メスのニホンウナギ養殖に成功 愛知県水産試験場、餌を工夫

 

メスのウナギ1匹で調理した2人前のうな重(右)とオス1匹のうな重=愛知県水産試験場提供

メスのウナギ1匹で調理した2人前のうな重(右)とオス1匹のうな重=愛知県水産試験場提供

 

  • 養殖に成功したメスのニホンウナギ(上)とオス=愛知県水産試験場提供

 愛知県水産試験場(同県蒲郡市)は、ニホンウナギのメスの養殖に成功したと発表した。生後二、三カ月で性別が決まるウナギは養殖の九割以上がオスになるが、稚魚のシラスウナギに、大豆イソフラボンを混ぜた餌を与えることでメスに育てる技術を確立。試験場によると、安全に食べられるメスの養殖成功は国内初とみられる。 (浅井俊典)

 うなぎ屋で提供される養殖ウナギのほとんどは一匹当たり二百〜二百五十グラムのオス。メスはオスの二倍の大きさに成長し、身もやわらかい。実用化されれば、一匹で二人前のうな重を提供できる計算という。

 試験場の一組織である内水面漁業研究所(同県西尾市)が三年前から研究を進めてきた。稚魚に一定期間、大豆イソフラボンを混ぜた練り餌を与えると、メスに成長することを発見。餌の量や期間などを調節し、稚魚の約92%をメスにできた。

 ウナギの生態には謎が多く、大豆イソフラボンを含んだ餌でメスになるメカニズムは熊本大や北海道大と協力して解析中という。

 メスの養殖技術は特許を出願中で、地元の養鰻(ようまん)業者との実証実験を経て、二〇二三年ごろの市場出荷を目指す。試験場の稲葉博之研究員は「養殖ウナギの生産量が減少する中、ウナギ資源にやさしい取り組みになれば」と話す。

 

 今後の課題はうなぎ屋での提供方法といい、うな重には一匹が重箱一つに収まるオスのサイズを好む店も多い。

メス一匹で二人前をつくると、かば焼きが頭の部分と尻尾部分に分かれ、好みが割れる可能性があるという。

一方で、試験場は「刻んだかば焼きをのせるひつまぶしには向くのでは」と期待している。