脇にいた菜奈が穂香に声をかけ、

「ここでは、いつものようなお気軽な言葉は控え、いっそ、 

 笑顔だけで、いいのでは」

 との助言を耳にすると

「そうか、いつものように返事は止めて、笑顔と手を

 振るだけでいいのか」 

 との軽い乗りの返事に唖然とする菜奈を尻目に、

 次々と声がかかると、

 笑顔満載にして手を振り返し、またまた人気を独り

 占めにし、

 奈菜も康則も、何も言えず引き返した。

 

 

 

     古都の徒然 認知症って・・

 

 

 

 ある日、私のに長年の友の女性がやって来て、開口一番、

 わたし、認知症なの・・・

 と、豪快に言い放ったもので・・

 

 

 

 啞然とする私に関わらず、まるで機関銃のように

 言いたいことをしゃべりつくし、

 帰る・・と、言って、さっさと帰って行った友人に

 悲劇的な

 感じが全くなく、

 むしろ、以前と比べ、無口がおしゃべりになったこと

 と、控えめが大胆に・・

 外出中に何かにぶつかり、大けがをしたり、

 

 

 

 行動が大胆になり、いつも笑顔を振りまいて、

 誰からも愛されているのには・・

 まいりますが・・(__)。

 

 

 

 彼女が少しだけ悔しそうになるのは

 決まって・・せんせが、わたしより、若いってのが

 気に入らない、

 と言って膨れるのに

 気の利いた相槌が即座に返せないのが辛い。

 

 

 

 彼女が私のことを、せんせと呼ぶのは

 私の朗読劇団に入ってから、ヒロインやナレーターで

 活躍した経験と、

 わたしが作家で演出をする人だからと、

 勝手に言い出したもので、

 あれは唯一、彼女の自慢らしいのですが・・。

 

 

 

 そうして、忘れた頃に突然、電話して来て、

 わたし、認知症なのと・・

 

 

 

 話始めるのに、抵抗感はないのですが

 明日は我が身かと思うと、私はどんな人柄の人に変わる 

 のかが気になり、

 専門医に問うと、

 そんなことを言うかたに認知症は寄り付きませんと・・

 

 

 

 認知症なんて、私には関係ないと

 言い切っている方ほど・・落ち込むのが通例とか・・

 

 

 

 それと、

 日ごろ控えめで、言葉遣いがていねいな人ほど・・・

 

 

 

 心当たりがある方は、早めに、なんて関係ありませんよ。

 

 

 

 例外は常にあるだけだとの言葉に

 冷や汗が止まらなかったわたしは、どっちに代わるのか

 怖いような

 笑えるような・・もうぅぅぅ( ;∀;)

 

 

 

 でも、自分自身が気にならないのなら、

 一日、楽しく、暮らすことができるのは優しい旦那様が

 いてのことで

 そのことは彼女は毎回、夫自慢で話を切り上げ、

 さっさと帰って行く彼女をみていると

 最後は良き伴侶のいる家庭の幸せを見せられたようで

 ちと、

 悔し・・・"(-""-)"。

 

 うっ・・(-_-)。