更新原稿

     古都のブログ小説 京の鐘843 

 

 

 

 秋山はふと、志乃の思いが、このおわらの中の

 歌の文句に転嫁させているような

 錯覚に陥った。

 

 

 

 

 まさかとは思ったが、この命欲しいなら、いつでも

 死んで見せますわ・・とのフレーズに

 凍りついた。

 

 

 

 

 「いかん、もしかして、志乃が本気で死ぬ気で

  舞っているのかも・・」

 との思いが募り、思わず声が漏れそうになるのを必死に

 嚙み殺した。

 

 

 

 

 隣にいる秋山の不審な表情に何かを感じたか

「常務、何か問題でも・・」

 河野が声を潜めて問いかけた。

 やはり見抜かれていたかと思ったが何気に

 「何もないが、ただ、少し姫のスポットが強すぎないか。 

 そうだ、あのスポットを絞って、

 代わりに舞台のまわりに点灯している行燈の灯りを

 トップに持って来させよう。

 さすれば、幽玄の世界に導かれる構成になる」

 

 

 

 

「常務、凄い発想の転換です。それ、すぐやりましょ」

「君もそう思うか」

 

 

 

 

「間違いなく、常務の発想の転換は大成功に結び付くと

 確信します」

 河野のやたら元気な声が気になったが、

 秋山は照明のトップに、この旨を伝えると、

 二つ返事で、すぐ変更させた。

 

 

 

 

 観客も突然に舞台が薄暗くなり、変わって小さな

 行燈の灯が明るくなったことに、

 すぐ反応し、どよめきが末広がりに波を打った。

 

 

 

 

 舞台袖にいた穂香たちが、揃って親指を立てて、

 ガッツ・ポーズで返して来た。

 

 

 

 

 確かに志乃の舞姿の艶やかさに、薄暗い照明が益々

 いきて来た。

 

 

 

 

 泣き所は志乃の歌が無いのが辛かった。

 

 

 

 

 志乃が意識的きにそうなったのか、偶然か、

 鬢から垂れ下がる髪の一部を唇に噛み、

 口元から零れる髪が怪しく揺れ、息を潜めていた会場も、  

 確かなどよめきを隠せなかった。

 

 

 

 

 ただ、秋山には、これが演出と思われるのは少し辛い。

 

 

 

 

 花柳界なら、あって当然だが、未だ素人の大学生の

 舞で、妖艶に見えるのを、やりすぎと取る、

 むきもあるだろう。

 

 

 

 

 明日の朝刊のネタになる可能性もあり、

 志乃には悪いが、この演出は何も知らずに舞い踊る

 志乃への申しわけ無さに胸が軋んだ。

 

 

 

 

 側にいた河野の目に涙が光っていて、

 この30代の女にも火をつけてしまって、

 この後のことが気になった。

 

 

 

 

 すると、アナンス台の真逆の位置にいる小南

 が両手で可愛いハートマークを左胸の前に作って

 微笑んで見せた。

 

 

 

 

 この子も、秋山の狙いと違ったが、とりあえずは、

 志乃の自由に舞う姿を目で

 追うことにした。

 

 

 

    古都の徒然 日本一短い手紙・

 

 

 

 福井の丸岡で30年前から始まった

 一筆啓上 日本一短い手紙で

 過去に入賞した作品の一つが昨夜の朝日新聞夕刊の

 一面トップに掲載され、

 その作品があまりにも切なくて、胸がつかえそうに

 なるほどの感動を覚えたので、

 ここにアップしてみました(#^^#)。

 

 

 

 

 僕は幸せだよ。お母さんがこんなふうに生んで

 ごめんね と言うのは

 やめてね。

 

 

 

 

 これは障害のある植山良寛さんが14歳の時に書いた

 手紙で、

 なんて素敵なお手紙なんだろう、と

 即、

 胸が熱くなったもので・・(#^^#)。

 

 

 

 

 良寛さんは生まれながら、両足が思いどおりに動かった

 のを母親の洋美さんが、

 ごめんねと言うのはやめてね、

 と

 良寛さんの母を思う、すがすがしい手紙に対して、

  

 障害があっても、

 それを受け止めて、前向きに素直に育ってくれて、

 母は救われます

 と

 返えされたとのこと・・

 お母さんの慈愛に満ちた手紙の

 母と子の互いに相手をいたわる心に泣かされます。

 

 

 

 

 明日の徒然に、感動した作品をアップできるかも

 知れませんが・・

 今から楽しみです!(^^)!。