姉弟9 惣流・アスカ・ラングレーの思惑(EVA小説) | 卵とじのエヴァンゲリオンの小説など

姉弟9 惣流・アスカ・ラングレーの思惑(EVA小説)

「アハハ……。」
思わず、笑いがこみあげてくる。
まさか、あそこまで上手くいくとは思わなかった。
たった、一言。
『ミサトとシンジがキスしてたの………。』
そう、うつ向いて、目に涙を溜めて加持さんに言っただけ。
そんな、私の肩を加持さんは叩いて微笑んで言ってくれた。
『……心配するな。』
と。
加持さんとミサトの間に何があったのかは、わからない。だけど今は、昔の様な関係では無いのだろう。この一年、ミサトが加持さんと話している所なんて、ほとんど見なかったから。
だけど、加持さんはまだミサトの事を好きだというのは知っていた。
だから加持さんを利用した。
でも、加持さんはミサトを、アタシはシンジを好きだから。利害は一致している。
だからこそ、加持さんはアタシの泣きの芝居に付き合ってくれたのだろう。加持さんにアタシの嘘泣きなんてバレてたはずだから。
そして、その結果、
加持さんとミサトのキスシーンを見て、シンジは傷付いた。
「ミサト心配しないで。シンジはアタシが慰めてあげるから。」
ミサトに微笑んでみせる。
ミサトにとっては嫌な笑顔だろう。
だけど、だから微笑んでやるの。
アタシはミサトが大嫌いだから。
「ミサトは、前みたいに加持さんと楽しんでれば良いのよ。」
きっと、シンジも同じ想いのはず。
家族だって言ったくせに、助けてくれなかった。男と寝ていたミサトを。
「………。ごめん、ごめんアスカ…。」
ミサトが悲痛そうな顔で謝罪する。
「ねえ、ミサト。シンジまでアタシから取らないわよね。」
アタシも悲痛そうな顔をしてやる。
謝罪なんて意味ないのよ、ミサト。だって、シンジは壊れてしまった。
そして、そんなシンジを癒して、直すのはアタシ。
だって、あの紅い世界でシンジが望んだのはアタシなんだから。
「離して、ミサト。」
いつの間にかアタシの腕を掴んでいる、ミサトに言う。
「……シンちゃんを、シンジ君をとらないで……。」
悲しそうな、寂しそうな目。
それに、ミサトの気持ちを見た気がした。シンジの事を本気で愛しているという気持ち。
それが…………気持ち悪い。
「離せ!!!」
なんで、ミサトがシンジの事…………。
なんで、コイツはみんな持って行くのよ。
絶対に絶対に絶対に絶対に絶対に絶対に絶対に絶対に………
「ミサトなんかにはシンジだけは渡さない!!」
アタシは掴んでいた腕を振りほどいて、走り出した。
「シンジ待ってて………。」
シンジ、シンジ、シンジ、シンジ、シンジ…………。
「……大丈夫よね?」
だって、碇シンジはアタシの事好きだったんだから。
アタシは自分にそう言い聞かせ、傘をさして外に出た。