姉弟19 葛城シンジと碇シンジの母(EVA小説)
夢の中で、トウジの妹は入院していた。
それが気になって僕は携帯電話のボタンを押す。
プルルルル……。
数秒の呼び出し音の後。
「なんや?シンジ。」
僕は、トウジに聞いてみた。
「……トウジにさ、妹っていたっけ?」
「…………。」
数秒の沈黙。
けど、重い沈黙の後。
「何言うとるんや。わしに、妹なんておらへんわ。」
嘘をつくのが下手なトウジのくせに、それはあまりにもいつもの口調だった。
「そっか、ごめんね。」
「なんや?別にかまへん。」
その、ごめんねは、
「トウジは僕の事、恨んで無いの?」
「何の事か知らんけど、わしがシンジの事恨むなんて、あり得へん。」
こんなに優しいトウジの、
足を奪ったことへの、ごめんね。
そして、
「僕はトウジの妹を殺したのに?それなのに、恨んで無いの?」
妹を殺したことへの、ごめんね。
「……シンジ?なにアホな事言うとるんや?」
きっと、本当は恨んでた。
それなのに、僕とずっと友達でいてくれて、
「ありがとうね。トウジ。」
心からの感謝の言葉を言って、
「バイバイ、トウジ。」
最後にトウジに言った言葉は、最期になるだろう言葉だった。
「おいっ!!シンジ!!ちょい……プー、プー、…。」
電話を切って、僕は思う。
もうトウジに優しくされる資格なんて無いと。
僕の為に、自分に嘘をつかせてはいけないと。
それなのに、
プルルルル……。
電話が鳴るから、
ガシャン。
それを地面に叩きつけて、トウジの優しさを断ち切った。
ふと、空を見上げてみる。
そこに太陽は無くて。
それは、山の向こうに沈もうとしていた。
空の色は赤色で。
それは、夢の最後を僕に思わせた。
だから、僕は恐くて走り出す。
走ってもまだしばらくは赤色のままなのに、
僕は走って、逃げた。
日が沈んで、街は活気に満ち溢れていた。
スーツを着た中年の男性は、これから家庭で待つ妻や子供の元に帰るのだろう。
オシャレをして腕時計を気にしながら歩く若い女性は、デートの待ち合わせをしているのだろう。
ランドセルを背負った子供達は、家族の元に帰るのだろう。
その間を走り抜けて、僕は体力の限界で止まってしまった。
「はぁ、はぁ、はぁ……。」
立ち止まって息を整えていると、僕にとって聞きなれた声が聞こえてくる。
「サードインパクト……。」
それは、電機屋の街頭テレビから流れる、いつも僕が見てるニュース番組のキャスターの声だった。
「国連の捜索によって、サードインパクトによるものと考えられる行方不明者……」
そのキャスターは、サードインパクトの正式な行方不明者数が新たに追加されたというニュースを淡々と読みあげた。
そして、
「私の妻や、子供も………。」
泣き崩れた。
僕は、それから目を背らす。
今走ってきた道を歩く人々。
それを見てると考えてしまう。
スーツを着た中年の男性を迎える、妻や子供は……
オシャレをして腕時計を気にしながら歩く若い女性を迎える、デートの相手は……
ランドセルを背負った子供達を迎える、両親や兄弟は……
あの紅い海から還ってきているのだろうか?
