古都のブログ小説 鐘の音818

 

 

 「志乃、これは遊びではないんだよ。君の体調を

 考えての

 ことなんだ。これ以外、他の方法があれば、

 遠慮なく言ってくれ」

 少し語調を強めて申し渡した。

 

 

 

 「では私はどうすれば・・」

 

 

 

 「何も心配は要らないよ。ただ、担ぐ男達の背丈から

 考えれば、 

 地面から相当高いものに成るはずだが・・」

 

 

 

 「せんせ、うちが高所恐怖症なのは知らないの・・」

 志乃が明確に、これを拒絶するものと

 思われた。

 

 

 

 「これは習うより慣れろが、肝心なのだ」

 「でも・・」

 と言って、不安そうな顔で、秋山を見上げた。

 

 

 

 「なら、今から現場に行って、試してみると良い」

 

 

 

 「せんせ、

  志乃ちゃんが嫌がることはしない方が良いですよ」 

  穂香が側から口を差した。

 

 

 

 「嫌がらせるつもりは元より無いよ。だけどね。

  志乃を舞わせて、歩かせて、

  大丈夫と思えるか」

 

 

 

 秋山の逆襲に、穂香はショボンと肩を落とした。

 

 

 

 「せんせ、代わりの手段は無いのですか」

  奈菜が更に煽った。

 

 

 

 「君は何が良いと思う」

 

 

 

 「それは、もしかして、タクシーとか・・」

  奈菜が暫し考慮していたが、

 「勿論、それも考えたよ。でもな、そのタクシーを

  どうやって、街流しに付き添えるかが、

  難関なのだ」

 

 

 

  秋山が苦渋の汗を額に浮かせた。

 

 

 

 「奈菜ちゃん、タクシーは絶対、無理だよ。志乃ちゃんが

 街流しの列から離れてしまったら、流しの意味が

 なくなってしまうよ」 

 穂香のいい分んが、ズバリと的中していた。

 

 

 

 秋山が志乃を輿に乗せての巡行することを決めたのは、

 まさに、この為であったのだ。

 

 

 

 それまで、黙っていた志乃がゆっくりと口を開いた。

 

 

 

 「せんせの言うとおりですね。うち、みたいな者を輿に

 乗せるなんて、恥ずかしくって・・」

 蚊の泣くような小さな声で囁いた。

 

 

 

 「それを克服するのが、君の務めだ思ってやって

   欲しいのだよ」

 

 

 「志乃ちゃん一人だから、恥ずかしくなるなら、うちも、

  乗ろうか」

 穂香がまたとっ拍子の無いこと云い出した。

 

 

 

 志乃が、少し安堵の色を見せた。

 「残念ながら、それは無理なのだ。輿に二人は出来ない

 相談なのだ。

 第一、担ぎ手が足らなくなる。今でも、8人で担ぐのも、

 大変なのだ」

 

 

 

 「重さが原因なの・・」

  志乃の暗い声が漏れて聞えた。

 

 

      古都の徒然 映画愛と哀しみの果て

 

 

 

 

  NHKBSPより

 

  随分前に、撮った作品でしたが、

  どうも、

  先の黄昏に似て辛すぎたエンディンク゛だった為に・・

 

 

 

 

  この映画も大変な人気を呼んで、アカデミー賞をとった

  名作ですが、

  主演女優賞が

    お馴染みのメリル・ストリープさんなのに、

  最後は無残に消えて行く、

  デニスが助演男優賞に入っておらず、

  一番、

  出番の少なかったブロルが獲得したのには驚きました

  (一一")。

 

 

 

 

  当時、

    もっとも人気のあったロバート・レッド・フォ―ドが

  狂言回しの貴重な役割だったのに・・

  

  

  ここで、一応、おおまかな粗筋を書いて見ますね。

 

 

  デンマークの資産家の娘のカレンがスエーデンの貴族の

  ブロルと結婚し、

  アフリカのケニアに出かけ、

  ほんの、ひとときの安らぎも、次から次へと襲ってくる

  災難の為、

  カレンの思いはめったに家に戻らない夫のブロルを

  差し置いて、

  デニスと深い中になって行くのです。

 

  

 

 デニスと二人で遠乗りをしたあと、

 川沿いで、

 洗髪してくれるデニスに心惹かれて行っても、無理からぬ

 ことかと思うのですが・・・

 

 

 

 夫が始めたコーヒー農園も、突然、真夜中に火が出て、

 豆から製造器具のすべてを失い、

 路頭に帰するのですが・・

 

 

 ここで、

 冒険家のデニスと一緒に彼の自家用飛行機に乗って

 愛を確かめ合うのですが・・・

 

 

 そんな中で、愛するデニスが飛行機事故で、

 突然、帰らぬ人となり・・・

 

 

 こうした惨い話になって行くのですが

 私が何より、

 驚いたのは、この映画は実在人物のカレンが

 自分のアフリカ滞在中の出来事を

 小説にし、

 更に、これを映画化したものだったことです。

 

 

 いやー・・

 今回もアメリカ映画にまた・・・されました(一一")。