古都のブログ小説 京の鐘134 

 

「旨く踊れたかどうは自分では、よう言えへんげど、この調子なら、明日、退院出けたら、特設舞台での舞もいける気がします」

 志乃はよほど自信を持てたのか、いとも簡単に言い切った。

 

「そうだな。これで、ひと山越えたかも知れないな。後は医局の判定待ちだが、先程とった各種データーは標準値に近いものが多かったから多分、退院許可の話が届く気がするよ」

 秋山の笑みを堪えた余裕ある物言いに、志乃の顔色も喜色満面に変わった。

 素直な子だと思い、秋山も志乃に合わせて笑みを零した。

 

 奈菜も穂香も笑顔を弾ませ、早すぎる勝鬨を上げた。

「そう、先走ってはいけないが、過去の先例を視ると、あながち、不安を煽ることはないと思うよ」

 秋山が額の汗をハンカチで拭い、更に言葉を繋いだ。

 

「私たちは、もうスタジオへ戻らなきゃいけないので、このまま帰るけど、必ず、テレビが終えたらまた来るから、心配しないで待っていなさい」

 

「私は此処に残ります」

 遠慮して背後にいた高杉彩が力強く言ってくれて秋山は頬を崩した。

 

「君がいてくれたら、鬼に金棒だ」

 軽くジョークを放つと、 

「なんで、あたしが鬼なんですか」

 彩が口を尖がらせて言い返した。

 

 穂香が即座に遠慮の無い声を立て、彩に軽く睨まれた。

 

T屋へ着くと、心配していた通り、横断歩道の前は玄関口からはみ出した人で、ぎっしり埋まり、勝手に警護役を自認している志乃の同期の男子学生が必死に通路を確保しようと身体を張って待っていた。

 

彼らに守られ、何とか店内に入り、特設舞台へ上ると、万雷の拍手が出迎えた。

番組はもう、残り15分ほあまりなので、〆のメールやコメントの紹介に入っていた。

 

奈菜と穂香の他に、白河沙織子と沙緒も舞台に上がり、手分けして、時間の許される範囲内で、次々と読み上げていた。

 

中で一枚のメッセージが読み上げられると、

キャーッとの甲高い悲鳴が上がり、場内の人波が大きく揺れた。

 

「もしかして、このメッセージの投稿者さんがいらっしゃるのではありませんか」

 との秋山の声に、また歓声が上がり、指定席の椅子席からではない、大向うから白い手が大きく揺れている。

 

 女子学生のような子が何かを叫んでいたが、ざわめきが大きくてよく聞こえず、警護の男子学生にマイクを持たせ、人波の中へ入らせた。

 

 古都の徒然  映画・鉄道員

 

                 

 

昨日は久しぶりに作家・浅田次郎氏の佳作高倉健主演の

映画・鉄道員を観ましたが、

やはり、

いつものところで、込み上げるものがあり、

いつものところで、

胸が苦しくなるドラマの展開に、一人で観ているので、

誰に遠慮もいらず熱いものを

零すことが出来て・・・

 

※他の人と一緒に観る時は絶対、弱みを見せずに

頑張るのですが、

一人の時はとめども無く・・・うっ(/_;)。

 

 

 

それにしても

原作の旨さが活きているのは凄い事で、

現実と幻想との綾なすストーリーテーラの随所に

流れて来るテネシーワルツが適度に

挿入され、

静かに感動を誘う、憎らしいほどの展開に

何度見ても嵌ってしまうのは

どうしたものか・・

 

 

気づかぬ内に、私の感性が

あの作品とぴったりと併合するものが

あるのでしょうね。

 

 

タイトルが鉄道員とあることから、

ありふれた事ですが、

私も子供の頃、一番、なりたかった仕事は電車の

運転手さんで、

親戚の叔父さんが鉄道員だったので(^'^)、

今でも

何処かへ旅をすれば、どんなに短い距離でも、

電車があれば必ず乗りたくなるほど、

大好きなので・・!(^^)!。

 

 

もっとも、

高校時代には石炭の濁った真っ黒の煙を

吐き出しながら走る、

SLはあまり好きでは無く、たまに乗る時には、

暑い真夏でも窓は締めて、我慢しないと、

降りる頃には

顔が真っ黒になっているのに

気がつかず、

陰でクスクス笑われていることに気つくと、

慌てて、

洗面所に駆け込む恥ずかしさに、流石に好きには

なれなかったのが本音で・・(笑)。

 

 

その鉄道も1970年代になると、次々とSLは姿を消し、

D・Jエンジンの気動車に代わって、

行きましたが・・

 

 

SLの最高峰、D51が最後に走る時には、

取材に出かけ、

SLを追いかけては撮り、

また追いかけては撮りの連続にバテて、

天を仰ぐ始末には参ったものです(--〆)。

 

 

映画・鉄道員は浅田次郎氏の、これでもか、

これでもかの泣かせ節が随所に繰り返され、その度、

いつも、

我慢の限界を越えさせられて・・(ーー;)

 

 

殊に

やっと授かった乳飲み子が、この世に出て直ぐの夭折から

我慢大会が始まるもので・・

 

 

年代順に俳優が代わり代わりに逢いに来て、

健さんを惑わすのも

分かり過ぎるほど分かります。

 

 

妻や子を病で亡くし、一人身で最後の電車を見送る、

あの、

ほろまい駅のコンコースで雪に抱かれるようにして

眠る高倉健さんの後姿に、

毎回、

画面が滲んで見えなくなり・・(ー_ー)!!

 

 

60inchの大画面で観る映画は

細かいディティールまでもが映し出され、映画の持つ

訴求力の強さに感動させられ、

私にとって一番、幸せなひと時かも知れません。

 

 

今回はこの小さな女の子をアップしましたが

映画を観た時の印象がとてもよく、

素直で可愛い仕草と表情が気になって、取り上げたものです。

 

 

この子の名前と

撮影から22年経っているので、

今も、俳優をしているなら、観てみたいのですが・・

 

 

さて、この鉄道員

多分

いつか、またきっと見直すことでしょう(笑)。

 

いやー、

映画って本当にいいものです(#^.^#)。

※資料映像はNHKTVより拝借しました(__)。