還ってきていないとして、
もし、僕が今……
『サードインパクトは、僕が起こしました。』
そう言ったとしたら。
僕は、その人々に殺されてしまうかもしれない。
それは、仕方ない事だと思う。
けど、僕は言わない。
だって、僕は
「死にたくなんてないよ。」
碇シンジは自分の犯した罪に耐えられなくて、自殺しようとした。
だから碇シンジは死にたくて、裁いてほしくて言ってしまうかもしれない。
けど、僕は
「嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ………。」
逃げ出す。
「僕のせいじゃない、僕のせいじゃない、僕のせいじゃない、僕のせいじゃない、僕のせいじゃない、僕のせいじゃない、
僕のせいじゃない、僕のせいじゃない、僕のせいじゃない、僕のせいじゃない、僕のせいじゃない、僕のせいじゃない、
僕のせいじゃない、僕のせいじゃない、僕のせいじゃない、僕のせいじゃない、僕のせいじゃない、僕のせいじゃない、
僕のせいじゃない、僕のせいじゃない、僕のせいじゃない、僕のせいじゃない、僕のせいじゃない、僕のせいじゃない、……。」
僕は碇シンジだけど碇シンジでは無いから。
今はまだ、葛城シンジだから。
「僕のせいじゃないよ……」
姉さんやアスカの話を聞いたばかりなのに、こんな自分さえも騙しきれない嘘をついてしまう。
「だから、許してください。許してください。許してください。許してください。許してください。許してください。許してください。許してください。
許してください。許してください。許してください。許してください。許してください。許してください。許してください。許してください。
許してください。許してください。許してください。許してください。許してください。許してください。許してください。許してください。
許してください。許してください。許してください。許してください。許してください。許してください。許してください。許してください……」
あまりにも大きな罪を、自分の罪だと認識は出来ても自覚は出来てないから。
許されない罪だとわかっているのに、謝罪の言葉を呟きながら僕は逃げ続けた。
人のいない場所へ、
人のいない場所へ、
一人になりたくて走っていたら、いつの間にか僕は墓地にいた。
「もう、嫌だ。」
逃げるのに疲れてしまった。
逃げても、逃げても、罪は全く消えてくれないというのがわかってしまったから。
だから、
「死んじゃったら、楽になるのかな。」
そんなふうに思っていると、急に近づいてくる足音と共に声がかかった。
「シンジ。」
「綾波?」
それは綾波の声、姿形をしているのに。
「うふふ、違うわよ。」
僕の知る綾波とは、仕草、口調が違っていた。
それより僕の事をシンジと呼ぶから、綾波の否定の言葉が嘘ではないと思えた。
「じゃあ、誰?」
綾波は僕の疑問に、言葉ではなく墓をゆび指して教えた。
その墓には、碇ユイの名が刻まれていた。
それが気になって僕は携帯電話のボタンを押す。
プルルルル……。
数秒の呼び出し音の後。
「なんや?シンジ。」
僕は、トウジに聞いてみた。
「……トウジにさ、妹っていたっけ?」
「…………。」
数秒の沈黙。
けど、重い沈黙の後。
「何言うとるんや。わしに、妹なんておらへんわ。」
嘘をつくのが下手なトウジのくせに、それはあまりにもいつもの口調だった。
「そっか、ごめんね。」
「なんや?別にかまへん。」
その、ごめんねは、
「トウジは僕の事、恨んで無いの?」
「何の事か知らんけど、わしがシンジの事恨むなんて、あり得へん。」
こんなに優しいトウジの、
足を奪ったことへの、ごめんね。
そして、
「僕はトウジの妹を殺したのに?それなのに、恨んで無いの?」
妹を殺したことへの、ごめんね。
「……シンジ?なにアホな事言うとるんや?」
きっと、本当は恨んでた。
それなのに、僕とずっと友達でいてくれて、
「ありがとうね。トウジ。」
心からの感謝の言葉を言って、
「バイバイ、トウジ。」
最後にトウジに言った言葉は、最期になるだろう言葉だった。
「おいっ!!シンジ!!ちょい……プー、プー、…。」
電話を切って、僕は思う。
もうトウジに優しくされる資格なんて無いと。
僕の為に、自分に嘘をつかせてはいけないと。
それなのに、
プルルルル……。
電話が鳴るから、
ガシャン。
それを地面に叩きつけて、トウジの優しさを断ち切った。
ふと、空を見上げてみる。
そこに太陽は無くて。
