11月9日は恩師である故若林俊輔先生のお誕生日です。ご存命であったなら、92才です。

時々、先生のお誕生日やご命日近くに先生の思い出を書いております(それ以外のときも)。

「故若林俊輔先生のお誕生日です」

「書いたら消すな、消すなら書くな」
 

「わたし、はだしをはくの!」

「人に見せられない授業中を毎日生徒にしてるのか?」
 

また、先生の記事や後世にお伝えしたいおことばなどは下記の書籍等で触れることができます。

『英語は「教わったように教えるな」』

『若林俊輔先生著作集① 雑誌連載記事』

『若林俊輔先生著作集② 目的論・学習者論・音声指導・文字指導他』
 

 

今回思い出した先生のお話は pear という英単語に関するものです。

若林先生は大学ご卒業後に東京の文京区立第六中学校の教諭になり、英語を教えておられました。あるとき、教科書に pear という単語が出てきました。「西洋梨」です。

「'pear' の意味は「西洋梨」だ」と教えて終わりにしてもいいのでしょうが、昭和30年ごろの当時、「西洋梨」を見たことがある生徒はほとんどいなかったそうです。

それでは、本当に pear を学んだことにならないと考えられた先生は休日に都内を歩き回って本物の西洋梨を探したそうです。そして、何件目かでついに本物の西洋梨を見つけたそうです。

翌日それを学校に持っていき、授業で "This is a pear!" と、本物の西洋梨を生徒に見せたそうです。きっと生徒のみまさんは一生'pear' という単語を忘れなかったと思います。「一生」は大げさにしても、かなり強い印象を持って pear を習得したことでしょう。

先生はよく「実物」を提示されることの重要性を説いておられました。

実物が示せないなら、それに代わる視覚的な補助、例えば、写真などが有効です。

唱和30年には当然インターネットも存在しないので、写真をすぐに見つけて授業で提示して、などということは想像すらできない時代でした。そういう意味では、今の方がずっと便利になりました(もっとも、学校がいまほど忙しくなかったかもしれませんが)。

pearはあくまでも一例で、生徒が実感持って英語に触れることができるようにすることが大切であるという点は英語学習全般にいえることでしょう。

例えば、How many cats are there in this picture? と聞いたときに、イラストの中に猫が2匹いて、誰が見てもわかる状況よりは、隠し絵になっていて、すぐには数がわからず、生徒が「いくつだろう?」と本気で考える場面になっていることが重要です。そうすれば、'how many' という表現と「いくつ?」という気持ちが一致します。


といういわけで今回は若林先生が「実物」を大切にされご指導をされていたお話しでした。

参照:ウィキペディア「若林俊輔