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               古都のブログ小説 京の鐘898 

 

  

      城内アナンスの担当者が駆けつけて来て、

     今の状況を秋山から簡単に説明して貰えないか

     との話で、

      今少し待ってくれと言い差して、

     泣きじゃくる穂香ら身近な者と舞台にいる舞姫たちを

     励まし、

     受話器を持ったままの看護師の指示に従い、

     次々と応急対策を次々と取っていった。

 

 

 

 

  志乃の心境を考えれば、おのずと知れたことである。

 

 

 

 

 今は何より冷静になることだ。

 無駄に騒いで良い結論になるはずもない。

 志乃の心臓を止めてはならないことが全てであった。

 

 

 

 

 やがて、遠くから、救急の悲鳴に似たサイレンが自然に

   耳に入った。

 

 

 

 

   秋山がこの音を利用して、まもなく志乃を救急車に乗せ

 主治医のいる病院へ搬送されることと、

 今は病状が落ち着いてきていて、心配される状況から脱出

 できたかも知れないと言うと、

   一瞬、ざわめきがあったが、まもなく会場全体が

 静かになった。

 

 

 

 

 秋山がふと、腕時計をみると、未だそれほど時は経って

   いないのに気づいた。

 

 

 

 

 もしかして、今までに体験した志乃の病状の変化の中で、  

 救われる可能性が断トツに合ったものだ。

 

 

 

 

 秋山も、この思いに至った時、勝ったとの思いが胸の

 奥底からせり上がって来る事態が呑み

 込めて来た。

 

 

 

 

 堺町御門にいた警護班から

「車が向かって来ています」

 舌を噛みそうになりながらも、両の手を頭上で大きく

 交錯していた。

 

 

 

 

 「道を取れ! 」

  秋山が冷静に蛮声で、指揮を執った。

 

 

 

 

  白い影が堺町御門にちらっと姿を見せた。

 車を通す道が、あっという間に広がりを見せた。

 

 

 

 

 大粒の砂利道が、ひゅうひゅうと鳴きを上げながら

 近づいて来た。

 

 

 

 

 舞台に居た者が少しずつ降りて隙間を作った。

 

 

 

 

 身近にいた緊急救命士の三人が回りを囲み、

 志乃の開けた胸元を隠した。

 

 

 

 

 救急隊員が後部のドアを開け、ストレッチャ-を取り出し、 

 浮かせたまんま舞台に上がった。

 

 

 

 

「数値に移動はありません。いくらか落ち着いてきて、

 マスクを外さず、私たちが志乃姫に寄り添います」

 看護師の麻由子が遠慮なく、思いを口にした。

 

 

 

 

 救急隊員が手早く麻由子の差し出す経過報告をチラと

 見て、軽く肯き、志乃の体を抱き上げた。

 

 

 

 

 穂香が背伸びして羽織を志乃胸に被せた。

 「付き添う者は誰か」  

 救急隊長が問いかけた。

 

 

 

 

「何人まで宜しいでしょうか」

「最大三名だ」

「では私と、救急救命士の二人が乗り込みます。

 走り出しても、心臓マッサージを止めません」

 

 

 

 

「了解した」

 敬礼に応え、三人とも、揃って腰をおった。 

 

 

 

     古都の徒然 山鉾組み立て・・

 

 

 

 

 今月の17日に始まる祇園祭の主役、山鉾の組み立て

 作業が昨日から始まりました。

 

 

 その昔から、山鉾の組建てには縄を使うだけで、

 釘を一本も使わないで

 仕上げる作業が

 年季の入った人たちの手で進められていました。

 

  

 

 この縄掛けは年季の入った方が手際よく作業を

 続けていました。 

 

 

 こうして、今日の内に完成させ、本番に備えることに

 なっています。

 

 

 ※写真は私の資料写真を用いています。