「脱中国依存」へ 目覚めよ「日本の海底資源」

          世界需要の数百年分のレアアースが日本海底にあった. 

 

  中国の習近平政権が、レアアースを加工して磁石にする製造技術を輸出規制すると発表しました。

レアアースとは、スマートフォンやパソコン、次世代自動車などの生産に必要な物質です。

  中国は、レアアースの生産量も世界の6割を占めており、規制によって資源から加工技術まで、これからの脱炭素社会の主導権を握ろうとしています。資源を持つ国が世界の覇権を強めようとしている中、日本にもある秘策が。東京都小笠原諸島、日本の一番東にある南鳥島。その海底には、泥状のレアアースがありました。

南鳥島のレアアースの研究に携わる東京大学大学院工学系研究科 中村 謙太郎さんに話を聞きます。

南鳥島周辺にある「泥状のレアアース」がカギ!

 

―――南鳥島周辺にあるレアアースはどれくらいの量なのでしょうか。

研究や調査が進んでいる一部のエリアだけで、総レアアース資源量は1600万トンを超えると見積もられています。

 これは、世界の数百年分の需要に相当する膨大な量です。全域になると、ほぼ無尽蔵といっても良いかと思います。

―――その量のレアアースを日本はどのように活用していくのが理想的なのでしょうか。

まずは国産の資源として国内産業に安定供給することで、日本のレアアース産業やハイテク産業の活性化に繋げることが重要なのではないかと思います。

―――現状は輸入に頼っている資源を国内で賄えるようになると、産業としては非常に大きな要素になりますよね。

その理想の実現に向けて、現在はどのようなフェーズにあるのでしょうか。

 我々の研究では、海底に膨大な量の有望な資源が眠っているということが分かりました。

またそれを取り出す方法についても、既存の石油採掘技術などを転用すれば可能であり、採算も取れるということが分かっています。

 あとはそれを実現する体制を整えることが必要だと考えています。

日本は海底の油田が少なく、採掘に関わる企業があまり育っていません。海底鉱物資源の開発に必要な技術とノウハウが、国内にあまり蓄積されていないことがネックになっているのではないかと思います。

 

持続可能な社会にするためには早めの実現が必要に

―――海外に技術があるのであれば、持ち込むような取り組みはしているのでしょうか。

 まさにその点が開発の実現に向けて検討すべき課題かと思います。

国産の資源を国内の技術だけで開発したいという理想もありますが、一方で海外に既にある技術を取り込むことで、早い開発実現にこぎつけることが重要なのではないかと思います。

―――なるべく早く実現すべきなのでしょうか。

 レアアースというのは電気自動車や風力発電に使われる、低炭素社会の構築には必須の資源になります。

世界を持続可能な社会へ転換させるという動きをスムーズに進めるためにも、早い開発の実現で潤沢に供給していくことが大事かと思います。

―――海外の技術を取り込む目途は立っているのでしょうか。

 検討は始めています。そのような技術を持った企業は、欧米の普通の企業になるので、特に日本と組むことに大きな障害はないと思います。

―――いつ頃までにレアアース生産の実現は可能なのでしょうか。

 日本国内でも初めてのチャレンジになるので、政府の法的な整備やバックアップなどが未知数です。

何年というのを具体的に明言することは難しいかもしれませんが、技術的には数年あれば、開発まで行うことが可能な状況だと思います。

―――そうなると日本の世界における立ち位置も変わってくるのではないかと思います。どのような未来があると思いますか。

 

 

国内だけでなく海外輸出を通じて、レアアースの産業や経済安全保障に重要な資源を巡る国際情勢や、日本の政治の立ち位置を良い意味で大きく変えていく。そうすることで、日本のプレゼンスを上げることにも繋がるのではないかと思います。