最近の2CVのチョッとしたモディファイを報告。
シルバーウイークの先週日曜日、福生のH師匠を訪ねた。



H師匠の2CVは1955年式で、ウチの子は1987年式なので32歳ほど先輩。
1948年発表されたときの排気量は、わずか375cc。1954年にボアを66mmに広げて425ccに拡大されているので、こちらの2CVは425ccである。足回りは375cc時代と同じとのことなので、ウチの子よりもさらに柔らかい。

外観上、基本的なシルエットが30年以上のときを経ても変わらないのは、いかにも2CVであるが、細かいところを見ると、トランクまで幌だったり、ドアが後ろヒンジだったり、ヘッドライトが少し小ぶりだったり、他にも様々な部分が違い、同じ部分と言ったら、ミシュランの125R15のタイアぐらいと言っても過言ではない。
(注:この記事をupしたら、師匠からタイアサイズも違うとのご指摘。師匠のは125-400mmで16インチ相当とのことで、ここで追記します。失礼しました。それにしても、同じ2CVでも、何もかも違う!)
この2CV、CAR GRAPHIC誌の2010年8月号に、6頁にわたり紹介されているので、お手元にバックナンバーをお持ちのかたは、ぜひご覧になってください。

さて、本日H師匠を訪ねたのは、ウチの子にちょっとしたモディファイをするためなのだが、そもそもは自分のFBでこの写真の記事を書いたことから始まる。



この2CV、ご存知のかたも多いと思うが、クランク掛けができる。若いひとは、クランク掛けと言っても、なんだかご存知ないかも知れないが、簡単に言うと、写真のようにエンジンのクランク軸に棒を差し込んで、セルモーターによらず、エンジンを始動すること。
フレンチ・ブルー・ミーティングでは、2CVのクランク掛け競争なんてのも開催されている。

そういう自分も、このクランク掛けは、やったことが無く、いざやってみるとナンバープレートが邪魔をして、やりにくい。

そんな記事をFBに書いたら、H師匠からコメントがあり、ナンバープレートの位置を変更すれば良いとのこと。しかも、師匠の秘密基地まで来れば、手伝っていただけるとの温かいお言葉に甘えて、参上した次第。

前置きが長くなったので、早速作業に入る。
当日は、近くに住むCGCLUB会員のW氏もアルファ156ワゴンで駆けつけた。
まずは、今付いているナンバープレートを外す。
新しいナンバープレート枠は、H師匠がホームセンターで仕入れた鉄板を加工して、大方できていた。感謝である。


取り付けの位置決めをして、ステーをリベット止め。
そして塗装。リベット止めと塗装の一部は、師匠に教わりながら自分でもやってみました。自分のクルマに取り付けるモノだから、少しは作業しないと(^_^;)。

塗装の乾くまで少し待つ。



塗装が乾くまでの間、師匠はちょっと外出。その間は師匠のガレージでW氏とクルマ談義に華を咲かせる。それにしても、師匠のガレージは素敵です。師匠、お留守に勝手に写真を撮って、ごめんなさい。



師匠も外出から帰宅、塗装も乾いたようなので、いよいよ取り付け。


枠を取り付け、ナンバープレートを取り付ける。

そして、ボンネットを開けると。


ナンバープレートが無い。
バンパーがボロボロなのが目立つ。
そのうちに、きれいに塗装しなおそう。

それで、ナンバープレートは、ここに移動。



そう、ボンネット側に収まっている。
ボンネットには穴あけ加工等、一切行っていない。
アイデアの勝利ですね。
師匠、ありがとうございました。

作業が無事に完了したところで、2CVの試乗会となった。
師匠の運転する1955年式2CVで、近くを走っていただいた。

後ろヒンジのドアを開けて乗り込むと、車体がフワッと揺れる。
明らかにウチの子のサスペンションとは違う。
1964年までは、全輪の付け根に独特なダンパーが付いていて、各ダンパーの筒の中にスプリングと錘が入っており、この慣性を利用している。このクルマも、後ろから覗くとウチの子には無い黒い筒が後輪の内側に見ることができた。

シートもハンモック構造で、ウチの子よりももっと単純で、本当のハンモックのように布を貼っただけのようなものなので、それだけ室内も広い。

走り出してまず感じるのは、サスペンションの柔らかさ。おそらく、この柔らかさはこのクルマが開発された当時に狙った柔らかさであると思う。例の「カゴに入れた卵を割らずに運べること」の設計思想である。
走りも、軽く感じる。とても425ccには思えない加速である。

信号待ちで止まったときに驚いたのは、師匠がギアをローに入れたままクラッチを離しても、エンジンが止まらないのである。スタートはそのままアクセルペダルを踏み込むだけで、発進する。なんと、自動遠心クラッチが付いているのである。これならば、スタート時のクラッチワークからも解放される。「女性でも簡単に運転できる」という設計思想がここにも生きている。
内装は至ってシンプル。小さな円形のスピードメーターが運転席の左端に付いている。メーターの下端にはダイアルが付いており、当時のワイパーは速度に合わせて動いていたため、クルマが停止するとワイパーも停止するため、そのときは、このダイアルを回してワイパーを動かすとのこと。
何もかもウチの子と違う2CVに乗せていただいたのは、貴重な経験であった。



次に、ウチの2CVに師匠に乗っていただく。エンジンが600ccの力が出ていない。時々息つきを起こす。シフトチェンジが渋い。等々、少し走っただけで不具合を指摘。
早速ボンネットを開けて治療開始。

まずは、長いドライバーを持ち出し、キャブレター調整。
師匠は、まるで2CVと対話するようにエンジン音を聞きながら、ドライバーでキャブレターを調整。
次に、シフトチェンジの渋さを改善するため、何やら秘密の缶に入った白い粉をシフトレバーのリンケージに塗る。この粉はどこのドラッグストアーでも入手できるものである。

整備が終わって試走してみる。まず驚かされたのは、エンジンがスムーズでクルマが軽くなったように加速する。アイドリングも安定して、息つきも無くなった。
シフトレバーも軽くスムーズに動く。これは、楽しい。

それにしても、ドライバー1本で劇的に改善するとは。
乗って楽しく、弄って楽しい、現代のクルマにはできないクルマなんだから、自分ももっと勉強して、少しでも師匠に近づきたいと思った1日であった。
そして、2CVが益々好きになった。