それは、山の向こうに沈もうとしていた。
空の色は赤色で。
それは、夢の最後を僕に思わせた。
だから、僕は恐くて走り出す。
走ってもまだしばらくは赤色のままなのに、
僕は走って、逃げた。
日が沈んで、街は活気に満ち溢れていた。
スーツを着た中年の男性は、これから家庭で待つ妻や子供の元に帰るのだろう。
オシャレをして腕時計を気にしながら歩く若い女性は、デートの待ち合わせをしているのだろう。
ランドセルを背負った子供達は、家族の元に帰るのだろう。
その間を走り抜けて、僕は体力の限界で止まってしまった。
「はぁ、はぁ、はぁ……。」
立ち止まって息を整えていると、僕にとって聞きなれた声が聞こえてくる。
「サードインパクト……。」
それは、電機屋の街頭テレビから流れる、いつも僕が見てるニュース番組のキャスターの声だった。
「国連の捜索によって、サードインパクトによるものと考えられる行方不明者……」
そのキャスターは、サードインパクトの正式な行方不明者数が新たに追加されたというニュースを淡々と読みあげた。
そして、
「私の妻や、子供も………。」
泣き崩れた。
僕は、それから目を背らす。
今走ってきた道を歩く人々。
それを見てると考えてしまう。
スーツを着た中年の男性を迎える、妻や子供は……
オシャレをして腕時計を気にしながら歩く若い女性を迎える、デートの相手は……
ランドセルを背負った子供達を迎える、両親や兄弟は……
あの紅い海から還ってきているのだろうか?
還ってきていないとして、
もし、僕が今……
『サードインパクトは、僕が起こしました。』
そう言ったとしたら。
僕は、その人々に殺されてしまうかもしれない。
それは、仕方ない事だと思う。
けど、僕は言わない。
だって、僕は
「死にたくなんてないよ。」
碇シンジは自分の犯した罪に耐えられなくて、自殺しようとした。
だから碇シンジは死にたくて、裁いてほしくて言ってしまうかもしれない。
けど、僕は
「嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ………。」
逃げ出す。
「僕のせいじゃない、僕のせいじゃない、僕のせいじゃない、僕のせいじゃない、僕のせいじゃない、僕のせいじゃない、
僕のせいじゃない、僕のせいじゃない、僕のせいじゃない、僕のせいじゃない、僕のせいじゃない、僕のせいじゃない、
僕のせいじゃない、僕のせいじゃない、僕のせいじゃない、僕のせいじゃない、僕のせいじゃない、僕のせいじゃない、
僕のせいじゃない、僕のせいじゃない、僕のせいじゃない、僕のせいじゃない、僕のせいじゃない、僕のせいじゃない、……。」
僕は碇シンジだけど碇シンジでは無いから。
今はまだ、葛城シンジだから。
「僕のせいじゃないよ……」
姉さんやアスカの話を聞いたばかりなのに、こんな自分さえも騙しきれない嘘をついてしまう。
「だから、許してください。許してください。許してください。許してください。許してください。許してください。許してください。許してください。
許してください。許してください。許してください。許してください。許してください。許してください。許してください。許してください。
許してください。許してください。許してください。許してください。許してください。許してください。許してください。許してください。
許してください。許してください。許してください。許してください。許してください。許してください。許してください。許してください……」
あまりにも大きな罪を、自分の罪だと認識は出来ても自覚は出来てないから。
許されない罪だとわかっているのに、謝罪の言葉を呟きながら僕は逃げ続けた。
人のいない場所へ、
人のいない場所へ、
一人になりたくて走っていたら、いつの間にか僕は墓地にいた。
「もう、嫌だ。」
逃げるのに疲れてしまった。
逃げても、逃げても、罪は全く消えてくれないというのがわかってしまったから。
だから、
「死んじゃったら、楽になるのかな。」
そんなふうに思っていると、急に近づいてくる足音と共に声がかかった。
「シンジ。」
「綾波?」
それは綾波の声、姿形をしているのに。
「うふふ、違うわよ。」
僕の知る綾波とは、仕草、口調が違っていた。
それより僕の事をシンジと呼ぶから、綾波の否定の言葉が嘘ではないと思えた。
「じゃあ、誰?」
綾波は僕の疑問に、言葉ではなく墓をゆび指して教えた。
その墓には、碇ユイの名が刻まれていた。
