古都のブログ小説 京の鐘771 

 

 

          一同が一斉に向き直り両手を床について、

          頭を下げた。

 

 

         「志乃ちゃん、素敵なお話でした。うちがいつか

          言わねばならないことで、よく言ってくれましたね」

         それから間もなく、

          穂香や奈菜に彩と薫が秋山から直接、

          呼び出された。

 

 

         このあと、

          配下の班長と副班長全員を招集して、

          班員に自ら手本を見せ、

          同じ舞をひとりずつ舞わせて、振り付けの間違いが

          あれば、その場で修正させ、

          正確な舞が出来るまで、ひとりひとりに、しっかりと

          稽古をつけるよう指示を出した。

 

 

         員が其々の持ち場に行き、口三味線で、

          新・おわら二番から五番までを順に稽古をつけ、

     全員がマスターしているとが分かれば、

     穂香や奈菜の前で舞わせて、間違いがなければ、

     次へ進めさせた。

 

 

     そこから更に、

     技術的な表現方法などは組の責任者の

     穂香たちが実技の核心を教え、

     繰り返させることにした。

 

 

     始めは、

     どこの組も、まともに稽古が進まず、前途に

     不安を抱かせたが、

     チームリーダの穂香や奈菜たちの熱意が

     伝わったか、

     次第に振り付けの習熟度が

     上がって来ているのが目に見えて来た。

 

 

     秋山の予想より早いテンポで習熟度が

     上がり、同時に、

     汗だくの子たちの目の色が

     違ってきているように見えるのが心地良い。

 

 

     明らかに、

     稽古の方法を変えたことが活きて来ているのが

     実感できるのも嬉しいことだ。

 

 

     稽古を始めて

     1時間も過ぎる頃、

     参加者全員が熱に煽られたかのように、

     どの子からもおわらの舞への意欲が伝わり、

     もしかして、

     この子達はこの先き、

     大化けするかもと期待値が羽ね上がっていた。

 

 

     そうなると、

     じっとしていられないのが家元で、

     沙緒を惹き連れ、どの組にも顔を出し、

     口先だけでなく、

     自らも舞い踊り、門弟たちを仰天させた。

 

 

     更に、

     この様子を見ていた志乃も、たまらず、

     舞台から降りて、家元とは別の組の班に顔を見せ、

     班員たちを狂喜乱舞させた。

 

 

     短時間での、

     この成果は今までの稽古も満更、

     無駄ではなかったことも嬉しくて、気がつけば

     泣虫さんらしく、

     志乃の目頭がひとりでに熱くなっていた。

 

 

     何より嬉しかったのは

     秋山の指示ひとつで、これだけの成果が上がった

     ことを知ったことで、

     志乃は秋山の底知れぬ叡智の奥深さに感動し、

     身が振るえた。

 

 

     ひとつ、よいことが生まれると、

     何もしないのに、また一つ、新しい発見が生まれ、

     どのチームも稽古が上がる度に

     歓声が沸き、

     次々と番を重ね、途中の休憩も取らず、

     一気に五番まで突き進んでいた。

 

 

     さすがに、

     2時間ぶっ通しは過激で、秋山の休息の指示に、

     一同笑顔満開で、床にへたりこんだ。

 

 

        古都の徒然 嬉しい雨傘の・・

 

 

     昨日は朝から晩まで雨・雨・雨・・・そして雨

 

 

     それでも、

     買い物に出かけなければならないので、

     傘を持って出かけたのですが、

     細い歩道を歩いていると、

     日本の美のひとつの奥ゆかしいマナーが

     若い方から、なげに見られ、

     一瞬、胸が・・・・なりました(#^.^#)。

 

 

     と、言うのも、

     いつもなら、どちらかが道を譲らなければ

     いけない細道で、

     私はより早く、水たまりの中へ足を入れて

     道を譲ってくれた青年と

 

     その後、

     歩いて来た女性が私が傘を左に傾けたのを

     見て、急ぎ傘を反対側に傾け、

     互いに相手に傘から零れる滴をかけないよう

     自然に心配りをしていたもので・・・

 

 

     京都に住んで20数年、

     このような他人を思いやる日本的なマナーを

     頂いたのは

     始めてのことで、

     雨空なのに心は澄みきった青空のように

     晴れ渡ったものです(#^^#)。

 

 

     今どきの若い者は・・と謗るシー人もいますが、

     こうした小さな心配りを忘れている

     お年寄りが多い時代なのに、

     若い方から思わぬ美しいマナーを頂くとは・・・

 

     

     日本も満更、捨てたものではありません。

 

 

     その後の買い物忘れも無く(#^^#)

     一日の終わりのお風呂の湯船の中で、

     あの二人の

     青年男女のさり気ない心躍る

     素敵なマナーを思い出し・・・ことさら、

     嬉しいお風呂タイムとなりました

     (#^.^#)。