古都のブログ小説 京の鐘848
一時は、避難道を探ろうとしていた秋山もまさかの、
志乃が穂香を助けようと、
看護師の手を借りて、舞台に上がり、男たちと対峙した
ことには肝が冷えた。
だが、志乃の冷静で、凛とした対峙に観客は盛大な
拍手でこれを迎えたのだ。
一番称賛されたのは文字どおり、この一座の女座長の
志乃であった。
この後も志乃の武勇伝とした長く伝えられたのだが、
物語は益々佳境に入った。
何処からともなく、志乃へ
「もう一度、もう一度」
とのカーテン・コールが熱を帯びだすと、
帰り支度を急ぐ観客らが、足を止め、成り行きを
静観し出した。
志乃が疲労困憊であるのは誰もが認めていた。
秋山は志乃に小さく
「無理だろう」
と、声をかけると、志乃もほんの少しの無念さを
見せたが、
これ以上の舞披露は確実に復活に時間がかかることを
意識して、素直に肯いた。
秋山が素早く、志乃の病状が思わしく無く、
この上、舞を再開しては、
復活に時がかかるとの説明で、即座に異議なーしとの
声が返って無事難関の道を開いた。
田中ががっちりと拳を天に突き上げた。
完全に収束すると同時に、何処に隠れていたのか、
あちこちから、
商店街の役員達が大小様々な花を編み籠にいれた
花束や、
高価そうな花瓶と輪島塗を思わせる重みのある、
お盆を持って来た方もいた。
呼び出されて来た志乃は想像もしなかったプレゼント
攻勢に絶句し、
ただ、涙を流すだけで言葉がついて来なかった。
秋山も、用意してあった花籠を出すに出せず、
少々狼狽えていた。
いつも、口数が多い穂香までが連れ泣きで
志乃を庇うことが出来ず、
これに気づいた小夜が籠を預かり、しっかりと御礼を
述べて役員達から大きな拍手を得て、
聊かの恥じらいが可愛いと、
いい年のおっさんからの誉め言葉に焦って、
秋山に目で縋った。
仕方なく、秋山が子供たちに代わって、
皆さまの暖かい、
お気持ちを大切にして、
これからも精進することでしょう、それが何よりの
恩返しとなるかと思います。
と、簡潔に返礼を述べ、長い長い一日の帳が下りた。
古都の徒然 時代小説の・・
私は、ここ何年間もあれほど大好きだった時代小説を
全く
書かないだけでなく、
読まないようにして、何事も無く、暮らしてきましたが
ここにきて、
何か私は大事な物を忘れていることに気づき、
昨夜から
久しぶりに、かってお宝のように大切にして、
読み漁っていた時代小説を
読み直していたら、
やはり、
私の今の作品の貧弱さがよくわかり・・啞然!
何よりも、
時代小説を書き込んでいた頃の作品の面白さの一つに
時代小説特有の豊富な語彙が
あったはずなのに・・
それが、現代小説を書いていると、
なんともはがゆくて、ならないとき、確かに表現力の
乏しさと豊かな語彙の無さに気づいたもので・・
(-。-)y-゜゜゜
これは物書きに、とっては致命的なもので、
なにかしら、
読者が、これって何と問いかけたいほどの
表現力があれば、
つまんない作品でも読んでもらえたのに、今は小説の
読者は皆無に近く、
長期間、読者からのリアクションの
無いざまは
悲し過ぎて声も無しの状況で、ほんと何度やめようかと
思ったことか・・
物書きは自分の作品が一番、旨く、
他の作家の作品なんかに、ほれ込むとがなくなり・・
自信過剰になるものですが
私の場合、自信過剰にはなったことが無いだけ
ましかと・・(苦笑)
だが、よく考えてみたら、大学に入った年に
なんだか、よく分かんない文学賞には入ったものも、
その当時は
現代小説しか書いたことは無く、
自分は時代小説はダメかもと・・悩まされたりで
自信喪失のような日々だったのですが・・(笑)。
これが抑々、物凄い勘違い・・(笑)。
近年は自分の過去の作品を読み返したことがなく、
まさかのまさかで、
時代小説を読んだ親友(女性)から、
号泣!との
簡潔で嬉しい祝辞を・・・
このコメントに
散々泣かされた記憶が・・(#^^#)。
と、言っても今、
すぐ時代小説の執筆はできず、当面はいつ頃、
現在連載中の作品に幕を下ろすか、
これが決まれば
いつでも、
時代小説に向かいたいと思うことにしたもので・・(笑)。
時代小説なら今少し、気の利いた表現もできるかと・・
これが
単なる思い付きでしかなかったならば、
この世の
闇が深そうで、うーん"(-""-)"。
まだまだ先のようで
困惑が更に続く・・(~_~;)。