毎日の通勤、片道約20kmを少しでも快適にするため、自作のチェーン自動給油装置を製作しました。
いわゆる「スコットオイラーもどき」です。
ポンプは使わず、タンクの高低差を利用した重力式。
DC12Vの電磁弁をスイッチで開閉し、必要なときだけ少量のオイルをチェーンへ供給するシンプルな構成です。
当初はCKD製の産業用電磁弁を使用していましたが、実際の取り付け位置が車外になるため、現在はIP65の記載がある2V025-1/8-12VDC系の小型電磁弁へ変更しました。
今後の修理、改良、再製作のために現在の仕様を忘備録としてまとめます。
1. コンセプト
今回のオートオイラーの基本方針は、
・バイクのDC12V電源で動作
・通常閉(NC)の電磁弁を使用
・タンクは非加圧の重力式
・車外に取り付けるため、防塵・耐水性も考慮
・必要な時間だけスイッチON
・流量調整コックで滴下量を調整
・高粘度オイルで飛散を抑える
というものです。
特に今回重視したのが、
「電磁弁を車外に設置する」
という条件。
バイクの場合、車外に設置した部品は雨水、洗車時の水、埃などにさらされます。
そこで電磁弁変更時には、単に12Vで動けばよいというだけではなく、
IP65の記載があること
を選定ポイントのひとつにしました。
2V025シリーズの公開仕様では、防塵・防水等級としてIP65が記載されています。
2. 使用材料
電磁弁
2V025-1/8-12VDC
DC12Vで動作する2ポート・通常閉型の直動式電磁弁。
2V025シリーズの公開仕様では、
・2 Way
・Normally Closed(常閉)
・Direct Acting(直動式)
・1/8インチNPT
・オリフィス 2mm
・Cv 0.23
・シール材 NBR
・12VDC仕様あり
・100% ED(Continuous Duty)
・IP65
とされています。
今回購入した個体の商品ページでは12VDC、4Wとして販売されていました。
価格は約2,000円。
タンク
新潟精機 BeHAUS PBW-100
容量100ml。
ボトル底部にニップルを取り付け、そこからオイルを取り出す構造に加工しました。
価格:約300円。
ホース
三洋化成 耐油チューブ F-4
内径4mm × 外径7mm。
透明ピンクなので、中を流れるオイルや気泡を確認しやすいです。
価格:約500円。
流量調整
金属製一方コック
電磁弁ON時のオイル量を調整するために使用。
現在は、
約10秒に1滴
を目安に調整しています。
価格:約400円。
ノズル
外径3mm 真鍮パイプ
耐油ホースからチェーン付近へオイルを導くための吐出ノズル。
先端内径は約2mm。
価格:約500円。
スイッチ
LED内蔵防水スイッチ
ハンドル付近に設置。
電磁弁ON状態をLEDで確認できます。
価格:約1,200円。
逆起電力対策
1N4007
電磁弁コイルOFF時の逆起電力対策として、コイル近くへ並列接続。
12V側にカソード、GND側にアノード。
価格:約50円。
使用オイル
20W-50 + AZ CKM-002
基本的には、
20W-50 : CKM-002
= 約9:1
を目安にしています。
さらに、
ORIENT OIL COLOR スカーレット
を少量添加して着色。
透明ホース内でオイルの流れが見やすくなるようにしています。
3. 全体構成
オイルの流れは、
100mlタンク
↓
2V025電磁弁
↓
流量調整コック
↓
耐油ホース
↓
真鍮ノズル
↓
チェーン
です。
ポンプは使用していません。
タンクをノズルより高い位置に設置し、その高低差だけでオイルを流しています。
4. CKD製電磁弁から変更した理由
最初に使用していたのは、
CKD USB3-6-3-B-DC12V
でした。
元の記事では、産業用パーツとしての信頼性を重視してCKD製電磁弁を採用していました。
ただ、実際に車体へ取り付けて運用していくと、別の条件を重視したくなりました。
それが、
車外設置
です。
今回の電磁弁はカウル内部の完全に保護された場所ではなく、雨や埃の影響を受ける可能性がある場所に設置しています。
そこで交換時には、
IP等級が明記されていること
を重視しました。
2V025シリーズの仕様には、
Ingress Protection:IP65
との記載があります。
これが今回、CKD製から変更した大きなポイントです。
5. IP65を選んだ理由
IP65という表記があるからといって、何をしても水が入らないという意味ではありません。
自分の使い方では、
・走行中の雨
・路面からの水しぶき
・埃
・洗車時の水
などを想定しています。
そのため、何も保護等級が確認できない電磁弁より、
IP65の記載があるものを車外設置用として選びたかった
という考えです。
