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参考にもらった写真は、ぼやけていてはっきり顔がわからない。
住所はわかっているし、そこに一人でいるということだから、間違えることはないだろう。
まずは下調べで大学に行っているだろうと思われる昼間に住所を訪ねて周囲の確認と忍びこめるかどうか確認をしにいく。
最近はマンション、アパートは出入りするところが少なくて苦労する。
昔ながらの一軒家のほうが忍びこみやすい。
盗みとか、人を傷つけたりするわけでなく、意識を操るだけだが、なるべく人に顔を覚えられたくない。
スーツを着て、7:3わけにして眼鏡をかけ、いかにもその家に用事がある体で、家を探す。
ラッキーなことに一軒家だった。
それもボロボロの。
一応入り口に呼び鈴がおるので押すと鳴ってない?
薄い特殊な手袋をした手で引き戸を開けようとしたが、鍵がかかっている。
「ごめんください」
少しずつ声を大きくしながら3回ほど声をかけたが、人の気配はない。
横に入っていけたので、失礼しまーすと言いながら、小さな庭らしきところに足を踏み入れる。
草がぼうぼうで、ここしばらく手入れをしてないようだ。
ガラス戸が4枚ほどあり、廊下があって障子戸が見える。本当に昔ながらの家のままでびっくりする。
やはり人の気配がない。
ここのガラス戸にも手をかけるが、やはり戸締りはきちんとしているようだ。
家の裏にもまわれそうだ。
近所の人に気をつけながら、裏にまわると更に歩く道もないほどのひどい状態だ。
裏口はあったがしばらく使ってないようで、ここも閉まっている。
変な虫に刺されないといいなと思いながら、家を一周した。
結局、今は無人だということと、家の周りは手入れをしてないことがわかった。
あとは二階建てで、屋根に楽々のれて、2階に忍べこめそうだということもわかった。
昼間は無理だが、夜なら忍びの俺ならたやすい。
夜にまた出直そうと決めて、さっさと退散することにした。
夜
昼間、確認した家に再びやってきた。
家に明かりが灯っている。
通行人や近所の人に怪しまれないように、明かりが消えるのを待つ。
医大生だけあって勉強しているのか、中々消えない。
丑三つ時に近い時間に、やっと家の中が暗くなる。
それから30分程たってから、2階の屋根に飛び移り、裏の窓にまわると、運のいいことに開いている。
網戸を音をたてないように開け、廊下に降りる。
二部屋あるが、寝室はたぶん最後まで明かりがついていたところだろうと、予想がたった。
表側に接する方の部屋の戸を音がしないように開ければ、案の定、ベッドと寝ていると思われる膨らみが確認できた。
枕元に忍び寄れば、色の白い大学生とは思えないような幼い顔をした男の子が眠っていた。
一瞬、本当にこの子が本人か迷った。
しかし、周りを見渡せば机に医学書がおいてある。
間違いないだろう。
印を結び、結界を張り、集中する。
術をかける。
「父親の会社の跡継ぎにならず、医者になることに集中しろ」
すると、開くはずのない目があいて、茶色い目とオイラの視線が絡んだ。
オイラは恋に落ちた。
つづく
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二宮和也様
おめでとうございます。
