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外国人契約社員「労災」告発 浜松労基署、検察に報告

 

「外国人の立場はいつも弱いんです」と語るブラジル人男性=浜松市内で

「外国人の立場はいつも弱いんです」と語るブラジル人男性=浜松市内で

 

 自動車部品の製造大手「ソミック石川」(東京都)で起きた労働災害2件を1年近く報告せずに隠したとして、契約社員のブラジル人男性(41)=浜松市=が同社を浜松労働基準監督署に告発し、労基署が10月末に捜査結果を静岡地検浜松支部に報告していたことが、関係者への取材で分かった。労基署は2件を労災と認定したが、同社は受け入れておらず、捜査は検察に委ねられた。

 

 男性は同社古川工場(浜松市南区)に勤務し、一度に300〜450キロの部品を台車に載せて手で押して運ぶ作業中、2018年02月に肋骨(ろっこつ)を折る大けがを負ったほか、同年7月に熱中症の症状で意識を失い、再び肋骨を骨折した。

 

 関係者によると、同社は1件目を業務外のけがを意味する「私傷病」として処理し、2件目を休業が必要ない「不休災害」として扱った。

男性は社外の労働組合に相談し、労働災害を申請。労基署は男性から聞き取り調査をして作業実態を確認し、19年7、8月にそれぞれの労災を認定した。

 男性は今年一月、労災隠しに遭ったとして労働安全衛生法違反による処罰を求めて同社を労基署に告発した。労基署の担当者は取材に「検察庁が捜査を継続する。内容は一切答えられない」と答えた。

 ソミック石川の担当者は「正式な連絡がないので、早急に確認したい」と話している。労基署の労災認定に同社は「当社の判断と違う。(労災認定の資料が届いておらず、労基署を管轄する)厚生労働省の判断が正しいかどうか、資料を見ないと判断できない」と主張しており、担当者は「こちらで把握している事実と異なる部分が多くある」と説明した。

 

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◆立場弱く、言葉通じず

 「外国人はいつも立場が弱い」。4日、浜松市中区の浜松労働基準監督署で地検への捜査報告について詳細を求めたブラジル人男性が、帰り際につぶやいた。「検察はしっかり捜査して判断してほしい」

 男性は2018年1月からソミック石川古川工場で働き始めた。休みは週二日で、勤務時間も一日8時間ほど。「なんで日本語話せないんだよ」と不満をぶつける同僚もいたが、親切な日本人社員も多く、長く働こうと思っていた。だが、入社まもなく業務中に大けがを負った。

 告発状によると、病院を受診する際、「労災ではなくプライベートで痛めたと言って」と上司や会社の通訳から言われたという。

医師は重労働による労災を疑ったが、会社の名前が出ると印象が悪いという理由から通訳が「原因はよく分からない。くしゃみで痛くなった」などと医師に説明したとされる。

 労基署の労災認定を受け、男性は外部の労働組合「遠州労働者連帯ユニオン」を通じて補償や謝罪を求める団体交渉を再三、会社に申し入れた。しかし、社側はそもそもの労災認定を受け入れなかった。

 

 ユニオンの岡本真弓書記長は「外国人労働者は生活も健康も顧みられず、使い捨てにされる実態がある。

本件は労災隠しだけでなく、人権侵害の問題にもつながる。企業内組合が役割を果たしていないのではないか」と指摘した。