ただしIP65だからといって水没できるわけではないので、取り付け位置については可能な範囲で直接水が溜まりにくい場所を選んでいます。
また、配線接続部やギボシ、延長配線などは電磁弁本体とは別なので、そこは別途防水処理が必要です。
6. IP65でも「完全防水」ではない
ここは忘れないために書いておきます。
IP65=完全防水ではありません。
電磁弁本体にIP65の記載があっても、
・配線接続部
・端子
・途中のコネクター
・圧着部分
・延長配線
まで自動的にIP65になるわけではありません。
そのため実際の取り付けでは、
・熱収縮チューブ
・防水コネクター
・自己融着テープ
・配線を下向きに逃がす
なども併用。
特に配線を上向きにしてしまうと、水がケーブルを伝って電磁弁側へ流れる可能性があるので、水が溜まりにくい向きを意識しています。
7. 2V025を選んだもう一つの理由
もう一つ重要なのが、
直動式
であること。
このオイラーはポンプを使わず、タンクも加圧していません。
つまり電磁弁入口の圧力はほぼタンクの高低差だけです。
パイロット式の電磁弁では作動に最低差圧が必要な場合がありますが、2V025シリーズは直動式です。
そのため、今回のような重力式システムにも使いやすい構造です。
8. 2V025の主な仕様
公開されている2V025-1/8の仕様では、
・2ポート
・通常閉
・直動式
・1/8インチNPT
・オリフィス 2mm
・Cv 0.23
・NBRシール
・アルミボディ
・12VDC設定あり
・100% ED
・IP65
となっています。
使用流体についてもLiquid、Air、Inert Gas、Vacuumとの記載があります。
9. 購入品とメーカー仕様について
ここは注意。
今回購入したものはAmazonで販売されていたWalfrontブランドの2V025-1/8-12VDCです。
一方、IP65や100% EDなどの詳細仕様を確認できた資料はSTC製2V025シリーズの資料です。
そのため、
「2V025という型番だからAmazon購入品もSTC製と完全に同一仕様」
とは断定できません。
購入した商品ページにもIP65表記があることを確認した上で採用していますが、細かな構造、材質、品質管理まで完全に同じかどうかは分かりません。
ここは今後の実使用で確認していきます。
10. 電磁弁の消費電流
購入品の商品説明では、
DC12V / 4W
です。
単純計算では、
4W ÷ 12V
= 約0.33A
なので、
約330mA
程度。
バイクの電装負荷としては比較的小さい部類です。
11. 逆起電力対策
電磁弁はコイルなので、電源をOFFにした瞬間に逆起電力が発生します。
そのため、
1N4007
を電磁弁の近くへ並列接続。
向きは、
12V側 → カソード(帯側)
GND側 → アノード
です。
これでスイッチOFF時に発生する逆起電力を逃がします。
12. 自作100mlタンク
タンクには、
BeHAUS PBW-100
を使用。
底面にニップルを追加し、底からオイルを取り出しています。
容量は100ml。
今回のように1回あたり数滴から十数滴程度を使う運用なら十分な容量があります。
13. 二重蓋ブリーザー
重力式タンクなので、オイルが出た分だけ空気が入らないとタンク内部が負圧になります。
そのためブリーザーを追加。
中蓋へ小穴を設け、上蓋側にはU字ホースを装着しています。
目的は、
・タンク内部へ空気を入れる
・埃の侵入を抑える
・車体傾斜時の漏れを抑える
こと。
「完全に埃をシャットアウト」ではなく、侵入をできるだけ抑える構造です。
14. ブレンドオイル
使用しているオイルは、
elf 20W-50
をベースに、
AZ CKM-002
を約1割添加。
比率は、
9:1程度
です。
これはメーカー指定の配合ではなく、自分のチェーンオイラー用として使っている配合です。
15. オイル着色
オイルには、
ORIENT OIL COLOR スカーレット
を少量添加。
透明ピンクのホース内を赤いオイルが流れるため、
・オイルが流れているか
・ホース内に気泡がないか
・残量があるか
を確認しやすくなりました。
16. ノズル
耐油ホース内径は4mm。
そこへ外径3mmの真鍮パイプを接続。
隙間は熱収縮チューブなどで調整し、タイラップで固定しています。
先端は約2mm。
チェーンへ大量に流すのではなく、1滴ずつ安定して落とすためのノズルです。
17. 流量調整
電磁弁は流量を細かく調整する部品ではなく、
ON / OFF
を担当。
実際の滴下量は、その後ろに設置した一方コックで調整しています。
現在の基本設定は、
10秒に1滴
です。
18. 電磁弁交換後は再調整
CKD製から2V025へ変更したことで、内部のオリフィスや流路抵抗が変わります。
