古都のブログ小説 京の鐘137 

 

彩の甲高い悲鳴が上がった。

 

胸に手を当てて、転がった志乃の身の変化に動転したのだ。

 

 急ぎ、ベッドの頭の上にぶら下がっている緊急用の呼び出しボタンを握った。

 

 ナース・センターへ走るのを止めて、枕元のミニ・テーブルの上に置いてある錠剤のニトロを取り、包装剤を破ろうとするが、慌てているので、中々開かない。

 

 やっとの思いで取り出した丸くて小さいニトロが指圧で形を無くし、破片となっていた。

 

荒い息遣いの志乃の口に、ニトロを入れようとしたが、痙攣でもしたか、中々口が開かず、志乃の生への呻き声が悲鳴に似て、断続的に漏れ続けていた。

 

彩がもう一度、自分で大きく深呼吸をして、志乃の鼻を片手で閉じると息苦しさで口に少しだけ隙間が出来た。

 

其処からニトロの破片を無利遣り押し込んだ。

 

このあと、外れていた酸素吸入マスクと血液中の酸素濃度を計測するパルスキオシメーターを人差し指に取り付けた。

 

ここに心拍数の計測することが出来る一石二鳥の心強い味方だ。

 

心電図の取り付け方は何度も見ているので、他った気がしていたが、どれから始めて良いやら分からず、もたもたするうちに時は刻々と進んでいた。

 

その間、ICUの個室が東西に揃って並んでいるが、何処からも何も音は聞こえてこなかった。

 

不気味な静寂が彩を襲った。

 

泣きたいのに、どうしてか、泣けないのだ。それにしても、ナースのやって来る気配がしないのが気になった。

 

秋山に電話して、何とか病院のスタッフにこの事態を知らせたくなり、スマホを取り出そうとした。

 

すると、先程まで志乃の状態が少し安定して来ていたのだが、また、苦しそうな息遣いに戻っていて、恐怖を覚えた。

 

もう一度、救急呼び出しのボタンを手早く握りしめた。

このあと、部屋を飛び出し

「誰か助けて下さい。患者さんが危険な状況に陥っているのです。誰か助けて下さい」

 と、言ったつもりなのだが、彩は自分でも何を言っているのか分からないほど、混乱していて、明瞭な言葉では無かったかも知れない気がして悪寒が走った。

 

 叫びの返事が何処からも聞こえてこなかった。

 

 やはりヒステリックな叫びでしかなかったのだ。

 

 彩は返事を待つまでも無く、志乃が一人苦しむ部屋へ急ぎ舞い戻った。

 

古都の徒然 映画・ドクトル・ジゴロ鑑賞譚・・

 

昨日、

午後1時から楽しみにしていた上映時間が

3時間22分の

大作映画 ドクトル・ジゴロをリアムタイムで鑑賞しました(^^)。

 

物語は

ロシアの革命当時の混乱を舞台に、トルストイの

戦争と平和

同様、

哀しい愛が交錯する名作映画で、長時間の映画だけに

観終わったあと、

すっかり疲れ切って、中々立ち直れないので

困りました(--〆)。

 

更に

あのロシア革命の混乱当時は

我が国では明治の後半期で、明治維新から文明開化が

進んでいた時節と重なり、

大評判となったもので、また、この作品は世界的にも

大ヒットし、その年の

アカデミーの五部門で受賞するなど、超話題作となった

作品です。

 

ただ、重工な作品なのに、結末が何と伏線が一つも無い

主人公の持病であった心臓病で

あっけなく死ぬのには流石に唖然としたもので・・・(笑)

 

 

そんなこと3時間半も掛けて一つも言われていないのに、

結末をつけるために、

とってつけて病気をエンディングにするなんて・・暫し茫然!

重厚な映画の信じられないイージな展開に

本気で

笑えて・・(--〆)。

 

 

でも

贅沢な時代を象徴する豪華絢爛たる映画作りが

随所で観られ、

今なら、とても制作は無理ない規模の大きい作品だけに、

貴重な映画資料にもなる

名作に仕上がっていて、改めて稀有な映画を観ることが

出来て、

映画鑑賞の醍醐味を堪能致した気分です(#^^#)。

 

 

いやー、

映画って本当に素晴らしいものですね(#^.^#)。