古都のブログ小説 京の鐘786
「演歌なんて、考えなくても出来ますよ。
使われる♪は
マイナーと、決まり切っていて、出足が決れば、
あとは簡単なのですよ」
しらっと言い切る。
ロッカーらしいい物言いに苦笑したが、
それにしても、
田島の才覚が際立っていたのも気に障る。
「こんなんでいいんなら、あと、いくつか作って見て
送信しますよ」
と、言って電話を切った。
呆れた奴だ。
秋山はいつもながらマイペースのこの男の強がりと
自信に満ちた声の張りに自分でも
満足しているのだろうと思わせるものがあった。
新しいのが出来れば、
全て歌わせて見ても良いかと、秋山はひとりでに
口元が緩んでいた。
そういえば、
彼が老舗の某店内に流れるテーマ曲を制作していた
のも奇遇であった。
また、東北での国体のテーマ曲も手掛けていて、
満更の素人ではない。
これを機に、チャンスが訪れると良いのだが・・
秋山は田島が自慢の声で歌っているテープを聞き、
口三味線で歌ってみると、
殷を確かに踏んでいて、耳にも心地よいものだった。
嬉しいような、そうでないような・・複雑な思いを胸に秘め、
その日の稽古に付き合った。
勿論、
ことの次第は電話で伝えていたことから、
事前に彼女がテープを聞き、満更でもないような感想を
述べたことで、この一件は上がりとなった。
作詞は秋山の歌詞そのままであったことから、
志乃の小さな喜びの半分は
自分の為かと、
かってに思い込み、にやけた顔で通した。
これを全員には告げず、
他には家元の沙織子と沙緒と穂香と奈菜だけに
伝えておいた。
この日、
ようやく、本番の夜に身に着ける友禅の鮮やかな
絵柄の
単衣に帯や、旅など一式が届いていたので、
始めに全員が袖に通して、賑やかな笑いと感性が
暫し止まなかった。
ひとつ足りないのは頭の後頭部に差す花簪である。
すると、
Ｔ屋の販売員が徐に、花簪の見本を見せて
購入を急がせた。
もっとも、
その日に支払いは当然、出来なかったが、注文だけでも
纏まって、担当者の憂いがあっという間に
消えていた。
これは同時刻にＤ女大とＫ女大にも販売員が
出かけていて、
どの大学でも黄色い歓声が飛び交っていた。
時代が代わっても
女の子の着物姿への人気が高いことを
秋山は
しみじみと感慨深く見詰めていた。
と同時に若き日の苦い思い出が少し蘇り、
辛くならない内に忘れる
ことにした。
この日の着物一式のお値段は
着物と帯と半襟と足袋ら一式で２万５千円のところ
二割引きの二万円にして、
女の子らを
歓喜の渦に巻き込んだが、花簪は1割程度の値下げで
終わった。
古都の徒然 人を傷つけるのは・・
毎日、新聞やテレビでロシア軍の卑劣な
無抵抗の市民への虐殺が
報道され、
あの凶器の塊のようなプーチンを誰もが止める事の
出来ない状況に
ほとほと愛想が尽きて言葉が旨く出て来ません。
カンテレより
と、言いつつ、
人は何かにつけて、生きている限り誰かに
傷つけられ、
また反面、気付かないうちに人を傷つける
生き物であることも・・
どうして人は人を傷つけるのか、
また
どうして傷つけられるのか、それが知りたい・・・
この世を穏やかに生きているつもりなのに
意外な所から
心無い言葉が伝え届き、
いちいち、
それらに反応していれば身が持たない。
この子が今、どうなっているのか
追跡調査が何故できないのか。
メティアの努力不足か、とにかく彼女が元気でいる
姿を見せて欲しいものと・・・
暴力は確かに銃を持たない人々を
従属させることが
出来ますが
心まで支配することは出来ません。
でも
脅しの言葉の威力は確かにあると思う。
それに反応するから傷つくのだと・・・。
だが、
反応の無さに苛立って、益々苛立ち、より過激な
バッシングが続き、
死を選んでしまう方がいて、
無視も人を選ばなければいけないことも・・・
なにより人に対する慈しみの心より
非難する心が多大に有る限り、時代が変っても、
無くならない、
厄介なものとなって、いつの世にも蔓延り、
消えない
コロナウイルスのように延々と続くことでしょう。
手に負えない妖怪プーチンを誰かが彼の心を
諌め、
善良な心に立ち戻らせないと、
本当に世界が地獄を見ることに、何故気が
つかないのか・・
ロシアの権力の近い所にいる者たちが
一身を投げ打って、彼の暴走を止めないと
いけないのに、
みな、我が身が可愛いのでしょうね。
人が人たるに相応しいことは、この世にあるもの
全てに優しいことなのに・・。
その優しさを忘れていては人たるに値しませんもの。
一日も早く、真に人の命を大切にする社会に
戻って、
欲しいと願いたいのに・・
毎日、心優しい人ばかりが先に逝くなんて、
悔し過ぎて・・・。
全能の
神仏はいったい、何処で何をしているのかとも・・・