古都のブログ小説 京の鐘841

 

 

 

 沙織子の挨拶があったあと、河野アナが舞台下で

 引き継ぎ、

「それではここで、本日のアトラクションの日舞歌謡の

 新・おわら舞を次期7代目家元に内定している

       志乃姫様にご披露させていただきます」

 

 

 

 その時、志乃が身に着けた衣装は沙織子が6代目家元に

 就任した際のものだ。

 

 

 

 純白の半襟が秋山の疲れた目にも眩しくて、

 愛らしいのも志乃らしくていい落とし所に見えたものだ。

 

 

 

 更に黒地に、金糸銀糸の鮮やかな糸が彩る絵姿は

 中々のもので、

 しかも、地にいる亀が空を望み、天空には鶴が舞い、

 裾には金の松葉が輝く、

 まさに絢爛豪華な正装の絵模様であった。

 

 

 

 裾はお引きずりとなっていて、年配の師範らが、

 末広に裾が広がるよう最善の手を

 尽くしたものだ。

 

 

 

 河野アナの呼び出しに応え、

 志乃が幾分、俯き加減で姿を見せると、会場からは

 盛大過ぎる歓喜の輪と盛大な拍手が続いた。

 

 

 

 河野アナが気をきかせ、

「今の志乃姫様の頭に乗せた金銀の簪と首の後ろ側に

 何気に刺してある花簪も、お安くはないので、

 まさにお姫様、その、まんまの絵姿です。

 めったに見られないもので、会場に起こし頂いた皆様は

 果報ものでございますよ」

 と、志乃を持ち上げたので、志乃は居ても立っても

 いられず、

 楽屋へ帰ろうかとする振振りを見せると、

 穂香が志乃の袖をしっかりつかんで

 元とに戻した。

 

 

 

 秋山がスタンドマイクを手にして、舞台中央へ運ぶと、

 志乃を手招きし、

「今日は一日、お疲れ様でしたね」

「そんなこと・・」

「二時間の長丁場でしたから、よく頑張ったね」

 秋山もなんとなく感傷的になり、しんみりと声を

 かけると、

「そんなん、はじめから覚悟していたことで、そないに

 褒めんといて・・」

 志乃の目に熱いものが膨らでいた。

 

 

「ごめん、ごめん。

 ここで、志乃姫を泣かせるつもりじゃ、なかったのだが」

 と、言って胸のハンカチを渡すと、

 さっと手に取り素早く

 背を向けた。

 

 

 

 お太鼓に結んだ帯にも五所車が金糸で描かれていて、

 観衆も一瞬、声を呑んだ。

 

 

 

 白河流らしく、五つ紋の白河が白抜きで、くっくりみえ、 

 華やいで見えた。

 

 

 

「本当に一日よく頑張ってくれました。ありがとうね」

 と、言って、席に戻ると、

 志乃も秋山に深々と頭を下げた。

 最後に、志乃が一人でマイクの前に立ち、遠来の客や

 地元の関係者らに、感謝の気持ち述べて、

 挨拶を〆た。

 

 

 

     古都の徒然 またも改訂版(笑)

 

 

 

 またまた、

 小説 京の鐘は昨日の部分を少し改定しました。

 

 

 

 一度書いた原稿を毎日のように改定するなんて、

 私には

 初めてのことで、やはり、本番になると肩に

 力が入るようで

 疲れが一気に出て来て・・(笑)。

 

 

 

 この小説は登場人物より、おわらをテーマに書い

 ている為か、

 おわらに関するページは本当に疲れます。

 

 

 

 気合が入っているのかも知れませんね。

 こんなことを言っていると、やはり、またぞろ八尾に

 出かけたくなりました。

 

 

 

 どなたか、ご一緒に出掛けられるなら、

 大勢でにぎやかに、おわらを心行くまで堪能して

 たい

 ものですが・・

 

 

 

 まっ、無理な話ですね・・

 

 

 でも、皆さん、よい人たちですよ(笑)。