ナノバブル(超微細気泡)とは

超微細気泡とは文字通り小さな気泡を意味し、どの位小さい気泡を超微細気泡と呼ぶべきか日本混相流学会においても様々な意見に分かれています。
しかし物理的な現象から分類するとおおよそ50ミクロン以下が適当だと思われます。
50ミクロン以下の気泡は気液界面のイオンの力により収縮します。収縮することで気液界面のイオン濃度は高められ、また内部の圧力と温度は上昇し様々な現象を引き起こすのです。
我々はその様々な現象を利用し多くの可能性に取り組みたいと考えています

超微細気泡の歴史

微細気泡研究の歴史は意外と長いです。

1800年代の終わりに近い1894年、イギリス海軍が初めて高速魚雷艇をテストしていた時のこと。

魚雷艇のプロペラが激しく振動し、その表面が激しく腐食することを見出しました。
この時に、回転するプロペラの表面に多数の泡が形成されるのを目撃しました。

原因はこの泡の生成と消滅に関係があるのではないかと仮説を立てました。

プロペラを大きくしたり、回転数を減らしたりするとこの泡形成(cavitation)の問題が軽減されました。

しかし、魚雷艇はスピードが命、しかし、スピードを上げると致命的になるというジレンマに陥っていたのです。

 

ここで、英国海軍は時の古典物理学の神様、レイリー卿(本名はJohn William Strutt)にことの究明を依頼しました。卿は形成した泡(マイクロバブル)がプロペラ表面で爆縮(Collapse)する際に、激しい乱流、高熱、さらに高圧力も発生することを見出しました。

モデルを作って計算した(Rayleigh-Plesset Eq.)ところ、温度が一万度、圧力が一万気圧という結果を得ました。

科学研究の発端は常に現実味を帯び、しかも必要性に駆られています。
因みに、このとき、やかんの湯が沸騰する直前に発する雑音はこのマイクロバブルが弾けることによる超音波であると指摘しています。

 

 

 

会長挨拶

祖山 均
SOYAMA Hitoshi

2021年度総会において、第35期日本混相流学会会長を拝命致しました。大変光栄に存じますとともに、重い責任を感じております。

本学会は1987年7月に設立されており、私事で恐縮ですが、1986年に東北大学高速力学研究所(現:流体科学研究所)で大学院生としてキャビテーションについて学び始めた頃と時期を同じにしておりまして、混相流学会に育てていただいたという思いから、少しでも日本混相流学会に恩返しができたら、と考えております。

第4代会長神山新一先生、第12代会長井小萩利明先生以来、ここ東北の地で会長をお引き受けすることになりました。本学会事務局からは地理的には離れておりますが、菱田先生ら歴代会長、理事の方々の先見の明により、理事会にオンライン会議が導入されており、理事会開催の経費節減の点からも非常に役に立っております。

この原稿は、混相流シンポジウム2021の直後に書かせていただいており、コロナ禍も第5波となるなかで、連日、新たに確認された感染者数が過去最多数を更新しているような状況です。混相流シンポジウム2021も一時は、ハイブリッド会議(対面とオンラインの同時開催)も期待されましたが、残念ながらZOOMを使ったオンラインのみでの開催となりました。実行委員長の梅川先生を始めとする実行委員会の方々のご尽力で談話室(oVice)を設けていただくなど、いろいろと工夫をしていただき、オンライン開催でしたが、会員の皆様の交流、情報交換にはお役に立てたのではないかと思います。実行委員の皆様、ならびにご参加いただいた会員の皆様、誠にありがとうございました。

第34期会長の加藤先生の下で1年間筆頭副会長を務めさせていただき、加藤先生が一つ一つの課題に丁寧に対応されていたのが強く印象に残っております。お蔭様で、第35期は順調に滑り出すことができました。加藤先生が重視しておられた、共通の興味やニーズをもった者同士が情報交換、議論を行う学会本来の意義を継承して、会員の皆様の交流の場として本学会がお役に立てますよう学会の運営に努めて参りたいと思います。また、加藤先生がお進めいただいたレクチャーシリーズなどを通じて、学会としての情報発信も推進して参ります。

コロナ禍の前にNASAがイノベーションを起すために主催したCross Industry Innovation Summitに招待された折、著名なカーデザイナや起業家ばかりでなく、マジシャンや音楽家らが参加していたのが新鮮でした。さらに、彼らはパネルディスカッションや講演よりも、Networking(コーヒーブレークのようなもの)を重視し、プログラムまで変えてしまったことに驚きました。また、この一連の会議において、Human trainingのプログラムもあり、InnovationにおけるHuman trainingの大切さも感じました。学会としては、会員の皆様のNetworkingに少しでもお役に立てれば、と思います。

コロナ禍の影響が大きく、先が見通せない状況で、学会の活動にも制約がある状況ではございますが、会員の皆様に情報交換と交流の場として本学会を活用していただけますよう、会員の皆様や役員の方々のお知恵とお力をお借りしながら、学会の運営に努めたいと思いますので、御支援のほど、どうぞよろしくお願いします。

東北大学大学院工学研究科ファインメカニクス専攻 教授
〒980-8579 仙台市青葉区荒巻字青葉6-6-01