2V025-1/8の公開仕様は、
オリフィス2mm
Cv 0.23
です。
そのため交換後は、以前のコック位置をそのまま使わず、
実際に滴下させて再調整
しました。
最終的には今までと同じ、
約10秒に1滴
へ合わせています。
19. 通勤時の使用方法
通勤距離は、
片道約20km
走行時間は、
約30分
です。
晴天時は出発直後に、
約3分間ON
を基本にしています。
10秒に1滴なら、
180秒 ÷ 10秒
= 約18滴
です。
つまり1回の通勤で、
約18滴
を基準として給油しています。
20. 雨天時
雨の日はチェーン表面の油膜が落ちやすいため、晴天時より長めにON。
以前は、
雨天時は常時ON
という運用にしていました。
2V025シリーズの公開仕様では、100% ED、つまりContinuous Dutyの記載があります。
ただし今回購入したWalfront品について、STC製2V025と完全に同一の連続通電保証があるかまでは確認できません。
そのため現在は、
雨量やチェーン状態を見ながらON時間を調整
する運用にしています。
21. 車外設置で気をつけていること
今回の電磁弁交換で一番変わったのはここ。
電磁弁は車外に設置しています。
IP65の記載があるものを選んだとはいえ、何も考えずに取り付けているわけではありません。
自分の場合は、
・直接タイヤから水が跳ね続ける場所を避ける
・電磁弁周辺に水が溜まらない場所にする
・配線接続部を防水処理
・配線を水が伝いにくい向きにする
・洗車時に高圧水を直接当てない
という点を意識しています。
IP65は安心材料のひとつですが、
IP65だからどこに取り付けても大丈夫
という考え方では使っていません。
22. 現在の最終仕様
現在のオイラーは、
BeHAUS 100mlタンク
↓
2V025-1/8-12VDC
↓
流量調整コック
↓
三洋化成 耐油ホース
↓
3mm真鍮ノズル
↓
チェーン
という構成。
電装は、
12V電源
↓
LED防水スイッチ
↓
2V025電磁弁
電磁弁部分に、
1N4007
を追加しています。
23. CKDから2V025へ変更して感じたメリット
今回の変更は、
CKDが悪かったから
ではありません。
CKD製の産業用電磁弁には信頼性という大きなメリットがあります。
今回変更した理由は、自分の使用条件に合わせて、
車外設置
+IP65表記
+直動式
+12V
+小型
+低価格
という条件を優先したためです。
特に、
IP65の記載がある状態で車外設置できること
が大きな変更ポイント。
価格も約2,000円なので、故障した際の交換も比較的容易です。
24. デメリット・不明点
一方で、安価な汎用品ならではの不明点もあります。
特に、
・長期耐久性
・品質のばらつき
・NBRシールと使用オイルの長期相性
・夏場のコイル温度
・雨天走行を繰り返した場合の耐久性
・配線出口部分の実際の防水耐久性
など。
この辺はカタログだけでは分からないので、
実際に使いながら検証
していきます。
25. 今後確認するポイント
これから確認したいのは、
・雨天走行後の電磁弁状態
・端子周辺への浸水有無
・錆、腐食
・コイル作動不良
・OFF時のオイル漏れ
・夏場の発熱
・冬場の流量変化
・シール材の劣化
など。
特に今回の電磁弁交換では、
IP65を理由に車外へ設置している
ので、雨天使用後の状態は定期的に確認する予定です。
26. 注意
これは市販のチェーンオイラーではなく、個人製作のDIY装置です。
チェーン周辺は、
リアタイヤ
ブレーキ
スプロケット
駆動系
に近いため、オイル量やノズル位置を間違えると危険です。
特にオイルがタイヤやブレーキへ付着しないよう十分注意しています。
またIP65であっても水没対応ではなく、配線部分まで含めて完全防水になるわけではありません。
この記事はあくまで、
自分自身の製作・運用記録
として残しています。
まとめ
現在の自作チェーンオイラーは、
DC12V
+IP65表記の2V025系直動式電磁弁
+100ml重力式タンク
+流量調整コック
+20W-50ベースオイル
という仕様になりました。
通常時の基本設定は、
10秒に1滴
× 約3分間
= 約18滴
です。
今回CKD製電磁弁から変更した最大のポイントは、
電磁弁を車外へ設置するため、IP65の記載がある2V025系へ変更したこと。
2V025シリーズ自体は、公開仕様でもIP65、直動式、通常閉、12VDC設定、100% EDなどが確認できます。
ただし、IP65だから万能というわけではありません。
直接大量の水が当たり続ける場所を避け、配線部も含めた防水処理を行ったうえで使用します。
あとは通勤と雨天走行で実際の耐久性を確認。
不具合や変更点が出たら、また追記します。
