カルロス・ゴーンが「28億円の大豪邸」からの退去命令

 レバノン政府と国民が感じる「納得の本音」

 

 

 レバノンへ逃亡してから4年……。カネにモノを言わせた悠々自適な生活もついに終わろうとしている。

レバノン政府にゴーン引き渡しを迫る、フランス司法当局による交渉の内幕をレポート。 

豪華すぎる自宅

 

 音響ケースに入ってプライベートジェットで国外逃亡するという「世紀の脱出劇」から4年。

レバノンにいるカルロス・ゴーン(69歳)が、窮地に陥っている。  

  ゴーンについて長く取材するジャーナリストの形山昌由氏が語る。 

「10月中旬、レバノンの司法当局はゴーン被告に対し自宅からの退去命令を出しました。

これは、レバノン国内におけるゴーン被告の影響力が低下していることのです。

 レバノン政府がゴーン被告をかばう気がなくなったことを意味しているとも言えます」  

ゴーンは日本からの逃亡以来、レバノンの首都・ベイルートの高級住宅街に建つ豪邸に住んできた。

 だが実は、この邸宅は日産時代にゴーンが自身の”福利厚生”のために購入したもので、所有者は日産の関連会社だった。

改装費用などを含め、物件購入のためにかかった金額は1900万ドル(約28億5000万円)に及んだという。  

「当然、日産側は立ち退きを求め、'19年に関連会社を通じてレバノンの裁判所に提訴しました。

ゴーン被告は『そもそも自分の居住用に購入したものだ』などと主張し、約4年におよぶ長期裁判になりました」(形山氏)  外壁がピンク色であることから、ゴーンの豪邸は地元で「ピンクハウス」と呼ばれていた。ピンクハウスに招かれたことがあるというゴーンの知人が、その豪華すぎる内装について証言する。  

「敷地面積は約500平方メートル、フランスの伝統的な建築様式を用いた3階建ての建物です。

建物内にある駐車場から部屋まではエレベーターでつながり、直接行き来ができる。

 ちなみに、日産への当てつけか、駐車場に停まっていた車は日産のリーフでした。  

部屋の入り口にはキャロル夫人(57歳)の趣味と思われる聖母マリア像があり、その先に広大な大広間が広がります。

 ルイ15世を描いた絵画、革製の調度品、グランドピアノ、豪華なシャンデリアにダイニングバーがあり、床にはペルシャ絨毯が敷かれている。ゴーンは自宅に客を招くことも多いため、自身の財力をアピールする目的もあったのでしょう。

 まさに贅を尽くした内装になっていました」  ゴーンはレバノン国内でも「海外で成功した大実業家」として広く知られている。それだけに、セキュリティーも極めて厳重だ。知人が続ける。  

「いたるところに防犯カメラがあるだけでなく、家の前ではガードマンが24時間警戒しています。ゴーンの家の前を歩くと、ガードマンから道の反対側を歩けと追い払われたこともありました。  何者かわかりませんが、少し前まで日本人がピンクハウス近くの家を借りてゴーンの行動を逐一監視していたこともあった。ゴーンは公式には言いませんが、そのことをずいぶん不快に感じていると漏らしていました」

 

レバノン国民の本音

裁判所からは1ヵ月以内の退去を求められているが、ゴーンに応じる気はない。判決を不服として、すでに控訴を申し立てている。

 だが、ゴーンが今後の控訴審で逆転する可能性は低いとされる。というのも、レバノン国内ではすでに、ゴーンへの風当たりが強くなっているからだ。レバノン政府関係者が証言する。

「レバノンは以前から深刻な経済危機に陥っています。通貨価値は暴落し、実に国民の7割以上が貧困状態に陥っている。

ガソリンスタンドには長蛇の列ができ、廃業する飲食店も後を絶たない。首都のベイルートですら、ゴーストタウンと化しているのです。

 しかしゴーンは、日産の会長時代からレバノンに何ら支援をしてこなかった。

そのくせ、自分が日本で刑事事件を起こし起訴されると、一転、レバノンに逃げ込んだ。逃亡当初から、レバノンではゴーンに対する反感は大きかったのです」

 ゴーン自身も当然、そんな国民感情は理解していた。そこでこの男は、イメージアップのためのアピールを繰り返してきた。レバノン国内でカネをバラまいたのだ。

 「ゴーンは銀行や出版社、ワイナリーなど数多くの企業を所有しており、その資産は日本円にして70億円を超えると言われていました。長男や長女だけでなく、キャロル夫人にも会社を持たせ、世界各地に資産を隠し持っていたのです。

 その莫大な資産を元手に、ゴーンはレバノンの大臣、裁判官、軍関係者、ジャーナリストなど多方面にカネを配りまくった。レバノンの支配層を占めるキリスト教マロン派の大学に多額の寄付をしたり、自身の潔白を主張するドキュメンタリー映画や自伝を出したこともある。昨年10月には、政財界の要人を招いてパイプを作るために、ベイルートに高級バーまでオープンしています」

 だが、いくらゴーンといえど、無限にカネがあるわけではない。

昨年4月、日産とルノーの統括会社の資産を不正に利用した疑いでフランスがゴーンを国際手配。

 これに応じなかったため、今年4月に再び手配されると、ゴーンの海外資産が相次いで差し押さえられるようになった。

レバノン政府関係者が続ける。

「日本での保釈金15億円は没収され、逃亡にも約16億円がかかったと言われている。そんななかカネをバラまいた上、資産凍結も始まったため、ゴーンの資産はすでに4割以上減っているとされています。

カ ネの切れ目が縁の切れ目。 

 現在、表立ってゴーンを擁護する人間はレバノンの政財界には見当たりません。だからこそ、司法もゴーンに対し自宅からの退去命令を出したのです」

この前編報告ではレバノンに逃亡後のカルロス・ゴーンの私生活、そして、今の生活の現状について解説してきた。続く後編報告『カルロス・ゴーンがレバノンから追い出される日も近い…確保を迫るフランス政府の「衝撃の切り札」』では新たな逃亡先などについて引き続き投稿していく。

 

 

 

ゴーン ゴーン ゴーン

 石で追われて去るか?

悪銭身に付かず!