更新原稿

     古都のブログ小説 古都の鐘841

 

 

  

 側にいた警護班長の田中が真っ青な顔で震える小南を

 抱き上げ、声をかけた。

 

 

 

 

「大丈夫ですか」 

 小南を守れなかった迂闊さを詫びた。

 

 

 

 

 秋山がマイクを拾い上げ、オフにした後、

「悪かった。君を巻き添えにするなんて、油断の極みだ。

すまん」

 神妙に頭を下げた。

 

 

 

 

 小南が手を振って、詫びる秋山を制し、

「大丈夫です。気が動転し、お恥ずかしい・・」 

 その目から熱いものが頬に糸を引いた。

 

 

 

 

 遠くで、この男を足払いで、ひっくり返し、

 て捕まえた班員がインターで、次の指示を求めた。

 

 

 

 

 警護班長の田中が

「交番が新京極の入口にあるから、その男を連れて行って

 くれ。状況は司会のアナに突然、怒声を浴びせて脅し、

 マイクを叩き落した威力業務妨害だ」

 指示したあと、すぐ秋山に警護の失態を詫びた。

 

 

 

 

「いや、詫びるのは私の方だ。何事も順調に運んでいた

 ことで皆に甘え、すっかり警戒を忘れていたことだ」

「いえ、それを言うなら、たとえ、素人の私でもまさかの

 ことで、大いに、しくじりました」  

 硬派の田中に素直に詫びられて、秋山は本気で恐縮した。

 

 

 

 

 抑々、田中は学業も優秀で、しかも、空手三段の猛者で、 

 あったことが何より幸いであった。

 

 

 

 

 秋山が思い付きで発足させた警護班が予想以上の活躍を

 してくれたことが嬉しい誤算であった。

 

 

 

 

 観客を含め、誰も怪我が無く、治まったのは

 もしかして、奇蹟だったかも知れないのだ。

 

 

 

 おわらの流しはその後、順調に推移し、

 観光客のみならず、テレビを見て駆けつけてくれた

 市民の歓声にも随分と救われたものだ。

 

 

 

 

 合間、合間にお迎えの店先でのおわらの実演も好評で、

 舞う子たちも皆、

 自信を持ちだしたようで、拍手と歓声に守られながら、

 よい終盤を迎えていた。

 

 

 

 

 短いCM休息の間に、菜奈、穂香に彩たちが急ぎ

 特設舞台に戻って来た。

 

 

 

 

 いよいよ千秋楽だ。

 志乃は楽屋で衣装変えに入った。

 

 

 

 

 家元の沙織子の五つ紋の正式なもので、沙織子は先に

 着付けを終えていたので、時間を取らなかった。

 

 

 

 

 始めに、参加大学の役員6人と、6代目家本の沙織子と

 筆頭師範の沙緒を合わせて8人が舞台に

 揃い踏みをした。

 

 

 

 

 ここで家元の沙織子が挨拶に出て、

 「今宵の夢のようなおわらの世界に導かれ、

 こうして、たくさんの皆様の前に出られる幸せを生涯

 忘れることはできないかと思います」

 

 

 

     古都の徒然 古都の鐘の再掲載

 

 

 

 暫く休載していました古都のブログ小説 古都の鐘を

 本日から、再開いたしました。

 

 

 

 ところで、

 本日の原稿は去る12月29日に掲載した原稿を

 大幅に加筆訂正したもので、改めて再掲載したものです。

 

 

 

 なので、

 昨年末の原稿は削除いたしました。

 ご理解ください。

 

 

 

 これにより、

 新原稿は来週の16日からの掲載となります。

 御覧いただければ幸いです。